東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP4 学戦都市アスタリスク2期  The Asterisk War



初恋

 北会場観客席。

 

「間に合った~!」

 

「お義兄様の試合、早く見たいな~♪」

 

「すぐに始まるだろ。」

 

早苗、フラン、天子が急いで席に座った。

3人の姿に気づいた一部の観客達がどよめき始める。

「あれ紅魔学園じゃん。」

「なんでこんなところに。」

 

早苗とフランは目をキラキラさせながら、天子は冷静な目で試合を待っていた。

 

 

 

 白雪高校代表ベンチ。

 

「ん~!さて、愛の儀式を始めますか!」

 

真冬は伸びをしてからデュエルフィールドに入った。

 

 

 

 観客席。

 

「あ、出た!女狐!」

 

早苗が声を上げる。

 

「女狐?」

 

天子が早苗の言葉に反応する。

 

「私のセンパイを誑かそうとしたんです!」

 

「いや、お前のじゃないだろ。」

 

天子が冷静にツッコむ。

 

「センパイ~!その女狐ぶった斬っちゃってください!」

 

 

 

「(なんか見えちゃいけないものと聞こえちゃいけないものがあるけど無視無視。)」

 

黒刀がそんなことを考えていると、

 

「黒刀君。」

 

正面から名前を呼ばれる。

真冬だ。

 

「ん?」

 

「約束、忘れてないですよね?」

 

「ああ。」

 

「私、ずっと黒刀君のことを想っていました…あの時から…。」

 

 

 

 3年前 春。

黒刀が中学2年生だった頃。

真冬が父親の都合で奈良の中学校…光明中学校に転校してきた。

 

「白金真冬です。よろしくお願いします。」

 

真冬が自己紹介すると、その美貌に教室中が沸き上がる。

だが、その状況で全く興味を示さない者がいた。

窓際の一番後ろの席で頬杖をついて窓の外を眺めている当時13歳の黒刀だった。

真冬が担任に席を尋ねると黒刀の隣の席を指差した。

真冬はその席に座る。。

 

「よろしくね。」

 

黒刀に向かって挨拶する。

 

「ああ。」

 

返ってきたのは素っ気ない返事だった。

 

「(何よ…こっちも見ずに…しかも返事は素っ気ないし。)」

 

第一印象は最悪だった。

 

 

 

 休み時間は転校生お約束の質問攻めだった。

 

「ねえ、隣で窓の外を眺めてた男の子って誰?」

 

真冬が1人のクラスメイトの女子に訊いた。

 

「え、四季黒刀を知らないの?」

 

「え…うん。」

 

「ナンバーズだよ!」

 

「ナンバーズ…ってたしか凄いお金持ちの?」

 

「そう!」

 

「そうは見えないけど…それに授業中も窓の外を眺めていたけど先生は注意しないの?」

 

「しないっていうか出来ないんだよ。

前に先生が注意して問題に答えてみろって言ったら逆に玉砕されちゃってそれから誰も注意できないんだよ。近寄りがたいしね。」

 

ちなみに当の黒刀はどこかへ行っていた。

 

「真冬さんもあんまり関わらない方がいいよ。なんか怖いし。」

 

クラスメイトの女子が真冬にささやく。

 

「う…うん。」

 

真冬はとりあえず頷く。

 

 

 

 放課後。

それぞれの生徒が帰宅したり、部活動をしていた。

真冬は部活に入っていないのでそのまま下校する。

家に帰ると買い物を頼まれたので近くの商店街に歩いて向かう。

スーパーで買い物をしていると予想外の光景を目にしてしまった。

 

「(あれ…あそこにいるのってアイドルのアリス⁉

ん?でも隣に誰か…ってあれは四季黒刀~⁉)」

 

真冬の頭の中は完全にパニック状態だった。

すると、

 

「(もう1人来た。)」

 

精肉コーナーを見ていた黒刀とアリスに映姫が寄ってきた。

 

「(しかもアリスは変装してない⁉なになんなのこの状況、誰か説明して~!)」

 

真冬は心の中で叫んだ。

 

 

 

