東方剣舞   作:kuroto xanadu

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OP9 ハイキュー3期 ヒカリアレ



前夜祭

 9月21日 WDC本選開始2日前。

今日はWDC本選開催国アメリカのニューヨークへ出発する日である。

翌日には前夜祭もあるので今日出発しなければ間に合わないのである。

現在の時刻は午前9時。

出発は午前11時なので余裕を持って考えればあと1時間半ある。

 

「ニューヨークってどんなところなんでしょうね♪」

 

妖夢はかなりテンションが上がっている。

黒刀はフッと笑う。

 

「旅行に行くんじゃないぞ」

 

「わ、分かってます!///」

 

妖夢は赤くなって必死に否定するが黒刀には今の妖夢が修学旅行に行く女の子にしか見えない。

 

そんな2人を遠くから観察している者がいた。

ゲート前の椅子に腰かけて本を読みながら黒刀達の動向を自然に観察しているのは新大日本帝国軍第22部隊隊長の田中健太少尉だった。

彼はビジネススーツを着て、海外出張に行くサラリーマンのような恰好をしている。

誰がどう見ても軍人とは思わないだろう。

 

《状況はどうですか?》

 

田中のインカムに隊員から通信が入る。

 

「問題ないですよ。対象はチームメイトの女の子と楽しそうにお喋りしていますよ」

 

田中は周囲に聞こえないように小声で報告する。

 

《対象には察知されていませんか?》

 

「今のところ大丈夫ですよ。普段の彼は意外と抜けていますから。戦闘スイッチが入ると手が付けられませんが」

 

《了解。引き続きよろしくお願いします》

 

「ええ」

 

田中は一旦、通信を切った。

 

 

 

 

 

 同刻 モスクワ空港 モスクワ時間午前3時。

ロシア代表が乗っている飛行機が離陸した。

 

「(待っていろ。四季黒刀…)」

 

そう心の中で呟くレーニンJrの右側の席にはザウル、左側の席には全く口を開かない

レティ・ホワイトロックが座っていた。

 

 

 

 

 

 同刻 ニューヨーク時間午前8時。

とあるホテルの一室にボビー・コングは全裸で立っていた。

ベッドには全裸の女性が寝ていた。

既に事を起こした後であった。

 

「まだだ…まだヤリ足りねぇ!あるはずだ!あの場所に俺の欲望を満たす最高の果実が!」

 

彼はホテルのスイートルームで高らかに笑った。

 

 

 

 

 

 エジプト代表はニューヨークのホテルのレストランで夕食を取っていた。

アヌビスのナイフやフォークを扱う所作は王族として申し分ないものだ。

 

「この料理、余の口に合うとはなかなかのものだ。そうは思わないかね?ヤハラ」

 

「はい。アヌビス様」

 

ヤハラ・イドは即座に返事する。

 

「ストゥム、何をやっている?」

 

アヌビスはヤハラの2つ隣の席に座っている黒髪ショート、褐色の肌、身長150㎝の小柄な少年に声をかけた。

彼はレストランでの食べ方が分からず困っていた。

 

「あの…僕、こんな立派な場所で立派な料理を食べたことが無くて…どうやって食べたらいいか分かりません…」

 

ストゥムはそう言って縮こまってしまう。

男性とは思えない覇気の無さは女子と見間違えてしまいそうになるものだった。

 

「はあ…」

 

アヌビスはため息を吐くと右手の指をパチンと鳴らす。

レストランのスタッフが動き出し、なんと10分足らずで他の客を追い出してしまった。

 

「これで俗物の目を気にせず食事が出来るだろう」

 

アヌビスは手に持つグラスを少し揺らす。

 

「し、しかし…」

 

ストゥムは他の客を追い出してしまったことに罪悪感を感じた。

 

「このホテルは既に余が買い取った。余の所有物を如何にしようよ余の自由だ。違うか?ヤハラ」

 

「いえ。アヌビス様のおっしゃる通りでございます」

 

ヤハラはアヌビスの言葉に賛同する。

 

「ストゥム、余計なことを考えず食事を続けるがよい」

 

「は、はい!いただきます!」

 

ストゥムは目の前の料理を次々と手掴みで食べていった。

 

