東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP9 ハイキュー3期 ヒカリアレ


師弟コンビ

 ニューヨーク時間午前10時55分 日本代表控室。

 

「光先輩…」

 

丸山が心配そうな声を上げる。

 

「大丈夫。光は殺したって死なないような女ですから」

 

そんな丸山の肩に真冬が手を置いて慰める。

 

「真冬先輩…はい。私、光先輩を信じます!」

 

丸山がそう返すと、にとりが両手をパンと叩く。

 

「さあ、切り替えよう。映姫と妖夢、頼むぞ」

 

1勝2敗という状況に皆が押し潰されないように指示を出す。

 

「「はい!」」

 

師弟コンビが声を揃える。

 

「負けんなよ姫姉」

 

黒刀がエールを送ると、映姫が振り返る。

 

「お姉ちゃんに任せなさい!」

 

自信満々の笑顔でそう言い切った。

 

 

 

 

 

 

 スウェーデン時間午後4時55分 丘の上の四季家。

 

「桜さん、そろそろ娘さんの試合が始まりますよ」

 

「あら、そうだったわね。幽香さん、紅茶を淹れてもらえるかしら?」

 

「はい」

 

幽香がキッチンに向かう。

桜はソファに腰掛けてモニターウインドウを展開する。

モニターにはシングルス2という折り返しを越えたので六道仁vsストゥム・ルー、

博麗霊夢&霧雨魔理沙vsスクス・ハル&セト・マソト、五位堂光vsオシリス・レッドリーのリプレイがダイジェストで流れていた。

 

「はい。桜さん」

 

幽香がテーブルにティーカップをそっと置く。

 

「ありがとう」

 

桜が柔らかな笑顔でお礼を言う。

 

「どういたしまして」

 

幽香はそう返してソファに腰掛ける。

 

「私、桜さんの娘さん…映姫さんには一度しか会っていませんし話したこともありませんけど映姫さんって強いんですか?」

 

幽香がリプレイ映像を眺めながら桜に訊く。

 

「強いわよ」

 

桜は即答した。

 

「それはどれくらい?」

 

「黒刀が一度も勝てないくらい」

 

「へぇ………え?」

 

幽香は相槌を打った後、呆気に取られた顔をする。

 

「黒刀にはね…越えたい目標が3人いるの。1人は大和さん。まあ、父親だから息子が越えたいと思うのは自然ね。似た者同士だし。もう1人は黒刀と映姫の師匠の神子さん。これも師弟の関係なら越えたいと思うのは不思議じゃない。そして、最後の1人が映姫。黒刀が一番越えたいと思っている目標。小さい頃からお互いに競い合ってきて一度も勝てていないからこそ諦めないで頑張って勝とうとしているの」

 

桜は懐かしむような顔をして語った。

 

「桜さんは不安じゃないんですか?母親として」

 

「母親に見守ることしか出来ないから」

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午前10時58分。

オシリスはフラフラの状態でゲートまで歩いたがそこで壁に背を預けて膝を伸ばし座り込んでしまう。

 

「まだダメージが抜けない。あんな『化け物』がいるなんて聞いてないわよ…」

 

愚痴を呟いていると、ゲート前の通路から足音が2つ聞こえてくる。

目を凝らすと、1人はアヌビスの側近中の側近で身長2mの長身のヤハラ・イドだ。

 

「ヤハラさん…ぐっ!」

 

オシリスは思わず立ち上がろうとして痛みで呻き声を出す。

 

「無理に動かなくていい。大人しくしていろ」

 

ヤハラが声で制する。

オシリスは再び座り直すと顔を俯かせる。

 

「アヌビス様は何と?」

 

「『なんとも無様ではあったがまあ勝利すれば問題はない』とおっしゃった後、『とどめを刺せ』と私達におっしゃった」

 

表情1つ変えないヤハラの答えにオシリスは自分の無様な試合がアヌビスを落胆させてしまったことを思い知った。

 

「そうですか…後はお願いします…」

 

「ええ。アヌビス様に勝利をお届けします」

 

