東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP4 学戦都市アスタリスク2期 The Asterisk War



剣舞祭

 7月21日。午前9時。

黒刀達は神光学園の視聴覚室で首里高校戦に向けて作戦会議をしていた。

 

「本選も基本的にオーダーを変えるつもりはない。これは覚えていてくれ。」

 

黒刀の言葉に妖夢達がうなずく。

 

「まず先鋒の藤原妹紅。火属性の霊術使いだ。

平安時代で有名な藤原家の末裔でもある。

戦法はシンプルで、ひたすら炎で力押ししていくスタイルだ。

こういう相手には裏をかいていくトリッキーな闘い方ができる奴が適しているんだが…。」

 

と、そこで黒刀は言葉を切ってチルノを見る。

 

「ん?あたいなら天才的に勝てる!」

 

チルノの言葉に黒刀はため息を吐いた。

 

「いや、お前はいつも通りでいいよ。変に闘って調子崩されても困る。」

 

「分かった!」

 

チルノは親指をグッと立てる。

黒刀は気を取り直す。

 

「次鋒は七瀬愛美。

気づいていると思うが、こいつもナンバーズだ。

戦闘スタイルは『チャーム』というスキルを使って異性を魅了し、

自分に有利な状況に持っていて勝つスタイルなんだが…。」

 

と、また言葉を切って魔理沙を見る。

 

「ま、大丈夫だろう。」

 

と、結論づけた。

 

「いやいや、魔理沙は男っぽいからかかっちゃうかもしれないわよ?」

 

霊夢が魔理沙をからかう。

 

「私は正真正銘の女!」

 

魔理沙が机をバンッと叩く。

 

「え~、でも言動とか…あと体重とか…。」

 

「体重のことは言うな~!」

 

魔理沙の顔が真っ赤に染まる。

 

「はいはい、2人とも落ち着け。」

 

黒刀が霊夢と魔理沙の肩に手を置く。

 

「七瀬の『チャーム』は眼を見ない限りかかることはないから安心しろ。」

 

「だから…私は…女だ…。」

 

「ああ、分かってるよ。」

 

黒刀は魔理沙の頭にポンと優しく手を置いた後、教卓に戻り、モニターウインドウに視線を戻す。

 

「次は中堅の鈴仙・優曇華院・イナバ。

兎耳の獣人族でジャンプ力が特に高く、さらに魔法弾の射撃も一流だ。

妖夢にとっては経験の少ない遠距離主体の相手だが頑張ってほしい。」

 

「はい!」

 

黒刀のエールに妖夢は応える。

 

「次は副将の蓬莱山輝夜。

弾幕を使った遠距離戦と1000兆分の1の速度の世界に踏み込むスキルを持っている。」

 

「1000兆分の1のね~。」

 

霊夢は頬杖をつきながらつぶやく。

 

「ま、なんとかするわ。」

 

「じゃ、頼むわ。」

 

「(軽っ!)」

 

黒刀の隣に立つ大妖精が霊夢と黒刀のやり取りに心の中でツッコむ。

 

「で、次が大将の海道修…ってあれ?にとり先生~、映像出ないんですけど~。」

 

「悪い。首里高校は予選を副将までで勝ち上がっているし、海道修は個人予選にも出ていないからデータがないんだ。」

 

「そっか…じゃあぶっつけ本番で何とかする。

それじゃ最後に試合のスケジュールを確認しておく。

初戦は8月1日。11日後だ。

俺らは1回戦、2回戦、3回戦、準々決勝、準決勝、決勝の計6試合を勝てば優勝だ。短そうにも思えるが1回負ければ終わりのトーナメントだ。

気を抜かずに全力で闘い、そして果たそう…全国制覇!」

 

その言葉を聞いた妖夢達の表情が引き締まる。

 

「場所は東京デュエルアリーナ!

