東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP4 学戦都市アスタリスク2期 The Asterisk War



時間

 霊夢との激闘を終えた早苗がベンチに戻ってくる。

 

「すみません。負けてしまいました。」

 

早苗は頭を下げてレミリア達に謝る。

 

「問題ないわ。最後に勝つのはこっちだから。」

 

レミリアの告げた一言で早苗は顔を上げてパアッと笑顔に戻る。

 

「咲夜。」

 

レミリアは名前を呼んだ。

 

「はい。」

 

「頼んだわよ。」

 

「はい。」

 

そう返事した直後、その場から咲夜が消えた。

 

「相変わらず凄いですね。咲夜先輩のこれ。」

 

早苗が感心する。

 

「そうだね。さすがの黒坊も咲夜に勝てない…少なくとも苦戦は強いられるだろうね。」

 

「あ、諏訪子様いたんですね。」

 

早苗が今になって諏訪子の存在に気づく。

 

「君が『神代大蛇』を使ったところからね。」

 

諏訪子は笑顔。

 

「あの~…怒ってます?」

 

「当たり前だ!守矢神社最高クラスの式神を召喚してしかも倒されてるし!」

 

「あはは…すみません。」

 

「まあ、その件は帰ってからにして今は中堅戦を見ることにするよ。」

 

諏訪子はフィールドに視線を移す。

 

 

 

 ベンチから姿を消した咲夜は瞬時に黒刀の前に現れた。

 

「すごい手品だな。」

 

「…。」

 

「だんまりか。まあいいやすぐに分かることだから。」

 

黒刀はそう言って鞘から『八咫烏』を引き抜く。

 

「…う~ん、雲が邪魔で今日は月がよく見えねえな。それじゃ…」

 

黒刀は『八咫烏』の剣先を天に向けると剣圧だけで雲を吹き飛ばした。

 

「やっぱり今日は満月か…待たせたな十六夜咲夜。始めようか未来を変える闘いを!」

 

黒刀はそう言い放つ。

 

「…1つだけ倒す前に言っておきます。」

 

「やっと口を開いたか。で、何だ?」

 

「お嬢様の見る未来は絶対です。またお嬢様の勝利も紅魔学園の勝利も絶対です。」

 

昨夜は冷淡な口調でそう言った。

 

「どうかな?闘いってのは勝つか負けるか分からない限界ギリギリだからこそ面白いんだ。もちろん勝ちたいとは思っているが。」

 

「分からない人ですね。結果は既に決定しているのです。未来は」

 

「変わるさ。諦めない心さえあれば。」

 

「ならば紅魔学園としてその心、叩き潰してあげましょう。いずれにしてもあなたはここで他の選手同様1秒で終わる。」

 

「そいつはどうかな。」

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

試合開始直後、突然黒刀の周囲から大量のナイフが黒刀を向かって飛んできた。

 

「(あなたもこれで終わる!)」

 

咲夜は勝利を確信した時、彼女にとって信じられない光景を見た。

なんと黒刀が飛んでくるナイフを弾いていた。

 

「(バカな。いくら速いといってもこれだけのナイフをどうやって?)」

 

 

 

 VIPルーム。

 

「なるほどな。」

 

優が納得した口調で口を開いた。

 

「分かったの?黒刀が何をしているのか。」

 

「確かに『超反射』でも限度があるが黒刀は『八咫烏』で弾いたナイフを別のナイフにぶつけて弾いている。まるでビリヤードのようにな。」

 

「なんだその神業!」

 

流星が驚く。

 

 

 

 

「くっ!」

 

咲夜がナイフを投擲する。

黒刀はその瞬間を眼で捉えていた。

咲夜はその時、まるでカラスに上から観察されているかのような危機感を感じていた。

次の瞬間、黒刀に飛んでくるナイフは咲夜が投げてきたナイフより多かった。

黒刀はニヤリと笑うとさっきと同じ神業をしながら飛んできたナイフから1本を素手で柄の部分を掴んでナイフの包囲網をかいくぐるようにそのナイフを咲夜に投げ返した。

 

「なっ!くっ!」

 

咲夜は予想外の反撃に驚き、体を横に反らして躱した。

ここまでの試合時間を僅か12秒。

咲夜が続けてナイフを投擲しようとした時、黒刀がニヤリと笑った。

 

「分析完了。」

 

その言葉を聞いた咲夜は思わず動きを止めた。

 

「…どういう意味ですか?何を分析したというのですか?」

 