ヤハラがそう返した後、もう1人がローブを脱ぎ捨てる。

ローブを脱ぎ捨てたのは男だった。

しかし、ただの男ではない。

彼の名前はアアル・ムル。

肌には鱗があり、頬にはエラがあり、背中には背ビレがあり、歯は尖っていて、目は細め…つまり彼は人間ではない。

魚人だ。

 

「まあ、安心して下さいよ。オシリスさんの仇は俺が取りますから!」

 

「アアル、オシリスは敗北していない。仇というのは語弊がある」

 

ヤハラが指摘する。

「あ~すみません。それじゃサッと勝ってきますか~」

 

アアルは頭を掻いて軽口を叩きながらフィールドに入場していく。

魚人の彼が入場したことで会場がザワついた。

 

「ウィアアア!」

 

アアルは気にしないどころか雄叫びを上げた。

周囲の反応に流されない男のようだ。

 

「では行ってくる。動けるようになったら控室に戻れ」

 

ヤハラは座り込むオシリスを見下ろして命令する。

 

「はい…」

 

オシリスが返事してからヤハラはフィールドに入場した。

入場したヤハラを見た観客はそれなりに盛り上がる。

 

「(アヌビス様の前で無様な姿は見せられん。気を引き締めていかなければ)」

 

ヤハラはそう決意して一層引き締まった表情になる。

 

 

 

 

 

 一方。

妖夢と映姫はゲート前の通路を移動中。

 

「妖夢、どんな相手であろうと油断してはいけません。一瞬の油断が敗因になることもあるのですから」

 

映姫が人差し指を立てながら忠告する。

 

「はい師匠!」

 

妖夢は胸の前で両手をグッと握った。

 

「よろしい。それではお互いに力を合わせて黒刀に繋ぎましょう」

 

映姫が微笑む。

 

「はい!」

 

妖夢が笑顔で応える。

 

「では行きますよ。妖夢」

 

「はい!」

 

2人は声を掛け合ってからフィールドに入場した。

大きな歓声が会場を包み込む。

妖夢もさすがにこの空気には慣れたようで前に視線を向けている。

その時、巨体が目の前を遮った。

目線を上げると身長2mのヤハラが立っていた。

 

「君達が私の対戦相手ですか?」

 

「みゃああ!!!」

 

妖夢は急に巨体の人間が現れたことで驚き高速バックステップで距離を取った。

 

「ああ、すまない。驚かせるつもりはなかった」

 

ヤハラが弁解する。

 

「びっくりしました。師匠の言う通り油断してました…」

 

妖夢はアワアワした顔で言った。

 

「そういう意味で言った訳じゃないんですけれど…」

 

映姫が呆れ顔で呟く。

 

ヤハラは映姫に視線を移すと向かい合う。

映姫もヤハラに物怖じすることなく見上げる。

映姫の身長は145㎝、ヤハラの身長は2m。

その差は55㎝ある。

 

「君達はここで敗退する。痛い思いをしたくなければ降伏してもらいたい」

 

ヤハラがそう忠告する。

 

「忠告ありがとうございます。ですが丁重にお断りさせてもらいます」

 

映姫が丁寧に拒否する。

 

「後悔しても知りませんよ」

 

「そちらこそ」

 

冷静に言葉を交わしている2人だがその視線はバチバチと火花を散らせている。

その時。

 

「ヤハラさん、もういいでしょう。そいつらも俺達もここに闘いに来ているんです。今さら降伏する訳ないですよ」

 

アアルが割って入った。

 

「あ、お魚さん」

 

妖夢は生まれて初めて出会った魚人を見てキョトンとした顔で言った。

 

「その表現やめろ!一気にショボく見えてくるだろうが!」

 

アアルがすかさずツッコんだ。

 

「すみません。うちの後輩が無礼を」

 

「いえ。こちらこそすまない」

 

映姫が謝り、ヤハラがそう返すとそれぞれ踵を返して距離を取る。

ヤハラはツッコむアアルを宥めて戦闘態勢を取る。

映姫は影で剣を造形して右手で握り締める。

妖夢も鞘から2本の剣を抜いて構える。

 

 

 

 

 

