黒刀は自宅のリビングでルーミアと一緒にサスペンスドラマを観ていた。
ルーミアは黒刀の股の間に腰かけている。
《もういい!殺人犯なんかと一緒にいられるか!部屋に戻る!》
「「あ、こいつ死んだな。」」
黒刀とルーミアは同時に白けた目。
その時。
黒刀の携帯端末にメールが送られてきた。
ドラマを楽しんでいる(?)ルーミアに見られないようにこっそり確認する。
送信者はにとり。
内容は以下の通り。
《第0部隊 神戸基地に出頭》
黒刀は携帯端末をポケットにしまうと立ち上がる。
「くろにい?」
ルーミアが不思議そうに黒刀を見上げる。
「ちょっと出かけてくる。」
黒刀はルーミアの頭を優しく撫でる。
ルーミアは気持ちよさそうな顔をする。
「姫姉、ルーミアを頼む。」
黒刀はキッチンで調理中の映姫に声をかける。
「ええ。気を付けて。」
映姫は心配そうな声。
「ああ。」
黒刀はリビングを出る。
奈良から神戸までは距離があるので紫に電話して空間魔法で送ってもらった。
足を着けばそこは高速空中機動戦艦『イーグル』のブリッジの中。
既ににとりもいた。
空間ウインドウが展開されて二宮総一郎大将が映る。
黒刀とにとりは即座に敬礼。
「揃ったな。貴官らには帝国領空に接近中のロシア軍を撃退してもらいたい。」
「撃退…ですか?」
黒刀が疑問を口にする。
「ああ。撃墜ではなく撃退だ。」
総一郎は繰り返した。
「理由をお聞きしても?」
「敵の中にはウルヴァリン・イリイチ・レーニンとザウル・マーカーが含まれていると報告を受けている。
「(敵もそれを見越した上での実戦投入というわけか)…了解。これより任務を遂行します。」
黒刀は敬礼。
「武運を祈る。」
総一郎が敬礼して通信を切る。
「…にとり。」
「分かっている。『イーグル』発進!」
にとりは『イーグル』を発進させた。
黒刀はブリッジを出る前ににとりに声をかける。
「戦闘空域に入ったら呼んでくれ。」
「ああ。」
にとりは短く応えた。
黒刀は格納庫に入って自身のブレイドアーマーを見た。
「完成していたのか。これが…高機動型ブレイドアーマー『白夜叉』。」
そのブレイドアーマーはとにかく白かった。
黒を好む黒刀とは正反対と言っていいほど白かった。
純白というべきだろう。
格納庫に置いてある端末からデータを確認する。
「ビームライフル…ビームマグナム…ビームシールド…剣…なるほど元をSDではなく日本刀にしたのか。それと腰にレール砲…装備を減らして軽量化したのか…。」
黒刀は日本刀の『白夜叉』を握る。
ちなみに『八咫烏』はロッカールームに置いてきた。
「『白夜叉』セットアップ!」
黒刀の声に音声認識機能が作動してブレイドアーマーが転送されて黒刀に装着された。
黒刀は無言で動作チェックする。
ブレイドアーマーには大きく3種類に分類される。
スピード重視の高機動型。
火力重視の砲撃型。
バランス重視の汎用型。
黒刀にはやはり高機動型が合っている。
《黒刀、まもなく敵が来る。距離2000だ》
その時、にとりから艦内通信が入った。
「分かった。四季黒刀『白夜叉』出る!」
カタパルトに乗った黒刀は出撃した。
空に飛び出して一度減速した後『白夜叉』の背中の翼が開き加速する。
ロシア軍側。
「何でこんな時に限ってしかもこんな少数で国境を超えなきゃいけないんだよ。」
ザウルがぼやく。
「上からの命令だ。仕方ない。」
レーニンJrが冷静に言い聞かせる。
現代でブレイドアーマーを軍用化しているのは新大日本帝国のみ。
ロシア軍の空軍兵士はアンチグラビティシューズという反重力飛行を可能とするデバイスを足に装着して空中戦を行っている。
この技術はブレイドアーマーを所有しない各国でも軍用化されている。
レーニンJr達がそろそろ新大日本帝国の領空に侵入しようしていたその時。
「前方から高エネルギー反応探知!」
「散開!」
レーニンJrの階級は少尉。
指揮権はない。
この場は上官が指揮を執っている。
上官の中尉が散開を指示して隊員が散開した後にさっきまで自分達がいた場所を直径30㎝の赤黒い光線が通り過ぎる。
「くっ!」
レーニンJrは思わず声を漏らす。
全員戦闘用のヘルメットを装着している為、顔が露見することはない。
「敵は?」
ザウルが位置と数を省略して訊く。
「1…いやもう1つ大きい…これは戦艦です!」
別の隊員が慌てて声を張り上げる。
「1機と戦艦1隻…まさか…」
ザウルは呟く。
月を隠していた雲が風で流れていき彼らの前方を覆っていた雲の影が消えて目の前が月明かりで照らされていく。
姿を現したのは1隻の黒い戦艦と1機の純白のブレイドアーマー。
「熾天使(セラフィム)…」
1人の隊員が軍事国家でタブーとされているその名を思わず口にしてしまう。
「タチの悪い冗談だ!各自散開して包囲攻撃!」
隊長の中尉が命令を下す。
隊員達は我に返ってライフル型のMADを起動。
MADの銃口の先端から光線を発射する。
黒刀は上昇してそれを回避。
ロシア軍の兵士は続けて単発の空間魔法レーザーを発動。
黒刀はビームマグナムからビームライフル2丁に持ち替えて全ての空間魔法術式を撃ち抜いて破壊。
「術式破壊⁉」
ザウルが驚く。
「作戦変更!集中攻撃だ!」
『了解!』
隊員達は一ヶ所に集まって光線を一点に集中砲火。
黒刀は右手の甲を前に突き出してビームシールドを展開。
光線がビームシールドに直撃して爆発を引き起こす。
「これだけの魔力なら無事ではあるまい。」
中尉は撃墜を確信する。
だがその確信は次の瞬間に裏切られる。
爆発の煙が風で流されて現れた黒刀はブレイドアーマーも含めて無傷だった。
「バカな…奴は一体どれ程のオーラを保有しているというのだ…」
中尉は驚愕のあまり声を漏らす。
この中尉は良くも悪くも判断の早い軍人だった。
「撤退だ!」
中尉の命令を受けて隊員達は後退していく。
レーニンJrは撤退しながら背後を振り返る。
純白の熾天使が追って来る様子はない。
「(セラフィム…君は一体何者なんだ?)」
年齢、性別一切不明。
一説には人ではなく人工知能で動いているのではないかと噂されている。
そう思わざる得ない程セラフィムの戦闘は無慈悲だった。
四季黒刀とウルヴァリン・イリイチ・レーニン。
後にこの2人が再びを銃を交えることになることはこの時誰も予想していなかった。
ED8 ヴァンガードG ギアーズクライシス編 Don't Look Back
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