7月20日。
黒刀は早朝からバイクで長野県の抽選会場へ行くため出発した。
バイクで走行中、
「(おそらく会場には六道、五位堂、二宮、レミリアが来るはず。)」
一方、妖夢達は神光学園の生徒会室に集まり、抽選会の生中継を見ることにした。
「なんかこっちが緊張してきました。」
妖夢は胸を抑えて口にする。
「な…なんでお前が緊張するんだよ!」
そう言って妖夢の肩を叩く魔理沙もガチガチに緊張していた。
「そんなに気にすることないぞ。抽選会の時のあいつ、割と普通だから。」
にとりがソファにもたれかかりながら口にする。
「そうなんですか?てっきりもっと派手にしているのかと…。」
大妖精もソファに腰かけながら可愛らしく首を傾げる。
「さすがの黒刀もそこまでしませんよ。」
映姫もソファに腰かけて、ティーカップで紅茶を飲みながら口を挟む。
「あいつ、観察力と洞察力が良いから多分、他の選手を見ているんだろう。」
そう言ってにとりが笑う。
「なるほど…。」
大妖精が感心したようにうなずく。
長野県剣舞祭抽選会場地下駐車場。
黒刀は4時間かけて到着した。
「渋滞でだいぶ時間かかっちまったな。」
そう言ってエンジンを切る。
そこへ、
「そのアンチグラビティバイク、初めて見る型だね。最新型かい?」
声が聞こえたので振り返ると、そこにいたのは眼鏡をかけていて、
身長は185㎝くらい、髪は綺麗に整っていて、身だしなみもしっかりとした知的そうな男だった。
「自分で作った。」
黒刀は短く答えた。
「それは凄い!ああ、すまない。自己紹介がまだだったね。
僕は白雪高校3年の雪村氷牙です。よろしく。」
雪村はそう言って握手を求める。
「神光学園2年の四季黒刀だ。」
黒刀は雪村の握手に応じた。
「うん、知ってる。君は有名人だからね。せっかくだからこのまま一緒に会場へ向かおうか?」
「ああ、構わない。」
2人はエレベーターの中に入り、雪村が1階のボタンを押す。
「意外だな。」
黒刀が口を開いた。
「何が?」
黒刀の背後に立つ雪村が訊き返す。
「ここには五位堂が来ると思っていた。」
「ああ、彼女はうちの1位じゃないからね。」
「抽選会には2人で来ることも許されているはずだ。」
「そういう君も言いたいところだけどね。
…五位堂光は我が白雪高校の校内ランキングで3位。そして、僕は2位。」
「あいつが3位?」
「本当は1位の子を連れてくるべきなのかもしれないけど、
その子が今、君に会う時ではないと言っている。」
「(1位は俺の知っている人間ってことか…誰だ?)」
「詮索はしない方がいいよ。」
「!」
黒刀は心の中で動揺する。
「まあ、会うまでのお楽しみということにしておいてくれ。」
「(なんだ…こいつ。)」
黒刀がそう思ったところで、エレベーターのドアが開く。
エレベーターから出たところで、
「悪い。一緒という話だったが先に行く。」
「ああ、どうぞ。」
黒刀が先に会場に行って見えなくなったところで、
「なるほど。確かに彼女の言っていた通りの人間だ。
それにしても、やはり剣舞祭は素晴らしい!強者のデータが溢れている!
