東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP8 遊戯王GX 99%

※この回からセリフの末尾の読点を抜いていきます。
今更で誠に申し訳ございません。


偵察

 日本代表控室。

日本代表は勝利の歓喜に満ち溢れていた。

ほとんどの者が控室を飛び出してフィールドに走り出した。

控室に残ったのは黒刀、映姫、阿求、にとり、諏訪子の5人だけ。

 

「ついにここまで来たね黒刀」

 

「そうだな。待ちくたびれたよ」

 

黒刀の顔を見た映姫は目を見開いた。

笑っていた。

黒刀の顔が笑っていた。

 

「(それ程までに楽しみなのね…()()との闘いが)」

 

映姫は黒刀が誰を思い浮かべているのか容易に想像出来た。

黒刀の視線の先のモニターウインドウには《日本代表 WDC本選出場決定!》と文字が表示されていた。

 

 

 

 

 

 ロシア。

 

「レン、帝国が予選を突破したぞ」

 

ザウルがレーニンJrに録画データを見せる。

 

「やはり勝ち上がってきたか…四季黒刀」

 

レーニンJrは呟いた。

ザウルは空間ウインドウを閉じると拳を握り締めた。

 

「あの男は普通じゃない。その化けの皮を必ず俺達が剥がしてやる」

 

「その為にはまず勝ち上がらなければな」

 

レーニンJrが一言添えておいた。

 

 

 

 

 

 フランス 西ヨーロッパ予選会場 イギリス代表控室。

 

「お姉様!お義兄様が勝ったよ!」

 

フランが控室に飛び込んで来るなり第一声。

控室にはまだレミリアと咲夜しかいない。

 

「そう」

 

レミリアは静かにティーカップをテーブルに置いてそれだけ言った。

 

「お姉様~リアクションうす~い!」

 

フランが可愛らしく頬を膨らませる。

 

「未来を視るまでもなく分かり切っていることをわざわざ言われたところで驚きようがないわ」

 

レミリアは真顔で返した。

 

「それもそっか」

 

フランは納得すると一気にテンションが冷めてベンチに腰掛けた。

紅茶を飲み終えたレミリアが咲夜にティーカップを渡したところで控室に他のメンバーが入っている。

 

「(待っていなさい…あなたは私が倒す!)」

 

この日のイギリスの試合結果は言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

 午後4時 フィリピン。

閉会式と優勝者インタビューを終えた日本代表一同はホテルへの帰路を歩いていた。

 

「う~全然上手く喋れなかった…」

 

妖夢が落ち込んでいる。

 

「超ガチガチだったもんな」

 

魔理沙がからかった。

 

「もう!分かってるからわざわざ口に出して言わないでよ!///」

 

妖夢の顔が羞恥で真っ赤になる。

 

「チルノは全然緊張してなかったわね」

 

霊夢がチルノに話しかける。

 

「あたい最強だからね!」

 

チルノが胸を張る。

 

「ほとんどこれでしたけどね…」

 

大妖精が呆れる。

 

「それに比べて先輩や会長、にとり先生は凄く慣れた感じでした。あんな風にカッコよくインタビューに答えられたいいんですけどね…」

 

妖夢は肩を落とした。

 

 

 

 

 

 午後7時。

ホテルの宴会場で本選出場の打ち上げをやっている最中に妖夢がトイレから出るとロビーで誰かが会話しているのが見えた。

黒刀とにとりだった。

 

「やっぱり行くのか?」

 

「ああ。明日は帰国せずパリに行くよ」

 

妖夢はそれを聞いて思わず飛び出した。

 

「あ、あの!私も…一緒に連れて行ってもらえませんか?」

 

言ってしまった。

黒刀とにとりは驚いて顔を見合わせる。

 

「まあ、飛行機の予約と保護者の了解が取れれば構わないが…その場合大会とは関係ないから自費で行くことになるけど」

 

にとりの言葉に妖夢はハッとショックを受けた。

飛行機の予約は取っていないし、幽々子にも相談していない。

しかも、妖夢はお金にそこまで余裕が無い。

妖夢は膝から崩れ落ちて両手を床についた。

 

「そうでした…私、お金持ってませんでした…」

 

妖夢が落ち込んでいると黒刀が助け舟を出す。

 

「金くらい俺が出してやるよ」

 

「え、そんな悪いですよ!」

 

勢い良く立ち上がった妖夢は両手を胸の前でブンブンと振って遠慮する。

 

