OP4 学戦都市アスタリスク2期 The Asterisk War
7月3日。
妖夢達は土曜日にも関わらず、私服で神光学園の正門前に集合していた。
「黒刀のやつ、なんなんだよ…土曜日に全員、正門前に集合って!」
魔理沙が文句を言う。
「しかも本人来てないし。」
霊夢も文句をつぶやく。
1台のリムジンが見えてきた。
「へえ、すごい金持ちがいたもんだな~!」
魔理沙が声を上げる。
そのリムジンは妖夢達の前に止まり、
「よう、全員いるな?」
出てきたのは黒刀だった。
「「「お前かよ!」」」
霊夢、魔理沙、チルノがツッコむ。
「どうして私達を呼んだんですか?」
妖夢が問う。
「移動しながら説明する。乗れ。」
妖夢達がリムジンに乗り、車が走り出す。
「お前ら、期末試験の勉強は進んでるか?」
黒刀の問いに妖夢、魔理沙、チルノが一瞬で青ざめた顔になる。
「やっぱりか…。そう考えてうちでやろうと思っている。」
「え、でも黒刀先輩の家は…。」
大妖精が口を挟む。
あのアパートでは全員で勉強などできないだろう。
「何を言っている?本邸の方に決まっているだろう。」
「「「「「え、ええええええええええええええええええええ!」」」」」
30分後。
「なあ、まだ着かないのか?」
魔理沙がぼやく。
「もう見えてるけど。」
黒刀は答える。
「見えてるって右側には住宅街、左側には長い塀が続いて…続いて…
ま、まさか!この塀って!」
魔理沙が気づく。
「四季家の本邸はこの塀の中全てが敷地内だ。」
黒刀はサラッと口にする。
「え、嘘…塀の端が見えないんだけど…。」
妖夢達は四季家のスケールの大きさに驚愕するのだった。
妖夢達はようやく四季家本邸の入り口の扉の前までたどり着いた。
「きっとベルを鳴らしたら使用人が出てくるんですよ!」
大妖精が興奮気味に言った。
「ほら、入れよ。」
黒刀が扉を開けた。
「「「「「(普通だった。)」」」」」
妖夢達は少しだけがっかりした。
「あの、ご両親は?」
妖夢が質問する。
「父さんは仕事、母さんは今、海外に暮らしてるよ。」
「海外ってどこ?」
チルノがきく。
「スウェーデン。」
「遠っ!」
「ここが玄関だ。」
「先輩、これって何ですか?」
妖夢は表札の上に何か刻んであるのを見つけた。
「四季家の家紋だ。」
「へえ、桜なんですね。」
ちなみに現在の日本の国旗はただの日の丸ではなく、
日の丸の周りの白い部分に桜の花びらが舞っているように描かれている。
「そんなことより客間に案内するぞ。」
黒刀は妖夢達の背中を押す。
客間の横影軸には『疾風迅雷』と書いてあった。
5人は思わずきょろきょろしてしまう。
「珍しいものなんてないぞ。」
お茶を運んできた黒刀が言った。
「私は魔理沙が盗まないか見張ってただけよ!」
霊夢が口を開く。
「しねえよ!っていうかできたとしても後が怖いわ!」
「やっぱりやる気だったんじゃない!」
「大丈夫だよ。結界張ってあるから。」
黒刀はそう言いながらお茶を配っていく。
「あ、私が。」
妖夢が手伝おうとする。
「いいよ。客は妖夢達なんだから。」
黒刀はやんわりと断る。
「そういえばここって使用人はいないんですか?」
大妖精が周りを見渡しながら聞く。
「ああ。」
「へえ、意外。金持ちは皆使用人がいるのかと思った。」
霊夢が意外そうな顔をする。
すると、チルノが考え込む。
「あれ?じゃあ運転していたのは…まさか…幽霊!」
「オートだよ!ってそろそろ勉強を始めないとな。」
黒刀がツッコんだ後、仕切り直す。
「え~!お泊り会じゃないの?」
チルノが頬を膨らます。
「泊まってもいいけど勉強が先。」
「いいんだ…。」
霊夢がつぶやく。
「期末試験は中間試験と違って赤点とると補習がある。」
「補習?」
「そう。それも夏期講習。つまり…。」
「まさか!」
「察しが良いな霊夢。夏期講習はちょうど剣舞祭本選と重なる。
ということは…。」
「赤点をとると剣舞祭に出られなくなる。」