 黒刀達は買い物を終えてスーパーを出る。

真冬も少し遅れてスーパーを出た。

 

「なんか…気になる…。」

 

真冬は気になって尾行する。

その時、黒刀の表情を見て驚いた。

 

「(笑ってる…楽しそうに…。)」

 

それは学校の印象とは真逆だった。

 

「(本当は悪い人じゃないのかもしれない。

なんか尾行している自分が恥ずかしい…帰ろう。)」

 

真冬が踵を返したその時。

「泥棒~!」

おばさんの声が聞こえた。

ひったくりだ。

1台のバイクが真冬の真横を通り過ぎていく。

そして、そのまま黒刀達の方へ…

 

「危ない!避けて!」

 

真冬が思わず叫ぶ。

 

「おら~!死にたくなかったらどきなガキども!ひゃはははっ!」

 

ひったくりの犯人が笑いながらバイクを走らせる。

 

「(もうダメ!)」

 

真冬は見ていられず目を瞑る。

少ししてから恐る恐る目を開けると、またもや予想外の光景を目にした。

黒刀の左足がバイクの前輪を止めていた。

あまりの勢いに耐えきれず、ひったくりの犯人はバイクから投げ出され黒刀の頭上を越えて地面に転がっていた。

なんとか立ち上がったひったくりの犯人はそのまま逃げようとする。

 

「俺がやる。」

 

「ほどほどにですよ。」

 

「了解。」

 

黒刀と映姫が短いやりとりの後、次の瞬間にはひったくりの犯人の前には黒刀が立ち塞がっていた。

 

「この!死ね!」

 

ひったくりの犯人はポケットからナイフを取り出し黒刀を突き刺そうとする。

黒刀は体を少しひねって躱し、ひったくりの犯人の腕を掴んで投げる。

地面に叩きつけられたひったくりの犯人は気を失った。

 

 

 

 警察が到着したのはそれから5分後だった。

真冬は何が起こったのか理解出来ず、しばらくの間、放心状態となっていた。

 

 

 

 翌日。

真冬は黒刀のことが気になってしょうがなかった。

話しかけようと思ったが、学校にいる黒刀は話しかけづらかった。

 

 

 

 放課後。

真冬が1人で住宅街を通って下校していると真横にいきなり黒い自動車が停まり、中から出てきた3人組の男に掴まれ、薬品のようなものを嗅がされ眠ってしまうと車の中に入れられどこかに連れていかれてしまった。

 

 

 

 真冬が目を覚ましたのはどこかの廃工場の中だった。

体を動かそうと思ったが柱に手を縛られて動かせない。

 

「無駄だぜ。」

 

声が聞こえたので視線を向けると20代くらいの男がナイフを持ちながら近づいてきた。

 

「てめえは人質なんだ。おとなしくしてろ。」

 

「お前、医者の娘らしいな!さぞかし金になるだろうな!」

 

仲間の1人が気味の悪い笑顔を浮かべる。

 

「既に交渉は済んでいる。もうすぐ金を持ってこっちに来るはずだ。

そうなったらお前はもう用済み。安心しろ…ちゃ~んと殺してやるからよ。」

 

ナイフを持つリーダーの男が耳元で囁いてくる。

 

「それにしても中々の上玉じゃねえか!なあ?

金の前にちょっとだけ楽しむっていうのはダメか?」

 

仲間の1人が右手の親指と人差し指で少しだけっとジェスチャーする。

 

「ダメだ。取引の前に傷つけたら商品にならねえだろうが!」

 

リーダーの男が怒鳴って却下する。

 

「ちぇ~!」

 

「…あなた達、こんなことしてただ済むと思っているの?

すぐに警察が来て捕まるに決まっているわ!」

 

真冬が彼らを睨みつけて言い放つ。

だが、男達の反応は、

 

「プッ…プハハハハ!警察?んなもんになにが出来んだよ!

