首里高校代表ベンチ。
「いや~予想外に手強いね~!」
愛美は腕を伸ばしながら心にもないことを口にした。
「別にたいしたことないと思いますけどね…私は。」
そんなことを言うのは鈴仙・優曇華院・イナバ。
髪は薄紫色で足元に届きそうなくらい長く、瞳の色は 赤、
デュエルジャケットはツーピース制服で、頭にはヨレヨレのうさ耳が生えている。
学年は1年生。
鈴仙はベンチから立ち上がってデュエルフィールドに入る。
「やれやれ、困ったものね。うちのルーキーには。」
輝夜が呆れたように首を横に振る。
「まあ、入学してこの短期間での代表入りは確かに驚異的だよな。」
「あら妹紅、もう帰ってきたの。」
医務室から戻ってきた妹紅に輝夜が声をかける。
妹紅と輝夜は入学時には色々と張り合う仲だったが3年となった今ではこうして打ち解けている。
妖夢の前に鈴仙が立つ。
妖夢は鞘から二本の剣を抜く。
《3…2…1…0.デュエルスタート》
「(確か魔法弾射撃が得意だった。なら接近戦に持ち込んで勝つ!)」
妖夢は床を蹴って突撃する。
「妄執剣 修羅の血 二式!」
二本の剣による突進剣撃を鈴仙はジャンプして避け、さらに指先から魔法弾を数発撃つ。
その射撃は正確で妖夢の膝、肩、肘に命中する。
妖夢もなんとか頭と胸を剣でガードしていた。
鈴仙はそのまま地上に降りず、ハイジャンプとロージャンプを交互に使いながら空中から魔法弾を連射していく。
「ならこっちだって!」
妖夢も対抗してハイジャンプする。
鈴仙はそれを読んでいたかのようにさらに上へハイジャンプする。
妖夢もそれを追ってハイジャンプを連発する。
「(こんなところで負けられない…もし負けたら…。)」
妖夢の脳裏に最悪のイメージがよぎる。
《両者、どんどん高度を上げていきます!》
《限界硬度までもう少しですね》
「(あともう少し…追いつける!)」
妖夢がそう思ったその瞬間、鈴仙がいきなりこちらに向きを変えてきた。
「え?」
妖夢が驚くのも束の間、鈴仙の指先から魔法弾が放たれる。
「(ダメージ覚悟で突っ込むしかない!)」
妖夢が速度を上げたその時、妖夢の肩に着弾した魔法弾が爆発した。
「(なんで…通常の魔法弾ではこんな爆発はしないはず…。)」
「なんでって顔をしているわね。教えてあげる。
これは爆裂弾と言って魔法弾に爆発効果を加えたものよ。
威力は高いけど射程が短くてね。
だけどよかったわ…あなたが追いかけてくれて。」
「っ!」
妖夢はそこで自分が誘い込まれていることに気づく。
急いで方向転換して地上に戻ろうとロージャンプする。
「逃がすと思っているの?」
鈴仙は逃げる妖夢をロージャンプで追いかけて魔法弾と爆裂弾を撃つ。
妖夢は数発は躱したり、ガードしたりするが、残りの弾は直撃してしまう。
「ぐっ!」
妖夢は痛みに耐えながらなんとか地上に着地する。
その時、追撃の魔法弾が放たれるが床を転がってそれを躱す。
体勢を立て直そうと立ち上がった妖夢の懐に鈴仙が潜り込む。
「(接近戦⁉)」
予想外の動きに妖夢は驚く。
鈴仙が回し蹴りすると、妖夢はそれを二本の剣を交差してガードするが、勢いを殺しきれず壁まで吹っ飛ばされてしまう。
「これで終わりね。」
鈴仙が指先に魔力を集中して魔法弾を放とうとしたその時。
《タイムアップ。第1ラウンド終了》
機械音声が鳴り響く。
「命拾いしたみたいね。だけど第2ラウンドも闘えるかしら?そんなザマで。」
鈴仙はそう言ってベンチに下がる。
黒刀は試合中ずっと険しい表情で見ていた。
妖夢がうつむきながらベンチに戻ってくると、黒刀はベンチから立ち上がり、妖夢の元へ歩くといきなり胸倉を掴んで壁に叩きつけた。
「お前、勝つ気あんのか?」
黒刀は厳しい声で言った。
妖夢は黒刀の急な行動に驚きながらも、
「も…もちろんです!」
「ちょっと黒刀!」
映姫が止めようとするがにとりがそれを手で制した。
「ならさっきの試合は何だ?
とても勝つ気のある奴の闘いには見えなかったぞ。
あれは敗北をイメージした奴の闘いだ。」
「っ!」
黒刀の言葉に妖夢の肩がビクッと震える。
「負けたらなんて考えてたのか?