 観客席に座っているイギリス代表レオ・アルハートは腕組みしてフィールドで構えている妖夢を見下ろす。

 

「魂魄妖夢…」

 

その名を呟く。

そんなレオの顔をマリーが横から覗き込む。

 

「気になるのですか?お兄様」

 

「フッ。いや…彼女にもはや興味は無い。寧ろ気になるのは…」

 

視線を妖夢の隣で四季流の構えを取っている映姫に移すレオ。

 

「黒刀君の姉である彼女の方だ。黒刀君があれだけ強いのであれば彼女も相当の実力者だおる」

 

レオの言葉にリーナが後ろの席から身を乗り出す。

 

「エイキはとっても強いデス!多分、クロトはまだ勝ってないデス!」

 

「へぇ。それはますます興味が沸いてくるよ」

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午前11時。

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

「まずはこっちからいくぜ!」

 

アアルが水の刃を造形し両手に纏わせて砂地を蹴る。

 

「二刀流⁉」

 

妖夢が驚く。

 

「はあっ!」

 

その間にアアルが斬りかかる。

妖夢は横に跳ぼうとするが砂に足を取られて上手く動けずアアルの水刃と斬り結び鍔迫り合い状態となる。

 

「くっ!」

 

「どうやら砂漠に慣れていないようだな。それもそうか!お前らの国に砂漠などないのだからな!」

 

「きゃあっ!」

 

妖夢は吹っ飛ばされて砂地を転がる。

 

「休んでいる暇はねぇぞ!」

 

アアルは跳び上がって上から飛び掛かり水刃を突き刺そうとする。

 

「っ!」

 

妖夢は横に転がって避けた後に立ち上がる。

妖夢がいた場所に水刃が突き刺さる。

アアルは水刃を引き抜いて妖夢に連続攻撃を仕掛ける。

慣れない砂地に苦戦している妖夢は躱すだけで精一杯だ。

 

 

 

 

 

 一方。

映姫とヤハラはというと…

 

「四季流剣術 壱の段 一騎当千!」

 

映姫が斬り落としているのは8つの火の玉だった。

 

「『ファイアボール』…」

 

映姫が呟く。

 

「よく知っていますね。そう。今のは火属性霊術『ファイアボール』。そして、私は火属性を得意とする霊術師です」

 

ヤハラが両手を左右に広げると、ボッと火の玉が作り出され彼の周囲に浮遊する。

先程の数は8つだったが今度は20個。

 

「凌げるか?」

 

ヤハラは『ファイアボール』を一斉に放つ。

映姫はさっきと同じように『四季流剣術 壱の段 一騎当千』で斬り落としていく。

だが、10個目を斬り落としたところでそのすぐ後ろにもう1個の火の玉があった。

映姫はたった今、火の玉を斬り落とした直後。

 

「(『ブラインド』…)」

 

『ブラインド』。

実戦では銃弾の後に銃弾を隠す射撃法。

影の剣を振り切った映姫は通常この状態から対処することが出来ない。

通常ならば。

 

映姫は手首を捻って逆方向に影の剣を振って火の玉を斬り落とす。

そして、火の玉20個全てを斬り落とした。

 

「見事。しかし、背中がガラ空きです」

 

その声は映姫の背後から聞こえた。

火の玉を放った後に映姫の背後に回り込んだようだ。

 

「霊術師だからといって接近戦が出来ない訳ではない!」

 

ヤハラが右手の拳を振り下ろす。

衝撃で砂が舞い上がる。

 

「師匠!」

 

妖夢が叫ぶ。

その時。

 

「見た目に反してよく喋りますね。あなた」

 

声が響いた。

 

「!」

 

ヤハラは背後に気配を感じて振り返った。

そこには駆けの剣を振り下ろしてくる映姫がいた。

ヤハラが拳を振り下ろしたあの瞬間、映姫は『抜き足』でヤハラの背後に移動していたのだ。

映姫の影の剣がヤハラの顔に直撃する寸前で火の玉が盾に変形して防いだ・・

 

「ファイアシールド!」

 

