東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP9 ハイキュー3期 ヒカリアレ


極秘任務

 2210年9月16日 日本時間午後7時30分。

黒刀と妖夢は関西空港から自動運転タクシーで1時間半かけて奈良県幻想町に到着した。

黒刀は妖夢は自宅まで送ってから商店街にある自宅に帰ってきた。

 

「ただいま~」

 

玄関のドアを開けるとリビングの方からドタドタと慌ただしい足音が聞こえてきてルーミアが飛び出してきた。

ルーミアが黒刀を目にした瞬間、走り出す。

 

「くろにい~!」

 

「ルーミア!」

 

2人はヒシッと抱きしめ合った。

 

「何やってるんですか?」

 

黒のエプロンを着けて右手におたまを持って出てきた映姫が2人を見て呆れた声を出した。

 

「だってくろにいに会えなくて寂しかったんだもん」

 

ルーミアは黒刀の胸に頬ずりして甘える。

 

「後にしなさい。ほらお皿出してきて」

 

「は~い!」

 

ルーミアは黒刀から離れてリビングに戻って行く。

 

「ただいま。姫姉」

 

黒刀は靴を抜いで上がると映姫の顔を見て微笑んだ。

 

「おかえりなさい。黒刀」

 

映姫もそれに笑顔で応える。

数秒間、見つめ合っていた2人だが映姫が恥ずかしくなったのか赤くなった顔を背ける。

 

「じゃあ///私も夕飯の支度をしないと!」

 

そう言ってリビングに戻って行った。

 

「あ、姫姉…まあいいか。はあ…先は長いな~」

 

黒刀は独り言を呟きながらリビングへ歩き出した。

 

 

 

 

 

 その後。

3人は夕食を仲良く食べ終えて、黒刀は浴室で湯船に浸かりながらレミリアについて考えていた。

 

「(『ライトニングアクセル』は『電光石火』で対抗できる。『ライジングスピア』もバインドをすぐに破れば対処出来る。『未来王の眼』の対策もいくつか考えてはある。翼の防御も『ガードブレイク』を使えば問題無い)普通に考えればこれだけ対策していれば勝てる…筈なんだけどな~」

 

黒刀はレミリアがまだ力の底を見せていないことを不安視していた。

 

「後は実際に闘ってみないと分からないな」

 

黒刀は天井を見上げて入浴時間を過ごした。

 

 

 

 

 

 午後8時30分 さいたまスーパーアリーナ。

アリスとこいしはライブを終えて更衣室で着替えていた。

 

「そういえばアリス先輩、聞きましたか?今度のニューヨークライブの話」

 

「ええ。もちろん。WDC後夜祭で私達のステージがあるっていう話でしょ。っていうかマネージャーから聞かされているのだから知ってて当たり前じゃない」

 

アリスが衣装を脱ぎながら言った。

こいしも衣装を抜いて下着姿になる。

 

「いや~久しぶりにお兄ちゃんに会えるって思うと嬉しくって♪」

 

「お兄ちゃん?…あ~黒刀のことね。そういえば何で黒刀のことをお兄ちゃんなんて呼んでるのよ。映姫先輩みたいに姉弟って訳じゃないんでしょ?」

 

「アハハ!秘密~!」

 

こいしが笑顔で誤魔化す。

 

「(あいつ、年下の女の子にお兄ちゃんって呼ばせてんの?…ってただの変態じゃない!)」

 

アリスは心の中でツッコんだ。

 

「何にしても楽しみだね。初の海外ライブ!」

 

こいしは私服の袖に腕を通しながら期待感が高まった声を出した。

 

「そうね。ゲスト出演ってのは少し癪だけど全力全開で盛り上げてやりましょう!」

 

アリスもちょうど着替えを終えた。

 

「うん!」

 

アリスとこいしはお互いに意気込みを掛け合ってハイタッチを交わした。

 

 

 

 

 