「(余の王道を阻む者は全て叩き潰す)」

 

 

 

 

 

 イギリス代表もニューヨークのホテルに泊まっていた。

レミリアは屋上で夜景を眺めながら右手にグラスを持っていた。

そんな時。

 

「ワインの相手なら付き合うよ」

 

背後から声をかけられた。

声をかけたのはイギリス代表キャプテン、レオ・アルハート。

 

「残念だけど吸血鬼は酔えないのよ。これはただのぶどうジュース」

 

レミリアは微笑を浮かべてグラスの中身を揺らす。

 

「そうかい。なら代わりに僕と話をするだけでもどうかな?」

 

「ええ。構わないわ」

 

「それでは失礼して」

 

レオはレミリアの隣に立って夜景を眺める。

 

「僕が君に聞きたいのは四季黒刀についてです」

 

レオの言葉にレミリアは一瞬だけ目を見開く。

 

「何故私に?」

 

「彼と君は日本で交流があると聞いている。友人関係だったかな?」

 

「違うわ。倒すべき敵」

 

レミリアは即座に否定した。

レオは彼女の目を見る。

レミリアの目には執念を感じさせる闘志がみなぎっていた。

 

「私からも聞いていいかしら?」

 

「どうぞ」

 

「何故そこまであいつに拘るの?それともあいつに会ったことがあるのかしら?」

 

「…いや、直接の面識は無い。僕が一方的に彼を知っているだけだよ。マリーは面識があると聞いているが僕は7年前のロンドンである小さな決闘大会を観に行った時に彼の闘いをこの目で見た。その時から僕は彼と闘いたいと思うようになった。7年間ずっとね。これで君の質問には答えられたかな?」

 

「ええ…まあ(7年前…黒刀が出ていた大会…それってまさか…()()()の?)」

 

「レミリアさん?」

 

レオは黙ってしまったレミリアに声をかける。

 

「え…あ、ごめんなさい。少し考え事をしていまして。それで私からあいつの何を聞こうとしているのかしら?」

 

「警戒しなくても別に彼の闘い方とか弱点とかそういうことを聞きたい訳じゃないよ。僕が聞きたいのは彼の人柄とか…どういう人間なのかを知りたい。ただそれだけさ」

 

レオは優しい表情で言った。

レミリアは夜景に視線を戻す。

 

「あいつは…弱い男よ」

 

「弱い?」

 

「力ではなく心がね。あいつは…誰かを守ることに固執している。大切な人を失うことを何よりも恐れている。だからひたすら強くなろうとしている」

 

「だが、それは誰も持っていてもおかしくないのではないか?」

 

レオの疑問に対し、レミリアはかぶりを振る。

 

「あいつの『守る』という意志は度を超えている。自分のことなんか一切考えず他人を第一に考えている。あいつは…黒刀は優しすぎる」

 

レミリアはかつて黒刀を拒絶した記憶を思い起こす。

 

「(私はあいつを自分勝手な理由で突き放した。なのにあいつは諦めなかった。私に手を差し伸べることを。だけど今その手を取ることは出来ない)」

 

「(『守る』という意志。それが彼の強さの根底にあるもの。僕はどうだろう?僕は彼と闘う為に鍛え上げてきた。ではその後は?もし彼と闘ったその後、僕は何の為に闘えばいい?…やれやれこればっかりは僕自身で答えを出さなければいけないね)」

 

レオは夜空を見上げてそう思いを抱いた。

それから踵を返して屋内に戻ろうとする。

 

「もう行くのね?」

 

レミリアは背を向けたまま声をかけた。

 

「ええ」

 

レオも背を向けたまま答える。

 

「もし僕が彼と闘うことになったらその時は恨まないで下さいね?」

 

「ええ。もちろん」

 

レミリアが答えて、レオが屋内に戻った。

 

「全く…何で私はあんな奴のことを…いえ、これはあいつに勝った後に言うべきね。

黒刀…あなたを倒す!」

 

レミリアは天に向かって拳を握り締めた。

 

 

 

 

 日本時間午前11時 太平洋上空。

黒刀は飛行機の中で爆睡していた。

やることがない時は寝る。

黒刀のポリシーの1つだ。

ちなみにニューヨークには2時間程で到着する。

 

 

 

 

 

 黒刀の精神世界。

相変わらず暗く、黒刀とザナドゥ卿の精神体と縦に並ぶ4つの大きな扉だけが照らされていた。

 

 黒刀

 

 王様…何か用か?

