東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP8 遊戯王GX 99%


中華最強の武将

 9月12日 午後1時20分。

黒ローブを取り逃がした黒刀が控室に戻って来ると次のユンスク戦を控えている妖夢の様子が少しおかしいことに気づいた。

 

「どうした?」

 

近くにいた映姫に訊く。

 

「プレッシャーにやられちゃったみたいです。世界の舞台で闘うことに緊張してしまったのでしょうね。」

 

「はあ?」

 

映姫の答えを聞いた黒刀は眉を顰める。

 

「しょうがねえ奴だな~。」

 

頭を掻きながら妖夢に近づく。

黒刀に気づいた妖夢の両手は震えていた。

 

「せ…先輩…手の震えが止まりません…」

 

妖夢は泣きそうな顔で黒刀を見上げる。

 

「何をそんなにビビってんだよ。」

 

「だって…世界ですよ!そう考えたら手の震えが止まらなくなって…」

 

弱気なことを言い始める妖夢に黒刀はその腕を取った。

 

「え…先輩!何を…」

 

戸惑う妖夢に構わず黒刀は控えから廊下に出る。

控室の電動ドアが閉まると黒刀は妖夢の腕から手を離した。

その瞬間、黒刀は素早い動作で鞘から『八咫烏』を抜いて中段斬り。

妖夢は咄嗟の反応で鞘から『楼観剣』と『白楼剣』を抜いてクロス状に交差して構えた。

黒刀が抜刀してから妖夢が構えるまでの時間…僅か0.5秒。

『八咫烏』の刃が妖夢の2本の剣が交差している部分に当たる。

重い衝撃が妖夢の全身に伝わって来る。

『ガードブレイク』をしている黒刀はそのまま『八咫烏』を振り抜いた。

妖夢は足を床に摩擦させながら10m後退させられる。

それを見た黒刀は先程攻撃を仕掛けた人斬り侍のような顔とは打って変わって安心したように微笑んだ。

 

「何だ。全然大丈夫じゃん。」

 

流麗な動作で『八咫烏』を納刀する。

 

「先輩、私の緊張を解す為に……って今の下手したら怪我じゃすみませんでしたよ!」

 

妖夢は黒刀の喝の入れ方に抗議する。

 

「手の震えは止まっただろ?」

 

黒刀の言葉に妖夢は両手を見る。

さっきまでの手の震えは止まっていた。

 

「あ、本当だ。」

 

黒刀は正面から妖夢に歩み寄る。

 

「妖夢、お前はいつか言ったよな?俺を超えるって。なら世界の壁なんて軽く超えて見せろ。」

 

妖夢の前で立ち止まる。

 

「先輩…はい!」

 

妖夢は強く応えた。

 

「じゃあ入場する前に皆に一声かけてこい。」

 

「はい!」

 

妖夢は黒刀の横を通り過ぎて控室に入った。

黒刀は控室に戻らず医務室に向かった。

 

「皆さん、ご心配おかけしました。もう大丈夫です!いけます!」

 

控室に入った妖夢は一度頭を下げてから強く言い放った。

 

「何か物凄い音が聞こえたんだけど…」

 

魔理沙が控えめに口を出す。

 

「先輩に喝を入れてもらいました!」

 

一同はこう思った。

 

『(何したんだあいつ…)』

 

「ではいってきます!」

 

妖夢は拳を強く握って控室を出た。

 

 

 

 

 

 午後1時30分 医務室。

 

「それにしてもまあ…随分とやられたもんだな~」

 

黒刀はボロボロになって医務室のベッドに横たわっているチルノと天子を見る。

その言葉にいち早く反応したのはチルノだった。

 

「何を~あたいは全然平気だ!」

 

チルノが跳ね起きようとすると全身に激痛が走る。

 

「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

悲鳴を上げるチルノ。

 

「チルノちゃん、まだ動いちゃダメだよ!」

 

大妖精がチルノをベッドに寝かせて看病を続ける。

治癒魔法は既にかけているのでそれが定着するまで待っているところである。

黒刀とチルノの茶番をしばらく眺めていた天子がようやく口を開く。

 