嬉しいよ!データプレイヤーとしては!」
雪村はそう言って口元をニヤリとさせるのだった。
黒刀が抽選会場のドアを開けると、そこはダンスパーティーができるくらいの広さがあった。
会場に入ってきた黒刀に気づいた他校の選手達がひそひそと話し始める。
黒刀はそれを無視して、壁の方に移動してもたれかかる。
会場には椅子が無いため立って待つことになる。
数十秒後、雪村も会場に入ってくる。
雪村は黒刀のいる場所とは反対方向に歩く。
次に入ってきたのが六道仁だった。
他校の選手達はそれを見た瞬間、目を逸らす。
六道は黒刀を視認すると舌打ちして雪村と同じ方向に歩き出す。
次に入ってきたのはなんと身長2mはありそうなスキンヘッドの男だった。
「でけえ。」
「まじで高校生かよ…。」
周囲から声が漏れる。
「(周囲の反応を見る限り、初出場か。…記憶が無いのがこんなに不便だとはな。)」
黒刀はため息をつく。
「随分と浮かない顔ね。」
「………いきなりなんだ輝夜。」
黒刀に声をかけてきたのは蓬莱山輝夜。
黒髪のストレートで腰より長い。前髪は眉を覆う程度の長さのぱっつん系。瞳の色は赤。
服は上がピンクの着物。
大きめの白いリボンが胸元にあしらわており、服の前を留めるのも複数の小さな白いリボンである。
袖は長く、手を隠すほどある。
下は赤い生地に月、桜、竹、紅葉、梅と日本の情緒を連想される模様が金色で描かれているスカート、
その下に白いスカート、さらにその下に半透明のスカートを重ねて履いている。
学年は3年生。
「あら、覚えてくれていたのね。」
輝夜はクスッと笑う。
「そりゃ社交パーティーで何度も顔を見ていれば覚える。にしても珍しいな。
お前がこんなところに来るとは。」
「沖縄県代表首里高校は私の学校であり、私の家でもある。家の代表として来るのは当然。」
輝夜はそう言って自慢げに胸を張る。
ちなみに首里高校は今年で創立412年を迎えるが、実は数年前に校舎そのものはある場所に変わっていた。それは首里城である。そう、ここにいる蓬莱山輝夜はなんと当時世界遺産であった首里城を圧倒的財力で買収し、さらに自分の家にすると共に、一部を校舎として利用するようにしたのだ。
「(1000兆分の1の世界…つまり加速世界に踏み込んだ女か。
全く世の中には恐ろしい能力を持った奴がたくさんいやがるな。)」
黒刀は自分のことを棚に上げてそんなことを考える。
「それじゃ、私はそろそろ離れた方がいいかもね。
いつまでもここにいると有象無象の視線が邪魔で仕方ないから。」
輝夜はそう言いながらこちらを見ていた人間を睨む。
「じゃあね。」
「ああ。」
輝夜が小さく手を振って黒刀から離れると、またもう1人会場に入ってきた。
黒刀より少し背が高めの男で、顔はクールなイケメンで、制服の着こなしはもはや一流のビジネスマンのようだった。
その男の名は二宮優。二宮総一郎の息子である。
優は一瞬、黒刀に視線を向けたがすぐに外した。
「(声かけたら殺されかねないな。)」
黒刀は心の中で苦笑していると、会場の入り口のドアがいきなりバンッと開き強い風が吹いてきた。
会場に入ってきたのは去年の優勝校紅魔学園のレミリア・スカーレットだった。
レミリアが入ってきた後、メディアの人間がぞろぞろと会場に入ってきた。
レミリアは黒刀と同様に近寄りがたい雰囲気を出している。
「(フランや早苗はいないようだな。よかった。あいつら面倒くさいからな。)」
黒刀は心の中で安堵する。
そして、ステージを見ると、そこには大会運営委員が立っており、その前のテーブルにはくじ引き箱が置かれていた。
生徒会室。
既に中継は始まっており、妖夢達はそれを見ていた。
「あそこにいる人達みんな剣舞祭に出るんだよね…強そう。」
妖夢は少しびびる。
「(私にはひよっ子ばかりにしか見えないけど。)」
にとりは欠伸をする。
「っていうか黒刀が映ってないぞ!あいつどこだ?」
魔理沙がモニターウインドウを凝視する。
「あはは、あの子はマスコミとか嫌がりますから多分、自分からそういう雰囲気を出して撮りにくいんじゃないですかと。」
映姫はそう言って苦笑いする。
「案外、端っこにいたりしてな!」
「それでカッコつけてそう!」
小町と魔理沙がそう言って笑い合う。
抽選会場。
「(早く帰りたい…。)」
黒刀がそう思っていると、会場の人達がざわつき始めた。
「ん?」
黒刀がステージに視線を移す。
そこに立っていたのは身長180㎝の顎に髭を生やした中年男性、
ナンバーズの1人に新大日本帝国の総理大臣の一ノ瀬太陽であった。
その男が口を開く。
「選手の皆さん、そしてこの中継を見てくださっている皆さん!一ノ瀬太陽です!」
一ノ瀬は礼儀正しく礼をする。
「(名乗らなくてもみんな知っているよ。
それにしても総理大臣と言わなかったってことはナンバーズとして来たってことか。)」
黒刀は心の中でツッコむ。
一ノ瀬は演説を続ける。
「今年の剣舞祭には優秀な高校生が集まっていると聞いて、私も少し心が躍っています!