「妖夢、お前はその目で見たいと思ったからこうやってお願いしに来たんだろ?強くなる為にお前は決めた。だったら俺はその手伝いくらいしてやるよ」

 

黒刀は真剣な顔で言った。

 

「先輩…」

 

心打たれる妖夢に対して黒刀は空間ウインドウを操作してホテルの予約サイトを確認する。

 

「あれ?シングル2つ無い…ツインが1部屋だけか…他のホテルはダメだ…どこも満室だ」

 

「WDCシーズンだし当然と言えば当然だな」

 

黒刀の確認ににとりが補足した。

 

「(さすがに兄妹でもない高校生の男女が同じ部屋で一泊っていうのはマズイだろ…)」

 

黒刀は妖夢を見て考えた。

 

「私、先輩と一緒の部屋でも大丈夫です!」

 

黒刀の困惑した表情から察した妖夢がそう言い出した。

 

「ダメだ!」

 

その答えににとりがストップをかける。

 

「な、何でですか?」

 

「何でって私は仮にも教師だぞ。止めるのは当たり前だろ」

 

にとりは正論で返す。

 

「うぐっ」

 

それに対して妖夢は言葉が返せない。

 

「私はお前達の親御さんから生徒を預かっている身だ。万が一にも間違いを起こされたら責任重大なんだ。分かったか?」

 

にとりはさらに正論を付け加える。

 

「ならその親御さんから許可が取れれば問題はないだろう?」

 

すると、黒刀がそう口を挟んできた。

 

「え…いや…でもそれは…」

 

さすがのにとりも予想外の提案に戸惑う。

 

「問題無いよな?」

 

黒刀が念を押す。

 

「ま…まあ、そりゃもし取れればいいかもしれないけど…だけどどこの世界にそんな親が…」

 

「「『全然OKよ♪』だって」」

 

にとりが続きを言いかけたところで黒刀と妖夢から息を揃えて返してきた。

 

「何ですと!」

 

にとりは驚いた。

にとりが話している間に黒刀は桜へ、妖夢は幽々子へメッセージを送っていてその返事がこれである。

 

「そうだった…あの2人はそういう人だった………分かった。2人の宿泊を許可する」

 

にとりは項垂れながら了承した。

 

「やった♪」

 

妖夢がガッツポーズして喜んだその時。

 

「随分と楽しそうな話をしていますね」

 

声が聞こえた。

妖夢が体を固まらせ恐る恐る後ろを振り返るとそこには映姫が立っていた。

 

「し、師匠!」

 

妖夢は一瞬で背筋をピンッと伸ばして気をつけの姿勢になった。

 

「止めたって無駄だぜ姫姉」

 

黒刀は映姫が来ることが分かっていたようだ。

映姫はため息を吐く。

 

「その気ならもっと早く止めてますよ。それにルーミアの面倒も見なければいけませんし何よりお母様が許可してしまった以上、私から何を言ったところで無駄でしょう」

 

映姫は事情も理解してくれた。

 

「ありがとう姫姉」

 

黒刀がお礼を言うと映姫は黒刀に顔を近づけて警告する。

 

「た・だ・し!私の弟子に手を出したらただじゃすみませんからね!」

 

「しないよ!………そんな度胸無いし…」

 

黒刀は後半、声がやや小さくなりながら否定する。

 

「(それは男としてどうなんだ?)」

 

にとりはそんなやり取りを呆れ顔で見ていた。

こうして長い1日がまた終わった。

 

 

 

 

 

 9月15日 フィリピン時間午前9時 マニラ空港ターミナル。

映姫達が乗る日本行きの便は30分後、黒刀と妖夢が乗るパリ行きの便はその1時間後に出発する。

黒刀がパリに行くことを他のメンバーは今朝知った。

チルノも行きたいと言い出したが何とか引き留められた。

そして、問題がもう1つ。

 

「くろにい、一緒に帰れないの?」

 

ルーミアが寂しげな瞳で黒刀に問いかける。

 

「そんな顔をするな。2,3日留守にするだけだ。すぐに戻って来る」

 

黒刀はルーミアの頭の上にポンと左手を置くと優しい表情と言葉でルーミアにかけてあげた。

 

「本当?」

 

「ああ。本当だ」

 

「じゃあ…約束!」

 

ルーミアは左手の小指を前に出した。

黒刀も同じように左手の小指を出してルーミアの小指と絡ませる。

 

「ああ。約束だ」

 

黒刀とルーミアは指切りで約束を交わした。

 

 

 

 

 