「それで?まさか見舞いだけの為に私達のところに来たわけじゃないでしょう?」

 

「話が早いな。お前らが闘ったあの韓国人2人について実際に闘ってみてどんな感じだったのか聞きたい。」

 

天子が少し考える。

 

「どんなって…実際かなりの実力者だと思うわ。ただ…カードを使ってモードチェンジしてからはまるで人が変わったっていうか…」

 

そこで続きの言葉を詰まらせる天子。

 

「何か嫌な感じだった!」

 

チルノがそう付け加えた。

 

「そうか…実はあの2人がおかしくなった原因を作った犯人をさっき追いかけていたんだが逃げられた。」

 

黒刀は腕組みしながら言った。

その事実に3人は驚きを隠せなかった。

その時。

医務室の電動ドアが開いた。

 

「その話、詳しく聞かせてくれないかしら?」

 

入ってきたのは真冬だった。

 

「真冬…」

 

黒刀が名を呼ぶ。

 

「黒刀君、私は大丈夫だから…お願い。」

 

真冬は黒刀の目を正面から見つめて懇願する。

 

「はあ…分かったよ。」

 

黒刀は根負けしたのかため息を吐いて了承した。

 

「だけどその前に…大妖精、手鏡あるか?」

 

「はい。ありますけど…」

 

大妖精はバッグの中から手鏡を取り出す。

 

「鏡の面を皆に見えるように向けてくれ。」

 

大妖精が言われた通りにする。

 

「天子、驚かないでくれ。」

 

「保証は出来ないけど努力するわ。」

 

天子が応えて数秒後。

鏡にザナドゥ卿が映った。

 

「え、黒刀?」

 

天子が疑問を口にする。

 

「簡単に言えば俺のご先祖様だ。今は俺の精神世界にいる。」

 

これには天子も開いた口が塞がらない。

しばらくして天子はフリーズから復活した。

 

「なるほどご先祖様か…相変わらず非常識な存在だね…君は。」

 

黒刀に呆れた言葉を向ける天子。

ようやく場が落ち着いたので真冬が遮音魔法と遮蔽魔法をかけた後、

 

「では余から話そう。ザナドゥ王国の話を。」

 

ザナドゥ卿が妖夢達に話した内容と同じ内容を天子に語った。

真冬がザナドゥ王国の女王であることも明かした。

 

「なるほど。つまり黒刀は今回起きた事件に悪魔が関わっている可能性が高いって言いたいのね?」

 

一通り話を聞いた天子が黒刀に問いかけた。

黒刀は無言で頷いた。

 

「…せっかく話してくれたなら私も話さないといけないわね。」

 

天子は服の中からロケットペンダントを取り出す。

開けるとその中には1枚の写真が入っていた。

写真には今より幼い天子ともう1人紺色の髪の少女が映っていた。

 

「天子さんのお姉さんですか?」

 

大妖精が写真を見て訊いた。

天子はかぶりを振る。

 

「いいえ。歳は4つ離れていたけど私の親友よ。名前は永江衣玖。」

 

「この方、今はどうされてるんですか?」

 

「…もういないわ…この世に。」

 

「え?」

 

「10年前、当時8歳の私と12歳の彼女はある悪魔に襲われて彼女は私を守って死んだ。」

 

衝撃の過去に大妖精と真冬は思わず口を手で塞いでしまう。

 

「酷い…」

 

大妖精が言葉を漏らす。

チルノも衝撃のあまり固まっている。

だが黒刀はこう問い質した。

 

「その悪魔の名前は?」

 

冷酷にも聞き取れるその問い。

 

「黒刀先輩、そんな言い方!」

 

当然、大妖精が反発する。

 

「いいのよ大妖精。彼だって好奇心で訊いていないことくらい分かっているわ。」

 

天子は大妖精を宥めた。

 

「…その悪魔の名前は………サタン。」

 

天子は少し気持ちを落ち着かせてからその名を口にした。

その名を知らない者などいない。

上級悪魔として知られている青い炎の悪魔。

 

「俺が追っていた奴もかなり人間離れしていた。恐らくそのサタンとほぼ同格の悪魔考えて間違いないだろう。」

 

