悪魔
悪魔。
それは人類にとって最も恐怖する存在。
かつて人類は悪魔によって滅ぶかけた。
フランに憑依している存在が悪魔だと知った観客は一斉に逃げていく。
「無駄無駄!」
フラン(悪魔)は高笑いした。
観客が会場から出ようとした時、突然黒い結界が中央会場を包囲するように展開された。
観客は壁にでも当たったかのように出られなくなってしまった。
「貴様達にはちゃんと目に焼き付けてもらわなきゃな!『王』が死ぬ瞬間をな!」
フラン(悪魔)はそう宣言して黒刀を睨んだ。
にとり、レミリア、諏訪子が観客席の最前列から結界を破壊して加勢しようとする。
「手を出すな!」
だが黒刀がそれを制した。
「何言ってんだ!悪魔が出たらそれはもう『王』が倒す!」
「それが私達の使命だよ。」
「わがままなんて言ってる場合じゃないのよ!」
にとり、諏訪子、レミリアはそれぞれ反論する。
黒刀はにとり達に背を向けながら、
「奴の狙いは俺だ。もし『王』が狙いなら一番近くにいたレミリアを殺せたはずだ。それに奴が悪魔だからといってまだ
フラン(悪魔)はパニックになっている観客を眺めながら楽しそうに高笑いしていた。
「ハハハ!人間は無様で最高だぜ!」
「おい!クソ悪魔!」
黒刀が呼びかけた。
「あ?」
フラン(悪魔)は黒刀に首を向けてきた。
「いつからフランに憑依してやがった!」
黒刀の顔は激怒を表していた。
「あ?…そうだな~7年前ってところか!」
黒刀はそこでハッと気づいた。
それを見たフラン(悪魔)は面白そうに笑った。
「気づいたようだな!そうだよ!貴様と『未来王』が決別した日からだよ!知ってるか?悪魔が憑依する為には対象者に心の穴が必要なんだよ!今こいつの心には2つの穴がある!1つは貴様と『未来王』が決別したことで生まれた寂しさ!貴様に会いたい会いたいと心の中で泣き喚いていたぜ!つまり貴様らのおかげで俺はこいつに憑依出来たってことだ!」
黒刀とレミリアはただ歯ぎしりすることしかできなかった。
自分達のせいでフランに苦しみを与えてしまった。
そのことに自責の念を抱かずにはいられなかった。
フラン(悪魔)はさらに続ける。
「そして2つ目が『未来王』レミリア・スカーレットの妹ということで与えられた周囲の人間からの過度な期待だ!それはこいつに大きなプレッシャーを与えた!この2つ目の心の穴が俺の覚醒を早めたのさ!感謝してるぜ!こいつと『破壊王』そして『未来王』には!貴様達のおかげで俺はこうして覚醒することが出来たんだからな!」
フラン(悪魔)の背後に黒い影のようなものが現れ徐々にそれはユラユラとした悪魔の姿をした影となった。
これまで見たどんな者よりも邪悪な心を持った存在だった。
「さて、そろそろ処刑を始めるとするか!『破壊王』!」
フラン(悪魔)は黒刀に『レーヴァテイン』の剣先を向けて吠えた。
黒刀は怒りで『八咫烏』を握る左手を震わせる。
「…許さねえ。」
「あ?」
「絶対に許さねえ!」
叫んだ黒刀は加速して斬りかかる。
フラン(悪魔)は想像越えるスピードで薙ぎ払った。
黒刀は咄嗟に回避したが頬を僅かに掠めて火傷する。
「ハハハ!分かってんのか!これは殺し合いだ!セーフティーなんてあるわけねえだろうが!」
フラン(悪魔)は高笑いした。
フランの精神世界。
フランはうずくまっていた。
紅魔学園の入試の面接の時に試験官に、
「お~!君はあのレミリア・スカーレットの妹なのか!ならば君にも期待出来そうだな!」
そう嬉しそうに話しかけられた。