甘えるな!そんな奴が全国制覇できるか!どんなに無様でもいい!泥臭くたっていい!最後まで勝つことをあきらめるな!…それでもさっきのような闘いをするっていうなら今すぐ棄権してもらう。…いいか?お前は1人じゃない!仲間と…自分を信じろ!」
「自分を…信じる?」
「そうだ!」
「(そうか…私は1人じゃない…私には信頼できる仲間がいる…こんなに嬉しいことはない。
…信じよう…今まで共に闘ってきた仲間と強くなろうと誓った自分を。)」
妖夢は自分の胸倉を掴んでいる黒刀の手の甲に触れる。
「先輩、もう大丈夫です。」
妖夢の顔つきが変わった。
黒刀はゆっくり手を離す。
「今、お前がやるべきことは2つある。1つは仲間を信じること。
そしてもう1つはあの兎を叩き斬ってくることだ!」
「はい!」
「いってこい!」
「はい!」
妖夢は元気よくデュエルフィールドに入る。
鈴仙もデュエルフィールドに入った。
2人が向かい合う。
「出てきたんですね。怪我をしない内に棄権した方がいいと思いますけどね。」
「後悔はしたくないので。」
妖夢はそう言って、今度は『楼観剣』だけを鞘から抜いた。
「一本?私も舐められたものですね。」
「今はこっちの方がいいと思ったので。」
「同じですよ…あなたは負ける!」
《3…2…1…0.第2ラウンドスタート》
開始直後、鈴仙はハイジャンプで上に上がった。
だが妖夢はそれを追わず、地上に立ったままだった。
「もう追いかけっこする気はないようですね。
だけど剣士にとって上のポジションを取られるのがどういうことか分かっているんですか!」
鈴仙は魔法弾を連射する。
妖夢は腰を落として構えると『楼観剣』を風車のように回して全弾、弾いた。
「くっ!(なら射程ギリギリだけど爆裂弾を撃つしかない。
もし、避けられてもその先で魔法弾を撃てばいい。)」
鈴仙は指先から爆裂弾を撃つ
「終わりよ!」
鈴仙が叫ぶ。
妖夢はこの状況で冷静だった。
「自分を…信じる!気力解放!閃光斬撃波!」
妖夢は気力を解放すると同時に『閃光斬撃波』を放つ。
爆裂弾はかき消され、さらに鈴仙に斬撃が迫る。
「嘘でしょ!」
鈴仙は叫び、なんとか光の斬撃を躱すが、勢いを殺しきれず地上に落ちてしまう。
すぐに立ち上がり、妖夢を魔法弾で撃とうとするが妖夢の姿がない。
その時、背後から大きなオーラの気配を感じ、振り向くとクロスステップで回り込んでいた妖夢がいた。
妖夢が『楼観剣』を水平に振り抜くと鈴仙はハイジャンプでそれを躱して上に逃げようとする。
だが、妖夢が既にハイジャンプで上の位置を取り、鈴仙の頭を押さえ床に叩きつけた。
「ぐっ!」
鈴仙がうめき声を上げる。
妖夢がさらに『楼観剣』を突き刺そうとする。
鈴仙は咄嗟に牽制の魔法弾を撃つ。
妖夢は鈴仙の頭を押さえていた手を離して距離を取る。
鈴仙は息を切らしながら動揺する。
「(どういうこと?さっきとはまるで別人じゃない…こいつは…やばい!)」
「妄執剣…」
「(やられる!)」
鈴仙は敗北を覚悟した。
「修羅の…!」
妖夢が踏み込んだ瞬間、急に力が抜けて前のめりに倒れてしまう。
「(な…に…これ…急に力が………立てない…。)」
妖夢は手を伸ばして落ちている『楼観剣』に手を伸ばすが…届かない。
「(なんで…いやだ…まだ終わってない…まだ私はやれる…立て…立ってよ!)」
だが妖夢の体は起き上がらない。
カウントが始まる。
《1…2…3…》
「(待って…)」
《4…5…6…》
「(やめて…)」
《7…8…9…》
「(やめて!)」
《10.勝者 鈴仙・優曇華院・イナバ》
その機械音声を聞いた妖夢は悔しさに満ちた顔になる。
だがそれは鈴仙も同様だった。
自分は何もしていない。
それなのに急に目の前で妖夢が倒れて動かなくなった。
訳が分からず驚いていた鈴仙はそのままベンチに戻って行った。
妖夢はショックのあまり歓声が聞こえなかった。
妖夢には理解できなかったのだ。
負けた理由が…。
「霊夢、妖夢をベンチに連れて来てくれ。」
黒刀はそう言って廊下へのドアに歩き出した。
「黒刀先輩はどこへ?」
「少し…席を外す。」
黒刀はそう言って廊下へ出た。
霊夢は妖夢を連れて来てベンチに座らせる。
「…どう…して?」
妖夢はつぶやく。
そんな妖夢ににとりが声をかける。
「…オーラが使い過ぎたんだ…体内のオーラが尽きるとさっきみたいになる。
…ごめんな…先に説明しておくべきだった。」
「いえ…先生は何も悪くないです…私がもっと気をつけていればよかっただけですから…。」
「妖夢、今このベンチエリアには防音結界と視覚結界が張ってあります。」
「だってさ…妖夢、泣きたい時は泣いていいんだよ?」
映姫と霊夢が優しい言葉をかけてくれる。
「…霊夢…う…うわああああああああああああああああああああああああああああああ!」
霊夢にしがみつきながら妖夢は涙を流した。
「(黒刀、気を遣ってくれてありがとう。)」
映姫はドアの方に視線を向ける。
黒刀はドアの外で目を閉じながら寄りかかっていた。
数分後、黒刀はドアに寄りかかっていると内側からノックされた。
ドアから離れるとドアが開き、妖夢が顔を出す。
「先輩…もう入っていいですよ。」
「ああ。」
黒刀はそう応えてベンチに入る。
妖夢の目はまだ赤くなっていたが黒刀は声をかけず妖夢の頭を撫でてからベンチに座る。
「大丈夫だよ妖夢。」
「霊夢…。」
「このチームは負けないから!」
霊夢はそう言ってデュエルフィールドに入った。
「霊夢…ありがとう…。」
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