 

 …うぬ達の向かう先に王の気配を感じる

 

 王?天皇陛下と俺達4人以外にいるのか…でもそれなら天皇陛下から伝えられるはず…

 

 パリの時も同じ気配を感じた

 

 パリ?………まさかイギリス代表に!

 

 その可能性は高いだろう。注意せよ

 

 分かった

 

 

 

 

 

 現実世界。

いつの間にか時間が経っていたのか目を覚ますとちょうどニューヨーク空港に着陸するところだった。

現在、日本時間午後1時、ニューヨーク時間9月21日午前0時。

飛行聞から降りてゲートを通過する。

 

「(王様、どう?)」

 

「(今は感じぬ。まだ安定していないのかもしれぬ)」

 

「(そうか。注意しておくけどあんまり気にし過ぎないようにする)」

 

「(ああ)」

 

黒刀とザナドゥ卿は念話を切った。

 

 

 

 

 

 黒刀達が宿泊するホテルはイギリス代表が宿泊するホテルに本選会場を挟んでちょうど向かい側だった。

お互いのホテルは20㎞離れている。

黒刀と相部屋になったのは映姫とルーミア。

にとりに無理言って相部屋にしてもらった。

にとりや諏訪子からは全員就寝するように指示されている。

シャワーを浴び終えた黒刀はベットに仰向けに倒れた。

映姫とルーミアは今シャワーを浴びている。

黒刀は天井を見上げる。

 

「ようやく…ここまで来た…」

 

黒刀はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 一方。

妖夢は霊夢、魔理沙と相部屋。

 

「何か…日本を出た時は昼前だったのに…こっちに着いたら今日の深夜なんて時差ボケしそうだぜ」

 

魔理沙がベッドに腰掛ける。

 

「私もパリに行った時は同じ気持ちでした」

 

妖夢は枕を腕に抱える。

 

「それに今、寝ろって言われても寝られるものじゃないわよね」

 

霊夢が愚痴る。

 

「多分、先輩は寝てるんじゃないかな?」

 

妖夢が黒刀の行動を予測する。

 

「アハハ、それはあり得るぜ」

 

魔理沙が笑う。

 

「そんなことより明日は前夜祭パーティーよ。はしゃぎ過ぎて明日に響いたら大変よ」

 

霊夢はベッドに寝転がって釘を刺す。

 

「前夜祭って確か本選出場選手全員参加するんでしたっけ?」

 

妖夢もベッドに仰向けに寝転がる。

 

「そう。所謂、顔合わせってやつね」

 

霊夢が手をブラブラと振って答えた。

 

「(一体どんな人達が集まるんだろう…)」

 

妖夢は天井を見つめて考えた。

 

そうして前夜祭前日の一夜が明けていく。

 

 

 

 

 

 9月22日 ニューヨーク時間午前7時。

目を覚ました黒刀は体を起き上がらせて隣のベッドに視線を移す。

ルーミアは寝ていたが映姫は既にいなかった。

規則正しい生活を心がけている映姫のことだ。

朝食でも取っているのだろう。

ベッドから下りてパジャマを脱ぐとそのままユニットバスに入りシャワーを浴びる。

 

「前夜祭か…出るのめんどくせぇな…」

 

そう考えていると一瞬怒っている映姫の顔が脳裏をよぎる。

 

「…出なきゃそれはそれでめんどくせぇことになりそうだ」

 

ため息を吐く黒刀。

彼が欠席したい理由は今のレミリアと顔を合わせるのがなんとなく嫌だったから。

 

 

 

 

 

 10分後。

シャワーを浴び終えた黒刀はユニットバスを出ていつもの黒シャツと黒レザーパンツに着替える。

シャツの背中には『一撃必殺』と白い文字が書かれている。

黒刀の一番お気に入りのシャツである。

 

「さ~て、今日も頑張るとするか!」

 

黒刀はそう言って気合いを入れるのだった。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午前8時 食堂。

