東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP8 遊戯王GX 99%



世界

 9月6日 午前8時 第2体育館。

黒刀を巡ったさとりとアリスの喧嘩もにとりが仲裁に入ることでなんとか一時休戦ということとなった。

この日は珍しく黒刀がA組の実習に参加していた。

その理由は椛という練習相手が出来たからだ。

 黒刀は汎用型SDを右手で使って模擬戦を行っている。

椛は黒刀が汎用型SDを使っていることもそれを右手で使っていることをそれほど気にしていない。

黒刀の高速連続剣撃を椛が『千里眼』で見切って上手くガードして反撃にお得意のカウンターの突きを放つ。

黒刀は楽しそうに口元を緩ませながらそれをSDで軽く弾く。

これだけの攻防だけでも2人の実力が周囲と離れていることは一目瞭然である。

 黒刀が今まで実習に参加しなかった理由はただ1つ。

相手がいなかったから。

椛が編入してくるまで映姫を除いた2,3年生で黒刀と互角以上に闘える生徒はいない。

 黒刀と椛の攻防が激しくなってきたところで制限時間のタイムリミットを告げるブザーが鳴り響く。

 

「はい。次!」

 

声を張り上げるのは実習担当教師の勇儀。

黒刀と椛は体育館の端に移動して腰かける。

 

「やっぱ椛が相手だとちょうどいいな。」

 

「汗1つかいてないくせによくそんな嫌味が言えるわね。」

 

椛はため息を吐いて言い返した。

 

「この程度でバテていられないさ。」

 

黒刀はそう言い返す。

 ちなみにさとりは早くもクラスメートから人気を集めていた。

男子は遠巻きに眺めていることしかできていないが女子はさとりを囲んで談笑していた。

さとりに友達が出来たことに黒刀は素直に嬉しかった。

 

「嬉しそうね。」

 

それが顔に出ていたのか横から椛に言われる。

 

「まあな。」

 

 

 

 

 

 一方、妖夢達1年A組も第一体育館で実習を行っていた。

内容は20m離れた的に遠距離攻撃を命中させること。

 

「よし!絶好調だぜ!」

 

ガッツポーズを取っているのはここまで全弾命中の魔理沙。

 

「よ~し!私もやるぞ!」

 

それに対抗心を燃やしたお空が前に出る。

 

「ようは全部撃ち落とせばいいんでしょ?だったら…武装!」

 

お空が詠唱すると右腕が光って装着型MADが装着された。

先端には砲口が取り付けられている。

それを目にした妖夢達は嫌な予感がした。

 

「ちょっとお空さん。さすがにそれは」

 

妖夢が制止しようとするがお空は既に発射態勢に入っていた。

 

「カオスブラスター!」

 

砲口から黒い光線が放たれる。

幸いこのMADにはセーフティーがかけられているので威力はザナドゥ王国の時より抑えられているがそれでも体育館の壁に大きな穴を空ける程の威力はあった。

お空の放った砲撃で的は全滅。

さらに体育館の壁に直径5mの穴を空ける結果となってしまった。

 

「よし!」

 

お空がガッツポーズを取る。

 

「よし!じゃねえよ!」

 

すかさず魔理沙がお空の後頭部を叩いてツッコむ。

 

「あはは…。」

 

妖夢は苦笑いするしかなかった。

この日、勇儀の代理で1年の実習を担当していた教師は驚愕のあまり絶句して開いた口が塞がらなかった。

 

「アハハ!お空バカだな~!」

 

チルノは爆笑していた。

 

「チルノちゃんも似たようなもんだよ。」

 

大妖精がため息を吐く。

 

「え、マジで!」

 

チルノがバッと振り向いて驚く。

 

「自覚ないんだ。」

 

大妖精はもう一度ため息を吐いた。

結局、お空と何故か付き添いで大妖精が説教を受ける羽目になった。

 

 

 

 

 

 放課後。

黒刀は編入生のさとりと椛に校内を案内する役目をにとりから押し付けられ仕方なく校内を歩き回りながら2人に案内していた。

その途中で黒刀達は同じようにお空に校内を案内している妖夢と大妖精にバッタリ会った。

 

「あ、先輩。先輩もですか?」

 

