「ザナドゥの民?」
妖夢が呟いた。
ルーミアと名乗った少女が頭を抱えている黒刀に近づく。
ルーミア。
姿は幼い少女で瞳の色は赤、髪は金髪のボブ。
白黒の洋服、スカートはロング、左側頭部には赤いリボンを着けている。
「さあ、行きましょう…我らの王よ。」
そう口にすると黒刀の体が黒いオーラの球体に飲み込まれていく。
その球体は徐々に高度を上げていく。
「待って!先輩をどうするつもり!」
妖夢が呼び止める。
「お前には関係のないことだ。王は自ら望んで我らの元に来た。
邪魔はさせない!…いくよ。」
ぬえと名乗った少女が他の仲間達に呼びかけて去ろうとする。
封獣ぬえ。
黒髪のショートボブで右の後ろ髪だけが外に跳ねた左右非対称の髪型をしている。
瞳の色は深紅。
裾に赤い渦巻き型の模様のある黒地のワンピースを着て、胸元に赤のリボンをつけていて黒のニーソックスと赤い靴を履いている。
背中からは赤い鎌のような3枚の右翼と青いグネグネとした矢印状の左翼が3枚生えている。
手にはトライデントのような槍を持っている。
「ふざけるな…先輩を…返せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
妖夢がハイジャンプを使って宙に浮くルーミア達に斬りかかろうとする。
その時、妖夢の近くに花びらが舞って声が響いた。
「火花!」
すると花びらが発光して爆発した。
「王の帰還の邪魔はさせない!」
幽香と名乗った女性が言い放った。
風見幽香。
癖のある緑の髪で瞳の色は真紅。
白のカッターシャツにチェックが入った赤のロングスカート。
その上からチェック柄のベストを羽織っている。
スカートには花の形のワッペンをつけている。
首には黄色のリボン、日傘を差している。
爆発の煙が晴れると妖夢の周囲には氷の盾が展開されていた。
妖夢の前にはチルノが飛んでいた。
どうやら『アイスシールド』で妖夢を守ったようだ。
「へえ、少しはまともにやれそうな奴の用ね。」
幽香が感心した声を出す。
その時…
「余所見をしていいんですか?」
声を発したのは『抜き足』を使ってルーミアに接近して『影牢』で捕縛した映姫だった。しかしルーミアは動じなかった。
「いいの?そんなことをして。」
ルーミアは不敵に微笑んだ。
「え?」
映姫が声を発した直後、意識が朦朧としてきて『影牢』が解かれて映姫は気を失って地面に落下していく。
「私からオーラを吸収するなんて愚かなことをするからそうなるんだよ。」
「魔理沙!」
「分かっているぜ!」
霊夢の声に魔理沙が応えると落下中の映姫を受け止める。
「お前らの行為は戦闘行為と判断する。幽香!さとり!こいし!…少し相手をしてやれ。」
「「「はい。」」」
応えた3人は一斉に妖夢達に襲いかかった。
幽香はチルノへ、さとりはレミリアへ、こいしはフランへとそれぞれの敵に向かう。
古明地さとり。
桃色の髪でやや癖のあるボブ。
深紅の半目。
体格は小柄。
フリルのついたゆったりとした水色の服、下はピンクのセミロングスカート。
頭には赤いヘアバンド。
古明地こいし。
灰色の髪でセミロング。
瞳の色は緑。上の服は黄色の生地に二本白い線が入った緑の襟、鎖骨の間と胸元と鳩尾あたりに1つずつ付いたひし形の水色のリボン、頭には鴉羽色の帽子、薄い黄色のリボンをつけている。結び目の左前辺り。
「チルノ、足場作れる?」
「お安い御用さ!」
妖夢の言葉にチルノが応えて氷の直方体の足場を空中に造形した。
「ありがとう。」
妖夢は氷の足場の上に乗るとダッシュで幽香達の間を抜けて、ぬえに突撃した。
「(恐らくあの人が彼女達のリーダー。その人を倒せば!)」
「なるほど…僕を倒せば勝ちだと思っているわけか…甘い!」
ぬえは妖夢の思惑を読んで言い放った。
その時、地上の咲夜が時間を停止する…が、
「舐めるな。」
ぬえがオーラの波動を放つとパリンッと音を立てて破られた。
「そんな…。」
咲夜は唖然として固まってしまう。
