東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP4 学戦都市アスタリスク2期 The Asterisk War



助っ人

 7月17日。

 

妖夢達はとある島にいた。

 

今日から夏休みという時に、今朝、黒刀から《全員、和歌山の港に集合》と連絡の後にマップデータが送信され、行ってみると、クルーザーがあり、訳も分からぬままこの島に連れて来られた。

 

黒刀が口を開く。

 

「この島は四季家が所有する島だ。ここを今回の強化合宿所にする。」

 

「「「「「は…はあ~⁉」」」」」

 

妖夢達は島中に響くくらい叫んだ。

 

 

 

 合宿所女子更衣室。

 

「まったく、あの人はいつも急に物事を決めすぎよ。」

 

「その通りだぜ!」

 

霊夢と魔理沙が着替えながら愚痴を言う。

 

「そういえば、前の合宿所でやるって話じゃ…。」

 

「なんか合宿所のオーナーに断られたみたいです。

 

暴れまわった3人のせいでめちゃくちゃになったからだって…。」

 

妖夢の疑問に大妖精が着替えながら答える。

 

「3人って…黒刀とチルノ、あと霊夢か。」

 

魔理沙が指で数えながら言った。

 

「ちょ、わたしも⁉」

 

霊夢が心外とばかりに驚く。

 

「当たり前だぜ。」

 

魔理沙がそれを一蹴する。

 

「あの時は黒刀先輩が悪かったのよ!」

 

霊夢が言い訳をする。

 

「まあ、最強のあたいにあそこは物足りなかったってことね!」

 

チルノが胸を張る。

 

「「「「(こいつ、当事者なのに分かってねえ。)」」」」

 

妖夢達は呆れるしかなかった。

 

 

 

 学校指定の体操服に着替え終わった妖夢達は、黒刀の元へ向かう。

 

しかし、そこには監督のにとり、マネージャーの映姫と…

 

「あなた、私をバカにしてるでしょ?」

 

「してないよ。」

 

「嘘よ。」

 

「いや~お前、本当にいい奴だな。」

 

「私を騙してここに連れてきた奴の言葉なんて信用できるか!」

 

黒刀と口論していたのはなんと紅葉高校の犬走椛だった。

 

「椛…さん?」

 

妖夢は戸惑いを隠せない。

 

「あら妖夢、久しぶり。予選以来ね。」

 

「お久しぶりです。」

 

妖夢は頭を下げる。

 

「ところでどうしてこんなところに?」

 

妖夢が疑問を口にする。

 

その言葉に椛が物凄い剣幕で迫ってくる。

 

「聞いてよ!こいつが私を騙してこんなところに連れてきたのよ!」

 

そう言って黒刀を指さす。

 

「素直な子っていいよね~。」

 

黒刀は間延びした声で返す。

 

「もはや詐欺師だな。」

 

魔理沙はジト目で黒刀を睨む。

 

霊夢は椛に顔を向ける。

 

「椛さんは何って言われてここに?」

 

「そ…それは…言えない…。」

 

椛が急に口ごもる。

 

「じゃあ俺が言って…」

 

ゴンッ。

 

黒刀が口を挟もうとしたその時、彼の頭に映姫が影で作ったハンマーが叩きつけられる。

 

「いい加減にしなさい。」

 

「は~い。」

 

黒刀は頭を押さえると、気を取り直して、

 

「今回の合宿はこの島で3日間行う。」

 

「3日間?前より少ない…。」

 

黒刀の言葉に霊夢が口を挟む。

 

「予選前は土台作りが目的だったけど、今回は得意技の練度を上げることと弱点克服が目的だ。」

 

「なんで椛さんがこの合宿に?」

 

妖夢が挙手して質問する。

 

「俺が助っ人として呼んだ。」

 

「騙されただけよ。」

 

椛がプイッと顔を背ける。

 

「夏休みの課題手伝うから。」

 

「ならいい。」

 

「「「「「(いいんだ。)」」」」」

 

妖夢達は椛の変わり身の早さに内心、驚いた。

 