黒刀は考え込む。

 

「黒刀君、私達に秘密でそんな危ないことしてたの?」

 

真冬は少し怒っていた。

 

「え…いやまあ…そうだけど。」

 

黒刀は戸惑いながら返す。

 

「もう!黒刀君はそんなだから…」

 

真冬が黒刀を叱ろうとしたその時。

ちょうど次の試合開始時間が迫り医務室のモニターウインドウにフィールドが映し出された。

 

「ほ、ほら!妖夢の試合が始まりますよ!」

 

大妖精が慌てて皆の意識を試合に向けさせた。

ザナドゥ卿は既に鏡から姿を消えていた。

 

 

 

 

 

 午後1時40分 日本代表側ゲート。

妖夢はゲートで目を閉じて10分間集中状態に入っていた。

それから目を開く。

入場ブザーが鳴り響く。

一歩を踏み出そうとした時、一瞬だけ目の前に黒刀の背中が幻として見えた。

それはすぐに消えたが妖夢には超える意志を忘れるなと自分に言い聞かせているように思えた。

妖夢は決意を新たにして今、世界のステージに足を踏み入れた。

入場した時に妖夢は感じた。

会場の大きさ、観客の数と歓声、何よりも反対側から入場してくる対戦相手のオーラの質が剣舞祭の時に闘った相手とは桁違いであること。

 

「これが…WDC。あの人が韓国最強の高校生…ユンスク。」

 

妖夢は2本の愛剣を抜いて構える。

 

 

 

 

 

 

 ユンスクは対戦相手の妖夢を一目見てがっかりした。

 

「(女子であることを差し引いてもオーラが弱すぎる。だとすると捨て駒か…。これは退屈な試合になりそうですね。)」

 

ユンスクはSDを取り出してトリガーを押す。

先端からブレードが伸びる。

妖夢はゆっくり深呼吸して目の前の相手に集中する。

 

「(スイッチが入ったな…頑張れ妖夢。)」

 

黒刀は心の中で応援した。

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

試合開始直後、映姫や黒刀など一部の人間以外にとって予想外の展開が起きた。

フライングギリギリのスピードで妖夢がユンスクの懐に潜り込んでいたからである。

 

「っ!」

 

ユンスクは一歩引いてから一撃目をSDで受け止めた。

 

「(まだ2撃目が…!)」

 

ユンスクは再度驚く。

何故なら妖夢の2撃目がタイムラグを感じさせない程、既にユンスクの首筋に迫っていたからだ。

ユンスクは上半身をのけ反らしてそれを躱して反撃に出る。

2撃目の攻撃直後でがら空きとなった妖夢の左脇腹を狙って中段斬り。

妖夢は右手の『楼観剣』を逆手に持ち替えて剣の腹で受け流した。

 

「空観剣 六根清浄斬 改!」

 

受け流した時に体を回転させて遠心力を活かして左手の『楼観剣』で斬りつける。

ユンスクもさすがに冷静さを取り戻したのか受け流されて体勢が崩れたところを踏ん張って『白楼剣』を下段斬りで弾いた。

そこでお互いがバックステップして距離を取り、仕切り直しとなる。

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

 

「会長は一体どんな修行をつけたんですか?」

 

霊夢が妖夢の成長を見て隣の映姫に問う。

 

「特に難しいことはさせていません。週6日でランニング10㎞と素振り1万回、私と手合わせ50回するだけです。」

 

映姫が澄ました顔で答えた。

 

「アハハ…」

 

霊夢は乾いた笑い声を出す。

 

「(そりゃ強くなるわね…)」

 

心の中で半分呆れていた。

 

 

 

 

 

 妖夢はランニンで鍛えられた脚力と素振りで鍛えられた二刀流の連続攻撃性を上手く活かして試合を優位に進めていた。

 

「さて、次はこちらから参りますよ!」

 