「妄執剣 修羅の血 弐式!」
妖夢はぬえに斬りかかっていくがぬえは防御術式を展開して妖夢の剣技を防ぐ。
しかし、映姫を大妖精の元へ届けた霊夢と魔理沙がぬえの左右両方向から同時に砲撃を放つ。
「マスタースパーク!」
「白霊砲!」
「だから甘いと言っている。」
ぬえは両手を左右に伸ばすと2人の砲撃を手のひらで防いだ。
「ほら返すよ。」
左手で防いだ『マスタースパーク』を霊夢へ、右手で防いだ『白霊砲』を魔理沙へ流した。
「「ぐあっ!」」
霊夢と魔理沙が悲鳴を上げて落とされる。
「霊夢!魔理沙!」
妖夢が下を見下ろして叫ぶ。
幽香は服の裾から植物のツルを伸ばして飛び回るチルノを追い詰めていく。
そして、ついにチルノの足首を捕まえる。
「しまった!」
チルノが声を上げるのも束の間、振り回されて地面に叩きつけられる。
「チルノちゃん!」
大妖精が映姫を介抱しながら叫ぶ。
フランは視線を泳がせながらこいしの姿を探していた。
「どこ?どこにいるの?」
「ここだよ。」
声が聞こえた直後、腹に強烈な痛みが走る。
遅れて自分がこいしに膝蹴りをされていることに気づく。
「がはっ!」
フランは血反吐を吐くがなんとか『レーヴァテイン』で薙ぎ払ってこいしに距離を取らせる。
「なんで…いつの間に正面に。」
フランは腹を左手で押さえながら呟く。
「いたよ。最初からあなたが気づいてなかっただけ。」
「どういうこと?」
「これから死ぬ奴が知ってどうするの!」
こいしはまた姿を消した。
数秒後、フランのうなじに痛みが走った。
僅かに視線を後ろに向けるとこいしが自分に手刀した後だった。
さらに手刀によって意識が朦朧となったところで正面に回られて蹴りが来る。
フランは両手をクロスして受けるがこいしの蹴りが予想以上に重くフランの体を地面に叩きつけた。
追い打ちとばかりに地面に叩きつけたフランに霊力弾の弾幕を放った。
「妹様!」
咲夜が声を張り上げて叫ぶ。
レミリアは『未来王の眼』と『グングニル』で連続攻撃をさとりに仕掛けるがさとりはそれを最低限の動きだけで躱していた。
まるで心を読んでいるかのように。
「(こいつ…。)」
レミリアは唇を噛みしめる。
さとりは躱しながらオーラで黒い影のような剣を造形するとレミリアに振ってきた。
レミリアは翼を前に出して防御に入る。
だがオーラの剣はレミリアをそのまま押していく。
「なっ!」
レミリアは目を見開いた。
「無駄です。ザナドゥの民である私達にあなた達は勝てない。」
「…私も少し前まではあんたと同じことを言っていたわ。
だけどそういうことは誰かに決められることじゃ…ない!」
レミリアは翼を引いて『グングニル』を振ってさとりの剣とぶつかり合った。
「…しぶとい。」
さとりは忌々しげにそう口にした。
妖夢は飛行できないのでハイジャンプを連発してぬえに連続で斬りかかっていく。
ぬえはその攻撃をことごとく防ぐ。
「なら…これでどうだ~!」
妖夢は『閃光斬撃波』を放った。
「そんなお遊びの技で僕を倒せると思うな!」
ぬえは両手で黒いオーラの玉を生み出して『閃光斬撃波』に向けて放つ。
その玉は『閃光斬撃波』をあっさり突き抜けて妖夢に直撃した。
さらにぬえは追い打ちで霊力弾の弾幕を放つ。
まだダメージのある妖夢は防ぎ切ることが出来ず何発か直撃してしまう。
この痛みはセーフティーによって緩和されたものではない。
本物の痛みだ。
妖夢は意識が途切れる前に斬撃を1発放った。
だがその斬撃がぬえに届くことはなく途中で力尽きて消えてしまう。
妖夢は気を失って地面に落下していく。
「くっ!」
レミリアはさとりから離れて落下中の妖夢に急降下して墜落寸前で受け止めて着地する。
「こいつら…強すぎるぜ…。」
魔理沙が歯を食いしばる。
「お空、とどめをさせ。」
「あいよ!」
ぬえの指示に『お空』と呼ばれた少女は右手に装着された砲身を地上にいるレミリア達に向ける。
砲口の先にオーラを集束していく。
「あれはまずい!」
