8月6日 午後7時。
レミリアはティーカップを咲夜に渡すとフィールドに入っていく。
会場に歓声が響き渡る。
神光学園代表ベンチ。
「やっぱり凄い人気ですね。」
妖夢は感心していた。
「9連覇している紅魔のエースだからな。」
黒刀が横から口を出す。
「黒刀、お前から見てレミリアはどれくらい強いと思う?」
にとりが黒刀に訊く。
「…俺でも勝てるかどうか分からない。」
「先輩が…。」
「それよりそろそろチルノを起こした方がいいんじゃない?」
霊夢がベンチに横たわっているチルノを見ながら言った。
「あ、普通に忘れてた。こいつ、全然起きねえな。」
黒刀はチルノの顔を覗き込んだ。
「…最強。」
その時、霊夢がボソッと呟いた。
「最強⁉」
するとチルノが飛び起きた。
顔を覗き込んでいた黒刀の額にゴツンとぶつかった。
「いって!」
黒刀は額を押さえる。
「てめ…後で覚えてろ。」
「?」
チルノは何のことか分からず首を傾げている。
「妖夢、こんなバカ共は放っておいていってきていいですよ。」
映姫が呆れ顔で言った。
「わ、分かりました!…先輩。」
妖夢が黒刀の名を呼ぶ。
「?」
黒刀は額を押さえながら振り向く。
「一緒に頂点の景色を見ましょう!」
「ああ、レミリアに勝ってこい!」
「はい!」
妖夢は大きな声で応えてフィールドに走って行った。
『妖夢~!』
すると、観客席から大きな声が響いた。
大勢の神光学園の生徒が応援に来ていた。
最前列には…
「幽々子様…。」
妖夢はその人物を見つける。
「妖夢~!頑張れ~!」
幽々子が手を振って応援してくれる。
「頑張れ~!」
小町も幽々子の隣から応援してくれている。
「皆…ありがとう。」
妖夢は皆の気持ちをしっかりと受け止めてから前を向く。
レミリアが腕を組んで待っていた。
「5日ぶりですね…改めて神光学園1年の魂魄妖夢です!」
「私は…名乗るまでもないですね。先に言っておくわ。
私は開始から14分間こちらからは攻撃しない。」
レミリアがそう宣言した瞬間、周囲がざわめき始めた。
《レミリア選手!とんでもないハンデをつけてきました~!》
《彼女には妖夢選手の攻撃を防ぐ絶対の自信があるのでしょう。
14分ということは残り1分でレミリア選手の攻撃が始まるということになります》
「黒刀先輩、これは…。」
大妖精が黒刀の顔を見る。
「実力の差を見せつける…というものもあるだろうが単純に妖夢の実力を自分の目で確かめたいんだろう。」
「どっちにしても只者じゃないわね…あいつ。」
霊夢が皮肉を口にする。
「ねえ、あたいの試合は?」
『もう終わったよ!』
その場にいた全員がチルノにツッコんだ。
妖夢は深く息を吸ってゆっくりと吐き出す。
「私はそれでも構いません。どちらにしても私が攻撃することに変わりはないですから。」
「そう。では始めましょう!」
《3…2…1…0.デュエルスタート》
妖夢は二本の剣を抜いて、床を蹴ってレミリアに斬りかかった。
だが、カキンッと音を立てて妖夢の剣撃はレミリアの翼に防がれた。
「(硬い!)」
「温い。」
レミリアは翼で妖夢を押し返した。
「くっ!」
妖夢は踏み止まって、クロスステップでレミリアの背後に回り込み斬りかかるがそれもレミリアの翼に防がれる。
レミリアの翼はオーラで硬質化されている。
おまけに『未来王の眼』があるのでどこから攻撃しようが防御されてしまう。
妖夢はあらゆる方向から連続攻撃をしかけるが全てレミリアに防がれてしまう。
「くっ!だったら…気力解放!」
妖夢の体を光の柱が包み込む。
さらに『楼観剣』に金色のオーラが宿る。
「閃光斬撃波!」
これなら防御は関係ない。
金色の光の斬撃がレミリアに迫る。
だが、レミリアは左手で受け止めるとそれを握りつぶした。
「なっ!」
「ふ~ん。見ていたとはいえこの技…そこまでじゃないわね。」
レミリアはそう言い切った。
「どう…やって?」
「防御するほど強くなるならその前に潰せばいいだけのことよ。」