妖夢は朝食を食べながら向かい側の席に座っているチルノを見ている。

その理由はチルノが寝ぼけた目でパンをかじっていたからだ。

 

「チルノ、何か眠そうだね」

 

妖夢はチルノの隣でコーンスープをすくってすすっている大妖精に声をかけた。

 

「ごめんなさい。かなり夜更かししてたみたいで…」

 

大妖精はスプーンを置いて頭を下げる。

 

「別に大妖精が謝ることじゃないよ。ただ気になっただけ。何で夜更かししてたの?フィリピンの時はしてなかったよね?」

 

「うん。その…今日の前夜祭にテンションが上がってしまったみたいで…私も止めようとしたんですけど…寝てしまって」

 

「遠足前の小学生かよ」

 

魔理沙がトレーを持って妖夢の右側の席に座る。

 

「中身も外見も小学生ってことでしょ」

 

霊夢が妖夢の左側の席に座る。

 

「あの…外見のことを言われてしまうと私も小学生ってことになるんですけど…」

 

大妖精が苦笑い。

すると…

 

「あまり外見で人を判断しているといつか痛い目を見るぞ」

 

大妖精の背後から黒刀が声をかけた。

 

「先輩!」

 

妖夢が気づく。

 

「隣、座るぞ」

 

黒刀は大妖精の右側の席に座る。

 

「ともかく前夜祭までにはしっかりして欲しいです。他国の代表にみっともない姿は見せられませんから」

 

黒刀の右側の席に映姫が座る。

 

「特に前夜祭をすっぽかそうとした人なら尚更」

 

隣の黒刀をジト目で見つめる映姫。

 

「だ、誰のことを言っているんだ?(バ、バレてる!)」

 

黒刀は顔を逸らす。

若干、冷や汗も出ている。

 

「まあ、いいでしょう」

 

映姫はコーヒーを飲む。

黒刀は安堵の息を漏らす。

 

「アハハ…(何だか波乱ありそうな1日になりそう…)」

 

妖夢は苦笑いした。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後6時。

前夜祭1時間前となって黒刀達は着替えなど準備をする。

 

「こういうのほんと苦手なんだけど」

 

黒刀は部屋でタキシードに着替えた。

 

「文句言わないの。ほら襟が曲がってる」

 

映姫は黒刀に近づいて襟を直す。

 

「これでよし」

 

映姫が顔を上げると黒刀の顔が目の前にあった。

2人の顔の距離は僅か10㎝。

映姫の頬が熱くなって赤くなる。

 

「どうした姫姉?」

 

黒刀は真顔。

映姫はハッとなって離れる。

ちなみに映姫は白いドレスを着ている。

 

「そのドレス、凄く似合ってるよ」

 

黒刀が褒めた。

映姫の顔がさらに赤くなった。

 

「(この状況でそのセリフは反則です!///)」

 

映姫は内心で叫んだ。

黒刀は特に深い意味は無く言っている。

それは映姫も理解している。

しかし、分かっていても恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 

 

 

 

 

 ホテルのエントランスに降りると全員ドレスやタキシードに着替えていた。

ただ、黒刀や妖夢のように腰に帯刀している者はかなり異様に見えてしまう。

 

「よし!全員揃ったな。それじゃ出発するぞ。全員バスに乗れ」

 

にとりが指示する。

もちろん、彼女も水色のドレスを着ている。

 

バスと言っても通常のバスではなく日本代表専用に用意されたバスである。

座席も通常のバスに比べてかなりフカフカで弾力がある。

ドレスを着ている女性陣にはありがたい。

 

「わあ♪フカフカです!」

 

妖夢が黒刀の隣ではしゃいでいる。

ちなみに黒刀と妖夢は最後列から2列目の右側の席で肩を並べて座っている。

黒刀達の3列前で、エメラルドグリーンのドレスを着ている早苗が後ろを向きながらシートを掴む。

 

「う~!センパイと一緒に座りたかった!」

 

「早苗、今回は諦めた方がいいわ」

 

早苗の隣に座っていて、純白のドレスを着ている真冬が口を出す。

 

「悔しくないの?」

 

「それは…もちろん悔しいけど…さすがに今から席を替わってと言う程の図々しさは無いから」

 

