ニューヨーク時間午後6時55分。
パーティー会場近くに1台のリムジンが停車した。
運転席から1人の初老が降りて後部座席のドアを開ける。
その後部座席から現れたのはイギリス代表だった。
「何とか間に合ったようだね」
「はい。お兄様」
レオとマリーが出てきた。
「さあ、俺の運命の人はどこかな?」
「チャーリー、キョロキョロし過ぎだ」
続いてチャーリーとアレックスが出てきた。
「ワォ!盛り上がってマスネ!」
続いてリーナが出てきた。
「パーティーだ!」
「フラン、はしゃがない」
最後にフランとレミリア、咲夜が出てきた。
今大会優勝候補の登場にパーティー会場にいる者が注目する。
「あれが…イギリス代表」
妖夢が呟く。
まだ未熟な彼女でも一目見ただけで分かる。
彼らが相当な実力者だということを。
レオが大勢の参加者から1人を見つけて口元を綻ばせる。
そこへゆっくりと歩き出した。
「お兄様?」
「少し挨拶に行ってくる」
マリーは首を傾げたがレオの視線の先に誰がいるのか理解すると小走りでついていく。
他のメンバーも歩きながらレオの後をついていく。
そして、レオは目的の人物に辿り着いた。
「君が四季黒刀君だね?」
レオはこちらに背を向けて料理を食べている黒刀に声をかけた。
黒刀は食事を中断してレオの方に振り向いた。
黒刀の傍には映姫、ルーミア、妖夢、早苗、真冬がいる。
「初めまして。イギリス代表キャプテンのレオ・アルハートです。よろしく」
レオが握手を求める。
「四季黒刀です。こちらこそよろしく」
黒刀は握手に応じる。
「レミリアさんや妹から君の話は聞いています」
レオの発言に黒刀は『妹』という単語がフランを指しているのかと思ったが他人の妹をただ『妹』と指すのは違和感がある。
黒刀の疑問を解消するように前に出てきたのは金髪ツインテール碧眼の美少女。
「お久しぶりですわね!わたくしはレオお兄様の妹、マリー・アルハートです…」
「どこかで会いました?」
黒刀はマリーの自己紹介を遮った。
「なっ!あなた!まさかこのわたくしのことを忘れた訳では…」
「フッ、冗談だ。7年前の紅茶大会以来だな。マリー・アルハート」
「あなた!このわたくしをからかうとは良い度胸ですわね!っていうか人の話は最後まで聞きなさ」
マリーが声を荒げたその時、彼女の肩にぶつかりながら黒刀に飛び掛かった者がいた。
「久しぶりデス!クロト!」
黒刀に抱きついたというより顔を抱きしめたのはリーナだった。
黒刀の顔が彼女の豊満な胸に埋まる。
「「「はあ⁉」」」
映姫、早苗、真冬がびっくりして困惑する。
「ふぇ…ふぇめぇ…ふぃーな!ふぁなしやがれ!(て…てめぇ…リーナ!離しやがれ!)」
「OH!くすぐったいデス!」
リーナは離すどころかさらに強く抱きしめる。
黒刀の右手が天を仰ぎ、やがて力なく下げられた。
チーン。
「ストップ、ストップ!先輩が死んじゃう!」
妖夢が介入する。
「OH!SORRY!」
リーナがようやく黒刀を解放する。
「う…ぷはぁ~!死ぬかと思った!」
黒刀の無事に妖夢は胸を撫で下ろす。
「ちょっとセンパイ!何なのですかこの女は!まさかセンパイの恋人ですか!」
早苗が黒刀に詰め寄る。
「NONO!ワタシの名前はリーナ・シリウス。クロトのGirlFriendではなくただのFriendデス!」
リーナが否定と同時に自己紹介する。
「ヨーロッパにいた頃の友達だ」
黒刀は右手で頭を抱えながら説明した。
マリーの背後で俯き一言も発していないレミリアの肩がピクッと震えた。
「だとしても公衆の面前で不健全です!黒刀も!リーナも!」
フリーズから立ち直った映姫が黒刀を睨みつけた後、リーナを指差して言い放つ。
リーナは首を傾げて黒刀の顔を見てから…