と、これ以上話が続いてしまうと、進行が遅れてしまう。私は裏で見守っているとしよう。」
そう言って一ノ瀬が去った後、会場の人間が詰まっていた空気を吐き出すかのようにほっとする。
「そ、それではこれより剣舞祭本選大会の抽選会を開始いたします!」
運営委員の男が宣言すると、その背後にトーナメント表の空間ウインドウが展開される。
今のところトーナメント表は空白だ。ただ1つを除いて。
トーナメント表の左上には既に『紅魔学園』と表示されていた。
これは去年の優勝校であるため自動的にシードになるからである。
それでもレミリアがここに来たのは優勝校としての絶対的な余裕だろう。
「北海道代表 白雪高校!」
運営委員が呼ぶ。
「はい。」
雪村がステージに上がる。
そして,クジを引く。
「46番!」
運営委員が大きな声で読み上げる。
「(1番である紅魔学園とは真逆。これならデータがとれますね。)」
雪村はそう考えながらステージを下りる。
「大阪府代表 王龍寺高校!」
「はい!」
出てきたのは例の2mのスキンヘッド。
「やっぱでけえ。」
「つーか禿げてるからライトに当たると眩しいんだけど。」
「なんか見た目おっさんぽいっし。」
他校の選手達がひそひそと話す。
「26番!」
「おいおい、紅魔学園の逆側がどんどんなくなっていくぞ。」
「出場校は49校あってその内の24校が紅魔学園の逆側になるんだからあと22校もあるんだ。
問題ねえだろ。」
「福岡県代表 鷹岡高校!」
「はい。」
六道がステージに上がり、くじを引く。
「42番!」
「あ~また…。」
他校の選手達が顔色が悪くなっていく。
「宮城県代表 仙台高校!」
「はい。」
優がステージに上がると、他校の代表の女子達が騒ぎ出した。
「やっぱりカッコイイ。」
「チッ、世の中顔ってか?」
他校の男子が舌打ちする。
「34番!」
「またかよ!」
彼らの希望が1つずつ潰れていく。
生徒会室。
「仙台高校とは当たりたくないな。」
「なぜですか?」
にとりの言葉に妖夢が訊く。
「黒刀と相性が悪すぎる。とくにあの二宮優は。」
「でもあの人ならどんな相手でも負けないわ。あの人が負けるところなんて想像できないもの。」
霊夢が口を挟む。
「そうだな。(私は見たけど。)」
魔理沙は黒刀が映姫に負けた時のことを思い出していた。
《奈良県代表 神光学園!》
「「「「「来た!」」」」」
黒刀はステージに向かって歩き出す。
「二宮様もいいけどこっちもかっこいいよね。」
他校の女子がまた騒ぎ出す。
黒刀がステージに上がると、紅魔学園、王龍寺高校、仙台高校、鷹岡高校、白雪高校、首里高校の代表達は今までより注目していた。
黒刀はくじ引き箱にゆっくり手を伸ばす。
そして、箱の中からくじを引く。
番号は…
「49番!」
紅魔学園と正反対だった。
「(レミリア、お前にこの未来は見えていたか?)」
黒刀はステージを下りながらレミリアを見る。
「(もちろん見えていたわ。その勝者もね。)」
レミリアも視線で返す。
「沖縄県代表 首里高校!」
「はい。」
輝夜が着物でステージに上がる。
「(よくこけねえな。妖夢だったら何もないところでこけるのに。)」
黒刀は素直に驚いていた。
「48番!」
「(おいおい、初戦はこいつかよ。)」
黒刀は面倒くさそうな顔をする。
「言い忘れていたけど、こっちにもナンバーズはいるから。」
輝夜がステージを下りて、黒刀の横を通り過ぎる時にそう口にして行った。
黒刀は考える。
「(沖縄にいるナンバーズ…って『魔女』じゃねえか。)」
そして、次々と代表校がくじを引いていき、トーナメント表が埋まる。
「さて、帰るか。」
黒刀が帰ろうと壁から背中を離したその時、入り口のドアが勢いよく開いた。
さらに武装した集団がなだれこんでくる。
会場から悲鳴を上げる。
「てめえら床に伏せろ!早く!」
