「良かったわねぇ、あんたは金になって。」
そう言って笑った、黒い髪の女。
紅を塗った唇を、ニタリと釣り上げて、餓鬼のように貪欲な瞳はどろりとした深い藍色だ。
なんて、不気味なんだろう。
私は、これと血がつながっているのか。
* * * * * *
ーーー昔から、何でも吸収しやすい体質だった。
一欠片の鋼を食わせれば、鋼のような強度を持つ身体になった。
私は、鋼のような硬い肉体を手に入れ、貴族に売られた。
いざという時の、盾である。
貴族は私に、面白がっていろんなものを食わせた。
金平糖を食べれば、身体から甘い匂いがし、苺という果実を食べると、爪が塗り物をしたかのように赤く染まった。
私は、異質だった。
貴族は、私に無駄にヒラヒラとした物がついた西洋の服を着せた。
種類は様々で、その時の服によっていろんな色の食べ物を食べさせられた記憶がある。
貴族は、そんな私を大層気に入ったようだった。
いつだったか、貴族が病に伏せた。
青白い顔をし、やせ細り、シワが増え、一日中床に伏せていた。
そして、いつも私を侍らせていた。
曰く、私は清楚だと。
曰く、私は可憐だと。
曰く、私を可愛がっていると。
そんな時、何をとち狂ったのか、私に薬を飲ませ、私の血を飲んだのである。
ーーー貴族は、見る見るうちに回復し、数日経てば、健康そのものの身体となった。
なんと、奇妙なことに、私は薬の効果を吸収し、そして、私の血は薬の効果が出るのだ。
貴族は、私を大層重宝し、たくさんの着物をきせ、たくさんの装飾品をつけ、沢山の贈り物をした。
飾りたてられ、撫で回され、人形のようにただ座る、退屈な毎日だった。
貴族は、いつからか、私に熱のこもった瞳を向けるようになった。
そして、その貴族は私を嫁に娶ると言い出した。
冗談ではない。
貴族は齢51。私は11である。
とても、気持ちが悪かった。
だから、私は最低限のものだけを持って、屋敷から逃げ出したのだ。
幸い、お金は貴族から貰った小遣いがたんとあったので、私は列車に乗った。
どこか、遠くの山にでも行きたかったのだ。
だが、切符という紙切れを買うのを、忘れていたのである。
だから、私は必死に車掌から逃げた。
列車には、うまいと叫びながら尋常じゃない量の弁当を食べる炎のような髪の男もいた。まっ黄色の髪の男に、猪頭の人間と、大きな箱を背負った少年も。
変な客がいる列車に、乗ってしまったのだ。
外れであった。
ーーーそうしたら、どうだろう。
何故か、皆眠りこけてしまった。