ただモテたかっただけのワシがなんか女神様と崇められとるんじゃが   作:一二三 四五八

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鎧ちゃんの内面話。
ちょっと書いててキャラが掴めなかったもので…………。



8)鎧という在り方

ワタクシはずっと、なにも出来ない自分が嫌いでしたわ。

 

名もなき鎧としては良質な、護るべき部分を金属で補強した混合式硬革鎧(コンポジット・ハードレザー)

それがワタクシです。

 

金属鎧に比べて軽く、革鎧の中ではずいぶん頑強だったワタクシは、結果。多くの主たちの元でその身を護る役目につきました。そう。多くの、ですわ。

 

有る方はワタクシの護りを信じて、裏切られ死にました。有る方は無慈悲な野盗に襲われて、死にました。有る方は迷宮の中、バケモノ達に群がられ、やはり死にました。

状態保持の魔術がかけられた私だけ、私だけがその場に残り、また新たな主に拾われ次の護りを始めます。その度にワタクシは、主を護りきれません。

 

鎧は主を護る為にありますの。この身をもって主を迫る脅威から護る為のモノなのです。

ですがその実、鎧はなにも護れませんわ。なぜならこの身は動く術など持ち得ない、只一介の革鎧なのですから。

 

目の前で、私を身に包んだ主が死にますわ。また、死んでいきます。

その度にワタクシはそれを見守ることしか出来ない、動けぬ自分を呪いましたわ。

そういうふうにワタクシを創り上げた神すらも。

 

そうしてワタクシの呪詛が魔毒として貯まり出した頃、ワタクシは一人の天使に回収されました。この身に宿すその呪詛は、どうやら許されざるモノだったようです。

しかしワタクシはホッとしました。これでこの残酷な運命が終わると。

 

誰かを護りきれない鎧として、成す術のない鎧としてのあり方が終わるのだと。

 

しかしそうではありませんでした。ワタクシが運ばれたのは天界の宝物庫。

どうやら私の呪わしい運命はまだ続くようです。

永い時を、天界の宝物庫で過ごしましたわ。多くの魔具が、新たな勇者の伴として出ていき、天使に回収された新しきモノが、そこに加わりました。

 

彼等はどれも一級品。優れた護りと、逸話を持つ伝説の品。

対して私は優れていても名もなき品。

ああ、ここでならワタクシの出番はもうこないのかもしれないと。

 

ワタクシはこの身ひとつ。

その日も宝物庫の片隅で呼ばれぬことを祈っていました。

 

しかしそれは叶わなかった。

私の次の主人は、多分戦士の心得もなにも持たない男のヒト。

ワタクシを包む体つきが、それをワタクシに告げてきました。

 

ああ、またか。ワタクシがかつてのように僅かに呪詛を貯めこもうとした時。

 

そっとそのヒトの手が、土草に触れました。

その瞬間。

そのヒトの手の下から、多くの小さなヒトの子らが出てくるではありませんか。

なにが起こったのか、ワタクシには、まったく理解できませんでした。

 

続いてその手が動きます。そして、……ワタクシへと触れました。

 

気付けばワタクシは、生まれ変わっていたのです。

視える、聞こえる、匂える。動、ける。

それはずっとワタクシが焦がれてやまない、自由に動けるカラダでしたわ。

 

あまりの嬉しさに、あまりの情動に、ワタクシの目からは只々熱いものが流れ。

ワタクシは声を漏らして泣き崩れます。

ああ、ああ、カミサマ。カミサマ。ワタクシは貴方様をあんなに呪っていたというのに。貴方様は、ワタクシの、この身の願いを聞き届けて下さるというのですか。

 

ワタクシは、護ってよいのですね?

ワタクシが、護って、よいのですね?

 

ワタクシは只々カミサマに感謝し、今までの不敬を詫びた。詫び続けたましわ。

そして。そのヒトが自身の装備と衣服全てにその自由を与えた後、ついに我が身にも触れて、その身を光らせます。眩い光が晴れた時、そこには。

永い時を経たワタクシですら、未だ見たこともない麗しさを持った女性が一人。

 

その時ワタクシは理解しました。

 

ああ、貴方様。貴方様こそが、カミサマなのですね?

貴方様を散々恨み呪ったワタクシの、こんなワタクシの願いすら聞き届けて下さった尊きお方。

なんという、なんという慈悲深き貴方様。

 

ならばワタクシは貴方様の鎧として、その身を護り抜きましょう。

 

あなたから与えられたこの身を持って、護りたいと願い続けたこの心を抱いて。

たとえどのような苦難が貴方様を襲おうとも、世界全てが敵にまわろうとも。

ワタクシは必ず貴方様のお側に仕え、万難全てに抗ってみせましょう。

 

なぜなら、このワタクシは貴方様の鎧なのですから。

 




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