彼が幻想になるまでの話   作:遠名 彬

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田舎な都会に住む一人の少年。これまで人を喰ってきた彼は、生まれてはじめて喰われる恐怖を知った。

続き……というか、外伝です。
時系列的には同じ時間です。

※警告タグはだいたいこちらの所為です。ご注意ください。













幻想に喰われた少年の話

 弱った電球の細々とした明かりが、橙色に世界を照らす。

 淀んだ空気で詰まった部屋には、壊れかけた簡易ベッドと、唯一外界へと繋がる扉があるのみだ。

 所々が赤く染め抜きされたような布団が、なんとか原型を留めながらベッドにしがみついていた。

 ベッドの上には、女性。その目は閉ざされ、眠るように横たわっている。

 手と足を姿勢よく伸ばし、その足で布団の端を押さえながら、微動だにしない。

 動くもののない、静寂に雁字搦めにされた空間は、ドアの解放によって動き出す。

 ドアの向こうからは、蛍光灯の無感情な光が来襲する。消えかけた電球の明かりは、蛍光灯の余波で持って、その役割を奪われる。

 そして、その部屋の細部が、光の下に照らし出される。

 

 ベッドに寝かされていた女性は、身動ぎもしない。できない。その姿を見れば、誰もがそんな事ができる状態ではないと分かっただろう。

 女性は死んでいた。誰もが一目で、死んでいると分かる状態で。

 眠るような顔の下、女性特有の膨らんだ胸部は無く、そこには人体の最も大切だと言われる器官――すなわち、心臓が見えていた(・・・・・)。肋骨の下ではあるが。

 さらに下に視線を下げると、そこには、独特の四角い形をした消化器――胃。その周りには、腎臓、脾臓、大腸――。女性は、あたかもプラスチックの生体標本のように、体の前面が開かれていた。既に流れ出る血もなく、完全に機能を停止している。

 

「――ああ、そう言えば、この間のがまだ片付いて無かったか……。いい加減、捨てなきゃな」

 

 その死体を、まるで生ゴミか何かを見るような視線で射抜く少年。

 幼さを残すその顔は、傍目では中性的な印象を与える。面倒臭そうな顔をしてはいるが、それは冷酷ではなく、何処と無く誰もが心を許してしまいそうな、そんな柔らかな魅力を感じさせる。

 背丈も低く、声も高めだ。外見だけでは、入学したての中学生だと言われても、何の疑問もなく受け入れられるだろう。しかし、その身に纏っているのは、近所では進学校として有名な高校の物であり、それだけが、彼が高校生であることを物語っていた。

 

「ま、いっか。今日帰ってきてからで」

 

 そう結論付け、少年はドアを閉めた。

 再び、世界は暗闇に閉ざされる。そこは、死にかけた電球が、我が物顔で振る舞える世界だ。

 

 扉を一枚隔てた向こう側は、丸まった蛍光灯が支配する世界だ。その輝きの下で、少年は暮らしている。

 机の上に置かれた鞄を持ち、姿見の前で、軽く身だしなみを整える。

「――よしっ、完璧」

 その顔に笑顔を浮かべ、立て掛けての写真を手に取る。

 そこには、二人の男女が写っている。どちらも楽しそうに笑っている。

 

「行ってくるよ、父さん、母さん」

 

 日課の挨拶を済ませて、少年は家を出る。

 写真の女性は、黒髪で、切れ目で、鼻が整っていて――。

 暗闇に眠る女性と、非常に良く似ていた。

 

 

 夕方。少年は高校を出ると、真っ直ぐに帰路についた。

 高校と自宅はそこまで遠くなく、歩いて二十分程度だ。しかし、それは大通り沿いを歩いていった場合の話であり、この辺りの裏通りを知り尽くした少年にとっては、もっと近い。