 午後9時 新大日本帝国軍東京本部基地。

二宮総一郎大将は第1部隊隊長室のデスクに腰掛けてある男を待っていた。

すると、ピーと誰かが来たことを知らせるブザー音が鳴り響く。

総一郎はモニターウインドウで来訪者を確認する。

 

「入れ」

 

確認後、マイクで入室を許可する。

電動ドアが開いて部屋に入ってきたのはミリタリージャケットを着用している見た目は普通の30歳くらいの男性兵士だった。

その兵士が総一郎のデスク前に立つと全く淀みない敬礼をする。

 

「第22部隊隊長 田中健太少尉!ただいま出頭致しました!」

 

彼、田中は所属を述べた。

 

「楽にしていい」

 

「ハッ!」

 

田中は応答して休めの姿勢を取る。

総一郎はため息を吐く。

 

「君程の人間が私相手にかしこまる必要は無いと思うが?」

 

「自分、下っ端ですから」

 

「その口癖も何度聞いたことだろうね。…では本題に入ろう」

 

総一郎の表情が険しくなると田中の顔も引き締まった。

 

「今年のワールドデュエルカップ…通称WDCの本選開催国がニューヨークであることは知っているな?」

 

総一郎が問う。

田中は即、頷く。

 

「本選にロシア連邦代表が出場していることも」

 

「存じております。加えて代表メンバーの中にはロシア連邦現大統領レーニンのご子息ウルヴァリン・イリイチ・レーニンを筆頭にロシア連邦現役兵士がいるとか」

 

田中は説明を補足した。

 

「もちろん代表メンバーが現役兵士であることをロシア連邦は非公開にしているがな」

 

「当然だと思います」

 

田中の返答に対して総一郎はフッと笑う。

 

「その点に関してはこちらも非難出来ないだろう。日本代表には黒刀も入っているのだから」

 

「黒刀く…いえ」

 

「構わん。普段通りでいい」

 

「では…確かに黒刀君が軍属であることは軍事機密の中でもトップ3に入るレベルです。彼の()()としての力と存在は到底世間に出せるような代物ではありません」

 

「だが、今その軍事機密が暴かれようとしている」

 

総一郎が田中の答えを遮った。

 

「というと?」

 

「ロシア連邦の軍部から黒刀が『白夜叉』の装者ではないかと嫌疑がかけられている」

 

「それは…穏やかな話ではありませんね。確かに先週、彼らは『白夜叉』の黒刀君と一戦交えていますが」

 

「ロシア連邦はWDC本選の最中に何らかの行動を起こしてくると情報部の調査から上がっている。それと米軍の工作部隊が日本代表に対して妨害工作行為を行うとも情報がある」

 

「敵が多いですね…この国は」

 

「仕方あるまい。ふ~…現時刻を以って第22部隊に指令を通達する!ワールドデュエルカップ本選期間中に現地へ出動!ロシア連邦兵士の監視及び米軍工作部隊の妨害工作行為の阻止!以上!」

 

「了解!」

 

田中は洗練された動きで姿勢を正し敬礼する。

田中が踵を返して退室しようと電動ドアが開いたその時。

 

「…苦労をかける」

 

総一郎が田中の背中にそう声をかけた。

田中は首だけ振り向くと作り笑顔を浮かべて…こう言った。

 

「自分、下っ端ですから」

 

彼はそれだけ言って退室した。

 

 

 

 

 

 繰り返し述べるが田中健太という男の見た目は普通である。

これといった特徴は無い。

身長、体重、髪の色、体格、顔立ち…全ての見た目において普通である。

彼が所属する第22部隊は黒刀が所属する第0部隊と同じく国内外において存在そのものが非公開である。

第0部隊の場合は特別性が高い為と軍事機密が深く関わっている為であるが第22部隊は通常部隊と違う。

何故なら彼らは…偵察部隊だから。

故にその存在が非公開なのである。

 

田中が『第22部隊』と記された部屋の前に着く。

部屋に入ると室内には5人の隊員が椅子に座って雑談していた。

昨日見たテレビ、最近ハマっていること、ちょっとした思い出話など軍人にとって緊張に欠ける話題ばかりだった。

 