妖夢が黒刀の背後についてきているさとりと椛に視線を向けながら言った。

ちなみにさとり、お空、椛が編入してきたことは昼休みの段階で全校生徒に伝わっている為、妖夢も椛達が編入してきたことは既に把握済みである。

 

「まあな。」

 

黒刀が短く答える。

 

「黒刀だ~!久しぶり~!」

 

お空が黒刀に抱きつく。

黒刀にとってお空は妹分みたいなものだ。

 

「お空、皆見てるから。」

 

しかし、ここは学校なのでそう言い聞かせる。

 

「は~い!」

 

お空は笑顔で黒刀から離れる。

 

「(さとりの時は全然止めなかったのにな。)」

 

椛は白けた目で心の中で文句をつけるが自分が言っても仕方のないことなので黙ることにした。

黒刀は椛の視線の気づいていたがあえてそこには触れず振り返る。

 

「それじゃもう大体校内は案内したから俺は図書塔に行ってくる。」

 

「図書塔?」

 

椛が首を傾げる。

図書塔の存在についてではなく何故黒刀が図書塔に寄るのかということに疑問を抱いたのだ。

黒刀はすぐにその疑問に答えた。

 

「これでも図書委員だからな。」

 

「じゃあ私も。」

 

お空がついていこうとする。

 

「ダメですよ。忘れたんですか?今日は大事な用があるって。」

 

大妖精がお空に囁いた。

 

「や、やっぱいいや。」

 

お空は思い出して撤回した。

 

「じゃあ行ってくる。」

 

黒刀はこのまま自分がここに留まっていては邪魔のような気がしたのでその場を去った。

 

 

 

 

 

「お空、大事な用って何?」

 

黒刀の姿が見えなくなったことを確認してからさとりが訊いた。

お空の代わりに妖夢が答える。

 

「今日は先輩の誕生日なんですよ。だから師匠…会長に相談して先輩の家でバースデーパーティーをしようってことになってその準備をしないといけないんですよ。」

 

「それ私もやる。」

 

さとりが参加を申し出る。

 

「まあ、あいつには色々と世話になってるし私も手伝うよ。」

 

椛も頭を掻きながら手伝いに名乗り出た。

 

「助かります!」

 

妖夢が感謝の言葉を返す。

 

「私は先輩がパーティーの準備中に帰ってこないように時間を稼がないといけないのでここで失礼します。詳しい説明は大妖精から聞いて下さい!」

 

妖夢はそう大声で言い残して走り去って行った。

 

 

 

 

 

 午後3時30分。

黒刀の背中はすぐ見つかった。

黒刀は図書塔に続く並木道を歩いていた。

妖夢は木に隠れながら後を追っている。

黒刀が図書塔に辿り着いて中に入っていく。

妖夢も少ししてから中に入る。

歩いて中を進み扉が音を立ててしまったその時。

 

「何コソコソしてんだ?」

 

妖夢の背後から声をかけられた。

 

「にょわっ!」

 

妖夢は変な声を上げて前のめりにこける。

 

「何やってんだよ…。」

 

黒刀は呆れながら手を差し伸べる。

 

「すみません。」

 

妖夢は黒刀の手を取って立ち上がる。

 

「ま、何でもいいけど。」

 

黒刀は妖夢の行動にそれ以上を口を出さなかった。

 

「やっと来た。」

 

図書塔の受付から声をかけてきたのは図書委員長の稗田阿求。

 

「遅くなってすみません。」

 

黒刀は社交辞令を入れて受付の席に座る。

 

「事情は事前に連絡を受けているので問題ないですよ。」

 

阿求はそう返す。

黒刀は受付に置いてある本を手に取る。

 

「あっきゅんはMADの調整はどのくらい出来るようになった?」

 

「黒刀程じゃないけど人並み以上には出来るよ。」

 

阿求は当然のように返す。

妖夢は受付前の椅子に腰かける。

 

「阿求先輩はエンジニアを目指しているのですか?」

 

「いや。私が目指しているのは大英図書館の館長だよ。」

 

阿求は首を横に振って答える。

 

「大英図書館ってイギリスにある大英図書館ですか?」

 

「そうだよ。」

 

阿求は同じ質問に嫌な顔せず答える。

 