 その日も少年は、いつも通りに裏道を歩いていた。散々検証した結果、今歩いている道が最も早く往復できると分かっているのだ。

 しかし――。

「えー……工事?おかしいな、さっきは何も無かったはずなのにな……」

 そこでは、“工事中”の看板が通せんぼしていた。朝も同じ道を通ってきた少年にとっては、突如工事が始まったように思え、不思議でならなかった。

 真実は、行きに脇にあった工事予告を少年が見落としただけなのだが。

 道を塞がれた少年は、そこから迂回して帰ることを選択する。それでも意地でも大通りを通ることを考えなかったことが、地元民としての少年の矜持か、はたまた気分の問題なのかは、この際関係のないことだ。

 ともかく、この時の彼の判断が、少年を幻想に誘う事となる。

 

 夕日が地平線に沈む頃。辺りはまさに、闇の帳が降りている最中である。

 少年は不覚にも、知り尽くしている筈の路地裏で、道を見失ってしまった。直ぐに知っている場所に出ることは出来たが、夕日が出ている間に帰ろうと考えていた彼の計画は、人知れず破綻することとなった。

 

「うぇぇ……暗いな。さっさと帰ろ……」

 少年は特段暗闇が嫌いなわけでは無い。なんと無しにそう呟くと、頭の中の地図を頼りに、裏路地を歩き出す。

 角を曲がり、光の淡い道を歩く。

 突然、足元に突っ掛かりを感じた。足をとられる形になった少年は、漫画の如く両手を伸ばしつつ、派手にこけた。

 近くには何もなく、冷たいコンクリートに強かに顔を打ち付けた。

「痛ったぁ……!」

 ぶつけた顔を擦りながら、少年は立ち上がる。そこまで早く歩いていたわけでは無いので、あまり被害は無くて済んだ。

 転んだ原因を突き止めようと、足元に目線を向ける。暗闇が濃く良く見えないが、そこには確かに、黒い何か(・・・・)が横たわっていた。

 よくよく見ると、それには皺が寄っている部分がある――服だ。端には、僅かな光を受けて、綺麗に光る金糸が、球の形を為していた。

 少年が、それを金髪の頭であると認識するのに、大した時間は必要ではなかった。

「……人?こんなところで、何で寝てるんだろ」

 それは、彼にとって、極々純粋な疑問。時間的にも、もうそれなりに遅い。地元の人間位しか通らない路地裏で、金髪の人が倒れている。不思議な事態だ。

「――が――た――」

 少年の耳に、何か、囁くような、呟くような声が聞こえた。それは耳障りのいい高音で、少女の声だった。

「……ん?何か言った?」

 思わず聞き返す。状況的に、話したのは足元の人――声の質から、少女らしい――だ、と理解する。

 耳を近づけてみると、その少女はか細い声で、こう囁いた。

「――おなかがすいたのだー」

 

 

 ルーミア、とその少女は名乗った。名前、顔立ち、そのどれをとっても日本人的な要素は見当たらない。しかし、ルーミア曰く「生まれたときから使っていた」日本語はとても流暢で、少年とコミュニケーションを取るのには全く苦労しなかった。強いて言えば、ルーミア自身が少々“頭が弱い”ので、会話を成立させるのに苦労していた。

 話を聞く限り、外見で判断する限りは十歳、もしくはもっと幼いであろう彼女には、帰るべき家というものが無いらしい。

 そこで少年は、自らの家に来ることを提案した。それは別にペドフェリア的な意味ではなく、単純にルーミアの事を心配して言っているのだ。

 幸い少年の家はすぐ近くなので、土地勘が無く、話を聞いていないように見えるルーミアをそこまで誘導するのには苦労しなかった。

 

 そこから歩くこと数分。市街地の中、可笑しな家に到着する。

「ここが僕の家。大した所じゃないけど」

 白い塀に囲まれた、周りと比べると少しだけ大きな家。小さな庭があり、手入れのされていない雑草が蔓延っている。その中には、長年乗られていないのだろう、知る人は一目で分かる高級外車が置かれている。