レミリアは1人飛び立った。
「カオスブラスター!」
お空は砲口から赤黒いビームを撃ち放った。
「スピア・ザ・グングニル!」
レミリアは正面から『カオスブラスター』に立ち向かった。
しかし『未来王』のレミリアの力でさえ押されていく。
「くっ!」
レミリアはなんとか踏ん張る。
「滅びろ。」
お空が呟いた直後、激突した部分が大爆発を引き起こした。
「行くよ。」
ぬえが幽香達に呼びかける。
6人は黒い6つの光となってクレーターの向こう側に飛んでいく。
黒刀を入れた球体と共に。
向こう側まで飛んでいくとそこから空間が歪んでいく。
そして、突如出現したのは古代の王国だった。
大爆発の煙が徐々に消えていくとレミリアが展開した防御術式と霊夢の展開した結界の中にレミリア達はいた。
「ふ~…間一髪だったわね。」
霊夢は一息つく。
「礼を言うわ霊夢。」
霊夢とレミリアのそんなやり取りも突如出現した古代の王国によってなくなる。
「なんだよ…あれ…さっきまであんなの無かったぜ!」
魔理沙がこの場の誰もが思っていることを代弁した。
だが霊夢の反応だけは違った。
「(何…懐かしい?いや…そんなはずはない…私はここに来るのが今日が始めて…のはず。)」
霊夢はどこか否定しきれない部分が自身にあった。
それでもすぐに気持ちを切り替える。
「ねえ…さっきの戦いで気づいたことがあるの。タイミングがなくて言えなかったんだけど…彼女達、魂を2つ持っている。」
大妖精が怪我人に治癒魔法をかけながら反応する。
「確か前にもそんなことが…そうです!黒刀先輩が二宮さんと闘った時と同じ!」
「そう!だけど1人だけ魂が1つだけの奴がいたの…それはあのぬえっていう奴よ。
あいつだけが魂1つだった。」
「なら彼女がリーダーで間違いないでしょうね。戦闘中も指示を出していたし。」
そう言ってレミリアが頷く。
「とにかく…」
魔理沙が言葉を続けようとした時、
「「とにかくあいつらをぶっ飛ばす!」」
フランとチルノが飛び起きて声を揃えた。
大妖精が完治させたようだ。
「それはいいとして妖夢と会長をどうするのよ?黒刀先輩を取り戻しに行くなら確実にこの2人の力は必要だわ。」
霊夢が意見を口にする。
「なら私が会長を運ぶから霊夢と魔理沙は妖夢を運びなさい。
咲夜、あなたはヘリで待機よ。黒刀を取り戻してすぐにでもここを出られるようにしておきなさい。」
レミリアが指示を出す。
「すげえリーダーシップ。」
魔理沙が感心した。
午後1時 ザナドゥ王国 玉座の間。
黒刀を入れた球体は玉座の真上で浮遊していた。
ルーミアは球体の目の前まで浮遊して近づく。
「それじゃ融合を始めるよ。」
そう言って黒い球体の中に入り込んだ。
黒い球体の中の黒刀は目を閉じたまま仰向けに浮遊していた。
ルーミアは黒刀の真上に移動して向き合う。
「融合開始。」
その直後に黒刀の様子が急変した。
まるで何かに抗うように体をよじり出して苦しみだした。
「う…うああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
黒刀の叫びが響き渡る。
「それにしてもなんで俺だけこんな年増の女なんだ。お前らみたいに若い方が良かったぜ。」
黒刀の叫びを気にも止めず幽香が憑依した体に不満を漏らした。
「なんかあなたって四天王最弱の立ち位置だよね…完全に。」
こいしが笑う。
「なっ!おい、それはどういう意味だ!」
幽香が声を荒げる。
「少し静かにしろ。誰の御前だと思っている。」
4人の前で黒い球体を見上げていたぬえが振り向かないまま注意した。
その一言だけで彼女達は黙り込んでしまった。
「もうすぐ会えますよ…。」
ぬえはどこか懐かしむような目をしていた。
そしてレミリア達はザナドゥ王国に侵入しようと迫っていた。
ED6 魔法科高校の劣等生 ミレナリオ
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