怪獣総進撃2020   作:マイケル社長

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ーChapter 5ー

・7月10日 16:08 鹿児島県鹿児島市東郡元町 鹿児島第二合同庁舎 第十管区海上保安本部

 

 

所属する管区本部とはいえ、現場で育ってきた照屋にとっては、海上保安本部は緊張で居心地の良くないところだった。

 

深夜の出動後基地へ帰投してわずかな仮眠を取った程度で、昼前にはもう一度あかつき号沈没現場を飛行、生存者の捜索と現場海域の調査を行うと、休む間もなく鹿児島市の海上保安本部へ事故調査委員会による事情聴取のため招集されたのだ。

 

聴取を行う小会議室へ入るよう促され、照屋は軽く咳払いをして入室した。自分は犯罪者ではないし初動飛行でも特段問題があったとは思えないが、やはりこういった機会は内心穏やかではいられないものだ。

 

「お座りください」

 

コの字に組まれたテーブルの向かい側に、見慣れないスーツ姿の男性が腰掛けていて、照屋に着席を勧めた。

 

第十管区保安本部所属の事故調査官は3人、いずれも見知った顔だが、彼らは照屋から見て左側に並んで座っている。実質、照屋の向かいに座る男が1人で事情を訊いてくるようだ。

 

「照屋幸三一等海上保安正ですね。国土交通省運輸安全委員会、海難事故調査担当次席調査官、檜山です」

 

檜山と名乗るその調査官は、厳しい顔をしながらも、朗らかな口調だった。自分でもあまり呼ばれない階級で人を呼びやがって、この野郎。

 

「まずはじめに申し上げますが、海難事故調査の原則に則り、本調査では照屋保安正以下鹿児島航空基地の航空救難隊による現場対応、救助活動に問題があったか否かを判断する性質のものではありません。あくまで事故発生当時の現場確認と、事故発生原因究明のために行う聴き取りです。現地調査の様子のみ、正確にお答えいただきたい。よろしいですね」

 

語り口だけでなく、檜山は喋り出すと表情も朗らかだ。言動も聴取対象を安心させるためのものらしいが、しゃらくせえ。

 

そう心の中で毒づきつつも、照屋は了承した。

 

「すでに当時の報告書は上がってますが、いま一度、保安正の口から現場の様子を説明してください」

 

檜山に言われ、照屋は今朝自身が仕上げた報告書の通りしゃべった。こうして面と向かうと、自分が書いた内容通りだったかと不安になり、どうしても狼狽えてしまうものだ。まったく、早く終わらせてくれよ。

 

「ありがとうございます。報告書と差異はありませんね」

 

何のための報告書だよ、余計な時間取らせやがって。

 

「では保安正にお尋ねします。沈没したあかつき号は目下事故原因は不明ですが、保安正はなぜ沈没したとお考えですか?」

 

いきなり妙なことを訊くものだと、照屋は面食らった。

 

「もう少し突き詰めてうかがいます、現場海域には、みなさんの他には誰もいませんでしたか?」

 

檜山は顔つきが真剣になった。こんなことを、調査官が尋ねてくるものだろうか。保安本部の調査官たちも、東京から派遣された調査官の問いかけに動揺しているのが見てとれた。

 

「そりゃあ・・・誰もいなかったと思いますが」

 

「海面下に影を目視できたとか、レーダーに反応は?」

 

そこは、敢えて報告書にも記載していない部分だった。やはり政府は、原因がアイツだと考えているのだろうか。

 

「なかったですよ、そんなもの。あれば当然報告しますし、それに現場には、海自のP3Cも捜索に参加したのですよ」

 

「わかりました、突然もうしわけない」

 

個人的な質問だったのですかと問いかけかかったところで、照屋はアッ!と声を上げそうになった。思い出した、この檜山とかいう調査官。前は同じ海上保安官だったではないか。去年、『あれほど』の騒動の渦中にいて、庁内で一躍時の人となった、アイツだ。

 

その辺りを訊くのはどうしたものかと考えていたところ、ドアがノックされた。管区海上保安本部の飯嶋三等海上保安監だった。

 

「調査中、失礼します」

 

折り目正しく頭を下げると、檜山と列席の調査官たちに何かを告げた。

 

檜山は驚きの表情を浮かべたと思いきや、険しい顔つきになった。保安本部所属の調査官は「えっ!?」と声を上げ、目を丸めた。

 

「照屋保安正、聴取を一度中断します。重大な事案が発生しました。失礼します」

 

立ち上がりながら言うと、檜山は保安本部所属の面々に目配せをした。それぞれ慌てて立ち上がり、檜山の後を追った。

 

「飯嶋課長、いったい何事ですか?」

 

ただならぬ気配に、照屋は思わず訊いた。

 

「2つ」と、飯嶋はピースサインを作った。

 

「まず、救難艇の深海カメラで沈没したあかつき号を確認したところ、船体の真下に、人工物と思われる地形が見受けられた」

 

照屋は呆気に取られた。何だそれは?そういえば十数年前、与那国島近海で海に沈んだ文明跡が発見されたことがあるが。

 

だがロマン溢れる想像をする間もなかった。飯嶋はさらに衝撃的な内容を告げた。

 

「もうひとつ。あかつき号沈没海域付近に、中国海軍所属の094型原子力潜水艦が現れた。明らかな領海侵犯だ」

 

自分でも血の気が引くのがわかった。

 

「ま、君は調査官が退室している間、こちらの方々から話を聴いてくれたまえ」

 

飯嶋はいつのまにか部屋の外に待機していた面々を招き入れた。スラッとした紺色のスーツを着た女性を筆頭に6名。先頭の女性が会釈して、照屋に名刺を差し出してきた。

 

「KGI損害保険海損部の、緑川と申します」

 

 

 

 

 

 

 

 

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