7月30日の午後5時に学校の正門前に集合して、にとり先生の車に乗って出発する。」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 7月29日。

今日は黒刀と映姫の引っ越しの日だった。

実は住んでいたアパートに住んでいたことには2つ理由があった。

1つは庶民的生活を学ぶこと。

もう1つは新居に引っ越すまでのつなぎである。

引っ越し屋や小町に手伝ってもらい、順調に荷物や家具を新居の中に入れていく。

1階にはカフェスペースがあり、黒刀と映姫が自分達で機械、テーブル、椅子など必要なものを運んでいく。

映姫が場所を指定して黒刀が置く。

さらにこの新居は商店街のど真ん中に建っているため、商店会にも加入し、商店街の事業としての活動の準備も進めている。

 

「まあ、開店は俺が卒業してからだがな。」

 

「約2年ですか…長いですね。」

 

「それまでは誰かの誕生日パーティーの会場にでも使おう。」

 

「それはいいですね♪」

 

映姫が優しく微笑む。

やがて引っ越しが完了した。

 

「じゃあ、私は帰るな。あとは2人でごゆっくり~。」

 

「ありがとう小町。」

 

「いいってことよ!」

 

小町は手を振って帰って行った。

小町の姿が見えなくなったところで、

 

「それじゃ中に入りましょうか?」

 

映姫が黒刀に声をかける。

 

「ああ。」

 

2人は手をつなぎ玄関から新居に入る。

順番に部屋を見ていき、やがてリビングのソファに座る。

 

「なんか夢みたい…。」

 

映姫はそうつぶやく。

 

「なにが?」

 

黒刀がそう訊く。

 

「黒刀とこんな素晴らしい家に住んで…こんなに幸せでいいのかな?」

 

「いいんだよ。姫姉が幸せで笑っていてくれたら俺はそれでいい。」

 

「黒刀…んっ…。」

 

映姫がいきなり黒刀に抱きつく。

 

「ひ、姫姉⁉」

 

黒刀は突然の事に驚く。

 

「ありがとう…。」

 

映姫は黒刀にお礼を囁いた。

 

「あ…うん…どういたしまして………それより、ほら!夕飯作らないと!」

 

黒刀は照れながら言った。

 

「あ…そうですね。今日は私が作っていいですか?」

 

映姫は黒刀かた体を離して訊く。

 

「う…うん…お願い。」

 

「はい♪」

 

映姫は笑顔でキッチンに向かって行った。

黒刀はテレビを見ながら、

 

「(はあ~、ドキドキした~!

姫姉の不意打ちは破壊力ありすぎなんだよ!

ほんと…反則だ…。)」

 

 

 

 7月30日。午後4時50分。

神光学園の正門前にはにとりのミニバンが停車していた。

 

「まだ来ていないのはチルノと魔理沙と妖夢か…。」

 

黒刀がつぶやく。

 

「チルノちゃんは商店街で買い物してから来るって言っていました。」

 

大妖精が横から声をかける。

 

「まあ、あと10分あるし大丈夫だろう。」

 

黒刀がそう口にしているとチルノが到着したようで、

 

「あたい参上!」

 

「惨状?」

 

「ちがわい!」

 

「チルノちゃん、遅いよ~!」

 

「ごめんごめん!商店街でアイス買ってた。」

 

「溶けてるぞそれ。」

 

黒刀が指さす。

チルノが持っているアイスは気温で溶けてしまっていた。

 

「なに~!ならば凍らせてやる!」

 

チルノが溶けたアイスを凍らせるとそのアイスはカチンコチンになってしまった。

 

「チルノちゃん、それアイスクリームだったんだよ!

これじゃただの氷の塊だよ!」

 

大妖精がツッコむ。

 

「まあまあ、アイスクリームには戻せないけど別の料理にはできるぞ。

姫姉、俺のバッグから包丁と大きいグラス持ってきて。」

 

「うん、分かった。」

 

映姫は車の中から黒刀のバッグを取り出し、その中から黒刀のマイ包丁と大きいグラスを取り出す。

 

「はい。」

 

映姫は黒刀の手渡す。

 

「ありがとう。チルノ、それ貸して。」

 

「うん。」

 

チルノは氷の塊を黒刀に手渡す。

 

「それじゃ見てろ。」

 

そう言って黒刀は氷の塊を上に投げて、大きいグラスの中に落ちる寸前で高速に切り刻み、なんとかき氷に変えてしまった。

 

「「お~!」」

 

チルノと大妖精が拍手する。

 

「あ、でも味がねえな。」

 

「大丈夫!これ元々バニラ味だから。」

 

チルノはそう言ってかき氷を食べる。

 

「バニラ味のかき氷…意外と面白いかも…今度、レシピ組み立ててみようかな。」

 

黒刀は顎に手を当てて考え込む。

 

「あはは…。」

 