「はあ~何だか凄くスケールが大きいですね。」

 

妖夢が感嘆した声を漏らす。

 

「夢は大きいに越したことはないからね。」

 

「そうですね。ところで先輩は先程から何を読んでいるのですか?」

 

妖夢が読書中の黒刀に訊く。

読書中であっても黒刀は会話することが出来る。

 

「ん?空間魔法理論の資料だよ。」

 

「空間魔法って確か二宮さんや学園長が使っている魔法ですよね?」

 

「ああ。俺の『カオスブレイカー』に空間魔法を組み合わせられないかなって考えてさ。」

 

黒刀の言葉に阿求が考え込む仕草をする。

 

「確かに『カオスブレイカー』がもしゼロ距離で飛んで来たら回避と防御の不可の斬撃になる。」

 

「今のままでも十分強力だと思いますけど。」

 

妖夢が苦笑する。

 

「妖夢。今のままでもという考えは成長を止めることになる。お前だって停滞したくないから姫姉に弟子入りしたんだろう。」

 

黒刀が妖夢の言葉を一部否定する。

 

「先輩、知っていたんですか?師匠に聞いたんですか?」

 

妖夢は驚いた。

最もここは図書塔なので大声を張り上げるなどとマナーの悪い行為はしない。

 

「見てれば分かる。」

 

黒刀が呆れ顔で返す。

妖夢は急に恥ずかしくなって顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

 

 

 

 

 午後5時30分。

閉門時間となって黒刀達は図書塔を後にする。

黒刀はバイクで阿求を家まで送ろうとする。

 

「1年の女の子を1人で帰らせるつもり?」

 

だが阿求にそう言われてしまったので妖夢を送ることにした。

しかし、妖夢にとってそれは誤算だった。

黒刀の自宅…正確には黒刀がオープンする予定の1階の喫茶店でパーティーを開く予定なのに妖夢が帰ってしまっては意味がない。

 

「あ、そういえば今日は師匠に修行をつけてもらうんでした。先輩、お願いします。」

 

後付けのような言い方に黒刀は首を傾げたが師弟の事情に口を出すべきではないと考え妖夢を後ろに乗せてアクセルを踏んだ。

 

 

 

 

 

 黒刀の自宅の駐車場に到着する。

 

「せっかくなので先輩がオープンする予定の喫茶店も見てみたいです。」

 

妖夢が黒刀を誘い込もうとする。

 

「いいよ。」

 

あまりの不自然なお願いに首を傾げたが特に断る必要も無いのでそう返した。

幸いなことに黒刀は『覇王の眼』を発動していなかった。

カードキーは黒刀が持っているのでキーをかざして中に入ったその瞬間。

証明がパッと点灯してクラッカー音が鳴り響いた。

 

『お誕生日おめでとう!』

 

祝いの言葉を届けたのは映姫、ルーミア、妖夢、霊夢、魔理沙、チルノ、大妖精、阿求、小町、さとり、お空、椛、にとり、紫、藍、勇儀、幽々子、慧音、永琳、文、ミスティア…そして黒刀の両親の桜と大和。

妖夢が横から笑顔で黒刀の顔を覗き込む。

 

「驚きましたか?」

 

「ああ…驚いたよ。」

 

黒刀は微笑んで素直に返した。

すると桜が黒刀の前に立つ。

 

「黒刀、おめでとう。」

 

そう言って花束をプレゼントする。

 

「ありがとう…母さん。」

 

黒刀は花束を受け取ってお礼を言う。

 

「さあ、主役は座ってて下さい♪」

 

妖夢が黒刀の背中を押してテーブル席に座らせる。

テーブルには既に豪華な料理が並べられていた。

 

「私達だけじゃないよ。」

 

ルーミアが黒刀の隣に座って携帯端末を取り出して空間ウインドウを展開する。

モニター通信を繋いだ相手はアリスともう1人…古明地こいしだった。

 

《黒刀、17歳のお誕生日おめでとう!》

 

2人同時に黒刀を祝った。

 

「何でこいしがアリスと一緒にいるんだ?」

 

《私、アイドルデビューしたんだ!それでアリス先輩とユニットを組んだの!》

 