火の盾と影の剣がぶつかり合って衝撃波が生まれる。

映姫が押し返されて弾かれる。

空中に浮いた映姫にヤハラは火の盾を火の玉に変形させて放つ。

空中ならば逃げ場はないと思ったのだろう。

だが、映姫は空中で『ロージャンプ』と『抜き足』を同時に使って回避した。

ヤハラからすれば空中で突然、映姫が消えたと思っただろう。

 

「ガラ空きなのはあなたのようですね」

 

映姫の声が響く。

ヤハラは振り返ってすぐに火の玉を放とうとする。

 

「四季流剣術 弐の段 一閃!」

 

映姫の声と共にヤハラの体に斬撃が迸る。

 

「ぐっ!」

 

ヤハラは呻き声を上げると即座にバックステップで距離を取る。

 

「強敵」

 

ヤハラは一言呟いた。

 

 

 

 

 

 一方。

妖夢はようやく砂地の闘いの足運びのコツを掴んできたようでアアルの水刃を上手くいなしている。

 

「はあっ!」

 

「くっ!こいつ、意外と飲み込みが早い!だが、所詮付け焼刃!」

 

アアルはバックステップで距離を取ってから砂地を蹴って『クロスステップ』で妖夢の背後に移動して水刃を振り下ろす。

妖夢は『クロスステップ』で水刃を回避。

さらに、『ハイジャンプ』でアアルの頭上に跳び上がって上から2本の剣を振り下ろす。

アアルは前転してそれを回避。

 

「見せてやるよ!砂漠の闘い方をな!」

 

アアルが右手の水刃だけを解いて砂地に右手を叩きつけた。

すると、そこに術式が浮かび上がった。

 

「あれは召喚術式⁉」

 

控室の早苗が術式を見て驚く。

 

術式の構造に詳しくない妖夢には召喚術式どころか何の術式なのかさえ分からない。

召喚術式とは自身が契約した召喚獣や式神を呼び出す術式。

しかし、本来は生物だけである必要はない。

術式の中から現れたのは召喚獣や式神ではなくスケートボードのような物体だった。

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

 

「あれは…『サンドボード』⁉」

 

雪村が現れた物体の名称を口にする。

 

「『サンドボード』?何だそれ?」

 

魔理沙が当然の疑問を口にする。

 

「『サンドボード』とはその名の通り砂漠地帯で使用される乗り物。スケートボードやスノーボードの砂漠限定版のもので中東や北アフリカなどではレジャースポーツになっているくらい好まれて使用されています。スケートボードやスノーボードは斜面を利用して滑りますが『サンドボード』はボードに推進エンジンが搭載されていてその動力で稼働しています」

 

雪村が一から丁寧に説明してくれた。

ちなみにロシア連邦では派生型で『アンチグラビティボード』が開発されているが高価な為、手に入れることがかなり困難である。

 

 

 

 

 

 アアルは『サンドボード』に乗ると起動して砂地を滑ると右手に水刃を再度纏わせて妖夢に突撃する。

妖夢が横に跳んだ…がアアルが『サンドボード』で急速方向転換して斬りかかる。

妖夢は空中で防御態勢を取る。

何とか防御したものの相手の勢いが強すぎて砂地を転がる。

 

「ぐっ!」

 

「どうした?こんなものか!お前の力は!」

 

アアルが妖夢は挑発する。

妖夢は立ち上がって腰を落とし構える。

 

「いいね!そう来なくっちゃ!」

 

アアルは加速して真正面から妖夢に突撃する。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

妖夢はゆっくり深呼吸して2本の剣を強く握り締める。

右足を強く踏み込んでから一気に砂地を蹴って前進する。

2人の距離が徐々に縮まる。

 

「くらえ!」

 

アアルが水刃を振る。

 

「妄執剣 修羅の血 弐式!」

 

妖夢も剣を交差して振り抜く。

2人の剣がぶつかり合った後、互いに通り過ぎる。

すると、アアルの2本の水刃が真っ二つに折れた。

 

「何っ!」

 

アアルが驚く。

 

「私の剣は…軽くない!」

 

妖夢は振り返って言い放った。




ED9 鋼の錬金術師 扉の向こうへ

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