「隊長、お疲れ様です!」

 

細身の隊員が手を挙げて挨拶する。

 

「ああ。お疲れ」

 

田中は軽く返事した。

ちなみに細身の隊員の階級は中尉。

田中より階級は1つ上。

にも関わらず少尉である田中が隊長である理由はただ1つ。

この偵察部隊において彼が最も優秀であるからだ。

隊員達は田中の凄さを知っている。

だからこそ隊長として信頼している。

 

隊員達が雑談をしているのは田中が隊長に着任してから指示したことだ。

一般人として潜入する為には当然なりきらなければいけない。

軍人と一般人の会話には話している空気など違いが出てしまう。

それを無くす為に『雑談』という訓練を隊員に課している。

さらに隊員達も田中同様に一般人に見える程、特徴の少ない人間ばかりだ。

 

田中は隊員室の奥にあるホワイトボードのようなモニターウインドウの前に立つとパンと両手を合わせて音を鳴らして隊員達に注目させる。

 

「さて、新たな指令が下された」

 

隊長の田中が宣言した

 

「またアラスカの実験施設を潰してこいとかじゃないですよね?」

 

「寒いのはもうコリゴリだぜ!」

 

「その前はカナダだったしな!」

 

隊員達は談笑する。

それに対して田中は特に怒ることは無い。

 

「その点は安心してもらっていいぞ。今度の作戦はニューヨークで実行する」

 

「ニューヨーク…ってことはWDC絡みですか?」

 

「ああ。指令は以下の通りだ。ワールドデュエルカップ本選期間中に現地へ出動。ロシア連邦兵士の監視及び米軍工作部隊の妨害工作行為の阻止!」

 

田中は総一郎からの指令を復唱した。

さらに指令の意味も隊員達に説明した。

 

「慎重なロシア連邦が大胆に来ましたね」

 

隊員の1人が口を開いた。

 

「米軍工作部隊もかなり荒っぽい手を使ってくるから要注意だな」

 

「いや米軍の方は規模がまだ不明だがそれ程問題ではない。恐らく自分1人で何とかなるでしょう」

 

田中が告げた。

米軍の戦力の凄まじさは200年前から恐れられている。

 

「まあ、隊長がそう言うなら問題ないでしょ」

 

「それもそうだな」

 

隊員達からあり得ない答えが飛び交う。

事情を知らない第三者がこの場に入ればきっと怒号が飛んでいるだろう。

 

「問題はロシア連邦の方です。日本代表…いえ、黒刀君に対して何らかのアクションを起こすことは分かっていますが具体的に何をしてくるのか分かりません」

 

田中が続ける。

 

「そもそも情報が抽象的だ」

 

「俺達が潜入した方がマシだろ」

 

隊員達から情報部に対して文句が出る。

 

「そう言うな。俺達は潜入をマスターしているがスパイのように長期間は滞在出来ない。それとも今から転職するか?」

 

田中が隊員達をからかうように笑みを浮かべる。

 

「まさか。こんな良い職場を離れる訳ないじゃないですか」

 

「特徴の無い俺達は第22部隊にいてこそ真価を発揮します!」

 

隊員達は笑みを返した。

 

この第22部隊は隊長である田中を含めてたった6人しかいない。

他の主力部隊に比べて圧倒的に少ない。

少数精鋭の彼らの実力はWDC本選で明らかになることだろう。

 

田中は最後にこう言った。

 

「まあ、俺達が手を下す前に黒刀君が1人で解決する可能性もありますけどね」

 

 

 

 

 

 午後10時 黒刀の自宅。

リビングでSDとMADの調整中だった黒刀は急に背筋がブルッと震えて身を一瞬、縮こませた。

 

「近くにチルノとかいないよな」

 

独り言を呟く。

 

映姫もルーミアも既に寝室で就寝している。

黒刀はキリの良いところで調整を終わらせると眠気が襲ってきたので寝室へと向かった。

 

 

 

 

 