 30分後。

映姫達は日本へ飛び立った。

黒刀と妖夢は予定通りその1時間後のフィリピン時間午前10時30分にパリへ飛び立った。

 

2時間かけてパリ時間午前8時にパリ空港に到着した。

黒刀と妖夢はゲートを通る際に携帯端末をパネルにかざす。

たったそれだけで通ることが出来た。

現代では携帯端末はパスポートの役割も果たしている。

 

「マニラを出る前はお昼近かったのにパリはまだ朝なんて何か変な感じです」

 

妖夢は時差にまだ慣れていないようだ。

 

「そうか。モンゴルもフィリピンも日本からそんなに離れてないからな。妖夢はヨーロッパ初めてか?」

 

「はい!」

 

妖夢の目をキラキラ輝いていた。

まるで小学生のように。

 

「まあ、楽しむのはいいがその前にホテルのチェックインを済ませておかないとな」

 

「そ、そうですね!すみません!浮かれていました!」

 

妖夢は勢い良く頭を下げた。

 

「気にすんな。偵察って言ったってただ試合を()()()()だけなんだ。妖夢は普通に観戦しててもいいくらいだ」

 

黒刀は右手を横に振ってフォローした。

 

「いえ!私もしっかりと試合を見て糧にしたいです!」

 

妖夢は顔を上げて自分の意思を貫き通した。

 

「分かったよ。妖夢の好きにすればいい」

 

黒刀は折れて肩をすくめた。

 

それから自動運転タクシーに乗り、パリの観光名物シャンエルゼ通りのエトワール凱旋門を通り抜けて、パリ時間午前10時にホテルに到着してチェックインを済ませるとようやく予約したツインの部屋に入った。

 

「わあ!素敵なお部屋です先輩!」

 

妖夢は子供のようにはしゃいだ。

浮かれないという気持ちはどこへ行ったのやら。

 

「景色も綺麗!ベッドもふかふかです!」

 

妖夢は窓から絶景を眺めたり、ベッドにダイブした。

そんな妖夢を微笑ましく見ていた黒刀は空間ウインドウを操作してパリの試合組み合わせデータを確認する。

 

「イギリス代表の試合は何時からですか?」

 

いつの間にか黒刀の横から空間ウインドウを覗き込んでいた妖夢が問いかける。

 

「午後7時だな」

 

「となるとナイトゲームですか。何か剣舞祭の決勝戦を思い出しますね」

 

「団体戦…お前がレミリアに勝った試合か」

 

「あの時はとにかく必死でした。次に勝てるかどうかは正直分かりません」

 

妖夢はベッドに腰かけて『楼観剣』と『白楼剣』を枕元に置く。

 

「あいつがあのまま成長してないなんてことは無い。身長は伸びてないかもな」

 

黒刀はフッと笑って『八咫烏』を枕元に置く。

 

「それ…レミリアさんが聞いたら激怒しますよ」

 

妖夢も苦笑い。

そうして昼食と軽めのパリ観光と夕食を済ませた2人は西ヨーロッパ予選会場へ自動運転タクシーに乗って向かった。

入り口前に着いて会計を済ませたタクシーから降りる。

 

「妖夢」

 

黒刀が呼び止める。

 

「何ですか先輩?」

 

前を歩いていた妖夢が振り返る。

黒刀がポケットから腕輪と度が入っていない伊達メガネを取り出した。

 

「先輩、これは?」

 

「アンチオーラリングと伊達メガネ。オーラを感知されると面倒だからな。眼鏡の方はまあ変装用だな」

 

「なるほど!偵察だからですね!」

 

妖夢は黒刀の説明を理解してアンチオーラリングと伊達メガネを受け取り、リングを手首にはめ、伊達メガネをかける。

 

「なかなか似合ってるじゃないか」

 

黒刀は妖夢を褒めて、リングをはめ、伊達メガネをかける。

ちなみに服装も黒刀はいつもの黒いシャツではなく青のシャツに黒のズボン、妖夢は白のブラウスに紺のショートパンツとカジュアルな服装をしている。

それに2人共、武器はホテルに預けてあるので端から見ればカップルか兄妹に見える。

 

「先輩も似合ってますよ♪」

 

妖夢も笑顔で褒めた。

 

「ありがとう。それじゃ行くか」

 

「はい!」

 

妖夢は黒刀の隣に並んで歩いた。

 

 

 

 

 

 パリ時間午後7時。

会場のスタンドライトが点灯される。

黒刀と妖夢は会場の後列の席に並んで座る。

 

