現実世界。
「オーバーリミット レベル1!」
黒刀が詠唱するとそのオーラがフィールド全体を覆い尽くす程の高まっていく。
「何だ!このオーラは!」
フラン(悪魔)は始めて驚愕の表情を浮かべる。
「あれは『オーバーリミット』。今の黒刀は『ゾーン』の倍の力を引き出しています。」
映姫が口を開く。
「倍ってことは今の黒刀は200%の力だってことか!」
にとりが驚く。
「しかし『オーバーリミット』は黒刀に多大な負荷を与えます。以前使った時は山1つを消し飛ばしたこともあります。」
「「「山1つ⁉」」」
にとり達は耳を疑った。
「まさかそんな切り札を隠していたとはな…だがそのザマじゃ…」
「ああ、一撃が限界ってところだろう。だがそれで十分だ。」
黒刀は『八咫烏』を両手で握って剣先をフラン(悪魔)に向けると突進突きの構えを取る。
「全てのオーラよ…我が鎧となれ!」
黒刀が叫ぶとフィールド全体を覆い尽くしていたオーラが黒刀に纏わりつく。
「(フラン…今助けてやるから。)いくぞ!クソ悪魔!」
黒刀は加速した。
「殺す!絶対に!」
フラン(悪魔)は『レーヴァテイン』に邪悪なオーラを込める。
「デビルインフェルノブレイカー~!」
赤と黒が混じった炎の斬撃を放った。
黒刀はそのまま炎の斬撃に飛び込んでいく。
「てめえのくだらねえ欲望でフランの心を汚すんじゃねえ!」
黒刀は怒りの叫びを上げる。
炎の斬撃を突破してフラン(悪魔)の胸を突き刺した。
「バカが!こいつを刺しても俺には…っ!なんだ?苦しい!」
突き刺さっている『八咫烏』の刀身を見るとユラユラと揺れていた。
「霊剣化だと!貴様~!最初からこれを狙ってやがったのか!」
「消えろ!クソ悪魔!」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉ!」
悪魔の断末魔が響く。
フランの精神世界。
確かに私はどこかで喜んでいたのかもしれない…でもそれじゃダメなの…
何を言っているの?
私は信じてる…あの人がきっと…迎えに来てくれるって…
嘘だ!あの人は私達を裏切った!こうなったのも全てあの人のせいだ!
違うよ…だってあの人は世界で一番のヒーローだから
その時、フラン(闇)の背後に強い光が差し込む。
ほらね………あなたには感謝してるよ…私の代わりに怒ってくれたんだよね…でも…もう大丈夫…これからは大好きな人達と一緒に強くなっていくから…
フランはフラン(闇)の横を駆け抜けていく。
フラン(闇)は振り返って右手を伸ばす。
やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
フラン(闇)がそう叫ぶと光に焼かれて消滅していく。
フランは光に手を伸ばして光の中から伸びる手を握った。
現実世界。
……ン………ラン………フラン…
フランは自分の名を呼ぶ声に導かれてゆっくりと瞼を開いていく。
すると自分が誰かの腕に抱かれていることに気づく。
顔を上げるとそこには大好きな人の顔があった。
「おかえり…フラン。」
優しい目で言葉をかけるのは…
「お義兄様…。」
フランは涙を流すと黒刀の胸に顔をうずめた。
「ごめんな…今まで辛い思いをさせて…。」
黒刀は強く抱きしめて言葉をかけた。
「ううん…いいの。だって…」
また…こうして大好きな人の温かさを感じられるから…
「フラン…見て。」
黒刀とフランの視線の先には綺麗な夕日があった。
フィールドの床には『レーヴァテイン』と『八咫烏』が交差して突き刺さっている。
「さて…フラン。」
「なあに?お義兄様。」
「まだやるか?決勝戦の続き。」
「ううん…もう私は十分満足したよ。だから私の…負け。」
《勝者 四季黒刀》
フランが降参したことにより機械音声が鳴り響く。
2人が地上に着地すると黒刀の『ゾーン』が解けて白い翼もスーッと消えていく。
フランの『レーヴァテイン』も消えていく。
レミリアがフィールドに駆け込んできてフランを抱きしめた。
「フラン!良かった…無事で。」
「お姉様…ごめんなさい。心配かけて。」
「いいのよ…フランが無事ならそれで。」
黒刀は2人から離れると床に突き刺さっている『八咫烏』に歩み寄る。
「ありがとう。」
そう呟いてから『八咫烏』を床から抜いて納刀する。
抱き合う2人を一度見てから立ち去ろうとする。
「待って!」
するとレミリアに呼び止められた。
黒刀が振り返る。
「一応お礼を言っておくわ…ありがとう…。」
レミリアは目を逸らして少し頬を赤く染めながらお礼を口にした。
「…どうも。」
黒刀はそれだけ言い残して去った。
フィールドを出るとすぐに映姫や妖夢達が駆け寄ってきた。
「黒刀!」
「先輩!」
「観客は?」
黒刀が訊く。
「大丈夫。学園長が空間魔法で外に避難してくれました。」
映姫が答える。
「それより先輩…ひどい怪我です!」
「大丈夫大丈夫。こんなの大したことないって…」
黒刀が言葉を続けようとしたところで、
「黒刀先輩、ちょっと。」
大妖精が治癒魔法をかける。
「…肋骨3本折れてます…火傷は…すぐに治せます。ただ一番ひどいのが…全身筋肉痛です。」
大妖精は一瞬で黒刀の状態を見抜いた。
「筋肉痛⁉黒刀!」
魔理沙は驚いた。
「『オーバーリミット』の反動ですね。まだ使いこなせていないものを…。」
映姫が黒刀をジト目で睨んだ。
「…使わなきゃいけない時だったんだ。絶対に負けられない戦いだった。」
「まあ…今回は許してあげます…。」
映姫は渋々納得して聞き入れた。
「先輩。」
妖夢が呼んだ。
「ん?何だ?」
黒刀が聞き返した。
「先輩はどうしてあそこまで戦えるんですか?」
「ん~それは守りたいものがあったからだよ。」
「守りたいもの…。」
黒刀の答えに妖夢はつぶやく。
「前にも話しただろ。俺の『剣魂』は大好きな人達なんだ。その為なら命だって懸けられる。」
「命を懸ける…。」
「ま、お前はそのくらいの気持ちで頑張れってこと。」
黒刀は妖夢の頭にポンと手を置いた。
「先輩…私、きっといつか先輩を超える剣士になってみせます!だからそれまで先輩の背中を追いかけさせて下さい!」
妖夢は自身の決意を黒刀に伝えた。
「好きにしろ。ただし、あんまりトロトロしていると背中が見えなくなるから覚悟しとけよ。」
「はい!」
妖夢は大きな声で応えた。
第10回剣舞祭個人戦。
優勝 四季黒刀。
準優勝 フランドール・スカーレット。
8月10日。
黒刀達は奈良県幻想町に帰った。
優勝トロフィーや賞状は神光学園の学園長室に飾ってある。
黒刀は自宅の写真立てに写真を飾った。
それは黒刀達が団体戦で優勝した時に皆で撮った記念写真だった。
みんなの表情は笑顔であふれていた…
全国編完。
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