東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP9 ハイキュー3期 ヒカリアレ


悪魔殺し

 ニューヨーク時間午前11時。

黒刀はレオに見送られてイギリス代表宿泊ホテルを後にした。

 

「あと1時間で昼か。そろそろホテルに戻るか…」

 

黒刀は散歩を終わりにして日本代表宿泊ホテルに向かった。

 

 

 

 

 

 30分後。

黒刀を待っていたのは不機嫌な顔をした映姫だった。

 

「どうしたの姫姉?」

 

「別に…何でもありません」

 

映姫は頬を膨らましてそっぽを向く。

映姫は怒るに怒れないのだ。

何も言わずに出かけて行ったことに腹を立てているが、しっかり書き置きしていたので何を言えずこうして態度で表すしかないのだ。

それで黒刀が気づくのかと思いきや…

 

「(ほっぺた膨らましてる姫姉…可愛いな~♪)」

 

最強鈍感男は全く気づいていなかった。

映姫の頭を撫でようか悩んでいたその時。

 

「くろにい~!」

 

ルーミアが駆け寄って抱きついてきた。

 

「ルーミア!」

 

黒刀はルーミアのハグを受け止める。

 

「「ぷにぷに~♪」」

 

2人はお互いに頬をスリスリと合わせて仲良く笑っている。

 

「それじゃちょっと早いけど昼飯にするか」

 

思う存分ルーミアとの抱擁を楽しんだ黒刀はルーミアを抱きかかえたままホテルの食堂に向かった。

 

「うん♪」

 

ルーミアは元気よく笑顔で応えた。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後0時30分。

ランチを終えた黒刀、映姫、ルーミアは部屋で大人しく別のチームの試合の録画映像を観ていた。

映姫は自分のベッドに腰掛けて、黒刀は自分のベッドに腰掛けて股の間にルーミアを座らせてお腹を抱き寄せている。

3人が観ているのは昨日のロシア代表とオーストラリア代表の試合。

 

「レティも実力を上げてきたな。今日の相手は…」

 

「妹紅さんですね。炎と氷…相性は良さそうですが…」

 

「属性相性だけで勝てる程、WDCは甘くない」

 

「ええ。それにどんなフィールドになるかによって戦術も変わってくる」

 

「火山か溶岩地帯なら妹紅が圧勝なのにな」

 

「そんな都合良くいく訳ないでしょ」

 

黒刀はルーミアから手を離すとベッドに寝転がる。

 

「まあ、妹紅なら問題ないだろう」

 

ルーミアは体を黒刀に向けるとその胸の上にうつ伏せで寝転がった。

黒刀はルーミアの頭を右手で撫でる。

ルーミアは猫のように喜んで黒刀の胸に頬擦りする。

 

「確かに今の妹紅さん実力は安定感もあるので信頼できますね。どっかの誰かさんと同じで多少危なっかしいところはありますが」

 

映姫は冷静に分析して黒刀にジト目を向ける。

 

「さあ?誰のことかな?」

 

黒刀は目を逸らして白を切った。

 

「黒刀~!」

 

映姫が黒刀のベッドに移動して四つん這いで詰め寄る。

 

「分かった!分かったよ!もう無茶しないから!」

 

黒刀はバッと映姫に振り向いて体を起こして必死に弁解する。

 

「本当ですか~?」

 

映姫は疑いの眼差しを黒刀に向け続ける。

 

「ああ…」

 

黒刀は顔を赤くして目を逸らす。

 

「何故、目を逸らすのですか?やっぱり嘘を吐いてるのではないですか?」

 

映姫はさらに黒刀に詰め寄る。

 

「ちげぇよ」

 

「では何故…」

 

2人がそんな押し問答をしていると、ルーミアが呆れ顔で口を出す。

 

「姫姉、まずは自分の格好を見た方がいいのだ」

 

「へ?」

 

映姫はルーミアに言われて自分の格好を見ると気づいた。

四つん這いで黒刀に迫っているので、黒刀からは映姫の綺麗な鎖骨と慎ましくも肌白い胸元が服の隙間から見えてしまっているのだ。

 

「~~~~~~っ!!!//////」

 

映姫は顔を真っ赤にして自分のベッドに後ろ向きまま超高速で跳び移った。

 

「………」

 

黒刀は何も言わない。

 

「…見ました?」

 

映姫は顔を赤くしながら上目遣いで黒刀に問う。

 

「………」

 

黒刀は顔を背けたまま。

 