「あんたの能力の全てだ。」

 

「っ!戯言を…まだ12秒しか経っていないのですよ!」

 

「ほんとは6秒でも良かったんだが確証が欲しかった。そこまで疑うなら俺が出した結論を言おう。」

 

黒刀は構えながら話を続ける。

 

「あんたの能力は時間の停止と再生。停止している間は自身は動くことが出来る。

その能力であんたは時間を停止して俺の周囲にナイフを展開させた。

ナイフが時間停止中、俺に刺さらないのは運動エネルギーも停止しているからだ。

さらにこの時間操作能力は5秒のみ停止することが出来て、再生した後は5秒のインターバルを要する。」

 

「何故5秒だと?」

 

「俺はあんたの1秒だけの記録映像を何度も見た。それでナイフの総数と位置は分かった。

だから弾くことは容易だった。そして俺はナイフの総数とあんたが一度に投擲するナイフの数と投擲速度から時間操作時間を割り出した。あんたは開始6秒で大きなミスをした。俺がナイフを投げた後に時間を停止したことだ。」

 

「!…あの時か。」

 

黒刀の言葉に咲夜が思い出す。

 

「あんたは意外と直情的だな。さらに俺はもう1つ知りたい情報があった。それはあんた自身のスピードだ。だから俺はあんたのナイフを掴み取ってあんたがギリギリ躱せると推測できるスピードで投げた。あんたにとっては予想外だっただろうな。例えていうならチェスで相手のターン中に相手の駒を取って動かすようなことだからな。」

 

「(なるほど…この賢さがカラスと言われる所以なのかもしれませんね。)」

 

「あんたのスピードを知れたので5秒間の移動範囲も分かった。あんたは5秒間に俺の周囲を移動しながら元の場所に戻っている。微かに汗が見せる。さて、あんたがどうやって時間操作しているのかですが恐らくあんたは体内…いや眼球の中に時計を術式化している。なら簡単、俺はあんたが時間を停止する5秒後を予測して動けばいい。」

 

「私がいつ時間を止めるかなんて分かるわけが…」

 

「あんたが時間を停止する瞬間、眼が不自然に動く。俺の眼はその瞬間を逃さない。」

 

「なるほど…素晴らしい観察眼、洞察力、分析力です。それにこうして話している間もあなたは隙を見せない。」

 

「…ちなみにあんたの能力がこれまでバレなかったのはそもそも2秒以上耐えられた奴がいないからだ。最初の1秒だけはインターバル関係ないからな。…どうだ?ここまでで俺の結論に間違いがあれば聞くけど?」

 

「…いいえ間違いありません。だからと言って負けたとは思っていません。でも…ふふ…少し分かってきました。勝つか負けるかのギリギリの闘いの楽しさというものが。」

 

咲夜はそう言って笑った。

 

「はは…なんだ…そういう顔できるんじゃねえか。それじゃ試合を続けようぜ!あんたには散々見せてもらったから今度は俺も見せてやるよ。時間は止められないけど似たようなことは出来るぜ!」

 

「ええ、楽しみましょう!」

 

咲夜はその言葉と共に時間を停止させる。

世界が咲夜以外色を失う。

咲夜は黒刀の横に回り込む。

体力を温存するため側面からナイフを投擲する。

投擲されたナイフは黒刀の横で停止して浮遊する。

時間が再生され世界が色を取り戻していく。

時間が動き出した瞬間、黒刀は横に向かって斬撃を放った。

 

「まさか本当に5秒後を予測してくるとは!」

 

咲夜はサイドステップして斬撃を躱す。

ナイフは斬撃で弾き飛ばされる。

咲夜の攻撃が止んだ僅かな隙を黒刀は逃さなかった。

 

「モードチェンジ サムライ!」

 

黒刀を黒い木の葉が渦巻く。

黒刀は『サムライモード』に変身した。

 

「さっきの説明の時にそれをやっていれば良かったのでは?」

 

咲夜は走り回りながら黒刀に訊いた。

 

「いやいや、さすがにそこまではしないよ。こっちから持ち掛けた話だからね。それじゃお見せしよう。時間操作もどきを。」

 

黒刀がそう言った直後、咲夜の目の前にいきなり黒刀が現れた。

 

「なっ!」

 

咲夜は驚いた声を上げる。

黒刀が咲夜に斬りかかると咲夜はダガーナイフを取り出し鍔迫り合い状態に持ち込んだ。

 