こいしは笑顔で衝撃の事実を告白した。

その証拠に黒刀はグラスを持ったまま固まっている。

 

《ちょっと待って。PV見せるから》

 

端末を操作するこいしの言葉に黒刀はようやくフリーズから解放された。

 

《これが今の私だよ》

 

モニター通信とは別に空間ウインドウが展開される。

PVにはこいしがソロで歌っている姿が映っていた。

曲名は『Dark Oblivon』(戦姫絶唱シンフォギアGより)。

アリスが映っていないということはユニットを組む前の映像なのだろう。

 

《ユニット名は…ハートフルマリオネットよ》

 

アリスが補足した。

本来ならばオフだったはずなのだが急な仕事が入り黒刀のバースデーパーティーに行けなくなってしまったのである。

 PVが終わったのでこいしはその空間ウインドウを閉じる。

 

《それじゃ私達はまだ仕事があるからこれで。黒刀、お誕生日おめでとう》

 

もう一度祝いの言葉を告げてからこいしはモニター通信を切った。

 

黒刀は嬉しかった。

精神喪失状態だったこいしの笑顔が見られたことに。

 

それからは皆で食べて飲んで歌って騒いだ。

防音魔法をかけていたので近所迷惑にはなっていない。

黒刀はカウンター席に移動して焼酎をグラスで飲んでいる大和の隣に座る。

 

「父さん。」

 

「黒刀か。」

 

大和は酒に強いので全く酔っていない。

黒刀はグラスのお茶を一口を飲んでからテーブルに置く。

 

「俺、きっと父さんを超えてみせるから。」

 

「そう簡単に超えられる壁じゃないぞ。」

 

「ああ。分かってる。」

 

黒刀がそう返したその時。

 

「くろにい!こっち来て!」

 

ルーミアに呼ばれた。

 

「今いくよ。」

 

黒刀がカウンター席を離れてテーブル席に戻る。

大和が再び飲もうとしたところで中身が空になっていることに気づいた。

すると横から桜がお酌してくれた。

 

「ありがとう。」

 

大和がお礼を言って桜が隣に座る。

 

「あの子、成長したわね。」

 

「父親とは複雑なものだな。親を超えるのが子。しかし超えられたくないという親のプライドもある。」

 

大和は焼酎を飲む。

 

「黒刀のことなら何も心配いらないわ。だって映姫がついているもの。」

 

桜は映姫に視線を向ける。

その視線の先では映姫が騒ぎ過ぎた連中に注意していた。

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。」

 

黒刀が思い出したようにポケットからラッピングされた小箱を取り出した。

 

「チルノ、ちょっと早いけど誕生日プレゼント。」

 

チルノにそれを渡した。

ちなみにチルノの誕生日は9月9日。

 

「わあ~何だろう!」

 

チルノはワクワクした気持ちで小箱を開けた。

中に入っていたのは雪の結晶のキーホルダー。

 

「綺麗…。」

 

チルノは思わず声を漏らす。

黒刀は優しい目で微笑む。

 

「喜んでもらえたなら何よりだ。」

 

「ねえ。ゲームしよ。」

 

さとりが唐突に言い出した。

 

「何やるんだ?」

 

「ん~王様ゲーム。」

 

「「それだけは勘弁して!!」」

 

霊夢と魔理沙が大声で拒否した。

 

 

 

 

 

パーティーもお開きとなり皆で片づけをしてそれぞれ帰宅していく。

時計の針は10時を回っている。

黒刀とルーミアが一緒に入浴してその後に映姫が入浴して3人で仲良く就寝する。

 

 …今日は最高の誕生日になったな…

 

 

 

 

 

 9月7日。

放課後に黒刀は学園長室に呼び出された。

だが黒刀には心当たりがない。

学園長室の電動ドアを開けて中に入ると既に紫、藍、にとりの他に妖夢、霊夢、魔理沙、チルノが集まっていた。

 

「来たわね。」

 

紫が口を開く。

 

「何の集まりですかこれ?」

 

黒刀が訝しげな目をする。

紫の代わりににとりが答える。

 

「そうか…お前は去年参加していなかったからな。」

 

空間ウインドウを展開して1つのデータを黒刀達に見せた。

 

「「「「ワールドデュエルカップ………ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」

 

