チュンチュン、と高い鳥の声が聞こえる。
窓を見ると、茶色く、小さな鳥が鳴いていた。
天高くにある太陽が、小鳥を照らす。
小鳥の毛並みは艷やかで、どこかで飼われているのだろうか、とにわかに考える。
ーーー朝方、だいぶ動かしやすくなった身体を起こし、辺りを見回す。
いつもなら、美しい私だけの人形が、そばにいるはずだがーーー。
違和感を、感じた。
すぐに手元にあった鐘を鳴らし、使用人を呼ぶ。
バタバタと、慌てるような足音が響き、使用人が入ってきた。
使用人の顔色は悪く、今にも死に絶えそうだ。
何か、あったのか。
そう聞くと、堪らず、といったようにガタガタと震え、涙を零し言った。
「も、申し、訳っ、申し訳ありまっ、せん…!お嬢様、がっ…。」
しゃくりあげなから、頭を地にこすりつけて、話を続けた。
「お嬢様が、朝方、からっ、おみえに…っ、お見えになりません…!!」
私が、きちんと見ていれば…っ、と泣きじゃくる使用人を、殴りつけた。
私の、私だけの可愛らしい人形を逃したなど、許せるはずがない。
頭に、一気に血が昇った。
申し訳ありませんでした、すみません、ごめんなさい、となきじゃくりながら話す使用人を、また殴りつける。蹴る。
「ふざけるな…っ!ふざけるなよおお!!私のお人形をおおっ!!
返せぇぇぇぇ!!!」
使用人を一通り殴りつけた後、私は馬を出させた。
何としてでも、探し出さねば…!
* * * * *
はじめに、私のお人形を見たときは、思わず息が止まった。
息が止まるほど、美しかったのだ。
黒く、烏の濡れ羽のような艷やかな髪と、真反対の白磁を思わせる肌。
その肌が、淡く薔薇色に染まる頬は、まるで熟れた桃のようだった。
紅く、色を感じさせる唇から、透明で、飛鳥を思わせる声が言葉を紡ぐたび、歓喜に震えた。
ーーーなんと言っても、深く、深海の色を移した宝石!
その宝石に、私を移していると思うと、天にも昇る尊さと、歓喜と、快楽で、どうにかなってしまいそうだった。
深い藍色の瞳は、刳(えぐ)りだして飾りたいほど、美しかったのだ。
* * * * * *
ーーー馬車が、にわかに傾いた。
ドオン!と大きな地響きが下かと思うと、私は馬車から転げ落ちたのだ。
「がっ!?」
思わず、苦嘆の声が出た。
すると、目の前には、私の人形程ではないがーーーとても美しい、化け物が佇んでいた。
まるで、鬼のように冷たい瞳が、私を見下ろす。
「ーーーなんと、美しい…。」
ゾクリと、背筋が震える感覚。
初めて、死を直感した時だ。
その化け物を、美しいと思ってしまったのである。
私は、昔から美しい物が特別好きだった。
私の一言に、口許をニタリと歪ませ、化け物は自身の腕を切った。
紅く、美しい花弁が散るように、血飛沫が私に飛ぶ。
「ーーー気に入ったぞ、死にぞこない。」
ーーー月光を、こんなにも美しいと感じた夜はなかった。