ユンスクが床を蹴って妖夢に迫る。

妖夢は気迫に押されたのか一拍遅れて前へ駆けだす。

攻撃はユンスクの方が速かった。

ユンスクが中段斬りを仕掛ける。

ただし、そのスピードは体感的に先程の倍は速い。

妖夢は回避も受け流しも間に合わず左手の『白楼剣』の刃で受けた。

左手に重みが伝わって来る。

 

「くっ!」

 

妖夢は右方向に吹っ飛ばされる。

床に着地して体勢を整える。

 

「パワーとスピードを重視して攻撃している。でもまさにこれは…願ったり叶ったり!」

 

妖夢は笑った。

 

「何故笑う?」

 

疑問を抱いたユンスクが問う。

 

「私の倒したい人とあなたのスタイルが似ているからです。」

 

妖夢は剣を構え直して答える。

何のことを言っているのか分からないユンスクは首を傾げるだけですぐに構え直した。

 

「すぐに笑える余裕も無くしてやろう。」

 

「できるものなら!」

 

両者が床を蹴って距離を詰める。

ユンスクの上段斬り。

 

「(確かに速いし重い…だけど!先輩程じゃない!)」

 

妖夢はユンスクの上段斬りをサイドステップで躱してから連続攻撃で斬りつける。

ユンスクも負けじと連続攻撃を全てSDで弾いている。

 

「(もっとだ…もっと速く!鋭く!)」

 

妖夢はイメージを強くして連続攻撃のテンポを上げていく。

 

「(何だこいつは…闘いの中で強くなっている…押される!)」

 

さすがのユンスクも焦りを隠しきれなくなってきていた。

妖夢の剣速は今は30に達していた。

 

「はあああああああああああああ!」

 

妖夢が雄叫びを上げて交差した斬り上げでユンスクの体勢を崩した。

 

「妄執剣 修羅の血 弐式!」

 

その隙を逃さず今度は2本の剣を突進しながら振り下ろす。

ユンスクSDで受けるが予想以上の剣撃の重さに後方へ吹っ飛ばされる。

 

「ぐっ!」

 

「これで決める!」

 

妖夢は2本の剣に金色のオーラを集束させる。

 

「閃光斬撃波 改!」

 

金色の斬撃を放つ妖夢。

 

「負けてなるものか!」

 

空中で体勢を崩され回避出来ないユンスクは金色の斬撃に対してSDを振り下ろす。

しかし、斬撃の威力はさらに増していく。

 

「何だ…このパワーは…ぐああああああ!」

 

ユンスクのSDのブレードがパキンッと音を立てて砕け散った。

『閃光斬撃波 改』がもろにユンスクの腹に直撃する。

ユンスクは壁まで吹っ飛ばされ背中に激突する。

 

《1…2…3…4…5…》

 

機械音声がカウントの半分まで聞こえたところでユンスクが立ち上がりカウントが止まった。

 

「ユンスク…」

 

控室に戻っていたイ・サンは敗北寸前のユンスクをモニターウインドウで見て心配そうな声を漏らす。

ユンスクは目の前の妖夢を見据える。

 

「1つ謝っておこう。私は君のことを取るに足らない剣士さと見誤っていたことを。君は強き剣士だ。」

 

「え、あ…いや…それはどうも。」

 

突然のことに妖夢は戸惑っていた。

 

「だからこそ私も本気で君を倒す!」

 

ユンスクが声を張り上げる。

 

「(剣も折れたのにまだこれだけの闘志が…)」

 

「剣が無くて闘えぬと?否!私の武器は剣ではない!」

 

「!」

 

ユンスクの言い放った言葉に妖夢は目を見開いて驚く。

 

「見るがいい!私の本当の姿を!モードチェンジ!」

 

緑色の竜巻がユンスクの全身を覆う。

 

 

 

 

 

 医務室。

 

「あいつもモードチェンジを…」

 

天子が呟く。

 

「イ・サンに出来て奴に出来ない道理はない…か。」

 

黒刀は独り言を呟いた。

 

 

 

 

 

 竜巻の中でユンスクの装備が変わっていく。

竜巻が吹き荒れるように晴れると現れたのはモードチェンジによって姿を変えたユンスクだった。

 

「呂布!」

 