大妖精は苦笑いする。

 

「お~い!」

 

そこに箒に跨った魔理沙が到着した。

地上に降りた魔理沙はチルノが食べているかき氷を見た。

 

「お、かき氷だ!一口ちょうだい!」

 

「やだ!これはあたいのだ!」

 

「いいじゃん、一口くらい。」

 

「ダメ!」

 

「う~ん、そこまで断られたらしょうがないな。あ、霊夢は?」

 

「車の中で寝てるよ。」

 

黒刀が車を指さす。

 

「よし、悪戯してやろう!」

 

魔理沙は車の中に入る。

 

「オチが見えるな。」

 

黒刀はやれやれと首を横に振った。

 

 

 

 午後4時57分。

 

「すみませ~ん!」

 

正門前に妖夢が走ってきた。

 

「「(そしてこっちもオチが見える。)」」

 

「荷物をまとめてたら時間が過ぎちゃってきゃっ!」

 

妖夢はこけた。

 

「「(やっぱり。)」」

 

「大丈夫か?妖夢~。」

 

黒刀は妖夢に声をかける。

 

「だ、大丈夫です~!最近、受け身が取れるようになってきましたから!」

 

妖夢は大声で返した。

 

「「(もろずっこけたようにしか見えなかったけど…。)」」

 

黒刀と大妖精は心の中で思う。

 

「(まあ、これを見たら誰だってこいつが剣舞祭に出場する選手だなんて思わないだろうな。)」

 

その時、車の中で誰かが殴られる音が聞こえた。

 

「よし、みんな車に乗るぞ。」

 

「「「はい!」」」

 

 

 

 永琳は別行動で、にとりの車には運転席ににとり、助手席に映姫、

1つ後ろの席に霊夢、チルノ、魔理沙、1番後ろの席に黒刀、妖夢、大妖精が座っていた。

黒刀が右窓際席で頬杖をつきながら外の景色を眺めていた。

 

「不思議だ。」

 

黒刀はそうつぶやいた。

 

「何がですか?」

 

黒刀の隣に座る妖夢が訊く。

 

「去年は俺とにとり先生だけだったのに今はこんなにも仲間がいて、一緒に東京に行けるのが…なんか新鮮だなって…。」

 

「先輩。」

 

「ん?」

 

「先輩はこのチームのキャプテンなんです!

だからいつも通り私達を引っ張ってください!

みんな先輩のことを信じていますから!」

 

妖夢の言葉に前の座席に座っている霊夢、チルノ、魔理沙が振り向き信頼した目で黒刀を見つめる。

後輩に頼られる経験の少ない黒刀は少し照れてそっぽを向いた。

 

「…ありがとう。」

 

小さい声でお礼を言った。

そんな黒刀を見た妖夢達は顔を見合わせて嬉しそうに笑う。

その光景をバックミラーで見ていた映姫とにとりも微笑ましそうに笑う。

 

「にとり先生、東京までどのくらいで着くんですか?」

 

大妖精が訊く。

 

「ん~、中央自動車道を通ってるから7時間半ってところかな。」

 

「だそうですよ先輩…ってあれ?」

 

妖夢が黒刀に声をかけると、黒刀は気持ちよさそうに寝ていた。

 

「無理もない。作戦立案から特訓メニューまでほとんど考えていたからな。」

 

にとりが運転しながら言った。

 

「睡眠時間を削ってまでやっていましたからね。

今はゆっくり休ませてあげましょう。」

 

「「「「「はい。」」」」」

 

映姫の言葉に妖夢達は黒刀を起こさないくらいのトーンで返事する。

 

 

 

 午後10時。

妖夢達も眠くなったようでそのまま眠ってしまっていた。

妖夢の頭は黒刀の肩の上に置かれていた。

 

「幸せそうですね。」

 

「ああ。」

 

映姫とにとりが言葉を交わす。

 

「私もそろそろ寝ます。」

 

映姫が背もたれに背中をあずける。

 

「その前に少し言っておきたいことがある。」

 

「何ですか?」

 

「去年の黒刀のことだ。

おそらくだが黒刀は去年の剣舞祭の試合中の記憶が一切ない。」

 

「っ!」

 

映姫がにとりの言葉に驚く。

 

「本人はうまくごまかしているつもりみたいだけど付き合いの長い私には分かった。

多分、闘った感覚は残っていると思う。それと…。」

 