 錆び付いた、かつては銀色に光輝いていたであろう門が、半開きで放置されている。

 その隣には、「倉敷」と書かれた表札が、錆び付き砕け、判読が困難な状態で放置されていた。

「……なんだか、誰も住んでないみたい」

 ルーミアは、家を見るなりそう言った。

 彼女にとって、西洋的な家の標準は非常に高い。何故なら、ヨーロッパ諸国に存在する、歴史的建造物に象徴される“城”が、彼女が知っている唯一の西洋建築だからだ。

 そんなルーミアにとって、この廃墟と化した倉敷家は、“普通よりも少しだけ小さい”家に過ぎない。

「まあね。僕しか住んでないし。手入れをするのも面倒」

 幼さを残した少年――倉敷は、少しだけ不満そうな声でそう呟いた。

 

「さあ、どうぞ。ここから先は、僕の城だよ」

 大仰な扉を開ける。ノッカーがドアに当たって打音を起こし、蝶番が錆で軋み、唸りを上げる。

 木製の、倉敷の身の丈よりも大きい扉が開く。奥には、かつて使用人が往復していた事が想像に難くないような、洋風の廊下があった。

 

 倉敷家。1900年代末期、ベンチャー企業の先駆けとも言われる、“Kurasiki Corporation”を設立した、倉敷有久とその家族。

 現在のパーソナルコンピュータの市場を寡占し、一代で莫大な財産を築いた、“成功した実業家”。

 しかし、企業の経営難に付け込まれ、とある海外の企業に買収された、というのは記憶に新しい。

 新社長は旧体制からの脱却を掲げ、倉敷の関係者を次々と解雇、左遷。社内の地位を失った有久は、遂に会社を追い出されてしまった。

 全てを失った有久は、現実が受け入れられず、アルコールに溺れていった。

 数年前、自殺。遺書すらも残さず、かつての自分の会社の屋上から飛び降りた。

 後を追うように、妻も自殺。企業は社名を変更し、倉敷の名前は、消えてしまった。

 子孫である彼――倉敷は、世間には存在をあまり知られていない。生まれたときには既に親は死んでおり、父が非公式に遺した遺産の一部を使うことで、なんとか生き延びてきた。住居の廃墟はその栄華の残骸であり、年単位で手入れがされていないにも関わらず人が住める環境を保っている。

 

「――美味しそーな、匂いがする」

 屋敷の中に通されたルーミアは、口を開くなりそう言った。

 その目は真っ直ぐ倉敷の居住部分に向けられており、爛々と輝いている。空腹で倒れていた姿とは似ても似つかない。こちらの方が年相応だ、と倉敷は思ったが、彼も外見では大して変わらない。

 そう、本人は微笑ましく眺めているつもりだった。端から見れば、そのときの倉敷の顔は、獲物を見つけた狩人のそれと似通っていた。

「そう?まだ(・・)、何も作ってないけど。さ、こっちだよ」

 ニコニコと純真な笑みを浮かべるルーミアの手を取り、倉敷は屋敷の奥へと進んでいく。ルーミアもまた、近付く毎に強くなってくる匂いに、涎を垂らそうかと言わんばかりの面持ちである。

 暗い廊下を抜け、屋敷の中では相対的に小さい扉を開く。倉敷がスイッチを押すと、天井に装着された蛍光灯に光が灯る。

 闇が打ち払われた後に現れたのは、極々質素なリビングダイニングだ。外観の豪勢さとは違い、ともすればその辺りの一般家庭よりも控えめだ。

 そして同時に、外観の退廃具合とは裏腹に、まるでそこだけが別の空間であるかのような、小綺麗な雰囲気を醸していた。

 

「さ、その辺に座ってて。適当に何か作るから」

 何の飾りもない、シンプルな白いソファーにルーミアを座らせると、倉敷は隙間のような空間に向かった。部屋からは中を見ることが出来ないが、そこは小さなキッチンになっている。