「何か言って下さい!」

 

「何を言えってんだよ!」

 

黒刀がようやく映姫に顔を向けて叫んだ。

 

「…まあ…見たというより………見えた」

 

ボソッと呟いた。

映姫は枕を手に取ると顔をうずめた。

そして、誰にも聞こえない声量でこう呟くのだった。

 

「黒刀のエッチ…///」

 

 

 

 

 

 ロシア代表vsオーストラリア代表の試合は結局ロシア代表のストレート勝ちだったのでデータとして確認出来たのは3組までだった。

 

シングルス3 レティ・ホワイトロック

 

ダブルス2 ソロモン・シェバ&シモン・マグヌス

 

シングルス2 ザウル・マーカー

 

以上の3組だ。

その中でもザウル・マーカーはB級魔法師というだけあって、射撃魔法に優れているかなりの実力者だ。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後4時30分。

午後6時の日本vsロシアの試合時間が迫り、日本代表はホテル前のバスに集合している。

ちなみにルーミアは八雲藍に預けて一緒に会場に行っている。

 

「よし揃ったな!全員バスに乗って出発するぞ!」

 

にとりが全員を見渡して声をかけた。

一同は1人ずつバスに乗車する。

バスは発車して会場に向かう。

にとりは最前列で立ち上がって後方に振り返る。

 

「それじゃそのままでいいから聞け。今日のメンバーを改めて発表する。まずシングルス3!藤原妹紅!」

 

「はい!」

 

「ダブルス2!比那名居天子!越山流星!」

 

「「はい!」」

 

「シングルス2!二宮優!」

 

「はい」

 

「ダブルス1!チルノ!白金真冬!」

 

「はい!」「あたいの出番だ!」

 

「そしてシングルス1!四季黒刀!」

 

「はい」

 

「以上だ!皆、勝つぞ!」

 

『はい!』

 

選手達は頼もしい返事を返す。

 

「うむ」

 

にとりは満足げに頷くと自分の席に座った。

 

「天子さん、よろしくお願いします!」

 

「こちらこそよろしく。越山君」

 

「チルノちゃん、一緒に頑張りましょう」

 

「あたいにドーンと任せて!」

 

チルノは自分の胸を拳で叩く。

ダブルスのメンバーはそれぞれ言葉を交わしている。

一方。シングルスは…

 

「相手はレティか。燃えてきたぜ!」

 

「……」

 

「ふわぁ~」

 

妹紅は右手の拳で左手を打つ。

優は窓の外へ視線を向けて頬杖を突いている。

黒刀に至っては緊張感がないのか、欠伸をかいている。

シングルス3人の反応はまさに三者三様。

ちなみに欠伸をかいていた黒刀の頬を映姫が引っ張ったのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後5時。

会場の地下駐車場に到着した黒刀達はバスを降りて1Fの控室に向かう。

その途中の廊下で…

 

「ん?」

 

ロシア代表に遭遇した。

双方は自然と立ち止まり向かい合う。

レーニンJrがこちらに歩いてきた。

日本代表の先頭にいる黒刀の前に立ち止まると右手を差し出した。

 

「いい試合にしよう」

 

「ああ…お互いにな」

 

黒刀は握手に応じた。

その時、2人は感じ取った。

 

「「(やはり()()()の人間か)」」

 

3秒後、2人はゆっくり手を離した。

 

「レティさん、お久しぶりです」

 

黒刀の背中からピョコッと妖夢が出てきて挨拶した。

 

「ヒサシブリ」

 

レティは妖夢の前に出てきて挨拶を返した。

 

『(しゃ、しゃべった!)』

 

日本代表一同はレティが言葉を発したことに驚いた。

 

「レティ」

 

妹紅が前に出てきた。

 

「?」

 

「今日の試合、楽しみにしてるぜ!」

 

妹紅が笑う。

 

「…ワタシモ…タノシミニシテル」

 

レティは真顔で返した。

フィールドの方から歓声が響いてきた。

 

「終わったようだね。それじゃ僕達は失礼するよ」

 

レーニンJrがそう言って黒刀の横を通り過ぎるその時、彼にだけ聞こえる声量で、

 

「君の正体、必ず暴いてみせる」

 

そう言い残して去って行った。

黒刀は表情1つ変えなかった。

ここで動揺を見せれば相手に隙を与えることになるからだ。

 

「何か言われたのか?」

 

にとりが黒刀の傍に寄る。

 

