妖夢は医務室で目を覚ました。
「私は………そうだ。確か二宮さんと闘って…負けた…んだよね…ここにいるってことは…。」
状況を理解したところで医務室のドアが開いて魔理沙達が見舞いに来た。
「お、妖夢起きたのか!」
魔理沙は寄ってきた。
妖夢は時計を見る。
「こんな時間ってことはフランちゃんとは闘えなかったってことだよね?」
「ええ、フランの不戦勝で今から黒刀先輩との決勝戦が始まるわ。」
霊夢が妖夢の疑問に答える。
「先輩…やっぱり凄いな。私なんかとは大違い…。」
妖夢は俯いてしまう。
「どうしたんだ?」
魔理沙が心配そうにその顔を覗き込む。
妖夢は掛布団を握りしめた。
「試合中…二宮さんに言われた。私の剣は…軽いって。」
「なんだよそれ!妖夢がどれだけ頑張ってるかも知らないくせに偉そうなこと言いやがって!」
魔理沙は激怒した。
「ううん…二宮さんの言ってることは正しい。」
「何を…。」
「事実負けたし仮に覚悟が本物だとしたらあの時…『ゾーン』に入れたはず。けど実際はダメだった。」
「…妖夢。決勝戦を見ましょう。」
霊夢は医務室のモニターウインドウを指さす。
「答えはそれから出しても遅くないわ。」
そう言葉を付け足した。
フランはゲートを歩く。
「この試合に勝ったら…皆、私のことを認めてくれる…いや…認めさせる!」
その紅い瞳を一瞬光らせた。
黒刀もゲートを一歩ずつ歩いている。
「(フランと闘うのは初めてだが必ず勝つ!)」
そう決意した。
そして2人同時にフィールドに入場した。
時刻は午後5時を回っている。
「たとえお義兄様でも負けないよ!勝つのは私!」
黒刀の姿を確認したフランはそう言い放った。
「悪いが個人戦では負ける訳にはいかない…絶対に!」
黒刀は鞘から『八咫烏』を抜き放つ。
「そうこなくちゃ!」
フランは『レーヴァテイン』を右手で握る。
《3…2…1…0.デュエルスタート》
今、2つの破壊の力がぶつかる。
「魔力解放!」「気力解放!」
2人共、解放状態となった。
「フォーオブアカインド!」
フランは4人に分身して黒刀を前後左右から強襲する。
「モードチェンジ!サムライ!」
黒刀は『サムライモード』に変身する。
「四季流剣術 壱の段 一騎当千!」
4人のフランを同時に斬った。
4人の内3人の分身は消滅して本体のフランは肩を少し掠めた。
しかし…
「凄い凄い!もう破っちゃうなんて凄いよ!」
フランは遊び感覚で試合をしていた。
「それじゃ次は…これ!」
フランは魔法弾の弾幕を放った。
『サムライモード』の黒刀は『千里眼』と『超反射』の性能が上がる代わりに『破壊王の鎧』の性能が下がってしまう為フラン程のオーラが込められた魔法弾を『破壊王の鎧』で無効化することは極めて難しい。
「フッ!ハッ!えいや!」
だから黒刀は斬ることにした。
その捌きようは咲夜戦を思い起こさせるものだった。
フランは飛翔すると黒刀の背後に回り込む。
「背中ががら空きだよお義兄様!」
『レーヴァテイン』を振り下ろす。
黒刀は残り少なくなった弾幕を全て斬撃で消し飛ばしてから振り返ると同時に『八咫烏』を水平に振って薙ぎ払いフランの攻撃を防いだ。
「四季流剣術 参の段 霧桜!」
黒刀は床を蹴って『八咫烏』を水平に構えて斬りかかった。
フランが上段から斬り伏せようと『レーヴァテイン』を振り下ろすが『八咫烏』の刃は『レーヴァテイン』をすり抜けてそのままフランの脇腹を斬った。
「マジでどうなってんだあの技?霊剣なら剣だけじゃなく体もすり抜けるはずだろ?」
仁が疑問を口にする。
だが『千里眼』を発動して試合を観察していた椛は気づいていた。
「あの剣技はすり抜けているわけではない。相手の剣とぶつかる直前に一度剣を引いて相手の剣が通り過ぎたところで剣を再度振っている。だからすり抜けたように見える。剣速の速さで優れている四季流だからこそ出来る芸当だ。」
黒刀は『霧桜』の後すぐに体を反転させて『八咫烏』を鞘に納刀する。
「四季流剣術 弐の段 一閃!」
居合斬りでフランを斬り抜く。
「ぐっ!」
フランは呻き声を上げる。
「(まだ倒れないか。)」
黒刀はもう一度体を反転させて鞘に納刀していた『八咫烏』を抜いて気力を集束させる。
「カオス…ブレイカー~!」
漆黒の斬撃を放った。
「インフェルノブレイカー~!」
フランは痛みに耐えながらも魔力を集束させて炎の斬撃を放った。
2つの斬撃が正面からぶつかり合う。
「「はあああああああああああああああああああああああああああ!」」
拮抗するかと思えたがそれは一瞬のことだった。
漆黒の斬撃が押し始めてフランがどんどん後退し始める。
そして炎の斬撃が破られて漆黒の斬撃がフランを飲み込んでいく。
「きゃあああ!」
悲鳴を上げた直後、爆発。
だがそれは『カオスブレイカー』によるものではなかった。
フランが漆黒の斬撃に飲み込まれる中で自身に魔法弾を放って脱出した為だった。
レミリアが傷つくフランを見る。
「(フラン…何故そこまでする必要があるの?あなたにはあと2年半もある。)」