今年の春、入学してからはクラスメートからこう聞かれた。
「へえ~フランちゃんってあのレミリア・スカーレットの妹なんだ~!じゃあフランちゃんもかなり強いってことだよね?」
どこにいても『レミリア・スカーレットの妹』と呼ばれる。
お姉様のことは嫌いじゃない。
むしろ大好きだ。
尊敬もしているしお姉様が活躍しているところは見ていて誇りに思える。
でも周囲の皆は私を…『フランドール・スカーレット』を見てくれない。
『レミリア・スカーレットの妹』としてしか見ない。
私はお姉様じゃない…なのに誰も私を認めてくれない…嫌だ…辛い…苦しい…だから私は私を認めないクラスメートを叩き潰した。
その時からだ…私の中で何かが変わってしまった…
精神世界のフランの目の前にもう1人のフランが現れる。
そのフランは邪悪な目をしていた。
目の白い部分が黒く染まっている。
それはフランの心の闇だった。
何を後悔しているの?本当は楽しかったんでしょ…私を認めない愚かな奴らを潰していくのがさ…
フランは立ち上がった。
違う!私はそんなこと…
いい子ぶらないで!私を認めてくれる人なんて誰もいない!だから全部ぶっ壊す!
現実世界。
フラン(悪魔)の邪悪なオーラはさらに高まっていた。
「いいね~…悪魔の俺とこいつの力があれば俺は最強だ!」
フラン(悪魔)は体をのけ反らせて力の快感に浸っていた。
「そうは思わねえか?…『破壊王』。」
フラン(悪魔)は体勢を元に戻してボロボロになっている黒刀を見る。
「…フランを…返せ!」
ダメージに苦しみながらも黒刀は叫んだ。
「おいおい…無理強いはダメだぜ。こいつだって本当は大好きなんだよ…破壊が!」
「嘘だ!」
「嘘じゃないさ…それがこいつの本性だ!」
フラン(悪魔)は『フォーオブアカインド』を発動して4人に分身した。
「「「「ヒャハハハハ!」」」」
気味の悪い笑い声を上げてあらゆる方向から黒刀に斬りかかってくる。
黒刀は防御することで精一杯だった。
「くっ!」
「「「「どうした?こいつを斬るのが怖いのか?だったらさっさと死ね!」」」」
分身の1人が黒刀の脇腹を蹴った。
ビキキッと肋骨が何本か折れる音が響く。
「黒刀!」
にとり達と共に最前列で見守る映姫が悲痛の叫びを上げた。
黒刀はまるで空中に床があるかのように滑りながら後退していく。
「「「「お~痛そうだね~!」」」」
フラン(悪魔)は薄気味悪い笑顔を浮かべる。
「…はあ…はあ…たかが骨折だ。」
黒刀は一切衰えることのない闘志の宿った目でフラン(悪魔)を睨んだ。
そして首を僅かに後ろへ傾けて映姫を見下ろすと僅かに微笑んだ。
「(姫姉…ごめん…ちょっとだけ無理するよ。)」
黒刀は首の向きを前に戻した。
映姫は黒刀が何をしようとしているのか気づいた。
「黒刀、ダメ!それだけは使わないで!」
映姫の悲痛の叫びも空しく黒刀は意識を集中して自身の精神世界に入った。
黒刀の精神世界。
そこはほぼ暗闇の世界だった。
だがその中に光り輝く4つの巨大な鉄の扉が縦に並んでいた。
黒刀は一番手前の扉の前に立つ。
扉には錠がかかっていた。
ここに来るのは随分久しぶりだな…
目を閉じて意識を集中する。
目を開けると左手には1つの鍵があった。
黒刀がその鍵を錠の穴に差し込み右に回すとカチャッと音を立てて開錠される。
黒刀は躊躇いなくその扉を開けた。
ED5 ソードアートオンラインⅡ ファントムバレット編 Startear
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