「いや…大したことじゃないです」

 

黒刀の答えに対してにとりはそれ以上聞くことはなかった。

 

「よし。私達も準備するぞ!」

 

『はい!』

 

全員が返事して控室に向かう。

 

「黒刀」

 

にとりが呼び止める。

 

「?」

 

黒刀が立ち止まって振り返る。

 

「話がある。お前と2人で」

 

「後じゃダメですか?」

 

「試合が始まったら監督の私は控室を離れられない」

 

「分かりました。何ですか?」

 

現在、廊下には黒刀とにとりしかいない。

 

「ロシア代表のウルヴァリン・イリイチ・レーニンとザウル・マーカー。彼らは代表選手であると同時に現役の軍人でもある。さっきの彼らの言動からして恐らく…」

 

「俺を探りに来たか?」

 

黒刀がにとりが言おうとしたことを代弁した。

2人きりということもあってか教師と生徒の距離感から相棒の距離感に変わっている。

 

「お前…」

 

「さすがに気づいてるよ」

 

「いつから?」

 

「田中さんがこっちに来た時からかな。この前の撃退戦の後で田中さんが動くということは俺の監視かロシア軍の調査または両方だと考えた」

 

黒刀が推論を口にする。

 

「隠密性に長けてる田中さんに気づくとはお前って奴は…」

 

「どんなに上手く隠れても俺の『覇王の眼』からは逃れられない」

 

「全く。同じ『王』でも『眼』の力はさすがに敵わないな」

 

にとりがやれやれと手を振る。

 

「にとりの『眼』も普通に凄いと思うけどな」

 

「慰めならいらないよ。私の『眼』は使いどころが限られている」

 

「話はそれだけか?」

 

黒刀は話を打ち切ろうとする。

 

「あと1つ。お前の正体を明かすような行動はするな。特に『翼』と()()()()はダメだ。分かったな?」

 

にとりが念を押す。

 

「分かってるよ。それじゃもう行くよ」

 

黒刀は踵を返して控室へ向かう。

にとりは黒刀の背中を見つめながら無言でついていく。

 

「(こいつは無茶をするなと言っても結局無茶をする奴だ。だからせめて私がサポートしてやらないと。…もうあんな思いはごめんだからな)」

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後5時50分 試合時間10分前。

 

「さあ、行くか!」

 

アップを終えた妹紅が気合いを入れて拳をかち合わせる。

その時、炎がボッと出る。

 

「相手はレティです。言うまでもなく氷属性ですが油断は禁物です。彼女が日本を離れてからどれだけ強くなっているのか予想出来ません」

 

雪村が忠告する。

 

「分かってるって!とにかくぶっ飛ばす!」

 

妹紅はダッシュで控室を出てフィールドへ向かった。

 

「本当に分かってんのか?」

 

にとりは心配になった。

 

 

 

 

 

 ロシア代表控室。

 

「…イッテクル」

 

レティがベンチから立ち上がった。

しかし、メンバーの反応は…

 

「ん?ああ。いってらっしゃ~い」

 

ソロモン・シェバが興味薄げにMADの調整をしながら口にしただけ。

シモン・マグヌスは無言。

ミラ・リーンとエレナ・パウロヴナに至っては…

 

「はい。お姉様、あ~ん♪」

 

「あ~ん♪」

 

スイーツを食べさせ合っている。

レーニンJrとザウル・マーカーはモニターウインドウを見つめるばかりでレティに関心がない。

 

「…」

 

レティは少し寂しい気持ちを抱きながらも控室を出てフィールドへ向かった。

 

 

 

 

 

 妹紅がフィールドに入場すると歓声が沸き上がった。

観客の中にはあの熱い激闘を繰り広げたカタール代表のムハンマド戦を観た者も多いのでファンも多い。

妹紅はというと歓声には反応せず夜空に輝く月を見上げていた。

妹紅の目に一瞬、輝夜の顔が浮かんだ。

 

「って何であいつのことなんか思い出すんだよ!」

 

妹紅は顔を振って思考を振り払う。

そうしていると向こう側のゲートからレティが入場してきた。

 

「来たな!」

 

妹紅が笑う。

 

《リアルARシステム起動。ステージ『廃ビル』》

 