「その通りだ魔理沙。」
黒刀は笑顔で応える。
「「「(ど、どうしよう…。)」」」
成績の悪い妖夢、魔理沙、チルノは焦る。
「まあ、そのためにこうやって集まってもらっているんだけどな。
今回はマンツーマンじゃなくて分からなかったら俺か他の人に聞くこと。」
大妖精がそこで挙手をする。
「あの、黒刀先輩は…。」
「うん?俺が満点以外を取ると思うか?」
黒刀はニッコリと笑顔で応えた。
「「「「「(ですよね~!)」」」」」
「チルノ、お前には理科を徹底的に教えていく。」
「え~。」
黒刀の決定にチルノが面倒くさそうな顔をする。
「文句言うな。氷使いが物質理論を熟知してなくてどうする?」
「関係があるんですか?」
チルノの隣に座る大妖精が口を挟む。
「氷使いってのは本来は固体、液体、気体と自在に変化させていかないといけない。
それによって戦略の幅が変わるからな。
こいつの場合、固体はともかくとして、水蒸気もできているが液体だけには変化できていない。」
黒刀はチルノの頭をポンポンと手を置きながら説明した。
「う~、分かったよ。」
実際、黒刀に個人戦で負けているチルノは渋々、納得した。
「よし、いい子だ。」
黒刀は笑顔でチルノの頭を撫でてから手を離した。
「先輩、ここの…。」
妖夢が分からないところを聞こうとする。
「ああ、温暖化阻止法か。これは温室効果ガス吸収装置が発明されたからだ。
これにより空気中の散っている温室効果ガスを吸収し、酸素や水素に変化させている。」
妖夢の質問に黒刀は的確に答える。
「でも酸素や水素も増え過ぎたら…。」
「そうならないように各国の主要都市に余分なエネルギーを回しているんだ。
上昇した気温は超大型氷冷弾を軌道上から撃ち込んで地球を一時的に低温状態にする。
海水面上昇は海水を水使いのエネルギー変換に使用して、降水もまた然り。
他にもあるけどまあこのくらいにしておこう。」
「なんか…色々と無茶苦茶ですね。」
妖夢が苦笑いする。
「挑戦無き者に未来はない。」
「?」
黒刀の言葉に妖夢は首を傾げる。
「温暖化阻止法を考案した化学者が残した言葉だよ。ちなみににとり先生の祖父だ。」
「え~!」
妖夢が驚く。
「あの人がいなかったら俺達は生まれてもいなかったかもしれない。
おっと脱線してしまったな。さっきの解答で十分か?」
「あ、はい。」
「おい、チルノ。手が止まってるぞ。」
黒刀がチルノに視線を戻し、指摘する。
「だって分かんないんだもん。」
チルノが投げやりな口調で返す。
すると、黒刀は何か閃いた。
「そういや、剣舞祭には氷使いもたくさんでるんだよな~。」
ピクッ。
「そうつらはきっと物質理論なんか完全に理解しているんだろうな~。」
ピクッ。
「そいつらより頭がよくなれば氷使い最強も夢じゃないかもな~。」
「おっしゃ~!やってやるぜ~!」
「(ちょろい。)」
午後5時。
「お前ら、帰る?泊まる?」
「「「「「泊まる!」」」」」
黒刀の問いに妖夢達は声を揃えて応えた。
「ん。でも妖夢は幽々子さんに連絡しておけよ。」
「はい。」
その時。
「ただいま~。」
映姫が帰ってきた。
「姫姉、お帰り。妖夢達がうちに泊まるからよろしく。」
「また勝手に決めて。…まあ部屋は余っていますしいいでしょう。」
映姫はため息を吐く。
「幽々子様に許可をもらいました。(仕方ない。食べ放題の店には犠牲になってもらおう。)」
幽々子に連絡を済ませた妖夢が戻ってきた。
「それじゃ夕飯は俺と姫姉で作るよ。」
黒刀がキッチンに移動する。
「皆さんはお風呂に入っていいですよ。」
映姫も妖夢達に笑顔を向けてから黒刀の後に続く。
「やった~!お風呂!お風呂!」
「チルノちゃん、ちょっと待ってよ!」
チルノがいち早く駆けて行き、大妖精がそれを追いかける。
キッチンの方では、
「さて、こちらも始めよう。」
「今日は和食にしましょう。」
「あいよ。」