「…確かにそれは言えないですね。センパイも嫌がるでしょうし」

 

早苗は大人しく前を向いて座る。

 

「なら前夜祭でアタックします!」

 

拳を握り締める早苗。

 

「(そうね。私ももっとアピールしていかないと…)」

 

真冬も早苗に内心で同意していた。

 

 

 

 

 

 同刻 イギリス代表宿泊ホテルエントランス。

イギリス代表も出発前にエントランスに集合していた。

メンバーは…

 

レオ・アルハート。18歳。

イギリス代表キャプテンで金髪碧眼の好青年。

 

マリ・アルハート。17歳。

レオ・アルハートの実妹。

金髪碧眼ツインテール。

紅茶を淹れるのが得意。

 

レミリア・スカーレット。17歳。

スカーレット家の長女。

『未来王』。

所有武器は『グングニル』。

 

フランドール・スカーレット。16歳。

レミリア・スカーレットの実妹。

所有武器は『レーヴァテイン』。

 

チャーリー・ベルモット。17歳。

赤髪で紫色の瞳、髪型はクセッ毛であるが櫛で整えられている。

ただ彼の第一印象はチャラそう。

 

リーナ・シリウス。17歳。

金髪ストレートで真紅の瞳、腰には黒い剣が納刀してある。

………そして早苗に匹敵する巨乳。

 

アレックス・ローガン。17歳。

灰色の髪でブラウンの瞳、髪の毛は逆立っている。

 

控えメンバーの他には十六夜咲夜やアルハート家に仕える初老の執事セバスチャン・ド・ルクセンブルクなどサポートメンバーもいる。

 

「彼と会うのはこれが初めてか」

 

「あの男にリベンジする時が来ましたわ!」

 

「…」

 

「お義兄様に早く会いたいな!」

 

「俺は運命の相手を見つける!」

 

「あまり羽目を外し過ぎるなよ」

 

「お嬢様、妹様。出発の時間です」

 

「坊ちゃま、お嬢様もお急ぎください」

 

イギリス代表の前に停車したのは白いリムジンだった。

 

「さあ、パラディンとして共に行こう!」

 

レオは皆に声をかけた。

 

 

 

 

 

 ニューヨーク時間午後6時50分。

黒刀達が乗っているバスがパーティー会場に到着した。

パーティー会場は本選会場の裏手にある広場。

広場の面積は1㎡。

豪華な飾りつけがされて、豪華な料理が並べられている。

 

『おおおお!!!』

 

皆、予想以上の豪華さに歓喜している。

 

「それじゃとりあえず自由行動にするけどあまり羽目を外し過ぎるな…」

 

「メシィィィ!」

 

「人の話を聞けぇぇぇ!!」

 

チルノがにとりの話が終わる前に料理に向かって走ってしまった。

チルノが走り去った後、

 

「ミスタークロト!」

 

黒刀が背後から声をかけられた。

黒刀、映姫、妖夢が振り返るとそこに立っていたのは金髪ソフトモヒカン、身長190㎝で肩幅が広くプロレスラーのような体格の男だった。

その横には金髪オールバックで似たような体格の男も立っていた。

2人共、年齢は50歳くらい。

 

「ディラン・スペンサー」

 

黒刀が声をかけてきた男の名を口にした。

 

「お知合いですか?」

 

「ああ。俺をロサンゼルスの大会に誘った時の大会の主催者だ」

 

「えっ!」

 

妖夢が驚く。

 

「まさか、また黒刀をスカウトしに来たのですか?」

 

映姫がディランに訊く。

 

「そうしたいのはやまやまなのですがミスタークロトに散々断られてしまってね」

 

ディランは肩をすくめて答える。

 

「俺はプロリーグに興味は無いって何度も言いましたよ」

 

黒刀も愛想笑いで返す。

 

「そちらの方は?」

 

妖夢がディランの横に視線を移す。

 

「マイブラザーのデュークだ」

 

ディランが紹介する。

デュークと呼ばれた男が黒刀の前に出る。

 

「デューク・スペンサーだ。アメリカ代表の監督だ。よろしく」

 

デュークは黒刀に握手を求める。

 

「日本代表の四季黒刀だ」

 

黒刀はデュークの握手に応じた。

 