「もしかしてエイキの子供デスカ?」
とんでもない爆弾発言を投下した。
『なっ!』
場の空気が一瞬で凍った。
「ち、違います!リーナ、私です!四季映姫です!よく思い出してください!」
映姫が慌てて名乗る。
リーナはハッと思い出したような顔をする。
「エイキ!久しぶりデス!ちっちゃくてよく分からなかったデス!」
リーナは全く悪びれず映姫に対しての禁句をサラッと口にした。
場の空気がさらに冷気を増した。
映姫の肩がカタカタと震える。
「だ、誰が…小さいですって……これでも成長しているんです…私は決してロリじゃない!」
「姫姉、誰もそんなこと言ってないんだけど…」
黒刀が怯えながら声をかける。
「キッ!」
映姫が黒刀を睨む。
「イッ!」
黒刀はびびって声を上げる。
「アハハ!今のでよく分かったデス。クロトとエイキで間違いないデス♪」
リーナが笑う。
それを見た映姫はため息を吐くと何とか自分を落ち着かせた。
だが、黒刀の心中は穏やかではなかった。
「(姫姉も怖かったけど…後ろの早苗と真冬の視線も気になるし…何より一言も喋ってねぇレミリアが一番怖い)」
その時、早苗がリーナの前に立つ。
「センパイの恋人でないことは分かりました。しかし!センパイに抱きついたことは納得出来ません!センパイに抱きついていいのは私とルーミアちゃんだけです!」
「ルーミアちゃん?」
リーナが可愛らしく首を傾げる。
「私がルーミアなのだ~!」
ルーミアが元気良く挙手。
リーナは両手をパンッと合わせる。
「なるほど!この子がクロトとエイキの子供デスカ!」
そして、またもや爆弾発言を投下。
「「違う違う!!」」
黒刀と映姫は慌てて手をブンブンと振って否定する。
「違うデスカ?」
「妹だ」
「そうです!第一、私と黒刀は姉弟です!子供とか結婚とかあり得ません!」
「それもそうデスネ。よろしくルーミアちゃん♪」
リーナはルーミアの目線に合わせて屈むと笑顔で挨拶。
「うん。よろしく♪」
ルーミアも笑顔で応えた。
「ん~VeryCuteデス!」
リーナはルーミアを抱きしめた。
ルーミアの顔がリーナの胸に埋まる。
ルーミアが苦しそうに両手をバタバタとさせる。
「やめい」
黒刀がリーナの脳天を手刀で小突く。
「アウッ!」
リーナが可愛い声を上げてルーミアを解放する。
「とにかく私はあなたには負けません!」
早苗が立ち上がったリーナに詰め寄る。
ただ近すぎて早苗とリーナの胸が重なり合う。
「………ハッ!」
早苗は数秒黙っていたが何かに気づいたのか四つん這いになって項垂れる。
「ま、負けた…」
「何やってんだよお前…」
黒刀が呆れる。
するとマリーもため息を吐いて髪をかき上げる。
「何か興が削がれましたわ。気を取り直して…さあ、四季黒刀!紅茶大会のリベンジです!わたくしと勝負しなさい!」
マリーがビシッと黒刀を指差す。
「俺、もう紅茶淹れてないから無理」
黒刀は即、断った。
その答えにマリーはショックを受けて固まる。
「アハハ!マリー、ドンマイデス!」
リーナが自分なりに励ます。
「わたくしの7年は一体…」
項垂れるマリー。
「ならば今度わたくしがあなたに最高の紅茶を振る舞って美味しいと言わせてみせますわ!」
急に元気を取り戻すマリー。
『(あ、意外と良い人だ)』
その場の全員がそう思った。
「さて、思わぬハプニングが続いてしまったが…どうやら君とゆっくり話す時間は取れないようだね。黒刀君」
リーナとマリーの一件が済んでからレオが黒刀に話しかける。
「前夜祭はまだ始まったばかりだ。話す時間はたっぷりあると思うが?」
黒刀の言葉にレオは肩をすくめる。
「残念ながら君は人気者らしくてね。皆、君と話したくて見ている」