「それと?」

 

「これは私の勝手な予測なんだがあいつの中には何かがいる。」

 

「何かって何が?」

 

「それは分からない…が…去年の試合中のあいつはどこか雰囲気が違った。

まるであいつがあいつでないような感じだった。

私はそれが怖い。

もし今年もそんなことが起きたら黒刀はどうなってしまうのかを考えてしまうと。

…映姫は何か心当たりはないか?四季家の術式関連で。」

 

映姫は少し考え込んだ後、

 

「いえ、四季家に人格を作り出す術式など存在しません。」

 

否定した。

 

「そうか…映姫でも知らないとなるといよいよ謎だな。

…時間を取らせて悪かったな。

ゆっくり休んでいてくれ。」

 

「はい…おやすみなさい。」

 

映姫はそう言って目を閉じた。

 

 

 

 7月31日。午前0時30分。

にとりの車が東京の予約していたホテルの駐車場で停車する。

 

「ほら、着いたぞ。お前ら、起きろ。」

 

にとりは妖夢達を起こす。

 

「黒刀、起きなさい。」

 

映姫はそう言って黒刀の体を揺する。

 

「ん~…おはよ~姫姉~。」

 

「おはようには少し早いですけどね。」

 

「さっさとチェックインを済ませるぞ。」

 

にとりはそう呼びかける。

 

 

 

 チェックインを済ませて、部屋割りも前と同じになり、それぞれ部屋の中に入っていく。

妖夢が窓から夜景を見て、

 

「わあ!すごい!綺麗だしビルも高い!」

 

 東京のほとんどのビルの高さは100階ほどの高さでそれが並んでいた。

日本の技術力のほとんどは東京に流れているため、他の都市は置いていかれている状況で、田舎者からすれば東京はまさに未来都市だ。

街中にはモノレールや反重力を応用した車やバイクが走っていた。

 妖夢が夜景を眺めていると、空間ウインドウが展開され、一斉送信のメッセージが届いた。

送信者はにとりだった。

内容は今日の午前8時にホテルロビーに集合。

それまではホテル内であれば自由行動と書かれていた。

現在、にとりは剣舞祭の手続きなどでホテルを離れていた。

 

「なにしてよう…。」

 

妖夢が考えていると、

 

「妖夢、大浴場行こうぜ!」

 

魔理沙達が妖夢の部屋に入ってきた。

 

「うん、行く!」

 

妖夢は元気よく応えて魔理沙達と一緒に大浴場へ向かった。

 

 

 

 

「(明後日の1回戦…できるだけ力は隠しておきたいけど…そううまい話はないだろうな。)」

 

黒刀はそう考えて、『八咫烏』を鞘から抜き、その刃を見つめる。

しばらくしてそれを鞘に戻し、ベッドの上に置いて、部屋のシャワー室に向かう。

 

 

 

 午前8時。

集合時間になり、妖夢達はホテルロビーに集合する。

 

「よし、全員そろっているな?」

 

にとりが確認する。

 

『はい!』

 

妖夢達は返事をする。

そして、東京デュエルアリーナに向かうためホテルを出ると外に永琳がいた。

 

「準備は出来たみたいね。それじゃ行くとしましょう。」

 

「車で行かないんですか?」

 

妖夢が訊く。

 

「東京は混んでいるからモノレールに乗って行った方が早いわ。」

 

「モノレールに乗れるんですか!」

 

妖夢の目がキラキラした目になった。

 

「私、初めてなんです!」

 

「開会式が終わったら自由行動だから観戦しても東京見物してもいいんだぞ。」

 

黒刀が妖夢に声をかける。

 

「本当ですか?」

 

「ああ。」

 

 

 

 妖夢達はモノレールに乗って外の景色を眺めていた。

 

「すごい!すごい!」

 

妖夢は子供のようにはしゃいでいた。

そして、東京デュエルアリーナにたどり着いた。

大きさはオリンピックができてもおかしくないくらいの大きさで、内部は東西南北と中央にそれぞれ会場があり、そこで試合を行っていく。

 

「「「「「わあ~!」」」」」

 

妖夢、霊夢、魔理沙、チルノ、大妖精は感動していた。

 

「ここで…ここで日本一になるんですね先輩!」

 

妖夢は黒刀の方を向いてそう口にする。

 