「ディランはかなり君に興味を持っているようだね」

 

「みたいですね」

 

デュークの目からは大きな野心をちらつかせる。

 

「挨拶は済んだようだね!ミスタークロト!それから…」

 

ディランは映姫と妖夢に視線を移す。

 

「黒刀の姉の映姫です」

 

「魂魄妖夢です!せんぱ…黒刀先輩の学校の後輩です!」

 

映姫と妖夢はそれぞれ自己紹介した。

 

「OH!予選で観させてもらったよ!YOU達もミスタークロトと同じくらい見所がある!」

 

ディランは映姫と妖夢に半ば強引に握手する。

 

「こ、光栄です(何か凄いパワフルな人だな…)」

 

苦笑いする妖夢。

映姫は割と平気な顔して握手に応じている。

 

「ディラン、そろそろ行くぞ」

 

デュークがディランに声をかける。

 

「ああ。そうだね!それじゃミスタークロト、ミスエイキ、ミスヨウム。Meはこれで失礼するよ!」

 

ディランが踵を返して去ろうとしたその時、何かを思い出したように振り返る。

 

「あ、それとMeはこの大会のスポンサーをやっているから何かあればいつでも相談に乗るよ」

 

ディランはそれだけ言って去った。

その時、黒刀は一瞬だけ見えた。

デュークが踵を返す前、こちらを…いや黒刀を睨みつけていた。

注意していなければ気づかない僅かな時間だったので気づいたのは黒刀だけだったが、黒刀には思い当たる節も無ければ特に気にすることでもないと考えすぐに意識の外へ追いやった。

 

 

 

 

 

 アメリカ代表のボビー・コングは骨付き肉をかじりながら視線を一点に集中していた。

その視線の先には早苗がいた。

 

「(いいね~極東の女にしちゃエロい体してやがる。見つけたぜ…最高の果実を!)」

 

ボビーは舌なめずりする。

 

「早速今夜に……ん?」

 

ボビーは視線の先で早苗が黒刀の腕に抱きついている光景を見た。

 

「(おもしれぇことを思いついたぞ…)」

 

ボビーは何か企んだ顔をするのだった。

 

 

 

 

 

 レーニンJrとザウルは遠目に黒刀を観察していた。

 

「あれが四季黒刀か。今のところ普通の高校生にしか見えないな」

 

「そうですね」

 

2人が周囲に聞こえないように小声で会話していると…

 

「よぉ!久しぶりだな!」

 

ボビー・コングが声をかけてきた。

 

「ボビー…」

 

ザウルがボビーをまるで親の仇のような目で睨む。

 

「元気そうじゃねぇか?」

 

ボビーはわざと挑発的な口調で話す。

 

「お前!よくもそんな口が利けるな!去年、レンに何をしたか忘れたか!」

 

頭に血が上ったザウルが怒鳴る。

その騒ぎに周囲の人間が気づき、パーティーの雰囲気が一気に悪くなる。

 

「あ?てめぇに用はねぇ!俺はこいつに挨拶しに来ただけだ」

 

2人の言い合いがヒートアップするかに思えたその時。

 

「ザウル、それくらいにしておけ」

 

レーニンJrが制止した。

 

「しかし、レン…」

 

「去年の僕が力不足でこの男に敗北したのは事実だ。その過程に何があったとしても恨みはない」

 

「ハッ!自分がカスだっていうことをようやく理解したか?」

 

「だが、それはあくまで去年の話だ。今年も同じとは限らない」

 

「言うね~」

 

レーニンJrとボビーの視線が交わる。

先に引き下がったのは意外にもボビーの方だった。

 

「まあいい。本選で当たったら次こそは再起不能にしてやるよ」

 

ボビーは去った。

 

「レン、何故もっと言い返さない?」

 

ボビーが離れてからザウルがレーニンJrに問う。

レーニンJrはグラスの中の飲み物を飲み干す。

 

「僕達の目的は奴へのリベンジなどと個人的なレベルのものじゃない」

 

レーニンJrはそれ以上のことは当然、口外出来ないので黙った。

彼らの任務は国家を揺るがすレベルである為、ザウルはそれ以上追及出来なかった。




ED9 鋼の錬金術師 扉の向こうへ

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