 役所の定義では、この倉敷家は既に廃墟であるので、公共のライフラインは通っていない。屋敷の地下に設置された発電機を使って電気を作り、水は全て購入している。

 その為、キッチンに置いてある調理器具は、IHヒーターや電子レンジ、カセットコンロ等で、据え付けのコンロや水道等は無い。

 倉敷が戸棚を開けると、その中には大量のレトルト食品が詰まっていた。倉敷は料理が出来ないので、スーパーやコンビニで販売しているインスタント食品が生命線だ。

 その中からカップラーメンを二つ取り出すと、電気ポットの水を確認する。残量が少ないことに軽く舌打ちをすると、クーラーボックスから2Lのペットボトルを取り出す。冷蔵庫は消費電力が大きいので、小型のものが一つあるだけだ。その中は要冷蔵のレトルト食品が占拠しており、水を入れる隙間は無い。保冷剤で冷やしたクーラーボックスが精一杯だ。

 

 ルーミアは何かを探すように、きょろきょろと視線をさ迷わせる。次に目を閉じ、鼻で探し始める。

 そして、何かに気付いたルーミアは、悩み顔を満面の笑みに変える。その目の先には、部屋の壁紙と半ば同化したような、ひっそりとしたドアがあった。

 

「ちょっと待ってね、お湯が無かったから……。って、あれ?」

 キッチンから帰った倉敷は、ルーミアがソファーの上に居ないことに気付く。トイレの場所も教えていないので、どこに行ったのかと棒立ちで考える。

 ――死角から、気付かれたくない(・・・・・・・・)ドアの閉まる音が耳に入る。

 振り返り、何処から音がしたのかを思案すること数瞬。弾かれるようにドアに向かい、その勢いのままドアを乱暴に開けた。

 そこに見えたのは――。

 

 

 十歳位に判断される幼い少女は、金の髪に、映える赤のリボンを着けている。見ている方が幸せになるような、曇りのない純真な顔は、無邪気な心を表しているようだ。

 倉敷も、そんな少女が路地裏で一人、空腹で倒れている光景には違和感を感じた。しかし、帰る場所が無いと言われたとき、それは親の育児放棄(ネグレクト)か何かだと判断した。そうでなければ、彼の中で、そんな異常事態の説明がつかなかったからだ。

 しかし。この時、倉敷は自分のその考えが全く的外れであったことに気付く。

 彼女は親に見捨てられた、悲壮な少女では無い。

 はたまた、路頭に迷った少女でもない。

 彼が見た、少女の本性は――。

 

 扉を開いた倉敷は、その姿勢のままで固まった。

 それは単純に、目の前の光景が信じられなかったから。

 倉敷は、自分がかなりの異常者(・・・)であることは自覚している。しかし、拾ってきた少女――ルーミアと名乗った少女が、その異常者の理解を越えていた。

 

 まず、視覚情報よりも早く、聴覚が異常を捉えた。

 何か、水分を含んだ物を咀嚼する音。妙に粘っこい音の中に、糸を断ち切るような音も混じっている。

 何処か可愛らしさの残る鼻息の音と、体に不快に響く咀嚼音。時折水を啜るような響きも混じり、不協和音を奏でている。

 暗闇に目が慣れてくると、聴覚に連動する視覚の情報も加わる。

 暗闇の中、僅かな光に輝く金髪は、その半分程度を赤く染め、揺れ動いている。闇に溶け込む黒い洋服は、前に置かれているであろう台に乗り出している。

 両手は、何か――倉敷でさえ、暗闇を理由に認識から逃げたような――を掴んでおり、頭と連動してそれを引き寄せている。

 手が動く度、耳障りな擦れる音が鳴る。それは固いものを砕くような音にかき消される。

 

 倉敷は、動けなかった。無論身体が欠損したとか、そういう物理的な意味ではない。

 目の前の光景に、――表現は悪いが――見入ってしまった。

 吐き気を催すとか、不快感を覚えるとか、そういった過程は全て飛ばして、理解をしないことで辛うじて理性を保っている。

 声を出してはいけない。

 見つかったら、同じようにされる。

 そんな思考が、頭のなかを駆け巡る。出来るのなら、今すぐここから逃げ出したかった。ある意味では同類である彼女も、理解の域が少し違うと、とてつもない恐怖の対象となりうる。