「そうだ。そのためにここに来た。…にとり先生、開会式は9時からでしたよね?」

 

「ああ。」

 

「それならエントリーを済ませないと。」

 

「それなら先にやった。」

 

「仕事が早いな。」

 

 そして、黒刀、妖夢、霊夢、魔理沙、チルノは前に一歩踏み出し横一列に並んで、

東京デュエルアリーナを見上げていた。

それぞれの想いを抱いて…。

 

 

 

 午前9時。

開会式になり、長い開会の挨拶を聞き流していた黒刀だったが、

視界に入れたくない人物が映ってしまい、さらに相手も手を振ってきた。

黒刀は慌てて目を逸らした。

 

「どうかしましたか先輩?」

 

妖夢が後ろから声をかける。

 

「い…いや…なんでもない…。」

 

そうして開会式は無事に終了する。

開会式が終わり、廊下を歩いていると、

 

「あれ、黒刀は?」

 

魔理沙が口を開く。

他の皆も周りを見渡すが黒刀の姿はなかった。

 

「まったくあの子はどこをうろついているのかしら…帰ったらお説教ね。」

 

映姫は頭を抱えた。

 

 

 

 

「まったくあいつら迷子になりやがって。」

 

黒刀はつぶやいていた。

すると後ろから、

 

「ちょいと待ち!」

 

突然、声をかけたれた。

黒刀が振り向くとそこにいたのは身長150㎝くらいの小柄で、尖った赤髪で、活発そうな関西弁の少年だった。

 

「あんさん、ヨキ黒刀やろ?」

 

「ヨキ?…ああシキね。」

 

「わいと勝負せえへん?」

 

「俺と?」

 

「せや!」

 

「悪いが試合前にはしたくない。」

 

「そんな堅いこと言わんといて~!ほんなら3分…3分だけでええから!」

 

「(口調からして大阪か…こんな奴いたっけ?…あんまり気乗りしないけど手刀で決めとくか。)」

 

黒刀は考えた後、一瞬で少年の背後に移動し、首に手刀を決めようとする。

 

「(悪いな。)」

 

黒刀が手刀を振る…がその手刀はなんと空振る。

 

「っ!」

 

少年は黒刀の手刀を宙返りで躱し、さらにその足を壁にくっつけていた。

 

「(スキル『スパイダー』…いや、それより今のこいつの動き…読んでたとかじゃない。

まさか反射神経だけで躱したのか?いや…これは…シンプルに動物的カンってやつか。)」

 

「なあ?もっとやろうや!」

 

「…面白い。」

 

「いくで!」

 

少年が壁から降りて、突撃しようとする。

 

「そこまでや!」

 

その時、別の声が響く。

声の主は身長180㎝くらいで、白髪で、顔立ちが整っていて優しそうな瞳に闘志を隠した男だった。

 

「金ちゃん、あかんで。」

 

「え~!もうちょいだけ!」

 

「あかん。みんな待っとるんやから。」

 

黒刀が黙っていると、男の方から、

 

「ああ、すまんな。俺は黒岩俊介。王龍寺高校の3年生でキャプテンをやっとります。

こっちは1年生の…」

 

「大門金次や!よろしゅう!」

 

「神光学園2年キャプテンの四季黒刀だ。」

 

「よろしゅうヨキ!」

 

「もうそれでいいよ。」

 

黒刀は呼び方を渋々認めた。

 

「行くで金ちゃん。」

 

「あいよ!ほなまたなヨキ!」

 

「はいはい。」

 

黒刀は軽く手を振る。

 

「さて、あいつらはどこかな…。」

 

 

 

 一方、妖夢達は…

 

「先輩、いませんね。」

 

「携帯にかけても出ませんしね。」

 

妖夢と大妖精が心配そうに話す。

ちなみにこの時の黒刀は金次に勝負を仕掛けられているところだった。

 

「あ、姫姉だ~!」

 

その時、声が聞こえた。

一瞬、黒刀だと思ったがその声は女性の声だった。

声に振り向いてみると、

 

「あなた…もしかして早苗?」

 

映姫が口を開く。

 

「そうですよ!久しぶり~!」

 

早苗は映姫との再会に喜んでいる。

 

「早苗、どうしたの?いきなり走り出して…ってあなたたちは…。」

 

早苗を追って現れたのは紅魔学園のレミリアと天子だった。

 