レオの言葉に黒刀は周囲に注意を向ける。
何人かがこちらを見ている。
確かに先程の騒ぎは注目を集めても仕方のないものであるがそれにしては卑しい視線を感じる。
まるで実力を値踏みするかのように。
「あまり気分の良いものではないな」
「僕も同感だ」
レオの口元が綻ぶ。
「いっそのこともっと注目されるかい?」
「それは…」
黒刀はこの後の展開を予測した。
「黒刀君、僕とここで決闘してくれないか?」
レオの提案に周囲が一気にざわめく。
「お兄様!いくら何でもそれは…」
さすがのマリーも止めに入ろうとする。
「僕は君と闘いたい」
レオは黒刀の目を正面から見据える。
だが、黒刀は無言。
「やはり受けてはくれないか」
レオはまた肩をすくめる。
「レオ、クロトは剣術が下手なので闘ってもクロトが負けると思いマス」
その時、レオの隣に立つリーナが真顔で言った。
「そんなことありません!先輩の剣術はカッコよくてとても強いです!」
妖夢が反論する。
「でもクロトはワタシより弱いデス」
リーナは無邪気な笑顔で返した。
「そんな筈ありません!そうですよね?先輩!」
妖夢は黒刀に答えを求める。
だが、黒刀の答えは意外なものだった。
「…いや、今はどうだか知らねぇが俺がスウェーデンに住んでた頃はこいつに一度も勝てなかった」
黒刀の答えに妖夢は目を見開いてリーナに視線を移す。
妖夢はの幼少時代の黒刀の実力を正確に把握していないが改めて彼女を見てもとても黒刀に勝る実力を持っていたとは思えない。
リーナはというと妖夢の視線に気づいて笑顔を見せている。
「(っていうかリーナの奴、天然で毒舌なところ変わってないな。本人に悪意無いからタチ悪いんだよな)」
黒刀はリーナの性格が以前と変わっていないことを再確認した。
「黒刀君、彼女は?」
レオは妖夢が何者か黒刀に訊いた。
黒刀は口の端を緩ませて妖夢の頭にポンと手を置いた。
「こいつの名前は魂魄妖夢。いずれ俺を超える剣士になる奴だ」
それを聞いたレオは僅かに眉を顰める。
「ほう」
「先輩…///」
妖夢は照れたのか頬を赤く染めて頭に手を置かれたまま黒刀を見上げる。
黒刀の視線はレオに固定されている。
「現最強剣士と言ってもいい君がそこまで言う程かい?」
「まあな。あと現最強剣士って言うのも違うな。俺より強い剣士はそうだな…3人はいると思うぞ」
黒刀はそう答えるが、それは裏を返せば自分より強い剣士は3人しかいないと言っていることになる。
黒刀は妖夢の頭から手を離す。
「…君がそこまで言う程の剣士か…」
レオは妖夢の目の前に歩み寄ってこう口にした。
「黒刀君が認める君に興味が沸いた。興味が湧いた。どうかな?僕とここで決闘するというのは」
その言葉に周囲がざわめく。
「真剣でやるのか?大会中は禁止ですよ」
アレックスが口を挟む。
「問題無い。セバスチャン」
レオが呼ぶと、彼の背後にスッと初老の執事が現れた。
「(い、いつの間に…。全く気配を感じなかった)」
妖夢は内心で驚く。
「どうだ?」
「はい。既に決闘の許可は得ております」
「分かった。下がっていい。…ということだ。これでいいかな?」
セバスチャンは既に消えていた。
妖夢はレオの目を正面から見据える。
「受けて立ちます!」
「妖夢!あなた何を…」
「師匠、やらせてください。先輩に期待に応える為…私自身のプライドの為にもここは引く訳にはいかないです!」
妖夢は映姫に想いをぶつけた。
映姫はそんな妖夢に反論する訳にもいかず諦めたように息を吐く。
「分かりました。好きにしなさい。原因を作ったこの愚弟は後で私がシメておきます!」
映姫は後ずさりしようとする黒刀の腕を掴む。
「って何で俺?」
とぼける黒刀に映姫は静かに睨み、目をギラリと光らせる。