その名は中華最強とも言われる武将。

全身には中華鎧と武具足、頭には中華兜が取り付けられている。

両手で握り締めているのは薙刀のように見えるが戟の横部に『月牙』と呼ばれる三日月状の刃がついている。

かつて呂布が死ぬまで愛用していた神器『方天画戟』。

気力も桁違いに跳ね上がっている。

妖夢は警戒レベルを最大に引き上げて構える。

 

「この私に気圧されぬとはたいした根性だ。」

 

「つい最近もっと凄い人のオーラを体感しましたから。」

 

妖夢は笑みを浮かべる。

妖夢の指す『凄い人』とはザナドゥ卿のことである。

 

「ならば存分に闘える!」

 

ユンスクは言い放った。

妖夢は全く警戒を緩めていなかった…にも関わらずユンスクが一瞬で妖夢の懐に移動していた。

気づくのが遅れた妖夢は『方天画戟』による薙ぎ払いを咄嗟に剣を交差して防御するしかなかった。

受け止め切れず妖夢は後方へ吹っ飛ばされる。

ユンスクが『方天画戟』を振り切った後、突風が吹き荒れる。

その突風で妖夢はまた吹っ飛ばされる。

 

「ああっ!」

 

妖夢は着地出来ず受け身を取って跳ね起きる。

再びユンスクは視界に捉えた時、目を見開く。

『方天画戟』に緑色の竜巻が渦巻いていたのだ。

 

「風刃!」

 

ユンスクが『方天画戟』を水平に振って風の斬撃を放った。

妖夢はハイジャンプで跳び上がり回避。

さらに『旋風剣』でコマのように回転してユンスクに襲いかかる。

 

「風刃二閃!」

 

ユンスクは風の斬撃を2発放つ。

1発目で妖夢の回転を止め、2発目で妖夢に直撃させる。

 

「がはっ!」

 

腹に直撃を受けた妖夢が床を転がる。

ユンスクは追撃しようとせずただ立っている。

 

「哀しいな。技術はあってもそれに見合うオーラを持っていない。残酷だがこれが現実だ。日本の剣士よ…せめてこの一撃で楽にしてやろう。」

 

ユンスクの気力がさらに高まる。

『方天画戟』に渦巻く風の勢いがさらに荒々しく強くなっていく。

妖夢は痛みを堪えながら立ち上がる。

そこで妖夢は目を見開く。

『方天画戟』に渦巻くものは風なんて生温いものじゃなかった。

巨大な竜巻が巻き付いていて、まるで嵐そのものだった。

 

 

 

 

 

 日本代表控室。

 

「何あれ…私の竜巻より遥かに大きいわ。」

 

ユンスクが作り出した巨大な竜巻を見た花蓮が驚く。

 

「大技が来る…避けなさい!妖夢!」

 

声が届かないと理解していながらも映姫はそう叫ばずにいられなかった。

 

「「妖夢!!」」

 

霊夢と魔理沙も同時に叫んだ。

 

 

 

 

 

 しかし、仲間の叫び空しく妖夢は避けようとしなかった。

2本の剣を握り締めて上段の構えを取る。

腰を落として剣に金色のオーラを集束させる。

 

 

 

 

 

 医務室。

 

「あの子まさか『閃光斬撃波』で迎え撃つつもり⁉」

 

天子が半ば驚いた声を出す。

 

「そんな!無茶です!」

 

大妖精が悲痛の叫びを上げる。

 

「(それがお前の選択か…妖夢。)」

 

黒刀は腕組みしたままモニターウインドウに映る妖夢を見ていた。

 

 

 

 

 

 

「よかろう…その見事な侍魂に応えて私も力の限り闘おう!」

 

竜巻の勢いがさらに強くなる。

 

「喰らえ!暴風刃!」

 

ユンスクが叫び、『方天画戟』を振り下ろす。

巻き付いた竜巻が妖夢に向かって倒れていく。

 

「閃光斬撃波 改!」

 

妖夢も金色の斬撃を放った。

2つの斬撃が激突した瞬間、凄まじい衝撃波がフィールドに広がった。

 

「「はあああああああああああああああああああああああああああ!」」

 

