東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP9 ハイキュー3期 ヒカリアレ


化け物

 ニューヨーク時間午前10時25分 エジプト代表控室。

控室の雰囲気はピリピリしていた。

理由はスクスとセトが敗北したことでアヌビスが不機嫌になっていたからでそれを周囲が察して萎縮していたからだ。

ちなみにスクスとセトは医務室で療養中である。

 

「全く…あのような小国に敗北するなど情けない。戻ったら仕置きを与えねばな」

 

その言葉だけでヤハラとローブを纏っている2人以外のメンバーの顔が恐怖で青ざめていく。

 

「はぁ…まあよい。オシリス、行け」

 

「はい」

 

オシリスと呼ばれた者がローブを脱ぎ捨てた。

 

「必ずやアヌビス様に勝利を」

 

そう誓ったオシリスは女性。

だが、その姿は異様だった。

頭のてっぺんからつま先まで目元以外包帯で巻かれている。

まるでミイラのように。

服装は包帯の上に長袖シャツと長ズボンを着用している。

オシリス・レッドリーは一礼してから静かに控室を出た。

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

 

「ただいまだぜ」「戻りました」

 

ボロボロの霊夢と魔理沙が戻ってきた。

 

「霊夢!魔理沙!今、治癒魔法をかけます!」

 

大妖精が慌てて2人に駆け寄って治癒魔法をかける。

 

「私も強くなっただろ?」

 

魔理沙が黒刀に対して笑みを浮かべる。

 

「…まだまだ未熟だな」

 

「え~」

 

魔理沙が頬を膨らませる。

 

「だけどよくやった」

 

黒刀はそう付け足した。

 

「うん!」

 

その言葉を受けた魔理沙は満面の笑みで応えた。

 

「さて、次は俺か!」

 

黒刀が控室を出て行こうとすると映姫が襟首を後ろから掴む。

 

「あなたは最後でしょう!」

 

そう言って引き戻した。

 

「じょ、冗談だよ」

 

黒刀が苦笑い。

 

「つまらないジョークだな」

 

光が口を開いて控室のドアへ歩き出す。

 

「頑張って下さい!」

 

丸山が応援する。

 

「おう!『鬼神』と呼ばれた私に任せておけ!」

 

光は首だけ振り向いて返事してから控室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

「ハルバード」

 

ゲート前の通路を歩きながら光は冷たい声で詠唱した。

右手に持つSDが起動してデバイスの先端部分が伸びて赤いビームの斧の刃が出てきた。

そして、楽しそうに舌なめずりする。

 

「さて…楽しい楽しい闘いの始まりだ♪

 

薄暗い通路で笑うその顔はまさに鬼のようだった。

 

ゲートを抜けると盛大な歓声が沸き上がる。

光は特に歓声を気にすることなくフィールド中央に歩き進み5m手前で立ち止まった。

反対側のゲートからオシリス・レッドリーが姿を現した。

光の時は大きな歓声が上がったがオシリスに対しては全身包帯という異様な姿に歓声が聞こえなかった。

彼女の顔は目元しか見えない為、観客の反応に対してどういう表情をしているのか光には知る由もない。

だが、光にはそんなことはどうでもよかった。

光は早く闘いたいということしか考えていなかった。

 

オシリスがフィールド中央5m手前で立ち止まる。

 

「デュエルジャケットセット!」

 

光が詠唱した。

彼女の体が輝き装備が換装する。

彼女のデュエルジャケットは白のノースリーブシャツと赤のハーフパンツ。

デュエルジャケットと呼ぶにはあまりも軽装備だった。

 

「何だそれは?ふざけているのか?」

 

そうオシリスが問うのも無理はない。

 

「あ?ふざけてねぇよ。この方が動きやすいんだよ」

 

光がオシリスを見下すように言い返す。

 

「クリーンヒット一発でもただでは済まないわよ」

 

忠告するオシリス。

 

「ハッ!当たらなきゃいいだけだし例え当たったとしても倒れなきゃ問題ないし!

………っていうかこれからぶっ潰し合う敵の心配なんかしてんじゃねぇよ

 

その時、光の雰囲気が変わった。

 

「後悔しても知らないわよ」

 

オシリスはそう言い残した。

光が腰を落として『ハルバード』を構える。

オシリスは何も持っていない。

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

先に動いたのは光だった。

試合開始と共に、両足に気力を溜めて一気に放出し2秒で距離を詰める。

 

死ねぇ!