銃を突きつけられた者達は言うとおりにする。
そして、黒刀のところにも。
「貴様もだ!」
「(俺のところには5人か…なるほどそういうことね。
さて、気づいている奴は何人いるかな。…たしかポケットにあれが。)」
「早くしろ!」
「はいはい、まずは手を上げて…」
黒刀はポケットから百円玉を取り出して、手を上げると同時に上にピンッと弾く。
「床に
黒刀は5人が百円玉に気を取られている隙に5人の鳩尾にコンマ0.01秒間隔で掌底を叩き込んだ。
そして、全員倒した後に落ちてくる百円玉をキャッチする。
自分の敵を片付けた黒刀が周りを見ると、数名だけ黒刀と同じ考えの者がいたようだ。
「こいつ!」
「あなたたち、のろすぎるわ。」
敵の弾を避ける輝夜が吐き捨てる。
「なに…っ!」
敵の気が遠くなっていく。
「安心しなさい。ただの手刀よ。」
「やれやれ…君たちのデータには興味ないんだけどね。」
「くっ!」
雪村は敵のナイフを躱し、足をひっかけて体勢を崩し額に掌底を叩き込む。
敵は脳震盪を起こして気絶する。
「僕は接近戦はあまり得意じゃないんだ。」
「おらおら!」
六道は拳をどんどん叩き込んでいく。
「このガキ!」
敵が引き金を引くと、六道は弾を躱し顎にアッパー。
「舐めてるとぶっ殺すぞ!」
「お前らに用はない。消えろ。」
優は冷たく吐き捨てる。
「ふざけるな!床に伏せろ!」
「…俺に命令をするな!」
優は敵の攻撃を次々と躱し、腹に拳を叩き込んでいく。
王龍寺高校の岩徹剛は敵を持ち上げ投げ飛ばしていた。
レミリアは4人の敵に囲まれていた。
「そこのチビ、床に伏せろ!」
ピキッ!
レミリアは今の発言にキレた。
次の瞬間、4人の敵はレミリアの回し蹴りで蹴り飛ばされた。
「身の程を知りなさい無礼者!」
レミリアの倒した敵が最後だったようだ。
すると、ステージに一ノ瀬が現れ拍手をしてきた。
「お見事。
さて、突然の来客に驚いた方がいるでしょうが実はこの者達は私が用意した偽物のテロリストです。」
その言葉を聞いたほとんどの者が驚きざわめき出した。
一ノ瀬はそれを手で制すると、
「ご安心を。彼らの銃とナイフは偽物です。…皆様はこう思っていることでしょう。
なぜこんなことをしたのか?
それはもし、テロリストに襲撃を受けた場合に君達のように力を持つ存在に何が必要か確かめるためです。そして、はっきりしました。
テロリストに襲撃された時に求められるのは強い戦闘力と屈することのない精神力です。
その点に関しては特に神光学園の四季黒刀君、紅魔学園のレミリア・スカーレットさん。
この2名の動きは大変すばらしかった。」
一ノ瀬は黒刀とレミリアを賞賛する。
「(当たり前だ。俺はともかくあいつも経験しているからな…本物の殺し合いを…。)」
黒刀は昔の記憶を思い出す。
その間も一ノ瀬の演説は続く。
「動けなかった者達も恥じることはない。
今回の剣舞祭で自分自身を高め、成長することができればきっと変われるだろう。
では選手の皆さん、健闘を祈っている。」
そう言って一ノ瀬はステージから去って行った。
沈黙の後、1つの拍手が響き、やがてそれは伝染し大きな拍手となる。
だがナンバーズ達は気づいていた。
一ノ瀬の言葉の真意を。
「(相変わらず自分好みの兵士を作り出そうとしている。)」
黒刀は一ノ瀬の国防に対する貪欲さに嫌気が差していた。
生徒会室。
「はあ~、よかった…先輩が事件に巻き込まれたかと思いました。」
妖夢はほっとして息を吐く。
「黒刀先輩なら心配ないでしょ。むしろ相手に同情するくらいよ。」
霊夢が笑い飛ばす。
「(あっぶねえ~!軍人だとバレるかと思った~!)」
にとりは内心ハラハラしていた。
「(それにしても、あの人も無茶なことをやらせる。
テロリストは倒せ。ただし、素手で。
この中に試合前で手の内をさらすような間抜けがいるはずがない。