 ロシア連邦 モスクワ時間午後4時。

レーニンJrは拳銃の形をしたMADを調整しながら数日前の出来事を思い出していた。

 

日本代表の本選出場が決定する数時間前。

レーニンJrとザウルは参謀本部長から出頭命令を下されていた。

参謀本部長室前に辿り着いた2人。

レーニンJrが2回ノックする。

 

《入れ》

 

音声が聞こえた直後、電動ドアが開く。

 

「ウルヴァリン・イリイチ・レーニン少尉、ただいま出頭致しました!」

 

「同じくザウル・マーカー少尉ただいま出頭致しました!」

 

2人は揃って敬礼する。

 

「楽にしろ」

 

参謀本部長に指示されて2人は即座に休めの姿勢を取った。

 

「まずこれを見てもらおう」

 

参謀本部長がモニターウインドウを操作して流したのは以前レーニンJr達が『白夜叉』と戦闘した際の録画映像だった。

映像を一通り見た2人は改めていかに自分達が一方的にやられていたか再確認した。

 

「発言よろしいでしょうか?」

 

レーニンJrが口を開く。

 

「許可する」

 

「僕達は今の映像の通り『セラフィム』との交戦においていかに自分達が無力であったか実感しています。まさか僕達の部隊だけであれを撃墜せよという訳ではありませんよね?」

 

レーニンJrは自己分析して意見を述べた。

 

「私は部下を無駄死にさせるような命令を下さんよ。お前は勘違いしている。これを見ろ」

 

参謀本部長はモニターウインドウを切り替えてある人物のプロフィールデータを表示した。

映し出された人物の名は四季黒刀。

 

「この男、四季黒刀があの『セラフィム』であるという情報が報告された」

 

参謀本部長が放った言葉に2人は驚愕した。

 

「そ、そんな…この男が多くの兵を葬ったあの『セラフィム』って言うんですか!」

 

ザウルが参謀本部長の前にも関わらず思わず声を荒げてしまう。

 

「ザウル、参謀本部長の前だ。控えろ」

 

「ああ。すまない」

 

レーニンJrは言われてザウルは一歩下がる。

レーニンJrも驚いていたがまだ冷静さは保っている。

 

「参謀本部長、『セラフィム』がAIであるという情報は…」

 

「根も葉もない噂だ」

 

「あの『セラフィム』が高校生だと?」

 

「お前達と高校生だろう」

 

「僕達と『セラフィム』では話が違い過ぎます。それにこの情報は確実な情報なのですか?」

 

「良い洞察力をしているな。レーニン少尉、お前の察する通りこの情報はまだ確定情報ではない。参謀本部でも半々の意見に分かれていてまだ結論が出ていない。そこでお前達に任務を言い渡す。どのような形であろうと問わない。WDC本選で『セラフィム』に接触して本人であるかを調査すること。それが今回の任務だ!」

 

参謀本部長は2人に命令した。

 

「何故僕達でありますか?」

 

「『セラフィム』と交戦経験があるお前達であれば何かしら情報を得られるのはないかというのが参謀本部の意見だ。我ながら情けない結論だ」

 

「いえ。僕が言いたいのは何故他にも交戦経験のある兵はいうのではないかというのが僕の疑問点です」

 

「レーニン少尉、そもそも『セラフィム』と交戦して生き残った兵士がそんなにいると思うかね?」

 

「それは…」

 

レーニンJrは言葉に詰まる。

 

「我が軍の中で生き残ったのはお前達が配属していた部隊だけだ。他の隊員がどうなったか知っているか?」

 

「いえ。僕達は正式な所属先が無いので存じておりません」

 

「隊長含めて全員、精神的に再起不能になったよ」

 

「「っ!」」

 

「原因は十中八九『セラフィム』と交戦によるショックだろう。あれ以来まともに任務を受けることもままならなくなった。だからお前達が選ばれた。もう一度言うがこれは調査だ。抹殺じゃない」

 