 そして、倉敷が起こした行動は、とても理性的だった。

 入ってきたときと同じように、しかしその時とは段違いに慎重に、部屋の外に出る。

 ゆっくりと扉を閉める。二つの部屋が隔絶された瞬間、倉敷の中には言い様の無い安心感が湧き出た。緊張が解けた倉敷は、力無くソファーに横になった。

 そして、この屋敷の防音性に心から感謝した。

 

 実を言えば、倉敷の行動は十分に可笑しい。

 普通の、一般的な人間ならば、倉敷が見たものと同じ光景を目にしたとき、二つの行動を選択する。

 一つは、誰にでも予想はつく、失神だ。事象を受け入れず、意識を絶つ事で逃れる、言わば現実逃避。

 もう一つは、現実を受け入れた上で、発狂する。

 とある人々には身近かもしれない、所謂“正気を失う”事だ。

 超常の出来事に出会したとき、理解を越えた事実を受け止める方法だ。尤も、精神は耐えきれていないが。

 そのなかで倉敷は、“現実から逃避”しつつ、“行動を理屈抜きで理解する”――つまり、行動だけを理解しながら、その行動が示す意味を理解せずに、あくまでも平静を保ちながら行動した。

 これは、倉敷が元々異常な人間で、人間が本能的に嫌う事象に対する耐性――分かりやすく言うならば、“グロテスクな”事の耐性が飛び抜けていたからこそ出来たのだ。

 