日本の警察なんてたいしたことねえよ!」

 

仲間の1人が笑い飛ばす。

 

「ま、そこでおとなしくしているんだな。」

 

リーダーの男がそう言うと、真冬から離れた場所でコソコソと話し始める。

 

「お前ら、分かってるな?金を持った奴が来たら…」

 

「そいつをこれでぶっ殺して、金だけ奪って女も殺して逃げる。」

 

リーダーの男の念押しに仲間の1人がアサルトライフルを見せつける。

 

「これで俺達は億万長者だ。」

 

リーダーの男がナイフの峰を舌で舐める。

それを見た真冬は背筋が凍り付いた。

死という人間が持つ最も単純で強い恐怖を感じた。

 

「あれ~もしかして泣きそう?泣いちゃうのかな~?ハハハ!」

 

仲間の1人が侮辱し笑いだす。

その時、

 

「おい、レーダーに反応があるぞ!金を持ったバカがこっちに来る!」

 

見張りをしていたもう1人の仲間が声を上げる。

リーダーの男が笑みを浮かべる。

 

「よし、扉が開いて入ってきた瞬間に撃ち殺すぞ。」

 

3人は銃を構える。

真冬は声を出して、逃走を呼びかけようとするが恐怖のあまり声が出ない。

だが、次に起きた出来事はここにいる4人が想像も出来ないことだった。

廃工場の巨大な鉄の扉が吹っ飛んだのだ。

まるで何者かに蹴り飛ばされたかのように。

 

「な、なんだ…何が起きた!」

 

リーダーの男が動揺して叫ぶ。

そして、現れたのはバイザーで顔を隠して、左手に木刀を握る男だった。

 

「なんだてめえは!」

 

リーダーの男が叫ぶがバイザーの男は無言のままだった。

 

「撃て!」

 

リーダーの男の指示で銃弾が放たれる。

 

「死ね~!」

 

仲間の1人が叫ぶ。

しかし、またもや予想外の事態が起きる。

なんとバイザーの男は何十発の銃弾を木刀で真っ二つに斬っていた。

 

「嘘だろ!」

 

仲間の1人が叫ぶ。

 

「チッ、てめえ!これ以上抵抗するとこの女を…っていねえ!」

 

男達が真冬のいた場所を見ると、そこに真冬はいなかった。

 

「おい、あそこだ!」

 

仲間の1人が指さした先を見ると、バイザーの男は鉄骨の上に立ち、真冬を抱きかかえていた。

 

「いつの間に!」

 

リーダーの男が驚く。

 

 

 

 真冬はバイザーの男の顔を見ると呟いた。

 

「…四季…黒刀?」

 

すると、バイザーの男は真冬の唇に人差し指を当てる。

バイザーの男の目は見えなかったが優しく微笑んでいるような気がした。

真冬の耳元に顔を近づける。

 

「少しここで待っててくれ。ここなら銃弾は当たらない。」

 

下から銃弾が飛んできているが鉄骨が邪魔で2人までは届いてない。

 

「大丈夫…お前は俺が守る。」

 

バイザーの男は真冬にそう囁いた。

その言葉を聞いた真冬にもう死の恐怖はなかった。

 

「うん…待ってる。」

 

「いい子だ。」

 

バイザーの男はそう言って、真冬をそっと鉄骨の上に降ろす。

バイザーの男は下の3人組の男を見下ろすと一瞬で接近してアサルトライフルをバラバラに斬った。

銃を失った男達はナイフで攻撃してくる。

バイザーの男はしゃがんでそれを避けると仲間の1人の顎にアッパーを打ち込んだ。

アッパーを食らった男は吹っ飛ぶ、床に落ちて気絶した。

さらにもう1人の仲間の背後に移動して手刀で気絶させる。

 

「なんだよ…なんなんだよ!邪魔すんじゃねえよ!あと少しだったいうのに!」

 

リーダーの男が叫ぶと方向を変えて逃走する。

だが既にバイザーの男が回り込んでいた。

バイザーの男は拳を握りしめてリーダーの男の顔を殴り飛ばす。

リーダーの男は気絶した。

バイザーの男はジャンプして鉄骨の上に乗ると真冬を抱きかかえて鉄骨から飛び降りて床に着地して、そっと真冬を降ろす。

 

「四季…黒刀…だよね?」

 