「レミリア先輩!あれ、フランちゃんと咲夜先輩は?」

 

早苗はフランと咲夜がいないことに首を傾げる。

 

「後で来るわ。早苗、この方達は?」

 

「姫姉がいるってことは神光学園の人達だと思いますよ。」

 

「そう…初めまして。紅魔学園2年のレミリア・スカーレットです。よろしく。」

 

「3年の比那名居天子よ。」

 

その名前を聞いた妖夢と大妖精が声をひそめる。

 

「この人が…レミリア・スカーレット…。」

 

「それに…比那名居天子ってたしか一昨年の個人戦チャンピオンじゃないですか…。」

 

「チャンピオンだって?だったらあたいと勝負だ!」

 

チャンピオンという単語を聞いたチルノが天子を指さして宣言する。

 

「決勝まで来れたらな。」

 

天子は軽くあしらう。

 

「ちぇ~。」

 

チルノは口を尖らせながらも引き下がる。

早苗が周囲を見渡す。

 

「ところでセンパイはいないんですか?私、センパイに会いに来たんですけど。」

 

「あ~…黒刀は…。」

 

映姫が口ごもる。

すると霊夢が、

 

「あんた…どこかで……あっ、そうだ!あんた神社特集の雑誌に載ってた!」

 

霊夢が早苗を指さす。

 

「見てくれたんですか!」

 

早苗が興奮する。

 

「守矢神社の生意気巫女!」

 

ブチッ。

 

「へえ~、誰のことを言っているんでしょうかね~?」

 

「あら、あんたのことを言っているに決まっているでしょ。」

 

霊夢と早苗が笑顔のまま言い合う。

 

「言ってくれますね~。あなたこそ何なんですか?巫女服着てますけど…

もしかしてコスプレですか?会場間違えてませんか?」

 

カッチーン。

 

「コスプレじゃないわよ!ちゃんと巫女に決まっているじゃない!」

 

「へえ、何て神社ですか?」

 

「博麗神社!」

 

「知らない名前ですね~。有名じゃないってことはもしかして賽銭箱には一銭も入ってないとか?」

 

「あなたね~!」

 

霊夢が言い返そうとすると魔理沙がその肩に手を置く。

 

「何よ魔理沙!これからが…」

 

「事実だからしょうがない。」

 

「だまらっしゃい!」

 

早苗がため息を吐く。

 

「まったく、あなたとおしゃべりに来たんじゃないです。

私はセンパイに会いに来たので早く場所を教えてください。」

 

「俺が何だって?」

 

声が聞こえた。

人混みをかき分けて現れたのは黒刀だった。

 

「センパイ~!」

 

すると早苗が黒刀に飛びついて抱きつく。

いきなりのことにバランスを崩し、床に倒れる黒刀の胸に早苗が頬ずりをしていた。

 

「てめえ…早苗!お前…は~な~れ~ろ~!」

 

黒刀は早苗の顔を押さえつけ必死に引きはがそうとする。

 

「センパイ!会いたかったですよ~!」

 

だが意外と離れなかった。

妖夢が青ざめた顔で、

 

「せ…先輩、その人とはどのような関係で…。」

 

「あ?関係って…ただの元カノだよ!ってか離れろ!」

 

黒刀は早苗を引きはがそうともがく。

 

「「「「「え~!も…元カノ⁉」」」」」

 

妖夢達が大声で驚く。

 

「「「まさか恋愛経験があったとは…。」」」

 

霊夢、魔理沙、大妖精が口を揃えて言った。

 

「お前ら、俺を何だと思っているんだ!」

 

「「「バトルマニア。」」」

 

「ハモんな!」

 

ようやく早苗を引きはがした黒刀がゆっくり立ち上がる。

 

「お義兄様~!」

 

そこへ背後から腰にタックルが飛んできた。

 

「ぐはっ!」

 

短い悲鳴を上げて黒刀は前のめりに倒れる。

 

「やっと会えた~!お義兄様~!」

 

黒刀の背中に頬ずりをしているのはフランだった。

 

「「「「「お…お義兄様~⁉」」」」」

 

またも妖夢達は驚く。

 

「黒刀先輩ってそういう…。」

 

大妖精はドン引きしていた。

 

「違う!フランが勝手にそう呼んでいるだけだ!」

 

黒刀は必死に否定する。

 