妖夢とユンスクは互いに吠える。

観客も思わず息を呑むような闘いとなっていた。

拮抗するかと思えた激突は10秒と持たなかった。

『暴風刃』が『閃光斬撃波 改』を押し始めたのだ。

 

「ぐっ…」

 

妖夢が後方に押し込まれる。

 

「はああっ!」

 

ユンスクは『方天画戟』をさらに強く振り下ろした。

拮抗は完全に破られた。

『暴風刃』が『閃光斬撃波 改』を打ち砕き、妖夢に放たれる。

妖夢は咄嗟に剣を交差して防御態勢に入るが『暴風刃』は妖夢の体ごと壁まで吹っ飛ばすだけでなくさらに突風を起こして壁に減り込ませた。

 

「ぐはっ!」

 

妖夢が血を吐く。

 

「妖夢~!」

 

医務室にいる大妖精が叫ぶ。

 

「そういえば名を聞いていなかったな…まあその必要もないか。」

 

ユンスクは体の向きを変えてゲートへ一歩踏み出したその時…

 

「…待って…下さい…」

 

背後から声が聞こえた。

恐る恐る振り返るとユンスクは目を見開いた。

視線の先にはなんと妖夢はいつの間に壁の減り込みから脱出していて、『楼観剣』を床に突き刺して膝をつきそうになりながら立っていた。

予想外の展開に観客のテンションが沸き上がる。

 

「バカな…立っていられるはずがない…。何なのだ…一体お前は何なのだ!」

 

ユンスクが声を荒げて問いかけた。

妖夢は『楼観剣』を床から引き抜く。

強い眼差しでユンスクを視界に捉えると2本の剣を握った両腕を交差する。

 

「私の名前は…魂魄妖夢だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

交差した両腕を開くと『気力解放』で気力の出力が90%に跳ね上がった。

彼女を中心に強いオーラの波動が放たれた。

 

 

 

 

 

 医務室。

 

「これは憶測なんだが妖夢の気力があれだけ少量でありながら『気力解放』や『ゾーン』の時はあれ程強い気力になるのは恐らく何らかの理由で50%程度までしか引き出せない。解放はオーラの出力を90%に引き上げるもの。50%から90%に上がった場合、その倍率は1.8倍になる。」

 

黒刀は自身の憶測を口にした。

 

「仮に彼女が気力を抑えられるとしてどうやって?自力でコントロールしているの?」

 

天子が問う。

 

「いや妖夢はオーラの扱いに関してそこまで器用じゃない。俺と同じでな。考えられるとすれば封印術だろう。誰が何の為にそうしたのかまでは見当もつかないけど。」

 

黒刀はそう答えた。

 

「とにかくいけ~!妖夢~!」

 

難しい理屈は理解出来ないチルノはモニターウインドウに映る妖夢に向かって拳を突き上げて応援するがそのせいで全身に激痛が走り悲鳴を上げることになった。

 

 

 

 

 

 

 

「魂魄妖夢…その名、確かに刻んだぞ!」

 

妖夢の名乗りを聞いたユンスクは再度『暴風刃』の体勢に入った。

 

「またあれをやる気なのかよ!」

 

控室の魔理沙が声を上げる。

妖夢は自分の足を見下ろす。

 

「(もう立っているのもやっと……だとしても!立っている限りまだ闘える!)」

 

そして、腰を落とした。

 

「まさかもう一度同じ技をぶつけ合うつもりなの?」

 

控室の霊夢が独り言を呟く。

 

「もうやめて妖夢!そんなことしたらあなたの体が!」

 

医務室の大妖精が悲痛の叫びを上げる。

 

「無駄だ大妖精。あいつは立っている限り諦めない…そういう奴だ。」

 

黒刀は大妖精を諭すように口を開いた。

 

「全く誰に似たのかしらね?」

 

黒刀の隣で試合を見ていた真冬が口を開く。

その問いは黒刀に向けたものだったが、

 

「誰って誰に?」

 

当人の黒刀は理解していなかった。

真冬は呆れてジト目になっていた。

 

 

 

 

 

 妖夢は2本の剣を上段に構えると金色のオーラを集束させていく。

ユンスクも『方天画戟』に渦巻く竜巻をさらに肥大化させていく。

 

「負けぬ!国の為!仲間の為に!」

 

「勝つ!勝って私達はさらに上へ行く!」

 

2人の闘志がぶつかり合う。

そして…

 

暴風刃 改!