 それから、どれくらいの時間が経っただろうか。

 倉敷がソファーの上で目を覚ます。本人ですら気付かない内に眠ってしまったらしい。

 暫くぼんやりと天井を眺めていると、つんとした鼻につく臭いに気が付いた。

 それは、ある意味で嗅ぎ慣れた臭いで、倉敷にある種の安心感を生じさせるものだった。

 その原因を見つけるために、寝たまま頭を横に倒すと、そこに臭いの原因が横たわっていた。

 倉敷が転がっているソファーの横、飾り気の無いフローリングの上に、もはや見慣れた金髪と黒服の少女がいた。

 しかし、その短く切り揃えられた金髪は、今は赤く染まっている。赤のペンキを頭から浴びたかのように、髪と服を赤く濡らし、それでいて少女は

 幸せそうな顔で寝ている。

 ――倉敷が始めに考えたのは、“このまま寝られると床が汚れる”ということだ。

 倉敷としても、少女が汚れたまま寝ている光景を観察するのは気が引けた。とはいえ、一応は異性。まさか勝手に服を脱がして風呂に入れる訳にもいかない。

「おーい、起きてー」

 軽く肩を揺さぶりながら、ルーミアを起こそうと声をかける。

 しかし、少し寝苦しそうに身動ぎをすると、ルーミアは再び眠りに引き込まれていった。

「起きろー」

 次に、軽く顔をビンタしてみる。

 ぺちぺちと可愛らしい音を立てるが、ルーミアが起きる気配は無い。

「……」

 何をしても起きなさそうな少女を前に、倉敷はとりあえず起こすことを諦め、風呂を沸かしに入った。

 ガスが通っていないこの家の給湯システムは、電気だ。浴槽に水を張り、それをIHヒーターの要領で暖める。もちろん、シャワーという文明の利器は存在しない。

 スイッチを入れ、暖める間に、食べることを忘れていた自分の食事を済ませようとキッチンに足を運ぶ。

 幸い、カップ麺にはまだお湯が注がれていなかったので、ポットからお湯を入れる。後は三分待てば完成だ。

 タイマーをセットした後に、リビングに帰る。

 灯りがついた部屋の中で、金髪の少女がソファーに座っていた。どうやら起きたようだ。

 しかし、頭が時折船を漕いでおり、今にも寝落ちしそうな状態だ。

「おはよう、ルーミア。……起きた?」

 話しかけてもあまり反応がない少女に、少し疑念を持ちながら話しかける。

「……、まだぁー……」

 うっすらと開いた目を僅かに動かし、倉敷を視界に収めると、か細い声でそう答えた。

「眠いところ悪いんだけど、お風呂入ってくれない?」

 ゆっくりと、寝起きの頭にも分かるように、倉敷はルーミアに語りかける。

 時折、頷いているのか自然なのか、こくりと頭を動かしながら、ルーミアは反応を示した。

「……おふろ?はいる……」

 ルーミアはふらりと立ち上がると、覚束ない足取りで何処かに歩き出した。

「……あ、そこ壁」

 だから危ない。忠告が出切る前に、既にルーミアは壁に衝突していた。

 ごすん、と重めの音と共に、歩くときに前に出していた頭を見事にぶつけ、ルーミアはそのまま後ろに倒れる。

 そのままだと、結構な速度で後頭部を打ち付ける。そう察した倉敷は、倒れるルーミアをキャッチ。

「むー……。あれ、どーしたの?」

 唸ったかと思えば、しっかりとした目でこちらを見つめてくるルーミア。先程まで眠りそうだった少女とは大違いだ。

「どうしたもなにも、危ないよ。大丈夫?」

 倉敷はその変わりように少しだけ困惑しながら、無事なことを確認する。

 おでこが少し赤くなっている位で、他に怪我をしているところは無さそうだ。

「だいじょーぶ。ちょっと痛かっただけだから」

 そう言うルーミアは、会ったときと同じような、どこか抜けたような話し方で、寝惚けていたときの、幼児のような雰囲気は無い。

「そう、ならよかった。お風呂、入っておいで」

 風呂の場所を教えると、ルーミアは両手を広げた、独特の走り方で風呂場に向かっていった。

「……さて」

 ルーミアが風呂場に消えたことを確認すると、倉敷は床を見た。

 そこは、赤い塗料を塗りたくったようになっており、独特の異臭を放っていた。

 仕方ない、と軽くため息を吐くと、倉敷は濡れ雑巾を作るために水道に向かった。

 

 粗方拭き終わると、倉敷は大切なことに気付いた。

 ルーミアを風呂に入れたのはいい。しかし、どちらかといえば彼女本体より、着ていた服の方が汚れが深刻だ。

「……どうしようか」

 彼女は身一つでここに来た。つまり、替えの洋服など持っている筈がない。

 ――数秒考えて、倉敷は自分の姿を見下げた。

 身長は同じくらい。見た目だが、スタイルも大して変わらない。ルーミアはまだ幼く、女性的な部分がまだ殆ど発達していないので、男の倉敷とそこまで違わない。

 ――多分大丈夫だ。

 倉敷は、脱衣場に入る。ルーミアはまだ風呂に入っているようで、ばしゃばしゃと水で遊んでいるような音が聞こえる。

 件の洋服は、雑に洗濯かごの中に放られていた。

「……ルーミア、ちょっといい?」

 風呂場に続く扉に向かって声をかける。中での水音が止まり、暢気な声が聞こえてくる。

「どーしたの?」

「洋服、汚れちゃってるから、洗濯しとくね。着替えは出しておくから、そっちに着替えて」

 わかったー、という返事をしたあと、また水遊びの音が再開される。

 倉敷は、自分が幼女嗜好(ロリコン)では無いことに心からの感謝をしながら、予備の浴衣を用意した。

 

「――あ、カップ麺……」

 倉敷がその事に気付くのは、ルーミアの洋服をコインランドリーで洗濯している途中であった。

 

 