フィールドが変化していく。

そのフィールドを観た妹紅は目を見開いた。

30階層の廃れた高層ビルが縦にまるで剣で切り裂かれたかのように真っ二つに割れている。

割れた部分は剥き出しになっていて向かい合っている。

その距離15m。

常人が飛び越えるには厳しい距離。

ただ15階層に連絡通路のように鉄骨が倒されている。

飛行が出来ない選手やジャンプ力がない選手は基本的にここを使うしかない。

これがステージ『廃ビル』である。

妹紅は周囲を見渡す。

オフィスビルをイメージしたものなのだろう。

ボロボロではあるがデスクが乱雑に置かれている。

 

「まるで世紀末だな」

 

そう呟く妹紅。

 

「(ソコクニモコンナトコロアッタ)」

 

レティも思い出に浸っていた。

だが、すぐに目の前の相手に意識を戻す。

2人の視線がぶつかり合う。

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

先に動いたのは妹紅だった。

両足と右手に炎を纏わせてジャンプし向こう側のビルにいるレティに殴りかかる。

 

「鳳凰の鉄拳!」

 

「…ムダ」

 

妹紅の先制攻撃にレティはそう呟くと、氷の壁を展開して妹紅の攻撃を受けた。

ぶつかり合ったことで衝撃波が生まれる。

 

「くっ。かてぇ!」

 

妹紅の右手は氷の壁に弾かれた。

 

「だったら!」

 

弾かれた反動を利用してバク宙してビルの柱を足場に蹴ってもう一度攻撃を仕掛ける。

 

「ナンドヤッテモ…オナジ」

 

レティは再度氷の壁を展開する。

 

「どうかな?鳳凰の炎肘!」

 

妹紅の右腕の肘から炎が噴き出す。

 

「っ!」

 

レティの顔に僅かだが驚きが表れる。

妹紅の右手と氷の壁がぶつかり合う。

結果は先程と真逆だった。

氷の壁が打ち砕かれて、妹紅の拳がレティの顔に迫る。

 

「アイスグランド!」

 

レティがそう詠唱した瞬間、床が凍りつきレティが横に滑って妹紅の拳が空を切る。

 

「なっ!まだだ!」

 

妹紅が着地して方向転換しようしたその時。

 

「と、うわっ!」

 

床が凍りついていたことを忘れていた妹紅が転倒して壁に激突した。

 

「ぐわぁ!」

 

「アイスニードル!」

 

そんな隙をレティが逃す筈もなく氷の棘を放った。

余波として発生した水蒸気の煙で妹紅の姿は見えない。

レティは氷の棘を撃ち終えると妹紅の姿を確認しようと目を凝らす。

水蒸気の煙が晴れるとそこにいたのは壁に背を預けながら座っている無傷の妹紅だった。

 

「ナゼ?」

 

疑問を抱いた後でレティは気づいた。

妹紅が氷の棘を両手で掴み取りさらに口に咥えていることを。

 

「シンジラレナイ…」

 

レティは妹紅に驚愕した。

妹紅は両手で掴んでいる氷の棘を炎で溶かして、口に咥えている氷の棘を噛み砕いて吐き出す。

足に炎を纏わせて立ち上がる。

氷の床から妹紅が足をつけた箇所から溶けていく。

 

「全部燃やし尽くしてやる!」

 

妹紅が床を蹴って駆け出す。

レティは『アイスニードル』で牽制。

妹紅はそれを炎の拳で叩き潰しながら前進。

レティが氷の壁を展開すると妹紅は一瞬だけ周囲を見渡した後、炎を纏った右足の踵を床に叩きつけた。

すると、廃ビルの床が崩れ落ちた。

ここは15階なので14階に落ちることになる。

レティの氷の壁は一方向にしか展開できないので空中では攻撃される方向が増える。

妹紅は落下中に瓦礫を足場にして跳び移りながら側面からレティの頬に炎を纏った拳を叩き込んだ。

 

「ぐっ!」

 

レティは呻き声を上げて14階の壁に叩きつけられる。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後6時15分 日本代表控室。

 

「よっしゃ!重い一発かました!」

 

チルノが拳を突き出して喜ぶ。

 

「確かにいい一発だったがあれじゃ倒れないだろ?」

 

仁がそう口にする。

 

「でもレティってどう見ても接近戦タイプじゃないし意外といっちゃうんじゃない?」

 

楽観的な愛美。

 

「あっ、見て下さい!」

 

大妖精がモニターウインドウを指差した。

 

 

 

 

 

 妹紅の一撃によって吹っ飛ばされたレティがゆっくりと立ち上がる。

その顔を見た妹紅が目を見開いて驚いた。

レティの顔には氷がコーティングされているかのように覆われていた。

妹紅に殴られた箇所だけ氷が剥がれている。

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

 