「こっちの大会もかなり観客多いですね」

 

「西ヨーロッパ予選はかなり注目されているからな。アジア予選の倍は注目されているんじゃないか?」

 

「へ~」

 

「とはいえこの会場にいる観客の大半がフランス人だけどな」

 

「へ~………えっ?」

 

妖夢が素っ頓狂な声を上げる。

 

「え、それって…」

 

「ああ。フランス代表の対戦相手は超アウェイだってことだ」

 

黒刀が口にしたその時、会場から歓声が沸き上がった。

フランス代表が入場してきたようだ。

入場ゲートから7人のフランス代表が入場してきた。

 

「こっちの大会は始める前に7人入場するんですね」

 

妖夢が歓声に耳を塞ぎながら黒刀に問う。

 

「まあ、ルール以外は国によって違うからな」

 

黒刀は耳を塞ぐことなく腕を組んでいる。

入場してきたフランス代表は全員モデル並に顔立ちとスタイルが整っていた。

 

「何か美男美女が多いですね」

 

「フランスとかイタリアとかじゃあんな感じだ」

 

黒刀は興味無さそうに言った。

戦闘において相手の容姿の良し悪しは関係ない。

黒刀はそう考えている。

続いてイギリス代表が入場してくる案の定『BOOOO!』とブーイングが響く。

入場してきたイギリス代表の中にはレミリアがいたが他の6人は何と控えメンバーだった。

もちろん、フランス代表も下調べはしている為、誰が主力で誰が控えなのかは把握している。

だからこそ余計に腹が立っていた。

 

「舐められたものですね。我々のホームであるこのパリで控えメンバーも6人も出してくるとは…勝負を捨てましたか」

 

フランス代表キャプテンが髪をかき上げる。

レミリアは顔を伏せたまま無言だった。

 

「何かコメントしたらどうです?レミリア・スカーレット?それとも『未来王』と呼んだ方がよろしいかな?()()()()?」

 

フランスキャプテンが鼻で笑って挑発する。

フランス代表の他のメンバーもクスクスと笑っている。

 

「はあ~」

 

それに対してレミリアはため息を吐いた。

 

「いい加減、前菜も食い飽きてきたのよね~」

 

「何ですって?」

 

レミリアの言葉にフランス代表キャプテンが眉を顰める。

レミリアは顔を上げるとフランス代表キャプテンを興味無さそうな目で見る。

 

「あなた達ではメインディッシュに程遠いって言ってるのよ」

 

レミリアの言葉に会場のブーイングはさらに大きくなる。

 

「さすがレミリアさんですね」

 

「『お嬢さん』にはキレなかったな」

 

「そこですか!」

 

妖夢は黒刀の言葉にツッコんだ。

 

 

 

 

 

 

「いいでしょう。その余裕がいつまで持つか楽しみですよ!」

 

フランス代表キャプテンは最後にそう言い放ってゲートに戻る。

他の5人もそれに続く。

シングルス3の女性メンバーだけがフィールドに残る。

 

「それじゃレミリア、いつも通り叩き潰してくれよ!」

 

イギリス代表メンバーの1人がゲートに戻って他の5人もそれに続く。

フィールドにレミリアとフランス代表メンバーの女性だけが残る。

 

「ええ。分かっているわ」

 

レミリアはチームメイトの応援に対して呟くように答える。

愛槍『グングニル』を瞬時に具現化させる。

 

「さて…ウオーミングアップくらいになってもらわきゃ困るわね!」

 

オーラを高めて全身に電気が帯びていく。

 

《3…2…1…0.デュエルスタート》

 

フランス代表メンバーの女性が汎用型SDを起動する。

 

「大口叩いたことを後悔させてやるわ」

 

左手首の汎用型MADも起動して火属性魔法を発動。

6つの火球を作り出して放った。

レミリアは翼で全て弾いた。

フランス代表メンバーの女性はその隙に『アクセル』でレミリアの背後に回り込む。

 

「後ろががら空きよ!」

 

フランス代表メンバーの女性がSDを振り下ろす。

レミリアはそれを背後を見ることもなく翼で防いだ。

オーラを通してある翼は見た目より遥かに頑丈である。

 

「未来が視えるレミリアさんに不意打ちは通用しませんからね」

 

妖夢は実際に体験しているのでレミリアの防御がどれだけ堅いか知っている。

 

「いや、あいつは未来を視ていない。今のあいつは素だ」

 

黒刀が口を挟む。

 