「いえ。何でもないです…」
黒刀は観念して抵抗をやめる。
レオは周囲を見渡してパーティー会場の隅に開けたスペースがあることを確認する。
「よし。あっちでやろう」
先導するレオに妖夢達はついていく。
「(そういえばフランがいないな…)」
移動中に黒刀は周囲を見渡すと、50m左でフランが魔理沙達と一緒にこちらと同じ方向に移動していた。
楽しそうに魔理沙達と談笑しているフランを黒刀は微笑ましそうに見る。
その時、近くから殺気を感じた。
咄嗟に顔の向きを正面に向き直してフランから意識を外した。
黒刀は今の殺気が無言状態を貫いているレミリアから放たれたものだと分かった。
「(私との決着が控えているっていうのに意識を逸らすなんて許さないわ)」
『未来王』はご立腹だった。
決闘する為のスペースに到着したレオと妖夢は10m距離を空けて向かい合う。
レオは空間ウインドウを操作して決闘申請のメッセージを妖夢に送信する。
メッセージを受信した妖夢は『了承』を押す。
《デュエルフィールド展開》
2人を囲うように1辺30mの立方体のデュエルフィールドが展開される。
妖夢はドレスからデュエルジャケットに装備が変わり、2本の剣を抜いて構える。
対してレオは左腰に納刀してある包帯で鞘ごとグルグルに巻いてある剣ではなく汎用型SDを取り出して起動した。
「?…そちらの剣は…」
妖夢の問いに対して、レオは左腰に納刀してある剣の鞘…正確にはその上の包帯を左手で撫でる。
「ん…ああ。悪いけどこっちは
妖夢はそれを聞いてその真意に気づいた。
レオは
その剣を使うまでもないという意味…つまり舐められている。
以前、黒刀がチルノに対して『八咫烏』ではなく汎用型SDを右手で使ったことはあった。
だが、あれは『ガードブレイク』など技を隠す為にやっていた。
しかし、レオから何かを隠していることは分かっていてもそれを使うまでもないという意思が伝わってくる。
負けられない。妖夢は改めて気合を入れる。
《3…2…1…0.デュエルスタート》
妖夢は開始と同時に地面を蹴った。
「(正面?いや…)」
レオの正面から妖夢が消えた。
レオは左足を軸に全身を右回転させて、クロスステップでレオの背後に回り込み2本の剣を振り下ろす妖夢の剣撃をSDを横に倒して受け止めた。
レオは妖夢の剣を振り払う。
押し返された妖夢はバックステップで距離を取る。
「もう一度!」
妖夢は地面を蹴ると同時にクロスステップでレオの右側に回り込み中段斬り。
レオはそれを軽く振り払う。
押し返された妖夢は着地後、すぐにクロスステップを連続で繰り出してレオの左右と背後から攻撃を仕掛ける。
だが、レオはことごとくそれを振り払って防御。
そこで決闘を観戦していた大妖精が気づく。
「あれってまるで『破壊王の鎧』と『集中』を発動している時の黒刀先輩の戦闘スタイルに似てませんか?」
「え…う~ん…あ、ほんとだ!軸足が全然動いてない!」
大妖精の言葉にチルノが気づく。
「っていうことはあの人の戦闘スタイルは黒刀先輩のコピー?」
霊夢が言った。
「だったら妖夢も何かしら対策を用意してるだろ」
魔理沙が安心する。
「フッフッフ!それが違うんだな~!」
フランが口を挟む。
「何その気持ち悪い笑い方」
霊夢が毒舌を吐く。
「ちょ、ひど~い!…え~とね。レオさんの戦闘スタイルはお義兄様とは全然違うんだよ!」
「どこが?」
「それは見てれば分かるよ」
フランの言葉の先が気になるが魔理沙達は妖夢とレオの闘いに視線を戻す。
妖夢の多方面からの連続攻撃は全て防がれた。
「それだけかい?」
レオが一言。
「!」
妖夢は腰を落として2本の剣をぶら下げた状態で地面を蹴って正面から攻撃を仕掛ける。