 翌日。

 技術の進歩は素晴らしく、乾燥機と言う名の装置により、洗濯した服が即座に乾く時代だ。

 ルーミアは、綺麗に洗濯された、元の黒い服を着ている。

 その隣で倉敷は、これまた便利な携帯電話を操作している。

「……さて、今日は学校が休みなんだけど……、何かする事あったっけ」

 誰に聞くでもなく、倉敷は独り言を呟く。

 彼の中で、現在の最重要課題とされているのは、ルーミアの保護者の捜索だ。

 昨日の夜、ルーミアに住所を尋ねたところ、

「幻想郷」

 という良くわからない回答が帰ってきた。

 倉敷は“幻想郷”という住所は知らず、これまでに聞いたこともない。

 そこで、倉敷家の中で最も情報が得られるであろう機器――携帯電話に頼った。

 検索窓に、“幻想郷”と記述。

 検索結果は、相当量。その中で目を引くのは、とあるワード。

 “東方project”。

「……ゲーム?」

 思わず口に出た。拾った少女は、自称ゲーム世界の出身者らしい。

 ちらりと、隣を見る。ルーミアは、テレビの中で行われている冒険活劇を眺めている。

 携帯に目線を戻す。

「……まさかな」

 検索窓に記述。“東方project ルーミア”。

 検索結果。

 “東方projectの登場人物――ルーミア”。

「……」

 倉敷は、目を疑った。

 ちらりと、隣を見る。

 テレビの中では、主人公が暑苦しい台詞を吐き捨てながら、必殺技を放とうとしている。

 目線を携帯に戻す。

 ――画像検索。

 目につく画像を、幾つかピックアップ。

 様々に絵のタッチは違う。共通しているのは、金髪に黒い服、赤いリボン。そこまで賢そうではない顔――。

 隣を見る。

 テレビに貼り付くように見入っている少女。

 金髪に、目立つ赤いリボン。黒を基調とした服に身を包み、子供向け番組に夢中だ。

 確か彼女は、ルーミアと名乗っていた――。

「……え?」

 ある意味で前日の出来事よりも、倉敷は困惑した。

 

 ルーミアがDVDを積み上げている間、倉敷は調べられるだけの情報を集めた。

 ――ルーミア。通称、“宵闇の妖怪”。

 ――PC向けゲーム、“東方紅魔郷”の一面ボス。

 ――“闇を操る程度の能力”を持っている。周囲に暗闇を発生させる事が出来るが、ルーミア自身も周りが見えなくなるらしい。

 ――幻想郷では、目的意識もなくふらふらと一日中空を飛んで過ごしているらしい。

 ――人食い妖怪らしい。

 ――頭のリボンは、凄い力を封印しているらしい。

 調べられたのは、これくらいだ。

 やはりゲームキャラと言うべきか、常識外れの特徴ばかりだ。この情報を鵜呑みにするのならば、彼女は光を遮断する空間を作り出すことができて、空を飛べて、人を食べて、不思議な力で攻撃ができて、尚且つ力を封印している。

 ――人ではない事は確かだ。いや、妖怪らしいが。

「……」

 倉敷はルーミアを眺める。もうそろそろDVDも終わりに近づいている。

 こうして見ていると、倉敷にはルーミアが妖怪には見えない。彼にとっての妖怪とは、もっと悍ましい、人が本能から恐れるような、そういう生き物(?)だ。

 目の前にいるのは、何を考えているのか分からない、大食いで、無邪気で、食人嗜好(カニバリズム)の少女だ。倉敷にとって、何も問題ではない。昨日はただ、事前申告無しに突然食人行為を見せられて、少し驚いただけだ。

 人にはそれぞれ個性がある。それが幼女嗜好(ロリコン)だろうが食人嗜好(カニバリズム)だろうが殺人嗜好(シリアルキラー)だろうが、倉敷にとっては大差は無い。個性は個性。尊重すべき物だ。

 