 

真 閃光斬撃波!

 

『方天画戟』から竜巻の斬撃が、『楼観剣』と『白楼剣』から金色の斬撃が放たれた。

2つの斬撃が再び凄まじい衝撃波放ってぶつかり合った。

だが今度は立場が逆転する結果となった。

金色の斬撃が竜巻の斬撃を押しているのだ。

 

「何故だ…何故この私が押されている…まさかこれがお前の本当の力だというのか!」

 

ユンスクが押されながらも妖夢に語り掛ける。

 

私のじゃない…この力はたくさんの人に支えてもらったからこそのものだ!

 

妖夢はユンスクの問いかけに対してそう答えた。

その言葉に呼応するかのように金色の斬撃の威力が増していく。

そして、ついに『暴風刃 改』が打ち破られ『真 閃光斬撃波』がユンスクへ真正面から浴びせていく。

 

「全力を出し切った…悔いは無い!」

 

ユンスクは最後にそう口にして斬撃を避けることなく受けた。

やがて背中から倒れた。

 

《勝者 魂魄妖夢》

 

勝敗を告げる機械音声が鳴り響いた。

 

「勝った…」

 

妖夢は膝から崩れ落ちそうになる寸前で床に『楼観剣』を突き刺して何とか持ちこたえた。

気が抜けたことで『気力解放』が解けて気力が元に戻る。

 

 

 

 

 

 医務室。

 

「大妖精、行ってこい。」

 

黒刀が大妖精に声をかけた。

 

「でも…」

 

大妖精は迷っていた。

 

「そこのバカのことだったら俺が見ててやるよ。」

 

黒刀は大妖精が言いたかったことを先回りする。

 

「誰がバカだ!」

 

チルノが口を挟む。

 

「お前だよ。ほら行ってこいよ。」

 

黒刀は大妖精に優しく微笑んだ。

 

「はい!」

 

大妖精ははっきり応えて医務室を出て行った。

 

「さて…チルノ、マッサージでもしてやろうか?」

 

黒刀は意地悪な笑顔をチルノに向ける。

 

「嫌だよ!」

 

チルノは断固拒否した。

 

 

 

 

 

 

 大妖精が妖夢のいるフィールドに向かい途中の廊下で霊夢と魔理沙に合流した。

 

「考えることは同じね。」

 

霊夢は笑っていた。

 

 

 

 

 

 妖夢は『楼観剣』を杖代わりに、仰向けに倒れているユンスクに近づいていく。

ユンスクは気がついていたようで仰向けの状態で目を開く。

 

「私の完敗だ。魂魄妖夢。」

 

真顔で告げるユンスクに対して妖夢は少し考えた顔をする。

 

「1つだけ聞いていいですか?」

 

妖夢の問いにユンスクは無言で頷く。

 

「最後に私が元気を使った時、あなたの実力なら無理に正面からぶつかり合う必要は無かったはずです。それなのに何故…」

 

「…お前の想いがどれ程のものなのか知りたくなった。」

 

そう答えてユンスクは膝から立ち上がる。

 

「相手の真意を知るのは正面からぶつかるのが一番だと私は考えている。それだけだ。」

 

ユンスクの『方天画戟』が霧のように消えていく。

 

「私の想いはあなたに伝わったでしょうか?」

 

妖夢の問いにユンスクは踵を返す。

 

「勝ちたいという想い、そして誰かに追いつきたいという想いだけは確かに伝わった。」

 

ユンスクはそれだけ言ってゲートへ歩き去った。

妖夢もゲートへ戻るとそこには霊夢、魔理沙、大妖精が笑顔で待っていた。

 

「「「おかえり!!!」」」

 

「ただいま…皆!」




ED8 ヴァンガードG ギアーズクライシス編 Don't Look Back

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