真冬がそう訊ねる。

バイザーの男は真冬の耳元に顔を近づける。

 

「俺がここにいたことは2人だけの秘密だ。いいな?」

 

「え、それってやっぱりあなたは…!」

 

その時、真冬の意識が急に遠のいていく。

 

「…ごめんな。」

 

バイザーの男の最後の呟きを聞いた後、真冬は気を失った。

 

 

 

 真冬が誰かに揺さぶられて目を覚ますと、目の前に白衣を着た40代の男がいた。真冬の父だ。

真冬がいたのは廃工場の中ではなくその外のコンテナがあるところだった。

真冬はコンテナに寄りかかって気を失っていたようだ。

周りにパトカーや警官の姿も見える。

 

「(そういえば…あの人はどこへ行ったんだろう。)」

 

 

 

 

 四季家本邸。

黒刀は自室でバイザーを外す。

 

「(『千里眼』で見た時は驚いた…女の子が誘拐されてんだもんな…

警察に通報という手もあったがそれじゃ遅すぎるからこれ着けて行ったけど…

なぜバレた?)」

 

 

 

 6月に入り、真冬はようやく事件後の安全のための自宅待機から解放された。

その放課後、帰り道に寄った本屋で本を買って店を出ると雨が降っていた。

傘を持っていなかったため仕方なく店の外で雨宿りしながら雨が止むのを待つ。

ふと視線を横に向けると同じように雨宿りしている人がいた。

 

「あ…。」

 

その人物は黒刀だった。

 

「ん?ああ…お前か。」

 

「あなたも雨宿り?」

 

「…まあ…後で家族が迎えに来る。」

 

「そうなんだ…。(ってそうじゃなくて!ちゃんとお礼を言わないといけないのに言葉がまとまらないよ~!)」

 

真冬は深呼吸をしてから、

 

「あ、あの!」

 

「ん?」

 

「こ、この間は…ありがとう…。」

 

「………俺は俺のやりたいようにやっただけだ…礼を言われることじゃない。」

 

「それでも!…ありがとう。」

 

真冬の頬は少し赤く火照っていた。

 

「それと…これからは黒刀君って呼んでいいかな?」

 

「…好きにしろ。」

 

「うん!」

 

真冬は嬉しそうに頷く。

 

「(もっと話したい…)あの!」

 

真冬が口を開いたその時、黒刀の体が自分に覆いかぶさってきた。

壁ドンというやつだ。

 

「(え…えええええ!)」

 

「大丈夫か?」

 

「え?」

 

「いや、濡れてないかって。」

 

「え…う…うん。」

 

真冬が頷く。

 

「よかった。」

 

黒刀はそう言って離れる。

真冬が黒刀の背中を見ると服がビシャビシャに濡れていた。

その理由は自動車が水たまりの上を走ったため、その水しぶきが真冬にかかりそうになったので黒刀が身代わりになったからだ。

真冬は胸を抑える。

 

「(さっきからドキドキが止まらない…もしかして私、黒刀君のこと…)」

 

「あ、来た。」

 

黒刀が口を開く。

黒刀の視線を追うと映姫が傘を差し、もう1本の傘を持ってこっちに走ってきた。

 

「まったく…だからいつも折りたたみ傘を持っていなさいと言っているでしょう。」

 

「わりぃわりぃ。」

 

映姫の説教を流して黒刀は傘を受け取るとその傘を真冬に差し出してきた。

 

「ほら、貸してやる。」

 

「え、でも…。」

 

「俺なら大丈夫。姫姉と一緒に帰るから。」

 

「初めまして四季映姫です。

白金真冬さん、その傘は差し上げますから安心して下校してください。」

 

「どうして私の名前は?」

 

「生徒会長ですから♪」

 

映姫は笑顔で答える。

真冬は絶句した。

 

「それでは。」

 

映姫は傘を差して帰っていく。

黒刀も同じ傘に入る。

 

「相合傘だね♪」

 

「雨の中、正座させられたいんですか?」

 

「すみません…。」

 

 

 

 

「(はっきりした…私は黒刀君のことが…好き。)」

 

真冬は自身の胸に手を当てるのだった。

 