1年生4人が驚いて声を上げる。

 

「そう。世界の15歳以上18歳以下で各国16名のチームを組んで世界一の国を決める大会だ。」

 

にとりが説明する。

 

「私達がテレビで見ていたあの大会に出れるなんて…」

 

魔理沙が言葉を発する。

 

「夢みたいです!」

 

妖夢がキラキラした目で感激する。

 

「フフフ…世界一の高校生を決める大会…つまりあたいが最強への一歩前進となる…

燃えてきた~!」

 

「いやあんたは燃えちゃダメでしょ。」

 

闘志に燃えるチルノに霊夢がすかさず冷静にツッコむ。

そんな1年生4人がやる気満々の中で黒刀は意外な答えを口にする。

 

「そうか。なら俺はパスだ。」

 

「え?」

 

妖夢が虚を突かれた顔をする。

 

「先輩、どういうことですか?何故出ないんですか?」

 

妖夢は疑問をぶつける。

 

「興味がないから。それだけだ。」

 

黒刀は冷めた返答。

完全に場が白けてしまったところで紫がため息を吐く。

 

「そう言うと思ってこちらも考えておいたわ。入って。」

 

電動ドアが開いて姿を現したのはなんと映姫だった。

 

「おいおい…まさか…」

 

黒刀が呟く。

 

「ワールドデュエルカップ。通称WDCは予選ダブルス2回とシングルス3回。本選はシングルス、ダブルス、シングルス、ダブルス、シングルスの順に1試合7人で行われる。黒刀、お前とダブルスを組んで最も相性がいいのは姉である四季映姫しかいない。」

 

にとりがそう口にする。

黒刀は苦笑い。

 

「否定はしないがこれははっきり言って反則級だろ。」

 

「師匠、公式戦に出るんですか!」

 

妖夢は嬉しそうに喜んだ。

 

「ええ。初の公式戦です。」

 

映姫が笑顔で返す。

映姫の参加を表明した後でも黒刀はまだ参加することに踏み切れなかった。

僅かな表情の変化を感じ取った映姫はため息を吐く。

 

「にとり先生、あれを見せてあげて下さい。」

 

「ああ!確かにあれを見たら黒刀も出ざるを得ないな。」

 

にとりが思い出したように空間ウインドウを展開して表示されたのはWDCの出場選手の公式発表のページだった。

出場選手のリストは各国が選抜する度に更新されていく。

いち早く公式発表されたのがイギリス。

そのメンバーの中にあったのだ。

レミリア・スカーレットの名が。

その名を目にした黒刀は目を見開いた。

 

「あ。フランちゃんも出るみたいですよ。」

 

横でそう言っている妖夢の言葉も今の黒刀には聞こえない。

黒刀の頭の中にあるのはただ1つ。

 

 レミリアと闘える!

 

黒刀は落ち着かせるように深呼吸してから全員の顔を見渡す。

 

「全く卑怯にも程がある。」

 

黒刀の観念した言葉に紫とにとりは安堵して、妖夢とチルノはハイタッチを交わして、映姫は優しく微笑んだ。

 

彼らの新たな闘いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 一世紀前まで194あった国家も第3次世界大戦を終えた現代では様々な国家が統合されて国家の数は23ヶ国となっている。

 

 

 

 

 

 インド。

巨大な仏像の前で瞑想している坊主頭の少年がいた。

ゴーンと鐘が鳴るとその少年は目をゆっくりと開けて立ち上がった。

 

「さて…修行の時間だ。」

 

独り言を呟く少年の名はガンジー・コウ(18歳)。

WDCインド代表の選手で主将である。

穏やかそうな風貌の裏には只者でない威圧感が潜んでいる。

 

 

 

 

 

 韓国。

現在の韓国は旧北朝鮮や旧中国と統合した国家となっている。

北京の寺で刀剣、棒、槍、薙刀などを素振りしている者がおよそ2000人いる。

その中で別格のオーラを持つ男が2人。

韓国代表のイ・サンとユンスク。

イ・サンは棒術を、ユンスクは剣術をそれぞれ高め合っている。

休憩に入ったところでユンスクがタオルで顔の汗を拭く。

 

「そういえばWDCには今年も日本が出るそうだ。」

 