黒刀と映姫は手早く準備を済ませる。
大浴場。
「いっちば~ん!」
バスタオルを巻いたチルノが湯船にザパーンと飛び込む。
「チルノちゃん、怪我しちゃうよ!」
同じようにバスタオルを巻いた大妖精が注意する。
「まったく、子供ね。あらこのシャンプー高級品だわ。」
「どんなキャラだよ。」
イス桶に座る霊夢に魔理沙が横からツッコむ。
「あの~。」
バスタオルで前を隠す妖夢が脱衣所から大浴場に入ってくる。刀を持って。
「刀は置いていけよ!」
魔理沙がツッコむ。
「え、でもこれがないと…。」
「別に何も警戒することないだろ。」
魔理沙が肩を落とす。
「分かんないよ~。黒刀もお年頃だから…ニシシ!」
そう笑うチルノ。
「いくつだよお前。」
魔理沙のツッコミが炸裂する。
キッチン。
映姫は調理しながら黒刀をジト目で睨んでいた。
「どうしたの姫姉?」
「黒刀が悪さをしないか監視しているんです。」
「しないよ。」
「本当ですか?」
「ああ。(以前、妖夢に重い一撃食らってるからな~。)」
大浴場。
魔理沙はなんとか妖夢を説得して刀を脱衣所に置くようにしてもらった。
湯船には全員、浸かっている。
「う~ん。」
霊夢は妖夢を見て唸っていた。
「な、なんですか?」
「妖夢、あんた…なんでそんなに肌が綺麗なのよ。なにかやっているの?」
「え、いえ…何も。」
「嘘よ!」
霊夢は妖夢に抱きつく。
「れ、霊夢だって肌綺麗だよ!」
「これには敵わない!」
「何の勝負ですか!」
5分後。
「はあ…はあ…何でお風呂に入ってまでこんなに疲れなくてはいけないんですか…。」
「はあ…はあ…恨むならその綺麗な肌を与えた神を恨むのね…。」
「逆恨みしてるのは霊夢の方です…。」
そんな言い合いをしている妖夢と霊夢を見て、魔理沙が頬杖をつく、
「なあ、霊夢。もしかして…黒刀が関係しているんじゃね?」
「なるほど。」
魔理沙と霊夢は2人してニヤニヤする。
「な、なに言っているんですか2人とも!私は別に…そんなんじゃ…。」
妖夢の顔が赤くなる。
「「え~でもな~。」」
「というかさっきからなんなんですかその笑顔!」
妖夢は両腕を上げて怒った。
「そういえば黒刀先輩って彼女いるんでしょうか?」
大妖精が話に入ってくる。
「え~、黒刀先輩についていける女っているの?」
霊夢がそう返す。
「まさか~!」
魔理沙もあり得ないと笑う。
キッチン。
黒刀は一瞬、寒気がしてブルッと震える。
「どうしたの?」
映姫が心配して声をかける。
「なんでもない。」
黒刀は調理を続けた。
入浴を終え、妖夢達は客間に戻ってきた。
「お、来たか。準備できてるぞ。」
テーブルには豪華な料理が並んでいた。
「え、なにこれ…宴会?」
霊夢はその豪華さに驚く。
「ん?甘酒が欲しいのか?あったかな~。」
「いや、そういうことじゃなくて…。」
「おっしゃ~!食べようぜ!」
魔理沙が席に着く。
霊夢も諦めて席に着く。
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
30分後。
「あ~食った!食った!」
魔理沙が寝転がる。
「ごちそうさまでした。」
大妖精が行儀よく手を合わせる。
「どうも。それじゃ俺もお風呂に入ってこようっと。」
黒刀は大浴場へ移動する。
黒刀が行ったところで魔理沙が、
「なあ。」
「なによ?」
霊夢が返す。
「今のうちに覗いてみないか?黒刀の部屋。」
「…面白そうね。」
「え~、やめようよ~。」
霊夢が話に乗り、大妖精が止めようとする。
「そうですよ。人のプライベートを覗くなんて趣味が悪いですよ。」
妖夢も否定する。
「あたいはいく!」
チルノが手を挙げる。
「見たくないんだったら来なくていいのよ?」
「「うっ…。」」
結局、妖夢と大妖精は誘惑に負けてしまった。
縁側を歩いていると妖夢があることに気づく。
「っていうか先輩の部屋、どこにあるか知っているんですか?」