 

 

 翌日 土曜日。

真冬は傘を返すため、黒刀の家へ向かう。

 

「(たしか…商店街からしてあっちの方向だから…。)」

 

1軒ずつ探していくと、表札に『四季』と書かれた家にたどり着いた。

 

「え…これ…家?」

 

真冬は四季家本邸のスケールに驚いた。

 

「と、とりあえず…インターフォンを。」

 

真冬はボタンを押そうとするが緊張で手が震えていた。

そして、ようやくボタンを押した。

 

《はい》

 

スピーカーから黒刀の声が聞こえた。

 

「あの…傘を返しに来ました。」

 

《あ~いいって言ったのに…まあいいや…とりあえずあがれよ…今行くから》

 

そう言って切られる。

数秒して扉が開き、黒刀が出てくる。

 

「お、おはよう黒刀君。」

 

「おはよう真冬。」

 

「ま、真冬⁉」

 

「え…違った?」

 

「う、ううん!」

 

真冬は首を横に振る。

 

「(びっくりした…いきなり下の名前でしかも呼び捨てで呼ばれるなんて…。)」

 

 

 

 真冬は居間に案内された。

 

「昼前だしなんか作ってくるか…なんか好きな食べ物ある?」

 

「料理作れるの?」

 

「まあ多少は。」

 

「そ、それじゃ…おにぎり…。」

 

「分かった。」

 

黒刀はキッチンに移動した。

 

「そのご家族の人とかは?」

 

真冬がキッチンにいる黒刀に訊ねる。

 

「両親は忙しくてあんま帰ってこない。

姫姉は今日、生徒会の用事で学校にいるよ。」

 

黒刀はおにぎりを作りながら答える。

 

「(ってことは、今この家には私と黒刀君しかいないってこと?)

…私も家ではいつも1人なんだ。お母さんは小さい頃に亡くなって、

お父さんは医者だからあんまり帰ってこないんだ。」

 

「そうか…でも今は1人じゃない。」

 

「え?」

 

「何でもない…できたぞ。」

 

黒刀がトレーにおにぎりを乗せて運んでくる。

真冬はそのおにぎりを食べる。

 

「…美味しい。」

 

「口に合って良かった。」

 

 

 

 おにぎりを完食した後、

 

「ふ~…よし!」

 

真冬は両手を膝の上にのせて黒刀の目を見る。

 

「?」

 

黒刀は首を傾げる。

 

「私…黒刀君のことが好きです!」

 

それは愛の告白だった。

 

「まだ会ったばかりだし、お互いのことはよく知らないかもしれない…

それでも、黒刀君のことが心の底から好きです。」

 

真冬は自分の気持ちをさらけ出す。

 

「本当はもっと知り合ってからの方がいいんだけど…実は私…転校しちゃうんだ。

お父さんが地元の北海道の病院に戻るからそれで…

だから今、伝えておきたい…じゃなきゃ一生後悔する。」

 

真冬の想いを聞いた黒刀は、

 

「真冬…ごめん。

お前の気持ちは嬉しい…でも俺はその想いに応えることは出来ない。」

 

そう言って目を逸らした。

それを見た真冬は黒刀がどこか哀しげに見えた。

 

「この前はお前を守るなんて言ったけど本当の俺は誰かを守れるほど…強くない。」

 

黒刀はそう言って目を伏せる。

 

「そう………なら!」

 

真冬の声に黒刀は顔を上げる。

 

「なら私が強くなる!

黒刀君に守られるんじゃなくて黒刀君を守れるくらいに強くなる!

だから…もし黒刀君より強くなったって胸を張れる時が来たら、その時は…

私と…付き合ってください!」

 

真冬は黒刀の目を真っ直ぐ見て宣言した。

 

「…フッ、女の子に守られるようじゃ俺もまだまだだな…分かった…

もし俺より強くなったと証明したら真冬の気持ちを受け入れる!約束だ!」

 

「うん!約束だよ!」

 

真冬は笑顔で応えた。

 

 

 

 これが真冬の初恋だった。




ED4 咲 全国編 TRUE GATE

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