「まずはこの島をランニングで一周する。」

 

「何㎞?」

 

「6㎞。それを30分で一周する。できなかったらインターバルを挟んでもう一周する。」

 

「うわ~、きつそう。」

 

霊夢が嫌そうな顔をする。

 

「なんで30分?」

 

魔理沙が疑問を口にする。

 

「剣舞祭は1ラウンド15分。それが2ラウンドまであるからちょうど30分だからだ。

まあ、説明はこのくらいにしておいて走ろうか。」

 

「でもやっぱりきついだろうな~。」

 

魔理沙の一言に、

 

「え、こんなの普通だろ?」

 

黒刀が何言ってんのと言いたげな顔で返してきた。

 

「「(化け物め。)」」

 

霊夢と魔理沙は憎まれ口を心の中で叩く。

 

「じゃあ、ホイッスル鳴らしたらスタートだ。」

 

にとりが声をかける。

黒刀、妖夢、霊夢、魔理沙、チルノ、椛がスタート位置に立つ。

にとりがホイッスルを鳴らすと、全員が同時に走り出した。

 島の外周は道があるがところどころ岩などがあり、妖夢や魔理沙は何度もひっかかりそうになっていた。

先頭を走っているのは黒刀、椛、チルノである。

 

「あ~、でも俺もあんまり気乗りしないんだよな~。」

 

黒刀が走りながら文句を言い始めた。

 

「なんで?」

 

お前が始めたんだろという言葉は飲み込んで椛が訊く。

 

「この30分間、姫姉の体操服姿が全然見れなくなるのは悔しい!」

 

黒刀は拳を握りしめながら悔しそうに言った。

 

「は?」

 

椛は呆気にとられる。

すると、黒刀は熱弁し始める。

 

「あのむっちりとした太ももに体は小柄だがうなじが見える色気もまたいい!」

 

そんな黒刀に椛はジト目になって刀の柄で黒刀の横っ腹を突き、さらに鞘に納まった刀で黒刀の頭頂部を殴った。

 

「いてっ!なにすんだ!」

 

黒刀が声を荒げる。

 

「こっちのセリフよ!合宿中になんてことを考えているのよ!」

 

「姫姉のこと。」

 

黒刀が真顔で返す。

 

「そういうことを聞きたいわけじゃないのよ。」

 

椛が拳を握りしめる。

 

「う~ん、女心というものはよく分からん。」

 

黒刀が首を傾げる。

 

「くたばればいいのに…。」

 

椛はボソッとつぶやくのだった。

 

 

 

 30分後。

なんとか全員、時間内にゴールすることが出来たのだった。

 この合宿ではあくまで個人のスキルアップが主になるため、各々が勝手に特訓していく。

 

 

 

 黒刀は浜辺で『八咫烏』を縦、横、斜めに素振りしていた。

だが、それはいつもの素振りとは少し違うようだ。

 

「(とにかく剣速20に達しなきゃ四季流剣術が使えない。

俺の今回の合宿の目的は剣速20。

いつもみたいに10分で1万回振っていくんじゃ丁寧に20回振る!)」

 

ちなみに現在の黒刀の剣速は18。

 

 

 

 妖夢は『楼観剣』を抜き、椛と向かい合っていた。

 

「椛さん、お願いします!」

 

「うん。解放を使いこなしたいんだっけ?」

 

「はい。私、解放の発動方法が自分でもよく分からないので…でも全国でそんなんじゃ通用しないと思います。だからとにかく強い椛さんと闘えば何か掴めると思います。」

 

「なるほど。私は今の技を強化する以外にやることないし、ちょうどいいね。」

 

「あ、でもコツとかあれば教えて欲しいです!」

 

「コツ?そんなのないわよ。」

 

「え~!」

 

妖夢が驚く。

 

「まあ、あえて言うなら想いの強さかな?」

 

「想いの…強さ…。」

 

「勝ちたいではなく勝つとか…欲求ではなく実行することかな。」

 

「でもそんなの誰だって思っていることなのでは…。」

 