「やっぱりダガーを隠し持っていたか。でも接近戦に慣れていないんでしょう?」

 

「そうです…よ!」

 

咲夜は時間を停止させて距離を取ってからナイフを投擲する。そして再生。

だが今度は時間を再生した直後に黒刀が咲夜の前に現れた。

 

「これは…」

 

 

 

 紅魔学園代表ベンチ。

 

「抜き足だ。」

 

諏訪子が口を開いた。

 

「抜き足…って何ですか?」

 

早苗が諏訪子に問う。

 

「相手の呼吸と呼吸の間に移動する歩法だ。例えば…見てて。」

 

するといきなり諏訪子の姿が消えた。

 

「ここだよ。」

 

諏訪子が次に現れたのはレミリアの隣だった。

 

「あれ…さっきまでドアの傍にいたのに…そうか!これが抜き足!」

 

 

 

 神光学園代表ベンチ。

 

「抜き足は師匠に教えられました。黒刀は7歳で会得しています。」

 

「それって弟子になってからすぐってこと!」

 

魔理沙が会得の早さに驚く。

 

「その通りです。」

 

 

 

 

「なるほど。私が時間を、あなたは体感時間を操作するというわけですか。」

 

「そんなたいしたものじゃない。」

 

黒刀が抜き足で追いかけて、咲夜が時間を停止して距離を取る展開が続く。

黒刀は輝夜が入る1000兆分の1の世界…加速世界に半歩踏み込んでいる。

スキルではなく技術のみで。

 

「このままじゃ埒があきませんね。」

 

「そうだな…そろそろお楽しみの時間を終わりかな?」

 

「そのようです。これで決める!」

 

咲夜は察知されるのを承知で眼に力を込めて時間を停止させる。

 

「サウザンドナイフ!」

 

千本のナイフを黒刀に向かって放った。

黒刀の正面でナイフが停止する。

時間が再生される。

千本のナイフが襲いかかる。

 

「四季流剣術 壱の段 一騎当千!」

 

黒刀は先程の神業と『一騎当千』を組み合わせた。

ナイフが次々と弾かれ床に落ちていく。

全てのナイフが床に落ちると黒刀は構えを脇構えに変える。

 

「四季流剣術 零の段 無月。」

 

直後、風がなびいたがその風の音は咲夜には聞こえなかった。

一瞬、遅れて咲夜は前のめりに倒れていることに気づいた。

いつの間にか黒刀は咲夜の背後に背中を向けて立っていた。

 

「この無月は抜き足と『一閃』の組み合わせ技だ。姿を見せず音を出さない。」

 

黒刀は背を向けたままそう口にした。

咲夜が倒れていく瞬間がスローモーションに感じた。

そして、ようやく咲夜の体がうつ伏せに倒れる。

 

《1…2…3…4…5…6…7…8…9…10.勝者 四季黒刀》

 

《勝ったのは黒刀選手~!秒殺記録を持つ咲夜選手を無傷で倒しました!》

 

《2人とも実に美しい試合を魅せてくれました》

 

《そして!これで神光学園リーチです!9連覇を果たしているあの紅魔学園になんと王手をかけました!》

 

黒刀は『サムライモード』を解除する。

ようやく目を覚ました咲夜に歩み寄る。

 

「楽しかったか?」

 

黒刀はニコッと笑った。

その言葉を聞いた咲夜はゆっくりと黒刀に手を貸してもらいながら立ち上がる。

 

「ええ。」

 

咲夜は微笑む。

 

「それは良かった。」

 

黒刀も微笑み返した。

お互いに握手を交わす。

 

「もしうちが勝ったら咲夜さんの秘蔵レシピを教えて欲しいですね。」

 

「それでは…こちらが勝利した場合は…」

 

咲夜は言葉を切って、黒刀の耳元に顔を寄せると何かを囁いた。

その後、黒刀の耳元から離れていく。

 

「咲夜さん、それ本気ですか?」

 

「さあ、どうでしょう?」

 

咲夜はメイドスマイルで返す。

 

「まあ、うちが勝ちますからそれでもいいですけど。」

 

「それでは失礼します。」

 

咲夜は綺麗にお辞儀してから顔を上げて綺麗な姿勢でベンチに戻って行く。

 

「うちにもあんなメイドがいたらな~。」

 

黒刀はそう言った後、ベンチに戻って行くのだった。




ED4 咲 全国編 TRUE GATE

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