・7月13日 19:15 千葉県市川市塩浜1丁目 福山通運塩浜倉庫付近
淡く輝くミラとリラは、互いの手を繋いだまま目を開けた。
「「檜山さん、緑川さん、みなさん・・・本当にありがとうございました」」
そう言われ一瞬キョトンとした檜山は、目を強張らせた。
「おい」
2人の肩に手を置いた。奄美でモスラの繭に触れたときのような、暖かく優しい感触が伝わってきた。
「「モスラとバトラ、そして私たちの、最後の力です」」
対岸から轟音が響いた。ギドラが立ち上がり、上空のモスラに向けて飛び上がったのだ。
3本の首から引力光線が断続的に放たれたが、モスラはすべてかわし、頭の上の触角から光線を発した。これまでバトラが放っていたプリズムレーザーとは違う、青く半透明の光線だった。
ギドラの引力光線とぶつかり合い、破裂する。ひるむギドラにモスラの光線が直撃した。プリズムレーザーより数段上の光線はギドラを大きくたじろがせたが、いきり立ったギドラは速度を上げてモスラに追いすがる。
モスラは垂直に上昇し、その軌跡をギドラが追う形になったが、成層圏直前で急反転すると、目にも止まらぬ速さでギドラの背後に回るモスラ。察知したときには既に遅く、モスラの光線でギドラの背中が大爆発した。
力を失い落下を始めるギドラだったが、モスラは羽根を拡げて回転を始めた。銀と青の粒子が渦となってギドラを包み、落下が止まりモスラの回転になすがままのギドラの全身を粒子が斬り裂く。絶叫するギドラは超高速回転したまま大地へ落下していったが、地表寸前で持ち直しモスラに怒り狂った顔を向けた。
だが宙にはモスラの姿がなかった。いつの間にか地表スレスレまで下りたモスラが素早く接近し、ギドラの胴体を鋭利な羽根で斬った。
火花と青い血が飛び散り、悶絶するギドラはディズニーリゾートラインに突っ込み、そのままディズニーシー・マーメイドラグーンまで滑り込んだ。
起き上がろうとするギドラにモスラの光線が突き刺さり、爆発しながらセンター・オブ・ジ・アースとタワー・オブ・テラーになだれ込む。唸りながら立ち上がったギドラは全身を帯電させると、3本同時に引力光線を発射した。相殺すべくモスラも光線を放射する。
綱引きのように空中で圧し合う互いの光線だったが、光線の威力では渾身の力を3本に込めたギドラの方がやや上回っていた。
やがてギドラは3本の首をくっつけ合った。引力光線がひと筋にまとまり、ドリルのように回転しながらモスラの光線にねじ込んでいく。危うく逃れようとモスラが光線放射を止めた刹那、ここぞとギドラは光線の勢いを強めた。極大の引力光線がモスラに命中し、仰向けになったままモスラは吹き飛ばされ、ヒルトン東京ベイホテルに倒れ込んだ。
ミラとリラの輝きが止まった。
「これほどか・・・ヤツの、ギドラの力は」
斉田が唾を呑み込み、言った。
瓦礫に埋もれたモスラは全身から白煙を上げ、どうにか起き上がろうとしている。
「いいえ」
粗い息を振り絞るように、ミラが言った。そんなミラを抱くリラ。
「モスラだけじゃ、ありません」
リラも呼吸が乱れ、額に汗を浮かべている。もどかしそうに2人を見遣る檜山。
再び対岸のディズニーリゾートで雄叫びが上がった。牙を折られ、背中を焦がされつつもベヒモスがギドラに突進したのだ。
不意打ちを喰らい崩れ込むギドラに、折れた牙を突き立てる。同時にチタノザウルスが首から出血しつつもギドラに向かい、右の首に喰らいつく。
悲鳴を上げつつも乱暴に首を振り回し、チタノザウルスを引き離そうとするギドラ。左の首はベヒモスの背中に引力光線を吐きつけた。重苦しい悲鳴をあげるベヒモスは横向きに倒れ、アラビアンコーストに半身を沈めた。
再びモスラが宙に浮いたとき、ミラとリラは目を閉じた。モスラの光線が立て続けにギドラの表皮を焼き、ギドラ中央の首が引力光線で応じる。だがひと筋だけではモスラに効果はなく、逆にモスラの光線がギドラの身を焼いていく。
ギドラは大きく羽撃き、チタノザウルスに噛まれたまま飛び上がった。中央、そして左の首がチタノザウルスに引力光線を当て、力を失ったチタノザウルスが東京ベイ舞浜ホテルに落下する。
いよいよ以ってモスラに逆襲しようとしたとき、猛烈な青い熱線がギドラを直撃した。
ゴジラだった。海面を激しく泡立たせるほど背鰭を青く光らせ、渾身の熱線を放射したのだ。
ディズニーアンバサダーホテル、イクスピアリに落下したギドラを討つべく、ゴジラはディズニーシーに上陸し、ホテルミラコスタを突き崩してギドラに突進した。
身を起こしたギドラは大きく後ずさり、ディズニーランド・シンデレラ城を倒壊させてカリブの海賊で踏みとどまる。全神経をゴジラに向けたが、そのため背後に回ったチタノザウルスを察知するのが遅れた。
チタノザウルスの頭突きで弾き飛ばされたギドラを、ゴジラは身を反転させ振り回した尻尾で薙ぎ払った。ビッグサンダーマウンテンに沈み、地に伏したところをベヒモスがギドラを圧し潰すように乗っかった。
周囲ごとギドラを氷結させ、身動きを取らせまいとするベヒモスだったが、既に限界を迎えていたのか、羽根と左脚を凍結させたところで崩れ落ち、眠るように目を閉じた。
凍てついた身体を揺り動かし、どうにか逃れんとするギドラをゴジラとチタノザウルスが踏みつけた。青い血を吐き散らしながらギドラは悶え、暴れ回ったことによって氷結から逃れたが、2本の尾をつかんだチタノザウルスがギドラを持ち上げ、二度、三度と激しく大地に叩きつけた。
血を吐きながらも激しくいきり立つギドラは、首を上げてチタノザウルスに引力光線を当てる。身が爆破されるのもかまわず、チタノザウルスはギドラの背中を蹴り上げる。
たまらず飛び上がり、空に逃れようとするギドラ。チタノザウルスは胸部から白煙を上げ、呻きながらうつ伏せに倒れた。
そのとき、江戸川から何かが飛び出した。腹部を穿たれながらも飛膜を広げたバランだった。ギドラの背中に爪を立て、しがみつく。バランがくっついたことでギドラの飛力が落ち、ゆっくりと降下を始めた。
そこを、ゴジラの熱線とモスラの光線が捉えた。夜空を焦がしながら身を破裂させたギドラはたまらず落下、JR舞浜駅を圧し潰して地に沈んだ。
死してなお背中に喰いつくバランを疎ましげに振り払おうとするギドラに、モスラが立ち塞がった。羽根をいっぱいに広げ、全身を青く粒子化させる。
やがて半透明の状態となり、引力光線も透過させる姿に慄いたギドラは再度逃れようとしたが、チタノザウルスが最後の力を振り絞ってギドラの脚にしがみつき、大地に引き摺り降ろした。
怒り狂うギドラに、粒子状のモスラが体当たりを仕掛けた。捨て身覚悟でギドラを捕らえたチタノザウルスが粒子状に弾け飛び、全身を金色、続いて青く光らせたギドラが苦しげに呻く。
やがて大きな青い渦となり、強烈に光を放ちながらモスラは身を以てギドラを光の渦に包み込んだ。