ユンスクが雑談を始める。

 

「あの国は毎年アジア予選を抜けていますからね。今年こそ我が国が本選へ行きたいですね。」

 

雑談に応じるイ・サン。

 

「今年はあの四季黒刀が出るかもしれない。」

 

「それなら私の神器を使う時が来るかもしれませんね。」

 

「楽しみだな。」

 

「ええ。」

 

2人はそれから5分後に修行を再開した。

 

 

 

 

 

 カタール。

砂漠でサンドボード(砂地用のスケートボード)に乗って滑走している集団がいた。

 

「ひゃっほ~!一番乗りだぜ!」

 

声を上げているカタール代表のフランク。

 

「ハッ!後ろががら空きだぜ!」

 

鼻で笑ってフランクの背後から気力を込めた弾を放つのは同じくカタール代表のイヴォ。

フランクは砂を乗り上げて跳び上がると宙返りしてイヴォの妨害を躱す。

 

「はい!ざんね~ん!」

 

フランクは着地して独走し続ける。

その時。

突如目の前に砂の壁が立ち2人は押し返されて転倒した。

 

「それくらいにしておけ。」

 

そう声をかけるのは身長2mを誇るカタール代表のムハンマド。

ムハンマドという名前はイスラム教に伝えられる預言者の名前。

その名を受け継いでいるということはそれだけの実力を持っているということ。

 

「ひどいっすリーダー!人が楽しんでいる時に。」

 

文句を言うフランク。

 

「出発だ。飛行機の時間に遅れる。他のメンバーは空港に集合している。後はお前達だけだ。行くぞ。」

 

リーダーのムハンマドが2人に命令する。

 

「WDCか。相手と遊ぶにはちょうどいいじゃん。」

 

不敵な笑みを浮かべるイヴォ。

 

「ちげえよ。()()()遊ぶじゃなく()()()遊ぶんだよ。」

 

フランクが声を上げて笑う。

 

「いいからとっとと準備しろ。」

 

ムハンマドがこめかみをピクピクとさせる。

 

「「はいは~い!」」

 

2人は適当に返事して立ち上がると荷物を取りに行く為に自宅に戻る。

フランクとイヴォは高校1年生。

つまり今年から出場資格を得たことになる。

血の気の多い新入りにムハンマドは頭を悩ませていた。

 

 

 

 

 

 エジプト連邦。

現在のエジプト連邦の領土はアフリカ大陸北部全土。

首都は変わらずカイロ。

 

「アヌビス様。出発の準備が整いました。」

 

高級ソファで寛いでいる褐色肌の少年に膝をついているのはエジプト代表のヤハラ・イド。

身長2mの長身にも関わらず自身より30㎝低い少年に膝をついている。

アヌビスと呼ばれた少年の首にはネックレス、指には指輪、手首にはブレスレットとアクセサリーが身に着けられていた。

 

「やれやれ。ようやくか…余は待ちくたびれたぞ。」

 

アヌビスは立ち上がる。

 

「申し訳ありません。メンバー全員の準備を整えることに時間をかけてしまいました。」

 

ヤハラは膝をついたまま頭を下げる。

 

「ヤハラ、顔を上げよ。」

 

ヤハラが言われた通りに顔を上げたその瞬間。

頬に平手打ちをされた。

ヤハラは平手打ちを受けても動じることなくアヌビスの顔を見上げていた。

アヌビスは不機嫌な表情を隠さない。

 

「二度と余に恥をかかせる真似をするな。」

 

ヤハラを見下して言い放った。

 

「立て。」

 

続けてそう命令するとヤハラは無言でスッと立ち上がる。

 

「行くぞ。」

 

「はい。」

 

ヤハラはアヌビスに続いて部屋を出る。

彼は従者の真似事をしているわけではなく本物の従者である。

何故ならアヌビス・ヘルメスはエジプト連邦の国王の息子…つまり王子でヤハラは代々王族の従者を務めている家系であるからだ。

 

 

 

 

 