まあ、輝夜は別として。さて、そろそろ帰るか。)」
黒刀は入り口のドアに向かって歩こうとすると、ガラの悪い他校の代表男子が前に出て来て通行を阻んだ。
「お前、総理に褒められたからって調子に乗んじゃねえぞ!」
「そうだ!隅っこでおとなしくしてな!」
「「ハハハハハ!」」
「…どこの誰かは知らないけど通してくれない?」
「あ?てめえ!知らねえだと!去年、闘った俺を!」
「俺はその双子の弟だ!」
「(まじで記憶にない。)」
「てめえら神光学園とは2回戦であたるからその時にボコボコにしてやるよ!」
「2回戦?」
黒刀は振り返ってトーナメント表を見る。
北海道代表の隣に和歌山県代表があった。
「和歌山…あ~、あのよく忘れられる県か。」
「てめえ!なめてんじゃねえ!みかん最強だコラ!」
和歌山県代表の男が殴りかかるとその拳は空振りに終わる。
目の前にいたはずの黒刀はいつの間にか2人の背後にいて帰ろうと歩いていた。
「この調子に乗ってんじゃ…」
振り返って殴りかかろうとしたその時、
「邪魔よ。」
背後から冷たい声が聞こえた。
「あ?どこの誰だか知らねえが誰に向かって言って…。」
和歌山県代表の男は振り返った瞬間、固まる。
そこにいたのはレミリアだった。
レミリアの目は冷酷で力強かった。
自分達より背は低いはずなのに威圧感で大きく見える。
レミリアの目を見た2人は恐怖で腰が抜け尻餅をついてしまう。
レミリアはその2人の間をゆっくりと歩いて通り過ぎていく。
「(ば…化け物だ…あんな奴が同じ大会に出てるってのかよ…無理だ…勝てるわけがねえ…
あんな化け物に勝てる奴なんてこの大会にいるわけがねえ…。)」
戦意喪失したこの2人は既にこの剣舞祭で負けたも同然だった。
雪村は一部始終を観察していた。
「(メディアのカメラが既にいないから今のを後で確認できないのは痛い。
…けどやはり凄いものだな…『王』というものは。)」
雪村は素直に感心するのだった。
生徒会室。
「にとり先生、あのレミリア・スカーレットさんという方は何者なんですか?」
妖夢がにとりに訊く。
「去年の剣舞祭団体戦で1年生にして紅魔学園のエースを務め、
紅魔学園では入学1日目で校内ランキング1位になったらしい。
さらに去年はあの紅魔学園の犬走椛と闘ってノーダメージで勝利した。」
にとりの答えに妖夢は驚愕した。
「あの椛さんが…ノーダメージ…。」
「あと彼女はイギリスからの留学生です。
私もイギリスに行った時、黒刀と一度だけ会いました。
彼女には妹がいます。
才能もあって、ちょうど皆さんと同じ1年生なので選手として出場する可能性は十分あると思います。」
映姫が補足する。
さらに小町がソファの背もたれに後ろから乗りかかって
「ネットとかだとレミリア・スカーレットは東の『未来王』、弟君は西の『破壊王』って呼ばれているらしいですよ。あの2人が剣舞祭に出てからはツートップになって誰も勝てなかったんですよ。」
「そ…それで…それだけ強かったってことは個人戦で闘ったんですよね?」
妖夢が身を乗り出して訊く。
「そうか…妖夢は本選を見ていないんだっけ。いや、闘わなかったよ。」
小町がそう答える。
「え?」
妖夢は虚を突かれる。
「弟君は個人戦だけ、レミリア・スカーレットは団体戦だけだった。」
「どうして?」
「さあ、予選は通っていたはずなんだけど本選には現れなかった。」
「過去の話です。今は1回戦の相手である首里高校の対策を考えるべきです。」
映姫が話を一旦、区切らせる。
「映姫の言う通りだ。
上ばかり見て足をすくわれたら全てが台無しになる。
とりあえず予選の映像を見ていこう。」
「「「「「はい!」」」」」
にとりの言葉に妖夢達は元気よく応えた。
ED4 咲 全国編 TRUE GATE
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