「『氷の鎧』か…」

 

黒刀が呟いた。

 

「先輩、何ですかそれ?」

 

「それは私が説明するわ」

 

妖夢の問いに真冬が説明を買って出た。

 

「『氷の鎧』というのは全身に氷を纏って壁や盾などの防御が万が一破られた場合の防御魔法です。私もたまに使います」

 

「そ、そんなのヤバ過ぎじゃないですか!」

 

「いいえ。そうとも限りません。まず常に氷を纏っているということはそれだけで魔力を消費します。それに重さもあるので動きが鈍くなります。あと…」

 

「あと?」

 

「冷えるのでお肌に優しくないです」

 

「あ、あはは…」

 

妖夢は苦笑い。

 

「とにかくレティ先輩が『氷の鎧』を使わざるを得ない状況になっていることは確かです」

 

「だとしたら勝てますね!」

 

「(だといいのですが…)」

 

真冬は不安を抱いていた。

 

 

 

 

 

 レティの顔に再び氷が張りつく。

その表情は先程とは別人のように険しい。

 

「ココカラハ…ホンキダス」

 

「燃えてきた!」

 

妹紅はレティに向かって突撃した。

 

「エターナルブリザード!」

 

レティは左手に冷気を集束させると強烈な寒波を放った。

 

「何っ!」

 

妹紅は強烈な寒波に踏ん張りが効かず吹き飛ばされる。

 

「くそ!」

 

炎を纏って前に進もうとするがその炎が『エターナルブリザード』によってかき消される。

 

「炎が……今のままじゃダメってことか」

 

妹紅は何とか匍匐前進で移動する。

 

「アナタハワタシニハカテナイ…アキラメテ」

 

「ハッ!私は諦めねぇ!どんなに倒れても立ち上がる!それが不死鳥の闘いだ!」

 

「ナラ…タチアガレナイヨウニスルマデ」

 

妹紅はレティとそんな押問答をしながら逆転のヒントを見つけようと周囲に視線を泳がせる。

 

「!…あれは…」

 

妹紅の視界に入ったのは配電盤だった。

 

「(動いては…いないようだな。ってことはどこかにブレーカーだ…)」

 

その時、吹雪が止んだ。

『エターナルブリザード』は長時間発動することが出来ず再発動には時間がかかるようだ。

 

「今のうちに!」

 

妹紅は14階オフィスから廊下へ飛び出してどこかへ走り出した。

 

「ニガサナイ……スノーマン!」

 

レティは魔法で雪だるまの巨人を作り出すとその肩に乗った。

雪だるまの巨人は剥き出しになっているビルの壁をクライミングするかのようによじ登った。

その光景はまるでハリウッドのモンスター映画のようだった。

 

 

 

 

 

 一方。

妹紅は廃ビルの廊下を駆け回っていた。

 

「くそ…ブレーカーってどこにあんだよ!」

 

ブレーカーが見つからずイライラしていた妹紅は途中で壁に貼られているビルの内部案内図を見つけて立ち止まった。

 

「電気整備室…これか!」

 

妹紅は目的地に向かって再び走り出した。

 

 

 

 

 

 一方。

レティは妹紅が別の階に行っていると推測して『スノーマン』に乗って移動しているが妹紅はまだ14階にいるので見つかる筈もない。

剥き出しの壁伝いに降りて14階に辿り着いたその時。

14階のオフィスの照明が突然点灯した。

 

「くっ!」

 

突然明かりが点いたことによる眩しさでレティは思わず腕で目を覆う。

次に目にしたのは右手の拳に炎を纏わせて迫る妹紅だった。

 

「鳳凰の鉄拳!」

 

妹紅の炎の拳が『スノーマン』の腹に直撃して妹紅の体ごと貫通した。

妹紅は反対側のビルのオフィスの床に着地する。

レティも崩れていく『スノーマン』から飛び降りてオフィスの床に着地する。

すかさず左手に冷気を集束させる。

 

「エターナルブリザード!」

 

レティが強烈な寒波を放ったその時。

彼女の背後からボーンと爆発音が響いて爆風が発生した。

レティは危険を察知して『エターナルブリザード』を中断し背後を振り返って氷の壁を展開して爆風を遮る。

 

「知ってるか?」

 

爆風が止んだところで声が聞こえた。

レティが正面に振り返ると、妹紅が反対側のビルのオフィスの剥き出しの壁ギリギリの位置に立っていた。

 