 ロシア連邦。

レティ・ホワイトロックは夏休みが明けてからロシアに帰国していた。

WDCのロシア代表に選抜されていたから。

ロシアは魔法師優遇社会で魔法の優劣が全てが決まる国家となっている。

ちなみにレティはC級魔法師。

ランク的には普通の魔法師。

ロシア代表にはA級魔法師とB級魔法師がいる。

B級魔法師は世界に100人しかいない魔法師。

A級魔法師は世界にたった10人しかいない。

B級魔法師の名はザウル・マーカー。

A級魔法師の名はウルヴァリン・イリイチ・レーニン。通称レーニンJr。

ロシア連邦大統領レーニンの息子である。

ザウルとレーニンJrは高校生でありながら軍人でもある。

もちろん軍事機密である為、知る者は少ない。

灰色の髪の少年ザウルは、訓練室で射撃訓練している銀髪碧眼の少年レーニンJrを見ていた。

射撃訓練と言ってもただ的を撃つものではなくホログラムの敵を遮蔽物に隠れながら撃つというものだ。

ひと段落したところでザウルが訓練室の外から控えめに手を振った。

それを見たレーニンJrが訓練室から出てスポーツドリンクを飲んでタオルで汗を拭く。

 

「調子は良さそうだね。レン。」

 

ザウルが訓練データをレーニンJrに見せる。

ちなみにレンというのはレーニンJrの愛称。

 

「心配し過ぎだ。あの怪我から1年経っているんだぞ。」

 

「去年の借りは返す!」

 

レーニンJrの言葉を聞いたザウルから怒りが漏れ出す。

それは誰に向けたものなのか。

 

「それも大事だが大会を楽しむことも忘れないようにな。」

 

レーニンJrが歩き出して訓練室から離れていく。

ザウルはその後をついていく。

 

「今年のレンなら大丈夫さ。」

 

ザウルがもう一度レーニンJrの訓練データを見た。

結果はパーフェクトだった。

 

 

 

 

 

 アメリカ。

現在のアメリカの領土はアメリカ大陸全土。

WDCのアメリカ代表は全員士官学校の生徒である。

ロシアと違ってアメリカは魔法などの遠距離戦ではなく格闘術を用いた近距離戦を重視している。

 

士官学校の芝生で喧嘩が行われていた。

一方は20歳くらいの青年で、もう一方の少年は黒人スキンヘッドの身長2mでプロレスラーのような体格をしていた。

これ以上ないくらい分かりやすいアメリカ人の見た目をしている。

その少年、ボビー・コングはガムを噛んでいる。

 

「ボビー!訓練をサボるな!」

 

士官学校でボビーの先輩にあたる青年が怒って注意をしていた。

 

「はあ?別にそんなめんどくさいことしなくたって俺は強いんだから必要ねえよ!そういうのは弱い奴がやっていればいいんだよ!」

 

ボビーはガムを芝生に吐き捨てた。

 

「なんだと!」

 

青年が声を張り上げる。

 

「大体俺より弱いてめえに指図される義理はねえだろうがよ!」

 

ボビーは両手を横に広げて青年を侮辱した。

 

「ボビー~!」

 

青年は頭に血を上らせて叫びながらタックルを仕掛けた。

同じ士官学校のギャラリーは手を叩いたり煽ったり口笛を吹いたりして楽しんでいる。

青年のタックルはボビーに直撃することなく空振りした。

青年が消えたボビーを探そうと周囲を見渡そうとすると背後から強烈な気配を感じた。

振り返ったその瞬間、右手で頭を掴まれる。

アイアンクロー状態で床から浮かされる。

 

「ぐ…ああ…」

 

青年が苦痛の声を上げる。

青年の両手はボビーの右手を必死に引き剥がそうとしている。

 

「おいおい…この程度も抜けられないのかよ!ハハハ!やっぱりカスじゃねえか!ほらよ。」

 

ボビーが右手を離して青年の体が宙に浮いた一瞬にボビーの左手の拳が青年の腹に減り込む。

メキメキと骨が折れる鈍い音が響く。

 

「ガハッ!」

 

青年が苦痛の声を漏らす。

殴られた青年が芝生を転げ回る。

ギャラリーは誰1人彼を助けようとしない。

この士官学校は弱肉強食。

元々真面目な性格をしている青年を他の生徒はよく思っていなかった。

青年がうつ伏せに倒れて動かなくなったところでチャイムが鳴った。

 