 

過激な言葉を叫びながら『ハルバード』を振り下ろす。

轟音と共にフィールドの砂が舞い上がる。

舞い上がった砂が風で流されるとそこにオシリスの姿はなかった。

光が横に視線を移すと10m離れた場所にオシリスが退避していた。

 

「へぇ。思ったよりすばしっこいじゃねぇかよ」

 

光は砂地に刺さっている『ハルバード』を引き抜く。

 

「随分と荒っぽいじゃない?」

 

オシリスが嫌味を言う。

 

「ただの挨拶だよ!」

 

光は『ハルバード』を肩に担いで楽しそうに笑う。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午前10時31分 日本代表控室。

 

「ほんと…誰かさんにそっくりよね」

 

真冬が黒刀にジト目を向ける。

 

「はぁ?どこが?」

 

「戦闘中に笑ったりとかそういう戦闘狂みたいなところがね」

 

真冬が顎に人差し指を添えながら答える。

その答えに一同が『うんうん』と頷く。

 

「そんなことないと思うんだけどな」

 

『(自覚ないんだ…)』

 

一同は心の中で呆れるのだった。

 

 

 

 

 

 オシリスが右手を光に向けて霊力弾を連射する。

 

「あ?」

 

光はがっかりした声を出した。

 

「てめぇら、芸がねぇんだよ!」

 

光は『ハルバード』を右手一本で振って霊力弾を全て斬り落とした。

 

光には『デーモン』というスキルがある。

どんな魔法や霊術も破壊できる。

霊力弾をいくら撃っても彼女に勝つことなど到底できない。

 

「あれ、実際にやられると結構メンタルに来るのよね」

 

控室の霊夢がかつての経験を思い出して苦々しい顔をする。

 

オシリスは懲りもせず動き回りながら霊力弾を手から撃ち続ける。

光は『ハルバード』を風車のように回して霊力弾を全て弾き落とした。

 

「どうやらもう引き出しは空っぽみたいなんで今度はこっちからいくぜ!」

 

光は『ハルバード』を天に掲げて両手で回転させる。

それにより竜巻が発生する。

 

「あいつ、一体何を…」

 

オシリスが呟く。

光は『ハルバード』を回転させたままその場で真上にジャンプする。

空中で回転を止める。

すると、『ハルバード』の大きさはまるで巨人族が持つ斧のように巨大になっていた。

長さは20m。

長さも目立つが何より目を引くのが元の10倍大きくなった『ハルバード』の刃だ。

 

「これが『ハルバード』だ!気力を注ぎ込むことで大きさを変えられるのさ!」

 

光が得意気に言い放った。

 

「ハッ!愚かね!そんな大きくしてまともに振り回せる筈がないわ!」

 

オシリスが勝ち誇ったように言い返す。

 

「はぁ?てめぇこそ何言ってんだ?使えない武器を使う訳ねぇだろうが!」

 

光が『ハルバード』を縦に構えて振り下ろした。

 

「う、嘘でしょ!」

 

オシリスが叫び、全力で横に跳んだ。

『ハルバード』の刃がオシリスの横を通り過ぎて砂地に叩きつけられ砂が舞い上がる。

 

「くっ!」

 

オシリスは歯を食いしばる。

 

「何安心してんだミイラ女!」

 

光は振り下ろした『ハルバード』を横向きに回転させた。

ブンッと風を切る音を立ててオシリスを薙ぎ払おうとする。

横に跳んだ直後のオシリスは避けることが出来ず『ハルバード』の刃を受けてフィールドの壁に吹っ飛ばされる。

 

「いっちょ上がりってところか。…ん?」

 

光が『ハルバード』のサイズを元に戻して壁に吹っ飛ばしたオシリスに視線を向ける。

壁には亀裂が入っており舞い上がった砂から現れたオシリスはさすがに無傷ではなかった。

しかし、気になるのはそこではなかった。

 

『ハルバード』によって顔の包帯に切れ目が入ったのか、顔の包帯が切れて落ちていく。

露わになった彼女の顔はなんと肌が苔のような緑色だった。

人間とは程遠い異形の見た目に観客のどよめきと悲鳴が響く。

それを聞いたオシリスは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「何だあれ?」

「肌が緑だぞ」

「恐ろしい…」

「何て醜い生き物」

「化け物だ!」

「そうよ!あんなの化け物だ!」

「化け物!」

 

観客席から『化け物』と何度も罵声が飛び交う。

 

「(ぬえ…あなたもこんな思いをしていたのか…)」

 

控室の黒刀は拳を握り締めた。

 

「(嫌なことを思い出させる光景ね…)」

 

レミリアはただ静かに観客席に座っていた。

 

人間は自身とは違う存在を時に比較し差別する。

さて、彼女の姿を見た光は何を思っただろうか。

 

「(化け物か。そういや小学生の時は私の強すぎる力にビビッてそんなことを言ってきた奴が何人もいたっけ。ついに先生までも同じことを言ってきたな。まあ、そんなことはどうでもいいか)」

 

光はそこまで考えてから口の端を吊り上げた。

 

さあ、闘いを続けようぜ!