「来るか!」
レオは構え直す。
妖夢はまず右手の『楼観剣』を下段から斬り上げる。
レオはそれに合わせるようにSDを左に振って弾く。
弾かれた妖夢はすぐに左手の『白楼剣』で袈裟斬り。
レオはSDを右に振って弾く。
弾かれた後も読むは韓国代表のユンスク戦のように高速連続攻撃を仕掛ける。
レオはそれをことごとく弾いた。
彼の軸足をいまだに動いていない。
レオは右手のSDをぶら下げる。
「…この程度か。黒刀君が認める剣士がどれ程のものかと思えば…とんだ期待外れだね」
「っ!この!」
妖夢は頭に血が上って前方へダッシュ。
左手の『白楼剣』を受けの体勢に構える。
『空観剣 六根清浄斬 改』の構えだ。
「(これで決める!)」
妖夢の読み通りレオのSDの刃が『白楼剣』の腹に迫る。
SDの刃が『白楼剣』の腹にぶつかる。
「今だ!空観剣 六根清浄…っ!」
妖夢が剣撃を受け流そうとしたその時。
その体に異変が起きた。
「(体が…動かない⁉)」
妖夢の全身は痺れて動作を停止させていた。
それは1秒の出来事。
だが、剣士にとってその1秒は………重い。
「終わりだよ」
レオは妖夢は2本の剣を2撃で両方弾き飛ばした。
弾き飛ばされた2本の剣が地面に突き刺さる。
レオは武器を失った妖夢の首元に剣先を突きつける。
妖夢は歯噛みする。
そして…
「ま、参りました…」
妖夢は敗北を宣言した。
《勝者 レオ・アルハート》
決闘が終わっても周囲は静まり返っていた。
「何…今の?」
真冬の問いに答えたのは黒刀だった。
「『ソードスタン』だ」
「何ですかそれ?」
早苗が訊く。
「相手の剣の中心部分と自分の剣の中心部分を同じ力でぶつけることによって相手を1秒間硬直状態にする
「げ、現象?剣技じゃなくて?」
真冬が訊く。
「誤差1㎜でもずれると『ソードスタン』は発生しない。鍔迫り合い状態で偶然発生することはあってもそれを剣技として使用一流の剣士でも至難の業だ」
「でも彼は違う」
映姫が口を挟んだ。
「違うって何が違うんだよ!」
魔理沙がフランに問う。
「レオさんは『ソードスタン』を狙ってやっているの。つまり剣技として使用することが出来るってこと♪」
フランが得意気に答える。
その答えに魔理沙達は驚愕する。
「剣士にとって1秒の硬直状態は致命的…つまりレオ・アルハートは」
大妖精に顎に手を当てて考える。
そして、ある結論に辿り着いた。
それは映姫も同じだった。
「「彼は剣士にとって最大の天敵!!」」
妖夢は地面に膝をついて四つん這いになる。
レオはそんな彼女にこう言った。
「これが現実だよ。君は僕に絶対に勝てない」
「くっ!」
妖夢は歯を食いしばる。
レオはSDを懐にしまって妖夢の横を通り過ぎる際、こう口にした。
「君では黒刀君を越えられない」
その言葉は妖夢に強烈なショックを与えた。
悔しさのあまり地面の雑草を握り潰してしまう。
「「「「妖夢!」」」」
妖夢の元に霊夢、魔理沙、チルノ、大妖精が駆け寄って来る。
妖夢の肩がビクッと震える。
あれだけ大口を叩いたのにこんな無様な負け方をしたのだからきっと責められるだろうと思った。
しかし、彼女達の取った行動は違った。
「妖夢、大丈夫か!」
魔理沙が妖夢の肩に手を置く。
「怪我してない?」
霊夢が中腰で声をかける。
「治癒魔法をかけるね」
大妖精が治癒魔法をかける。
「妖夢、剣拾ってきたぞ」
チルノが地面に突き刺さっていた『楼観剣』と『白楼剣』を妖夢の元に持って来てくれた。
「皆…ごめん」
妖夢は項垂れて一言。
「妖夢が謝ることないだろ」
魔理沙が返す。
「だって…私、負けた…」
「次勝てばいいじゃない」
霊夢が真顔で返す。