レミリアはそんなことを当たり前のように言った。
神光学園代表ベンチ。
「これが『未来王』レミリア・スカーレットの力…。」
霊夢が呟いた。
「いや、あいつの力はこんなものじゃない。姫姉、開始からどれくらい経った?」
「ちょうど5分。」
「あと9分か…。」
妖夢は『白楼剣』を鞘に納めて『楼観剣』を両手で握った。
「断名剣 冥想斬!」
『楼観剣』に気力を注ぎ込んで巨大な光の剣として振り下ろす。
「はあっ!」
気合いと共に振り下ろした妖夢に対して、レミリアはため息を吐いた。
「まだ分からないようね。」
レミリアは巨大な光の剣を左手の親指、人差し指、中指でつまむように止める。
そのまま恐るべきパワーで振り回して妖夢を剣ごと投げ飛ばす。
投げ飛ばされた妖夢は壁に叩きつけられる。
「ぐあっ!」
妖夢は痛みを感じながらも立ち上がり鞘から『白楼剣』を抜いて駆ける。
「妄執剣 修羅の血 弐式!」
レミリアは翼を前に出して妖夢の剣技を防ぐ。
さらに翼で払うように妖夢を押し返す。
「あと6分。」
レミリアは口にする。
妖夢はそれがレミリアが攻撃を開始するまでの時間だと理解する。
「(こうなったら連続剣技だ!)」
妖夢は『閃光斬撃波』を放つ。
それをレミリアが握りつぶす。
その直後、妖夢は『妄執剣 修羅の血 弐式』で斬り込む。
それも翼で防がれる。
押し返されそうになった瞬間を狙って『空観剣 六根清浄斬』を無理やり繰り出すがレミリアはそれをつまむように止める。
「この程度の相手をあいつは私にさせているということ?」
あと4分。
「これなら去年の犬走椛の方がマシだわ。」
レミリアにマシと言われたことに椛は気にしないわけではない。
紅魔学園代表ベンチ。
「レミリアはいつまで遊んでいるんだ?もうあいつの実力は分かっただろ?」
天子が愚痴る。
「お嬢様は自身の言葉を曲げることはありません。」
「きっかり14分間、防御し続けるってことか…でも見てる方は退屈だろうな。」
天子の言葉に諏訪子が口を開く。
「多分レミリアは今そうとう苛ついているよ。黒刀と闘うはずだったのに最もオーラ量の少ない妖夢と闘うハメになっているからね。レミリア相手にオーラの差がついたら終わりだからね。」
「あと2分だよ♪」
フランが楽しそうにカウントした。
「(一か八か!)」
妖夢は右足にオーラを溜めて一気に放出してレミリアの懐に潜り込む。
『楼観剣』で斬り上げて首を狙ったがレミリアの首はオーラで覆われていた。
「(これは先輩が椛さんと闘った時にやっていたオーラでの防御!)」
「分かったでしょ?あなたの攻撃は最初から私に届くことはなかったのよ。
たとえ私が棒立ちでもね。…頭が高い!」
レミリアがそう言い放った瞬間、妖夢はとてつもない威圧感を感じた。
この至近距離では恐怖感さえ感じる。
「時間よ。」
レミリアが口にした。
ついに試合開始から14分経過してしまったのだ。
「『グングニル』!」
レミリアがそう詠唱して右手に現れたのは赤い電光を纏った赤いオーラの槍だった。
妖夢はバックステップして距離を取る。
「あなたのこれまでの攻撃と私の攻撃…どちらが上かしらね。」
レミリアが右足を踏み込んだ瞬間、一瞬で妖夢の眼前に移動した。
「(速い!)」
「沈みなさい。」
レミリアが突きを放つ。
妖夢は二本の剣を交差して受けるがあっさりと吹っ飛ばされてしまった。
妖夢が壁に叩きつけられて瓦礫が転がる。
「今のがあなたが今まで出した攻撃の総力と同じくらいの一撃よ。」
「桁が違い過ぎる!」
大妖精はレミリアの圧倒的な力に戦慄した。
《タイムアップ。第1ラウンド終了》
「第2ラウンドは最初から攻撃してあげるわ。耐えられればいいわね。」
レミリアはそう言い残してベンチに戻って行く。
妖夢もボロボロの状態でベンチに戻って行くのだった。
ED4 咲 全国編 TRUE GATE
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