「え、でも…」

 

「『未来王の眼』。あいつが未来を視る時には紅い目がさらに紅くなって輝きを増す」

 

「特徴としては分かりやすいですけど攻略出来るかどうかはまた別問題…ですよね?ん?ってことは今のレミリアさんは『未来王の眼』を発動していないってことですか?」

 

「だからそう言ってるだろ。俺だって格下相手にいちいち本気を出さないからな。それと同じだ」

 

「『未来王の眼』なしで背後の攻撃を防ぐって…やっぱりレミリアさんは凄いです」

 

 

 

 

 

 攻撃を防がれたフランス代表メンバーの女性が一旦距離を取る為バックステップをしながら魔法を発動しようしたその時。

眼前からレミリアが消えた。

 

「やっぱりあなたではダメね」

 

フランス代表メンバーの女性の背後からレミリアの声が聞こえた。

 

「いつの間に!」

 

彼女が振り返った時既に遅し。

レミリアが『グングニル』を横薙ぎに振り、彼女の腹に叩きつける。

 

「うっ…ガハッ!」

 

フランス代表メンバーの女性が呻き声を漏らす。

レミリアは『グングニル』を振り抜いて彼女を空中へ叩き上げた。

彼女は吹っ飛ばされる直前に一瞬だけ見えた。

レミリアの全身に電気が帯びていることに。

そう。

レミリアは黒刀が使用している『電光石火』と同じように体内電気を操作して高速で移動している。

西洋ではこれを『ライトニングアクセル』と呼んでいる。

 

「まだよ!飛行魔法を使えばこの程度」

 

「させると思う?」

 

フランス代表メンバーの女性の言葉をレミリアが遮ったと同時に彼女の両手両足が赤いオーラのリングで拘束される。

 

「バインド⁉」

 

彼女は必死にもがいてバインドを解こうとするが全く外れない。

レミリアが腰を落として『グングニル』を下段に構えると『グングニル』のオーラがさらに強まった。

レミリアは『グングニル』を彼女に向かって投擲した。

 

「な、投げた⁉」

 

妖夢は驚いて身を乗り出した。

投擲された『グングニル』が彼女の腹に突き刺さりその体を押し上げていく。

 

「ライジングスピア!」

 

レミリアが右手を上にかざしてそう詠唱した瞬間、彼女の腹に突き刺さっている『グングニル』が光り出しフィールドの半分を巻き込む大爆発を引き起こした。

それはヒーローショーの演出のようにも戦略兵器の攻撃にも見えた。

 

《勝者 レミリア・スカーレット》

 

会場は静まり返っていた。

あまりの衝撃に状況が飲み込めていない。

地元の選手がこんな敗北を味わうとは思っていなかったのだろう。

 

レミリアは敗者を見ることもなくゲートへそのまま去って行った。

 

「これが…今のレミリアさんの実力…」

 

妖夢が呟く。

 

「チッ、帰るぞ妖夢」

 

黒刀が立ち上がる。

 

「え、でもまだ試合は残ってますよ。この試合で本選出場が決まるんですよね?見ていった方が良くないですか?」

 

妖夢が疑問を口にする。

黒刀は歩き出す。

 

「今の試合でフランス代表は戦意を失った。レミリア以外は控え。しかも肝心のレミリアは手を抜いていた。これ以上の収穫は期待出来ない」

 

黒刀は既にこの試合に興味が無くなっていた。

 

「私…まだ少し見ていたいです」

 

妖夢のお願いを聞いて黒刀はため息を吐く。

 

「…分かった。タクシー分のデータはそっちに送っておくから終わったらホテルに戻って来い。俺は先に帰る」

 

黒刀は空間ウインドウを操作して妖夢に電子マネーデータを送信した。

 

「はい!ありがとうございます!」

 

妖夢はそれを受信してお礼を言った。

黒刀はやや微笑んでその場を去り、妖夢は再び席に座った。

 

 

 

 

 

 その後。

イギリス代表は苦戦無くフランス代表に勝利し本選出場を勝ち取った。

黒刀と妖夢は翌朝パリ時間午前9時にパリ空港を出発して2時間かけて日本時間午後6時に関西空港に到着して新大日本帝国に帰国した。

 

 

 

 

 

 そして、WDC本選出場を勝ち取った各国代表が1週間後の本選の会場ニューヨークに向けて動き出す。

 

ここからが本当のWDCである。




ED8 ヴァンガードG ギアーズクライシス編 Don't Look Back

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