黒い球体の亀裂が底まで到達してパリンッと弾けると中から瘴気のような闇が溢れ出した。
空は黒い雲に覆われ雷も鳴り出す。
闇の中から足音が響く。
ガチャ…ガチャ…と。
闇の中から姿を現したのは顔立ちは黒刀そのものであったがその身体には甲冑のような漆黒の鎧、漆黒のブーツ、漆黒のマント、漆黒の籠手が装着されていた。
1歩踏み出したその瞬間に妖夢、映姫、さらに距離が離れているチルノ、大妖精、霊夢、魔理沙、レミリア、フランまでもがこれまで感じたことのない強いプレッシャーを感じた。体が重い。そう錯覚するほどの。
「お久しぶりです。ザナドゥ卿。」
ぬえは前に出て跪くと右手を胸に当てて再会の挨拶をする。
「余は…どのくらい眠っていた?」
その男が最初に放ったその声は黒刀の声より低く大人びていて圧倒的な存在感と威圧感を感じさせるものだった。
その声を聞いた妖夢は思い出した。
「(この声…先輩と二宮さんが闘っていた時に聞いた…。)」
「およそ1000年です。」
ぬえは跪いたまま答える。
「そうか…ところでぬえ、何故うぬはそのような姿勢でいる?うぬは余の友であろう。」
男は跪いたままぬえに対して問う。
「これは今の僕にとってザナドゥ卿に対する姿勢であるからです。」
「うむ…だがそのようにしていては言葉を交わし辛い。腰を上げよ。」
「はっ!」
ぬえはザナドゥ卿の言葉に従って立ち上がった。
「ザナドゥ卿!今の状況ですが…」
ぬえがザナドゥ卿に説明しようとした時、
「説明は要らぬ。余は今まで眠ってはいたが時折1割程度ではあるが覚醒することがあった。覚えておるのはおぼろげであるがな。」
ザナドゥ卿は目を一度閉じてからもう一度目を開いた。
その瞳には紫色の五芒星が浮かび上がっておりザナドゥ王国全体の戦況を一瞬で把握した。
「懐かしい魂が集まっているな…。」
「(まさか『千里眼』で!)」
妖夢はそう思った。
「ザナドゥ卿、1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「何だ?申せ。」
「何故ザナドゥ卿は17年前、赤子になっておられたのですか?何か御存知であればお聞かせください。」
ぬえの問いに対してザナドゥ卿は玉座の階段から一段降りる。
「それは余が力尽きる寸前に転生術式を発動したからだ。ただしこの転生術式は転生するまで膨大な時間を要する。それ故、余は先に魂を眠らせた。さらにこの術式には器が必要となる。他者のではなく自分自身の分身を生み出しそこを魂の拠り所とする。うぬが余の赤子姿に出会ったのは転生して間もない頃であろう。」
また一段降りる。
ザナドゥ卿の言葉をぬえは一語一句聞き逃さない。
「さすがです。ザナドゥ卿はやはり素晴らしき御方です。」
ザナドゥ卿は最後の一段を降りる。
「ぬえ…もう一度腰を下げてはくれぬか?やはりこの国の姿は『覇王の眼』ではなく余自身の目でしかと見たいのだ。」
そう口にして『八咫烏』を鞘から抜く。
「ふむ…かつての愛剣『魔剣デュランダル』に比べると小さき故心配しておったが不識と手に馴染む。」
『八咫烏』を水平に構える。
映姫はその行動の意味を理解した。
「妖夢、伏せて!」
映姫に呼びかけられて妖夢は急いでしゃがんだ。
ぬえは既に跪いている。
ザナドゥ卿は右足を軸に1回転しながら黒い斬撃を放った。
「やはり…あの日ままか…。」
ザナドゥ卿はそう呟いた。
妖夢が周囲を見渡すと玉座の間の床から2m高い壁から天井までが跡形もなく消えていた。
瓦礫1つ残らず。
「ぬえ、保存霊術をかけてようだな。」
「はい。ですが修復霊術をかけるまでは至りませんでした。」
「よい。むしろあの日のままであるからこそ余の心が揺るがずに済むのだ。」
「おい、氷のガキ!どうやらお前と戦うのはここまでのようだ。ザナドゥ卿が復活なされた以上、俺は行かなきゃなんねえからな。」
「待て!まだ勝負はついてないぞ!」
「安心しろ。俺がいなくなっても今度はこいつ本人が戦ってくれるさ…きっとな。」
幽香の体から青年の霊体が現れて玉座の間の方角へ飛んで行く。
さらにお空、さとり、こいしの体からも同様の現象が発生していた。
4つの魂がザナドゥ卿へ集まっていく。
ザナドゥ卿の体が吸収されて黒刀の精神世界にまで届き黒刀にも吸収された。
その時、黒刀の意識が精神世界だけで戻る。
同時に黒刀の中である記憶が蘇った。
それは黒刀がずっと追い求めてきた10年前以前の記憶だった。
ED6 魔法科高校の劣等生 ミレナリオ
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