全ての説明を聞いたレーニンJrは目を閉じて『セラフィム』との交戦を思い出す。

帰投後、自分がどれだけ恐怖で震え、どれだけ吐いたことか。

『セラフィム』との交戦はそれだけインパクトが強かった。

レーニンJrは目を開けてプロフィールデータに映る四季黒刀の顔を見る。

 

「(この男が多くの同胞の命を奪った『セラフィム』…)」

 

レーニンJrは参謀本部長に向き直って敬礼する。

 

「ウルヴァリン・イリイチ・レーニン少尉、調査任務謹んで了解致します!」

 

「同じくザウル・マーカーも了解!」

 

ザウルもレーニンJrに遅れて敬礼した。

 

「うむ。頼んだぞ」

 

参謀本部長も起立して敬礼した。

 

 

 

 

 

 参謀本部長室から退室した2人は歩き出す。

 

「それよりお前が受けるとはな」

 

ザウルが話しかける。

 

「『セラフィム』が忌まわしき存在であるのは確かだが僕は同時に彼に少し興味が沸いてきた。四季黒刀という男がどういう人間なのか知りたくなってきたんだよ」

 

「俺達でさえ敵を撃つ時、一瞬躊躇う。だが奴にはそれが無い。冷酷なんて言葉が生温いくらいにな。そんな高校生がいるなんて正直ゾッとするぜ」

 

「まあ、とにかく直接会ってみれば分かることだ」

 

ロシア連邦A級魔法師と『セラフィム』の運命の交錯が着実に近づいていく。

 

 

 

 

 

 9月17日 日本時間午前6時30分 黒刀の自宅。

朝練を終えた黒刀は映姫が作った朝食を食べながらテレビを見ていた。

ちなみに放送しているのは最新のニュース。

今日は久々の登校日である。

黒刀の隣ではルーミアが美味しそうに朝食を頬張っている。

その向かい側の席で映姫が黙々と食べている。

 

「今日は白か」

 

テレビを見ていた黒刀が突然呟いた。

それを聞いた映姫がいきなり顔を真っ赤にしてテーブルの下で黒刀の脛を蹴った。

 

「いって!何すんだよ姫姉!」

 

「うるさい!黒刀のエッチ!」

 

映姫が怒る。

黒刀からは見えないが映姫はスカートを両手で押さえている。

 

「くろにい、何かやったの?」

 

ルーミアが黒刀にジト目を向ける。

 

「は?いや俺は今日の占いのラッキーカラーが白だったから」

 

「ふぇ?」

 

映姫がテレビに視線を移す。

ニュースは時事ニュースから占いコーナーに変わっていた。

 

「で?何で怒ってんだよ姫姉」

 

黒刀の問いに対して自分の勘違いだと気づいた映姫は羞恥のあまりまたもや顔を真っ赤にして先程の倍の強さで黒刀の脛を蹴った。

 

「り、理不尽だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

黒刀の叫びが響いた朝だった。

 

 

 

 

 

 日本時間午前7時。

映姫は生徒会の用事で先に行ったので黒刀はこの時間に登校する。

アンチグラビティバイクに乗った黒刀は玄関前に立つルーミアの頭に右手を置く。

 

「それじゃルーミア、行ってくるから留守番よろしくな!」

 

「任せて!いってらっしゃい!くろにい!」

 

ルーミアは笑顔で応えた。

 

「ああ。行ってきます!」

 

黒刀はルーミアの頭から手を離してハンドルを握るとアクセルを踏んで神光学園へ走り出した。

 

 

 

 

 

 午後7時30分。

妖夢達が神光学園に到着して見れば正門前に多くの生徒が溢れていた。

その理由はWDCで活躍した妖夢達を出迎えて祝う為だ。

全校生徒のほとんどが正門前や昇降口前、あるいは窓から顔を出して盛り上がっていた。

 

「何だよ…これ」

 

魔理沙は驚きすぎて固まっている。

 

「剣舞祭の比じゃないわね」

 

霊夢が言った。

 

「フフ…皆あたいのファンだね!」

 