「そうだよ。妖夢はこんなことで諦めるなんてない…そうでしょ?」
大妖精が治癒魔法をかけながら言った。
「皆…」
妖夢は項垂れたまま涙が出そうになったがここは堪える。
今は周囲に人が多いし何より他国の代表もいる。
こんなところで涙は見せられない。
妖夢は立ち上がってチルノから『楼観剣』と『白楼剣』を受け取る。
「ありがとう。ごめん。私、今日は帰るね」
妖夢は力ない笑顔でそう言った。
「私達も一緒に行くぜ」
「魔理沙…」
「友達だからな!」
「ありがとう…」
妖夢は剣を納刀すると歩き出す。
行きに乗ったバスは他のメンバーも使うので自分達だけで使うことは出来ない。
なので徒歩で帰ることにした。
人垣から出てきた妖夢達ににとりが駆け寄る。
「帰るならタクシーで…」
「すみません。大丈夫です。少し頭を冷やしたいので…」
妖夢はにとりの提案を断る。
「そうか。だがお前達だけで行動させる訳にはいかないから諏訪子さんについてもらう。いいな?」
「はい…」
返事する妖夢にやはり元気はない。
ニューヨーク時間午後7時30分。
「ねえ、黒刀君。妖夢に何か言った方がいいんじゃない」
真冬が黒刀に声をかける。
「大丈夫だ。あいつは強い。…俺とは違って」
黒刀がそう言うと真冬はそれ以上何も言えなかった。
その言葉の重みを知っているから。
そんな話をしているとレオがこちらに近づいてきて黒刀の横を通り過ぎる際、こう言った。
「君が僕が倒す」
それだけ言ってレオは去った。
彼もホテルに戻るようだ。
黒刀はレオの言葉に対して何も言わなかった。
レオに続いてマリーがこちらに淑女のように一礼をしてレオについていく。
「それじゃまたデス!チュッ」
リーナは黒刀に近づくとその頬にキスをした。
「「「なっ!」」」
映姫、真冬、早苗が一斉に驚いた。
「SeeYou♪」
リーナは黒刀から離れると手を振った後、マリーの後についていった。
「黒刀君、やっぱり…」
「センパイ、やっぱり…」
真冬と早苗がジト目で黒刀を見つめる。
「ただの挨拶だ!」
黒刀は必死に否定する。
「「じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」」
しかし、2人はまだ疑っている。
その時。
「黒刀」
映姫の声。
「姫姉、こいつらに誤解を解くのを手伝って…」
「帰ったらお説教です♪」
そう笑う映姫の目は笑っていなかった。
「お義兄様♪」
その時、フランがこちらに駆け寄ってきて黒刀に抱きつこうとする。
だが、真冬と早苗がバッと黒刀の前に両手を広げて立ち塞がった。
「おおおお…何かお義兄様のガードが堅くなっているよ」
思わずフランはのけ反りわざとらしいリアクションを取る。
「やめろ」
黒刀は2人の脳天にチョップ。
「「あ、痛っ!」」
2人は痛みで声を上げる。
黒刀は2人をどけてフランの前に立つ。
「久しぶり。フラン」
「うん♪」
フランは笑顔で応えた。
「大会で当たったら遊ぼうな」
「うん♪」
黒刀の言葉を聞いたフランはパアッととびっきりの笑顔で応えた。
そして、フランは咲夜と共にリーナの後をついていく。
その後をついていこうとレミリアが一歩踏み出したその時。
「レミリア」
黒刀が呼び止めた。
レミリアは振り返り、黒刀の目を見つめる。
黒刀も見つめ返す。
2人は一言も発さない。
10秒程そうしてからレミリアが踵を返して去ってしまった。
「何も話さないの?」
真冬が黒刀に問う。
「必要無い。今のあいつと俺は言葉じゃなくこれで語り合える」
黒刀は『八咫烏』の柄を撫でる。
「(もうすぐ…あの日の続きが出来る)」
ED9 鋼の錬金術師 扉の向こうへ
ご感想お待ちしております。
OPとEDは必要だと思うか?
-
はい
-
いいえ