「え、知らないけど。とりあえず全部調べればあるだろ?」
魔理沙が答える。
「ノープランってことですか~。」
妖夢は肩をがくりと落とす。
「ねえ、ここじゃない?」
霊夢がとある部屋の前で立ち止まる。
魔理沙はバーンと襖を開ける。
黒刀の部屋は10畳くらいの和室だった。
「ここが先輩の部屋…。」
妖夢が部屋を見渡す。
「広~い!ドッジボールできそう!」
「いや、無理だろ。」
チルノの発言に魔理沙がツッコむ。
壁の上の方には横掛け軸があり、『一撃必殺』と文字が書かれていた。
その時、霊夢が机の上に置いてある写真を見つける。
「あれ?この写真…。」
「どうした?」
魔理沙も近寄る。
「いや、この写真に映ってる緑の髪の女…どこかで見たような…。」
「会長じゃないよな。…ふ~ん結構可愛いじゃん。黒刀が狙ってた女だったりして。」
「いやいや、ないでしょ?」
「だよな!」
妖夢も壁に飾ってある写真を見ていると、
「何見てるの?」
大妖精から声をかけられる。
「これを見てたの。」
妖夢が見ていたのは去年の剣舞祭個人戦で全国制覇した時の黒刀の写真だった。
写真の中の黒刀は優勝トロフィーと賞状をもらっていた。
「やっぱり黒刀先輩はすごいですね。」
大妖精が感嘆する。
「うん…でも少しおかしい。」
だが妖夢は違和感を感じていた。
「何が?」
大妖精が首を傾げる。
「先輩、勝ったのになんか嬉しくなさそうな顔してる。」
妖夢の言葉に大妖精が改めて写真を見る。
「確かに何か元気がないというか…仏頂面というか…でも黒刀先輩って大体そんな感じだと思うけど。」
大妖精の言葉に妖夢は首を横に振る。
「そうじゃない…そうじゃないの…何かは分からないけど変なの…。」
「妖夢…。」
一方、チルノがクローゼットを開けるとそこには何本もの黒い刀が立てかけてあった。
「すげえ!黒刀の刀がいっぱいだ!」
「でもこれなんか全部長さが違うわよ。」
霊夢がチルノの後ろから指さす。
「ほんとだ。」
「何で?」
妖夢達が首を傾げていると、
「それは俺の体格に合わせて姫姉が作ったからだ。」
声が聞こえた。
「なるほど。そういうことか~。………っ!」
魔理沙は驚きのあまり飛び上がる。
振り向くと、そこには黒刀がいた。
「く…黒刀、もうお風呂あがったんだ…。」
「何をそんなに怯えている?俺は特に怒っていない。見られて困るものはないからな。」
その言葉に妖夢達はほっとする。
「ごめんなさい先輩。いけないって分かってはいたんですけど…。」
妖夢が頭を下げて謝る。
「だから怒ってないって。」
「なあ、結局この黒い刀は何なんだ?」
チルノが聞く。
「一番短いやつがあるだろ?それは俺が7歳の時に使ってたやつだ。
でも年齢を重ねて、鍛えて強くなっていくとどんどん刀と自分の体格が合わなくなっていく。
特に成長期はな。今はもうだいぶ体が出来上がってきているから大丈夫だけど。」
「じゃあ、1本もらっていい?」
黒刀の説明を聞いたチルノが小さめの刀を手に取る。
「あ~やめといたほうがいい。俺の刀は…。」
「~!な…に…これ…重っ!」
チルノは両手で持ち上げられないため畳の上に下ろす。
「俺の刀は全て特殊な術式が施されている。
俺や姫姉、刀に認められた者以外には負荷がかかるようになっている。」
「ちくしょ~!ふんぬ~!」
チルノはもう一度持ち上げようとするが腰までしか上がらず、とても実戦には使えそうにない。
「そういえばこれを会長が作っているってどういうことですか?」
大妖精が訊く。
「姫姉は刀鍛冶が得意なんだ。ライセンスも持ってる。
俺の身体データを一番知っているのは同じように鍛えてきた姫姉だけだからな。」
チルノが無理やり振り回していたところを黒刀は片手で止め、刀を取り上げる。
「分かったらもう寝ろ。明日も試験勉強あるんだから。」
「「「「「は~い。」」」」」
霊夢達が部屋を出て行くところで最後に妖夢が立ち止まって、振り返る。
「先輩。」
「何だ?」