「さ~てと今日はどの女とヤろうかな~!」

 

ボビーは高笑いして去って行った。

誰もいなくなって青年はうつ伏せのまま泣いていた。

体と服はボロボロで目からは涙は溢れて鼻水を垂らして唇を噛みしめて泣いていた。

 

「…ちくしょう…」

 

青年の悔しさのこもった声が小さく響く。

 

ボビー・コング(17歳)。

彼こそWDCアメリカ代表の選手である。

 

 

 

 

 

 イギリス。

 

「お兄様~!」

 

ある豪邸の廊下で誰かを探して呼びかける身長155㎝金髪ツインテール碧眼の少女。

彼女の名はマリー。アルハート(17歳)。

WDCイギリス代表の選手である。

 

マリーが探していた人物は庭にいた。

人口芝生のテラス。

そこで穏やかに紅茶を飲んでいる。

サラッとした金髪に碧眼で身長185㎝。

白シャツを着てラフな格好をしていても高貴な風格を隠せないその少年の名は

レオ・アルハート(18歳)。

彼もイギリス代表の選手であり主将である。

レオはマリーの声に気づいて首だけ振り向く。

 

「マリー、君も紅茶を飲むかい?」

 

ちなみに2人は実の兄妹である。

 

「もう…お兄様、また自分で用意してしまったのですね?そういうことはメイドかこのわたくしがやりますからお兄様は王族らしく座って待っていればいいのです。」

 

マリーがジト目になって説教っぽい口調で注意する。

それに対してレオは優しく微笑む。

 

「それじゃマリー、ちょうど飲み干したところだから紅茶を淹れてくれるかな?」

 

レオがそう言うとマリーが途端に喜びを隠しきれない笑顔に表情を変える。

 

「はい!喜んで♪」

 

 ティータイムを十分楽しんだ後でレオが話を切り出す。

 

「そういえばマリー、僕に何か用事があったんじゃないかい?」

 

するとマリーが急に立ち上がる。

 

「そうでした!わたくしとしたことがうっかり本題を忘れるところでしたわ!」

 

「それで何かあったのかい?」

 

レオはマリーを特に注意する訳でもなくむしろ面白そうな口振りで訊きなおした。

 

「お兄様!これを見て下さい!」

 

マリーが空間ウインドウを展開してWDC出場選手公式発表のリストを見せる。

 

「ここを見て下さい!」

 

マリーはリストの一点を指差した。

そこには四季黒刀の名が記されていた。

その名を目にしたレオの唇の端が緩む。

 

「そう。ついに出るんだね…彼が。」

 

嬉しそうに呟いた。

まるで何年も待っていたかのように。

マリーの反応はまた違った。

 

「そうです!この男は7年前ロンドンの紅茶大会でわたくしに敗北と言う名の屈辱を味合わせた男ですわ!」

 

マリーがハイテンションに言い放った。

ちなみにマリーが言った紅茶大会とは誰が一番上手く紅茶を淹れられるかを競う大会のことで当時10歳の黒刀はそこに飛び入りで参加して見事優勝してしまったのだ。

 

「フフフ…今度こそわたしくの紅茶が上だということを証明してみせますわ!」

 

マリーがそう宣言して天を指差した。

そんなマリーをレオは温かい目で見守る。

 

「(四季黒刀…ようやく君と剣を交える時が来たようだね。)」

 

その時。

来客を告げるチャイムが鳴った。

 

「レミリア一行が来たようですわね。」

 

「そういえば今日はミーティングの日だったね。」

 

レオは椅子から立ち上がって着替える為、自室へ向かった。

マリーは来客の出迎えに向かった。

 

 

 

 

 

 四季黒刀…早く君と闘いたい…

 

 

 

 

 

 日本。

日本時間午後7時にWDC全ての出場選手が決定した。

日本代表の選手は以下の16名。

 

四季黒刀

魂魄妖夢

四季映姫

博麗霊夢

霧雨魔理沙

チルノ

比那名居天子

東風谷早苗

二宮優

九条花蓮

六道仁

越山流星

五位堂光

白金真冬

七瀬愛美

藤原妹紅




ED8 ヴァンガードG ギアーズクライシス編 Don't Look Back

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