「解放は誰にでも可能性はあるけど、大抵の人間は途中で負けるイメージが頭に浮かぶ。

そんな半端な気持ちじゃ解放は出来ない。」

 

「なるほど。」

 

妖夢は首を縦に振って頷く。

 

「妖夢の場合、試合になったら集中力が凄いからそんなに不安になることもないと思う。」

 

「はい!」

 

妖夢は元気よく応える。

 

「じゃあ、やろうか。」

 

椛も剣を抜く。

 

「お願いします!」

 

 

 

 霊夢は魔理沙の特訓相手となっていた。

 

「悪いな霊夢。私、この前の予選が終わった後、ずっと考えてたんだ。

パワーは大事だけど、そのパワーを最大限に活かすには小規模の魔法もマスターしておくべきだって。」

 

「別に構わないわ。私も何をするか決めていなかったから。」

 

霊夢は霊符と霊力で闘うスタイルなので、知恵の使い方次第で無限に戦略が広がるため、とくに鍛えるということをあまりする必要がない。

 

「それじゃ、いくぜ!」

 

魔理沙が魔法弾を放つ。

だが、その魔法弾は弾速が非常に遅く、霊夢の手で軽く弾かれてしまった。

 

「キャッチボールより遅いわね。これじゃシャボン玉同然だわ。」

 

「パワーに頼らずに魔法を使うのがこんなに難しいとは…。」

 

魔理沙は肩を落とす。

 

「前途多難ね。」

 

霊夢はため息を吐いた。

 

 

 

 

「よし、来い!」

 

チルノが声を上げる。

チルノと向かい合っているにとりの腕には火炎放射器があった。

 

「ほんとにいいのか?これ、結構火力あるぞ?」

 

にとりは心配そうにチルノに訊く。

 

「アッハッハ!火なんてあたいが凍らせてやる!」

 

「(一応、浜辺だから水の心配はないけど…仕方ない。)それじゃポチッと。」

 

にとりがボタンを押すと火が放射される。

 

「よっしゃ~!凍らせて…ぎゃあああ!」

 

チルノは火を凍らせようとしたが、失敗して火だるまになる。

砂浜を転がって海に入る。

 

「バカだ…ここにバカがいる。」

 

にとりは呆れた目でそれを眺めていた。

 

 

 

 正午。

 

「お昼ですか…皆を呼ばないと。」

 

映姫は携帯端末で連絡していくが、黒刀にだけ繋がらなかった。

 

「あの子、いったいどこに?」

 

映姫は黒刀を探しに行く。

 しばらくして映姫が浜辺で『八咫烏』を素振りしている黒刀を見つける。

 

「黒刀、昼食だから戻って…!」

 

映姫は目を見開いた。

映姫が見た黒刀の剣裁きは今までとは比べ物にならない程、上達していた。

 

「綺麗…。」

 

映姫は思わずそう言葉が漏れた。

すると、黒刀が素振りを中断した。

 

「あ、姫姉どうしたの?」

 

「あ、その…昼食の時間…。」

 

「あ、ごめん。夢中で全然気づかなかった。行こう。」

 

黒刀は『八咫烏』を鞘に納めて歩き出す。

 

「…うん。」

 

タオルで汗を拭きながら歩く黒刀の後ろ姿を見ながらついていく映姫。

 

「(この短期間でこの成長速度…一体、この子はどこまで強くなるつもりなの?)」

 

映姫は自分の弟がなぜか遠くに感じた。

 

 

 

 昼食はそうめんだった。

 

「黒刀、抽選会のこと忘れるなよ。」

 

にとりが釘を刺す。

 

「分かってるよ。」

 

「え~!また黒刀が行くの?」

 

チルノが文句を言い始める。

 

「今度の抽選会は生中継でやるからお前は連れていけない。俺、1人で行く。」

 

「たしか場所は長野でしたね。」

 

映姫が思い出したように口にする。

 

「うん。そこならバイクで行ける。」

 

「それに試合も生中継だしね。」

 

椛がそう言って麺をすする。

 