チルノが胸を張る。

 

「それは無いと思う」

 

大妖精が横でジト目をしている。

 

「と、とにかく早く教室へ行かないと遅れてしまいます!」

 

妖夢が正門から人混みに入っていくが一瞬で揉みくちゃにされて見えなくなった。

 

「妖夢、どこ行った!」

 

魔理沙も後を続くが妖夢と同じ結果になる。

 

「何やってんのよ。あいつらは…」

 

霊夢がため息を吐いた。

 

「あわわ…私達も行って助けなきゃ!」

 

大妖精が慌てる。

 

「落ち着きなさい。今行っても巻き込まれるだけよ。チルノもそこで大人しくしてて…あれ?チルノは?」

 

霊夢が周囲を見渡すがチルノの姿が見当たらない。

 

「アハハハハ!最強のあたいの凱旋なのだ!」

 

すると、人混みの中から高らかに笑うチルノの声が聞こえた。

 

「あのバカ…」

 

「いつになったら収まるんでしょう?」

 

「まあ、魔理沙は試合出てないから被害は少なそうだけど妖夢とチルノは間違いなく中で押し潰されてるでしょうね」

 

そんなことを話していると後ろからエンジン音が聞こえてきたので振り返ると黒刀が乗っているアンチグラビティバイクがこちらに向かって来ていた。

霊夢達の近くに停まると黒刀が呟く。

 

「予想はしていたがやはりこうなったか?」

 

「黒刀先輩!これどうにかならないんですか?」

 

大妖精が黒刀に近づいてお願いする。

黒刀はヘルメットのバイザーを上げる。

 

「心配するな。すぐに終わる」

 

「どうやって…」

 

霊夢が困惑していると何やら昇降口前の様子がおかしい。

霊夢側からは当然見えないがその原因は昇降口から生徒会長の映姫と黒刀の担任のにとりが出てきたからである。

 

「あなた達!今すぐに自分達のクラスに戻りなさい!」

 

映姫の怒号が響く。

ギャラリーの中から不満の声が出るとにとりがさらに脅しをかける。

 

「近所迷惑、登校中の生徒の妨害。お前ら、反省文に加えて生徒会長と私の説教を受ける覚悟は出来てんのか?」

 

それを聞いたギャラリーはあのお祭り騒ぎが嘘のように急いで校内に戻って行く。

 

「こら走らない!」

 

映姫の怒号がまた響くが周囲の音が大きすぎて聞こえないようだ。

ギャラリーが全員校内に戻った後で妖夢、魔理沙、チルノが昇降口前でうつ伏せに倒れていた。

 

「「「う~」」」

 

3人は呻いている。

黒刀は事態が収束したことを確認してアクセルを踏むと駐車場に走り出した。

 

「全く…この学園のお祭り好きにも困ったものです」

 

映姫の言葉は風と共に消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 午前8時 黒刀の自宅。

留守番中のルーミアはまず洗濯を始めた。

ドラム式洗濯機に洗濯物をどんどん入れる。

 

「くろにいの服、やっぱり黒ばっかだ~!これは…姫姉の下着…黒と白しかない…完全にくろにいの好みに合わせてる~」

 

洗濯中はテレビを見て、洗濯が済んだら庭で干して、ちょうど12時になったので冷蔵庫から映姫が作ってくれた弁当を取り出して食べながらテレビを見る。

ちなみに料理は1人の時はしないように黒刀と映姫から言われている。

午後3時には冷蔵庫に入っていたドーナツを食べて、それから干してあった洗濯物を取り込んで別々に折り畳む。

黒刀からのすすめでテレビはよくニュースを見ている。

やることが無くなってボーっとしていると玄関から「ただいま」と声が聞こえた。

ルーミアはバッと立ち上がって玄関へ駆けだす。

玄関には帰ってきた黒刀の姿があった。

ルーミアは笑顔でこう言葉をかける。

 

「おかえり!」

 

以上が留守番中のルーミアの1日である。




ED9 鋼の錬金術師 扉の向こうへ

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