「ほら、仲も良さそうだし…。」

 

霊夢がそう言うと、霊夢、魔理沙、大妖精が後ずさりする。

妖夢は苦笑いで、チルノはいまいち状況を飲み込めていない。

 

「ってかフラン、何度も言ってるだろ!俺はお前の兄じゃねえ!」

 

「え~、だってお姉様と結婚すれば私は自動的に妹になるじゃない?」

 

フランは笑顔でそう口にした。

 

「「な…誰がするか!」」

 

黒刀とこれまで黙っていたレミリアが同時に否定する。

 

「え、しないの?」

 

フランが可愛らしく首を傾げる。

黒刀はフランの抱擁から抜け出し、レミリアと向かい合う。

 

「何で俺がこんな奴と結婚しなきゃいけないんだ!最悪だ!」

 

ピキッ。

 

「それはこっちのセリフよ!私だってあなたみたいな厨二病カラスとはごめんよ!」

 

ブチッ。

 

「言ってくれるじゃねえか!このロリッコウモリ!」

 

黒刀が言い返す。

 

「まずいな。」

 

にとりが口を開く。

 

「何がですか?」

 

妖夢が訊く。

 

「黒刀は自分をカラス扱いされるのが一番我慢できないんだ。」

 

 

 

 黒刀とレミリアの言い合いは続く。

 

「ロリでもコウモリでもないわ!このハーレム王!」

 

「ハカイ王だ!」

 

 

 

 

「何でこんな仲悪いんですか?」

 

妖夢がにとりに訊く。

 

「う~ん…2人とも2年生で、『王』で、雷属性で、金持ちで、プライドが高くて、海外育ちで、学園トップで、優勝経験がある。つまりは…キャラ被りってやつ?」

 

「あはは…。」

 

妖夢は苦笑いするしかなかった。

騒ぎを聞きつけてどんどん周囲に人が集まってくる。

 

「先輩、そろそろやめておいた方が…っ!」

 

妖夢が止めようと声をかけた瞬間、黒刀とレミリアから凄まじいオーラが放たれ、風圧まで起きている。

ロビーのモニターウインドウからは

《今日は雲1つ無い快晴となるでしょう》と天気予報の案内が聞こえるが、外を見ると、雲どころか雷まで落ちていた。2人のオーラが影響しているのだろう。

 

「「ここでぶっ潰す!」」

 

2人がそう言い放ったその時、その間に何者かがいつの間にか割り込んでいた。

 

「諏訪子…。」

 

「やあやあ、久しぶり。黒坊、喧嘩はダメだよ…レミリアも。」

 

洩矢諏訪子。『蝦蟇王』

紅魔学園の教頭。剣舞祭では紅魔学園の監督を務めている。

金髪のショートボブで、体格は子供並みの小柄、青と白を基調とした洋服を着ていて、

白のニーソックスを履いていて、頭には目玉が2つついた特殊な帽子を被っている。

 

「「はあ…。」」

 

諏訪湖の介入により黒刀とレミリアはオーラを抑えた。

 

「お久しぶりです諏訪子さん。」

 

にとりが諏訪子に声をかける。

 

「いいよいいよ。そんな堅苦しい呼び方しなくても…同じ『王』なんだから。」

 

「分かりました…『蝦蟇王』の諏訪子。」

 

 妖夢達は絶句した。

何せこの場に『王』が4人揃っているのだから。

 

「これで陛下もいたら全員、揃うのにね。」

 

諏訪子が笑顔で口にする。

 

「皇宮ならともかく他じゃありえないな。」

 

黒刀が首を横に振る。

 

「同感だ。」

 

にとりが黒刀の言葉に同意する。

 

「あの人がこんなところに来るはずがないわ。」

 

レミリアも同様の反応を示している。

4人以外理解できない会話をしている。

 

「それじゃ、そろそろ行こうか。」

 

諏訪子が会話を打ち切る。

 

「そうね。」

 

レミリアもそう言って、諏訪子に続く。

その後を咲夜と天子もついていく。

 

「じゃあね、お義兄様♪」

 

「センパイ、またね~!」

 

フランと早苗も去って行く。

嵐のような時間だった。

空もいつの間にか晴れていた。

 

 

 

 その後はそれぞれ自由行動していき、剣舞祭は1日目は終了した。




ED4 咲 全国編 TRUE GATE

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