フランが傷ついていることも決して黒刀のせいではないことはレミリアにも分かっていた。あくまで闘いの中で起きたものなのだから。
しかし…
「フフフ…こうなったら本当のとっておきを出すしかないよね!」
フランが背筋を伸ばすとオーラの色が無色から徐々に変色していく。
「まさか!」
黒刀は目を見開いてある可能性を導き出した。
フランのオーラの色は七色となった。
「七色の…『ゾーン』。マジかよ!」
黒刀は歯ぎしりする。
フランの顔が普通の笑顔から狂笑に変わる。
「いくよ!インフェルノブレイカー!」
炎の斬撃を放った。
「(速い!)」
黒刀は躱す間もなく斬撃を受けた。
その衝撃で爆発が発生する。
「あれ?もう終わり?」
フランは滞空しながら見下ろす。
その時、爆発の煙の中から斬撃が放たれる。
フランはそれを軽く『レーヴァテイン』を振って弾く。
煙が晴れると黒刀も『ゾーン』に入っていた。
だが同じ『ゾーン』でも黒刀は空を飛べない。アドバンテージはフランにあった。
これまでの試合でも黒刀は上のポジションを取られることが多かった。
しかも今回はお互い『ゾーン』に入っている。
明らかに黒刀の方が分が悪い。
黒刀はハイジャンプ、クロスステップ、『抜き足』を使ってフランの頭上に移動した。
しかし、フランは既に黒刀の頭上に移動していた。
そこから『レーヴァテイン』を振り下ろす。
黒刀はハイジャンプをで横に跳ぶとフランに向けて斬撃を5発放った。
フランは『レーヴァテイン』を引くと5発の斬撃を上下左右に飛行して躱した。
これが飛ぶと跳ぶの決定的な差だった。
黒刀は空中で1回後転して結界に足をつくと壁走りしながら斬撃を20発放った。
フランはそれも全て躱しきった。
黒刀は壁に足をつきながら停止する。
「カオスブレイカー~!」
漆黒の斬撃を放った。
「インフェルノブレイカー~!」
フランが今度は躱さずに炎の斬撃を放った。
2つの斬撃がぶつかり合った時、黒刀は気づいた。
炎の斬撃の中に小さな黒点のようなものがいくつかあることを。
それはまるで太陽に黒点があることと同じように。
さらにもう1つ。
フランが『ゾーン』に入ってから若干だが声質が変わっているような気がしていた。
医務室にいる妖夢は黒刀がピンチになっているのを見ていた。
「行かなきゃ!」
そしてベッドから飛び起きて医務室を出る。
「おい、体は大丈夫なのかよ!」
魔理沙が妖夢の背中に声をかける。
「大丈夫~!」
遠ざかっていく妖夢の声が聞こえる。
「ったく…しょうがねえな!」
魔理沙は妖夢を追いかけた。
霊夢達もそれに続いた。
斬撃の激突は黒刀が押されていた。
「ぐっ!」
それを見たフランはさらに強く魔力を注ぎ込んだ。
そして…なんと『カオスブレイカー』が破られ炎の斬撃が黒刀に直撃し爆発して黒刀は墜落していく。
その途中で黒刀は視界の端にゲートの結界前で心配そうに見ている妖夢が見えた。
「そうだよな…やられっぱなしじゃカッコ悪いよな…。」
頭から落下中に黒刀は目を閉じて意識を集中した。
『サムライモード』を解除していつもの黒いデュエルジャケットに戻るとなんと黒刀の背中から天使のような白い翼が生えた。
体を縦に半回転させると目をゆっくりと開いた。
誰もが思ったことだろう。
なんて美しい翼だ…と。
「へえ…それじゃこれでお互いに思う存分空中戦が出来るって訳だね!」
フランは黒刀にダイブしていった。
黒刀も翼を羽ばたかせるとフランに突撃していった。
黒刀とフランが刃をぶつけ合うと弾き合い、またぶつかり合っては弾き合いを徐々に高度を上げながら繰り返していく。
やがてそれは螺旋を描いていく。
もはや常人には視認できないスピードの闘いだった。
ただ見えているのは七色の翼と白き翼が放つ光の線だけだ。
2人は超高速でフェイントを掛け合ったり背後を取り合ったりしているがどちらも譲ることのない闘いだった。
こんな素晴らしい試合が永遠に続けばいいのに。
そう思ってしまう程だった。
だがその思いは意外な結末で裏切られる。
2人がフィールドを飛び回って弾き合った時…フランが突然停止して頭を抱え始めた。
「う…うう…うううっ!」
頭に激痛が走ったフランは呻き声を出し始めた。
「どうした!フラン!」
黒刀も停止して大声で叫ぶ。
「ううう…。」
するとフランの『ゾーン』が解けた。
しかし頭痛はまだ消えていなかった。
「…ダメ…来る…嫌なものが…うあああああああああああああああああああああああああああ!」
フランからオーラの波動が放たれ黒刀は結界に背中から叩きつけられる。
「くっ………!」
この時、黒刀は何かを感じ取った。
それはレミリア、諏訪子、にとりも同じだった。
フランの顔が俯きゆっくりと顔を上げるとその表情はフランとは思えないほど醜悪に満ちた顔だった。
「フフフ…ハハハハハ!ついに来たぜ~この時が!」
それは高笑いした。
「てめえ…誰だ!フランじゃないな!」
黒刀は壁から離れて滞空飛行すると問いかけた。
「あ?ほんとは分かってんだろ!
それは薄気味悪い笑顔でそう答えた。
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