「先輩は去年、個人戦で全国制覇しました。」
「ああ。」
「それなのにどうしてあんな顔をしていたんですか?」
妖夢は写真を見ながら訊く。
「っ!」
黒刀は肩をピクッとさせる。
「先輩?」
「…あれは勝って当然だと思っていたからだ。」
黒刀は俯きながら答える。
「そ…そうですか…すみません。変なことを聞いて。」
「いや、別に。」
「それじゃあ、おやすみなさい。」
妖夢は頭を下げてから黒刀の部屋を出る。
「ああ、おやすみ。」
黒刀は襖を閉めてから布団に仰向けになる。
「…去年…か…。」
黒刀は1人つぶやく。
黒刀は去年の剣舞祭個人戦で全国制覇した。
だが黒刀には試合中の記憶が一切無かった。
個人予選から本選の決勝戦までの試合中のみの記憶だけがない。
「(自分がどうやって勝ったのかも分からない。
それになんか自分が自分でないような感覚だけはあった。
自分でも分からない何かになっていたような。
団体戦で負けた後のことまでは覚えているけどその後、始まった個人予選の試合が思い出せない。
…俺があんな顔をしているのはきっと心のどこかで実力で勝ったと思っていないからかもな。)」
そこまで考えて黒刀はそのまま目を閉じて眠った。
7月4日。
黒刀は日課である朝練を終え、キッチンに立つ。
「白飯と卵焼きとみそ汁…あとは適当でいいか。」
黒刀は驚きの手際の良さで料理を作っていく。
「おはよ~。」
そこへチルノが眠たそうに眼をこすって現れた。
「おはよう。ジュースは冷蔵庫に入ってあるから飲んでいいよ。
あと…ちゃんとパジャマ着ろよ。」
チルノのパジャマのボタンは上3つほど外れており、服がはだけていた。
「ん~。」
「しょうがねえな。」
黒刀はチルノのパジャマのボタンを付け直そうとする。
そこへ映姫が起きて来た。
「おはよう。…っ!黒…刀。」
映姫は言葉が詰まった。
今、黒刀の手はチルノのパジャマのボタンに手をかけているところだ。
「なにを…やっているの?」
映姫の問いに黒刀はうろたえる。
「いや…これは…待て…誤解するな。俺は…」
「このロリコンが~~~!」
映姫が影を巨大な拳に変形させて黒刀をアッパーで思いっきりぶん殴った。
「グフッ!」
黒刀はうめき声を上げた後、うつ伏せに倒れて動かなくなった。
「ふん!」
映姫は倒れている黒刀を放置してキッチンにある中断していた料理を作りにかかる。
ちなみにチルノは既に避難しており、居間でオレンジジュースを飲んでいた。
「今の音、何⁉」
その時、キッチンに霊夢が入ってくる。
「って死体⁉じゃなくて黒刀先輩か…。」
妖夢、魔理沙、大妖精も騒ぎに気づき入ってくる。
「あら皆さん、おはようございます♪」
映姫は笑顔で挨拶をする。
「「「「お…おはようございます。」」」」
妖夢達が怯えながらも挨拶をする。
「あの…会長。」
妖夢がたずねる。
「皆さん、朝食が出来たので居間に行ってください。」
映姫は笑顔を崩さない。
「え、でも…。」
魔理沙は床に倒れている黒刀を指さす。
「そこの愚か者は放っておいて構いません。それより朝食が先です。」
映姫はまだ笑顔を崩さない。
「でも…。」
妖夢が口を挟もうとする。
「ん?」
映姫は笑顔のまま首を傾げる。
「い…いえ!ちょ…朝食なにかな~!」
妖夢はわざとらしく言いながら居間へ歩く。
霊夢、魔理沙、大妖精もそれに続く。
「「「「(会長、こえ~!)」」」」
30分後。
「はっ!」
黒刀が目を覚ます。
そして、先ほどの出来事を思い出す。
「(女難の相でもあんのかな…俺。)」
そう考えながら立ち上がり、居間に入ると妖夢達は試験勉強をしていた。
「あ、生きてた。」
霊夢が黒刀に気づく。
「誰が死ぬかよ。(っても姫姉の影でオーラ使いに結構効くんだよな。)」
「黒刀、ここ教えろ。」
チルノが口を開く。
「なんで、そんな偉そうなんだよ…まあいい。どこだ?」
「ここ。」
問題はこうだった。
問1 人間が肺呼吸する際に吸う期待は?