 

光は狂喜の笑みを浮かべると砂地を蹴って突撃した。

その狂喜っぷりにオシリスは圧倒された。

 

「(何なのこいつ…)」

 

光が一瞬でオシリスの懐に潜り込み『ハルバード』を水平に振る。

オシリスはバックステップでそれを躱す。

 

「ハァッ!」

 

オシリスは右手の包帯を解いて光に向けて伸ばす。

伸ばした包帯が光の左手首に巻き付く。

 

「おいおい。この程度で捕まえたつもり…っ!」

 

光が右足を踏み込んだその瞬間、急に脱力したように左膝をついた。

 

「何だ…力が入らねぇ…」

 

立ち上がろうとするが体に上手く力が入らず立ち上がることが出来ない。

 

「これは…『エナジードレイン』か!」

 

『エナジードレイン』。

対象に直接又は間接的に干渉してオーラを吸収する術。

以前、『剣舞祭』で黒刀が真冬に口づけすることによって発動させていたがオシリスは包帯を通して対象のオーラを吸収しているようだ。

 

光の右手から『ハルバード』が抜け落ちる。

 

「くそ…」

 

光は舌打ちする。

 

「このまま吸収していけば後は時間の問題だけど…その必要も無い!」

 

オシリスは左手から霊力弾を連射する。

反撃どころか躱す余裕も無い光に次々と直撃して爆発する。

 

「ぐっ!」

 

光は痛みで呻き声を出す。

 

「アハハ!どう?抵抗することも出来ずに一方的に攻撃される気分は!」

 

オシリスは楽しそうに、そして狂喜的に笑う。

息をつく暇もなく霊力弾を連射する。

光は無抵抗のまま霊力弾を受ける。

 

観客席からオシリスに対して『化け物!』と罵声が響き続けるが彼女は耳に入っていないのか霊力弾を連射し続ける。

 

「ほら!そのままぶっ倒れちゃいなさい!」

 

オシリスは興奮した口調で言い放つ。

霊力をかなり消費して疲弊した彼女は霊力弾の連射を止める。

爆発の煙の中から光が姿を現す。

光の左手首には相変わらずオシリスの包帯が巻き付けられている。

全身はボロボロ。

元々、軽装備であった為ダメージも大きい。

表情は俯いている為、見えない。

 

「抵抗しても無駄よ!あなたはここで負けるのよ!」

 

「…確かにそうかもな」

 

俯いていた光の顔が徐々に上がっていく。

オーラを吸収され続けている状態にも関わらず膝に手をついてゆっくりと立ち上がる。

 

「バカな!もうお前のオーラはガス欠寸前の筈。なのに何故!」

 

想定外の状況にオシリスが叫ぶ。

光の顔が徐々に上がる。

 

「ここで負けるとしても…」

 

光は…

 

「とりあえず…一発ぶち込んでやるよ!

 

笑っていた。

 

その時、オシリスは見た。

不敵に笑う光の背後にいる巨大な何かを。

それは…

 

「鬼…」

 

オシリスは目を見開いてそう呟いた。

不敵に笑う光の背後にはまるで化身のような全長10mの赤い鬼がいた。

それは彼女の気力で具現化されたものでユラユラと揺らめいて半実体のようになっている。

それを見たオシリスはこう口にした。

 

「化け物…」

 

次の瞬間。

オシリスの体が引っ張られる。

光が左手首に巻き付いている包帯を左手で掴んで引っ張っていた。

 

「こいつ、どこにこんな力が!」

 

ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

光が魔物のような雄叫びを上げながら包帯ごとオシリスを引っ張る。

同時に右手の拳を握り締める。

連動するように鬼の化身も拳を握り締める。

光と鬼の化身の動きは完全にシンクロしていた。

光が左足を踏み込んで左手を思いっ切り引いて包帯を引き寄せる。

オーラを吸収されているとは思えない程の凄まじいパワーにオシリスの足が砂地から浮き高速で引っ張られた。

 

「くっ…ああああああああ!」

 

オシリスは悲鳴を上げる。

光と鬼の化身は右手の拳を思いっ切り振りかぶる。

 

ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

そして、光がもう一度雄叫びを上げて拳を突き出した。

連動して鬼の化身が拳を突き出してオシリスに叩き込んだ。

その衝撃は生身でトラックに衝突した時と同じくらいだ。

 

「ぐはっ!」

 

オシリスは吹っ飛ばされて砂地を転がる。

今の一撃で力を使い果たした光はそのままうつ伏せに倒れた。

オシリスはというと…

 

「ぐっ…はぁ…はぁ…」

 

大ダメージを受けたものの何とか砂地に手をついて膝立ちで耐えている。

 

《1…2…3…4…5…6…7…8…9…10.勝者 オシリス・レッドリー》

 

「はぁ…はぁ…勝った…」

 

オシリスは肩で息をしながらそう呟いて立ち上がる。

ダメージがまだ残っている為、少々ふらつく。

 

会場には拍手も歓声も無かった。

『化け物』と罵っていたオシリスに今さら喝采を浴びせる者がいないのも確かだがそれ以上にあの鬼の化身を具現化した光にも驚きと恐怖で言葉を失っていた。

口に出さないが皆こう思ってしまう。

あいつも『化け物』なのか…と。

しかし、そんな中で1つの拍手が聞こえた。

 

「ナイスガッツ!」

 

拍手をしていたのはイギリス代表チャーリー・ベルモットだった。

その拍手に影響されたのか恐らくやむなしであろうが周囲の人間も拍手する。

乾いた拍手ではあるが。

 

気絶した光は医療班によって医務室に搬送された。

オシリスは包帯を巻き直しながらフィールドを去った。




ED9 鋼の錬金術師 扉の向こうへ

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