「配電盤ってのは強い冷気に触れると爆発する。特に稼働中はな。だから強烈な寒波が来る前にブレーカーの電源を落としておくってどっかのワガママ姫が言ってたぜ。ほら、配電盤から火が出てるだろ?」

 

「ソレガナニ?」

 

レティが目を細める。

妹紅がニヤリと笑った後、体をのけ反らせて大きく息を吸い込み始めた。

次の瞬間、レティは驚愕した。

配電盤から出ている火が妹紅の方へ流れていき妹紅の口の中に吸い込まれていった。

いや妹紅は火を…

 

「…タベテル…」

 

レティはあり得ない生物を見るかのような目をしていた。

これには会場の観客や他の選手も驚いている。

火を食べ切った妹紅は体を起こしてこう言い放った。

 

「食ったら力が湧いてきた!」

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後6時25分 日本代表控室。

 

「嘘でしょ…」

 

花蓮は驚愕のあまり手で口元を押さえる。

 

「どういう腹してんだあいつ!」

 

チルノも驚いて叫んでいた。

その中で阿求がこう口にした。

 

「本で読んだことがあります。妹紅さんのように滅悪魔法や滅悪霊術を扱う者を人は『デビルスレイヤー』と呼ぶと」

 

「『デビルスレイヤー』…悪魔殺しか」

 

優が呟いた。

 

「そして、自身の属性と同じ物質を体内に取り込むことが出来る」

 

阿求はそう補足した。

 

 

 

 

 

 レティは非現実的な光景に呆けていたがハッと我に返って左手に冷気を集束させた。

 

「モウサッキノヨウニバクハツハシナイ…コレデキメル!エターナルブリザード!」

 

レティは左手を正面に突き出して強烈な寒波を放った。

妹紅は胸を大きく張って口の中に炎を溜め込む。

 

「鳳凰の咆哮!」

 

妹紅は口から炎を吐き出した。

2つの廃ビルの中間で『エターナルブリザード』と『鳳凰の咆哮』がぶつかり合う。

 

「くっ!」

 

最初は互角に見えたが徐々にレティが押され始め、左手首を右手で掴んで何とか耐えようとしている。

だが、炎の勢いは止まることなく氷の寒波が焼き尽くされレティに不死鳥の炎が浴びせられる。

『氷の鎧』も一瞬で剥がされていく。

 

「ウ、ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!」

 

レティの悲鳴が響き渡る。

妹紅が炎を吐き尽くして、レティが膝から崩れ落ちて気を失った。

 

《1…2…3…4…5…6…7…8…9…10.勝者 藤原妹紅》

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

妹紅の勝利に日本代表一同は歓喜していた。

 

「なっ。妹紅は安定してるって言ったろ」

 

黒刀が隣の映姫に声をかける。

 

「危なっかしいところもあると私は言いましたが?」

 

「勝てばいいだろ?」

 

黒刀が笑みで返す。

 

「はぁ…まあ今は目の前の勝利を喜びましょう」

 

映姫はため息をついてから微笑んだ。

 

 

 

 

 

 ロシア代表控室。

 

「負けたか。にしてもあの藤原妹紅という選手の闘い方には少々驚いたな」

 

ザウルがモニターウインドウを見ながら隣のレーニンJrに声をかけた。

 

「彼女のような人間を西欧ではこう呼ぶらしい。…火竜(サラマンダー)

 

彼は澄まし顔でそう口にした。

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

試合に勝利した廃ビル1Fの廊下に立っていた。

入場してきたゲートには非常口の誘導灯と扉があった。

 

「凝った仕掛けだな~」

 

妹紅はジト目で独り言を口にしながら扉を開けてフィールドを退場した。

すると、次の試合を控えている天子と流星が立っていた。

 

「流石ね」

 

「やるじゃねぇか」

 

2人は妹紅にそう声をかけた。

 

「ま、まあな」

 

妹紅は強がる。

 

「でも苦戦してたのも事実よね?」

 

天子が微笑んで妹紅をからかった。

 

「うるせぇ!とっとと行きやがれ!」

 

妹紅は頬を赤くして入場を促した。

 

「はいはい」

 

天子は手を振ってゲートの扉を開けてフィールドに入場した。

 

「よっしゃ俺もいくぜ!」

 

流星もその後に続くのだった。




ED9 鋼の錬金術師 扉の向こうへ

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