チルノの答え 二酸化炭素
「死ぬわ!」
黒刀は思わずツッコむ。
問2 クジラは何類?
チルノの答え 魚類
「こいつ、まじで高校生か?」
黒刀は頭を抱える。
問3 DNAの総称は?
チルノの答え
「失礼な!」
大妖精はテーブルをバンッと叩く。
「ひどいってレベルじゃねえな…。」
黒刀はため息を吐いた。
「どうするんだ?数学の時みたいには…。」
魔理沙が提案する。
「あれは偶然チルノに合っていたからだ。さすがに理科では…。」
黒刀は即座に否定する。
「まあ、チルノは普通にやって点数とれるわけないものね。」
霊夢は苦笑いする。
「それはどうでしょう?」
映姫がお茶を持ってきた。
「私ならチルノを上位にいかせるくらいの指導はできますよ。」
映姫の言葉を聞いた黒刀が固まる。
「どうしたの?」
霊夢がうかがう。
「いや、別に。」
黒刀はそう言ってお茶を飲む。
「どうです?チルノ、私が勉強を教えてあげましょうか?」
「お願いします!」
黒刀は気が気でなかった。
「(ソフトコースならまだいい。
だが、もしハードコースだったら…ちるの、悪いが俺には止められない。)」
「では私の部屋へ。」
映姫が自身の部屋へ先導する。
「は~い!」
チルノは元気よくついていった。
5分後。
「あ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
チルノの悲鳴が四季家中に響き渡る。
「(ハードの方だったか。)」
さらに1時間後。
居間の襖が開き、チルノが居間に戻ってきた。
「チルノちゃん、大丈夫?」
大妖精が心配そうに声をかける。
「うん。」
チルノの目は死んでいた。
黒刀は問題を出す。
「チルノ、人間が肺呼吸する際に吸う気体は?」
「酸素。」
「クジラは何類?」
「哺乳類。」
「DNAの総称は?」
「デオキシリボ核酸。」
「クローン人間作成の成功例は?」
「2003年12月27日。2004年1月3日。同年1月22日。1月27日。2月4日。2月18日。」
「それを発表したスイスに本部を置く新興宗教団体名は?」
「ラテリアン・ムーブメント。」
「「「「「「(こいつ…誰?)」」」」」
黒刀達はチルノの変わりぶりに困惑した。
7月8日。期末試験1日目。
チルノは数学、理科を難なく解いていた。
7月9日。期末試験2日目。
チルノは残った他の教科も例の鉛筆を使わずに解いていた。
そして…
7月12日。
ついに期末試験結果発表の日がやってきた。
妖夢達は空間ウインドウを操作して、期末試験の点数と学年順位を見た。
そこには…
1位 チルノ 500点
満点だった。
「よっしゃ~!」
チルノはガッツポーズして喜ぶ。
チルノのキャラは元に戻っていた。が…
「チルノ、元素記号を順番にカルシウムまで答えて。」
問題を出すと、
「水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン、
ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、
カルシウム。」
このようにキャラが変わってしまうようになってしまった。
ちなみに大妖精、黒刀、映姫、阿求の4人も満点だった。
妖夢、霊夢、魔理沙も平均点を超えていたため剣舞祭代表全員は夏期講習を回避することが出来た。
ED4 咲 全国編 TRUE GATE
ご感想お待ちしております。
OPとEDは必要だと思うか?
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