「何!つまりあたいが最強ってことが全国に知れ渡るってことか!」

 

「まあ、私も黒刀が行くのは正しいと思う。

抽選会は互いの威厳を示す意味もあるからエースクラスが揃う。ビビったら終わり。」

 

椛が黒刀の行動に賛成の意思を示す。

 

「たしかに先輩だったら逆にビビらせそうですもんね。」

 

妖夢は苦笑い。

 

「俺は普通にしているつもりでいるが?」

 

「それがプレッシャーを与えるんだよ。まあ、こっちにとってはラッキーだけど。」

 

魔理沙がそう言って麺をすする。

 

「う~ん。俺は全力の相手と闘いけどな。」

 

黒刀はそう言って麺をすする。

 

「よく言うわよ。自分はいつも隠してるくせに。」

 

椛がボソッとつぶやく。

 

「…じゃあ決闘するか?」

 

黒刀がそう提案する。

 

「あなたと?」

 

「そうだ。」

 

「いいわ。相手してあげようじゃない。」

 

ちょうど食べ終わった黒刀と椛が睨み合う。

 

「俺の実力が知りたいなら引き出してみろ。」

 

「その化けの皮、剥がしてやる。」

 

 

 

 妖夢達も食べ終わり、そろって浜辺へ向かう。

 

「なんかすごいことになっちゃったね。」

 

妖夢が霊夢にささやく。

 

「まさか、もう一度この闘いが見れるなんてね。」

 

霊夢も若干、楽しんでいる。

黒刀は椛と向かい合い、ゆっくりと鞘から『八咫烏』を抜く。

椛はそこでやっと黒刀の刀が変わっていることに気づく。

 

「怖い刀ね。刀身からオーラが漏れ出ているじゃない。」

 

「こいつは特別なんだ。

今回の合宿にお前を連れてきたのはあいつらを強くするっていうのもあるけど、こいつを試したくてな。その最初の実験台はお前がちょうどいい。」

 

「実験台…ね。私もなめられたものね!」

 

椛はそう言い放って剣を抜く。

既に決闘申請は済ませてある。

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

先に動いたのは黒刀だった。

砂浜で足を踏み込んで突撃する。

オーラを込めて踏み込んだため、砂煙が噴き上がる。

 

「目くらましのつもり?だけど私の『千里眼』には透視能力も含まれている!」

 

椛の瞳が満月のように変わる。

椛は砂煙の中を見る。

 

「(さあ、どっちに…え?方向転換しない…真っ直ぐ⁉)」

 

椛は驚く。

黒刀が砂煙の中から現れて袈裟斬りをしかける。

 

「ここ!」

 

椛は黒刀の肩に突きを放つ。

しかし、黒刀は袈裟斬りを中断して、そのカウンターを斬り上げで止める。

 

「やりますね。ですが勝負はこれから…っ!」

 

椛がそう意気込んだその瞬間、椛の体に痛みが走る。

 

「バカな…なんで…。」

 

椛は膝をつく。

 

「ちょっと踏み込み過ぎたか…。」

 

黒刀が口を開く。

 

「あなたの攻撃は止めたはず…。」

 

「ああ。止めたな…1回は。」

 

「1回は?」

 

「お前は18回斬られている。俺は19回、『八咫烏』を振った。

お前はその内の1回を止めただけ。

いくら『千里眼』でも速度で俺に追いつけなきゃ意味ないぜ…さて、まだ続けるか?」

 

「…いいえ。私の負け。」

 

《勝者 四季黒刀》

 

映姫は息を呑んだ。

 

「(剣速が19回に達している。あと1回で四季流剣術が使えるようになる。)」

 

「どうやらあなたの力を引きだすにはまだまだ修行不足のようね。」

 

「修行不足なのは俺も同じだ。」

 

黒刀はそう言って膝をつく椛に手を差し伸べる。

椛はその手を取って立ち上がる。

 

「絶対に優勝してきなさい。」

 

「ああ!」

 

黒刀はそう応えるのだった。




ED4 咲 全国編 TRUE GATE

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