「――ん、どーしたの?」

 テレビから離れたルーミアは、先程から此方を見てくる倉敷に、至極真っ当な疑問をぶつけた。

「……ねえ、ちょっと質問、いい?」

「なーに?」

 ルーミアの了承が取れると、倉敷はこう切り出した。

「……ルーミアってさ、飛べる(・・・)?」

 一般人ならば、確実に馬鹿にしているとしか感じない質問。しかし、目の前にいるのは一般人でも、人でもない。

「飛べるけど……それがどうかしたの?」

 言いつつ、ごく自然な動作で立ち上がったルーミア。しかし、倉敷よりも頭が高い。

 不思議に思って足元を見る。――浮いていた。種も仕掛けもない。確かにルーミアは飛んでいた。

「――いや、別に、確認したかっただけ。ごめんね」

「いーよ別に。それよりさ……」

 地に足をつけ、倉敷より少しだけ低い身長になったルーミアは、笑顔で質問をした。

「昨日の死体(ごはん)、どうやって取ってきたの?見つけたときは、もうバラバラだったけど」

 ――まるで世間話でもするような、そんな気軽さで、ルーミアは死体に言及した。

「ああ、あれは――。確か三日前、路地裏を一人で歩いてたんだよ。解体(バラ)したのは一昨日」

 対する倉敷も、自然な応対。

 当たり障りの無いコミュニケーションのように、彼らは死体を話の種にする。

「へー。すごくキレイにバラバラになってたよ。もしかして慣れてるの?」

「まあ、ね。これでもそれなりに経験はあるから。もう何人くらいになるかなぁ……」

 すごーい、と目を輝かせるルーミアの顔は、純粋な子供だ。話の内容を気にしないのならば。

 

 夜。特に何かが起こるわけでもなく、平穏な内に太陽は沈んだ。

 ルーミアが光を遮る闇を作り出せる事を見せてもらった位だ。どんな原理かは知らないが、完全に光が失われる空間というものは、本能的に恐怖を感じるものだ。確かにその部分だけ考えれば、彼女は妖怪なのだろう。

 

 翌日。いい加減自分一人分の食糧では二人を養うことが限界になってきた。不幸中の幸い、と言うべきか、ルーミアは倉敷の趣味(・・)で食べていけるが、倉敷はそうもいかない。生産者が必ずしも被生産物を好きだとは限らない、ということだ。

 スーパーマーケットで常温保存可能なレトルト食品を買い込みながら、倉敷は携帯電話を弄くる。調査対象は、巷で噂のお城である。

 

 町中のモニターから聞こえてくることによると、なんでも数日前、倉敷が住み着いている付近に巨大な建造物が“現れた”らしい。ちょっと何を言っているか分からないが、事実は事実だそうだ。

 全体的に紅い色調の、正しく西洋の“城”。一夜城どころの騒ぎではないと、ニュース番組は騒ぎ立てている。

 倉敷は家にいる限り、外界の情報を得る機会が極端に少ない。それこそルーミアが住み着いた時のように、何かしらの異文化が入り込んだ時位だ。

 

 調べれば調べるほど、その“城”に関する話は不思議な成分を増していく。お決まりの陰謀論だとか、政府の自作自演だとか、地球外生命体のコンタクトだとか。

 しかしそんな錯綜する情報の中で、倉敷は一つ、彼にとって(・・・・・)恐らく最も真実に近いであろう言葉を見つけた。

 

 ――これ、紅魔館じゃね?

 

 人によっては便所の落書きとも表現される、某掲示板に書き込まれた与太話。勿論相手にする者は少数だったが、既に与太話よりも奇妙な体験をしている倉敷にとって、それは真実味を帯びていた。

 紅魔館。

 東方projectに登場する、吸血鬼の住まう城――だそうだ。インターネット曰く。

 同じ世界から来たと宣う人外(ルーミア)なら、何か知っているはずだ。

 昼を過ぎても起きない少女に食糧を届けるため、万をゆうに越える支払いを済ませた倉敷は、周りの視線を無視して帰路についた。

 

「ただいまー」

 今までは誰もいなかった家に、帰宅の挨拶をする。なんとも奇妙な感覚だが、きちんと返事が帰ってくるならば悪くない。

「……」

 悪かった。

 もう昼の二時を回っているというのに、件の少女は幸せそうな顔で寝ていた。ただ一つのソファーの上で、だらしなく涎を垂らしながら。

「……はぁ」

 その無警戒な顔を眺めていると、何となく、いつもは押さえている感情がぞわぞわと沸き上がってくる。

 倉敷は、彼女に興味があった。勿論女性としてではない。強いて言うなら、一個の生命体として、だ。

 空を飛び、闇を作り出す彼女は、何者なのか。流れる血は赤色なのか、そもそも血液という概念があるのか。見た目は少女的だが、本当にそうなのか。キチンと経験してきた通りに骨格が存在し、筋肉が形成され、彼女が確立しているのか。臓器はどういう配置になっているのか。瞳に見えるその水晶体じみた物体は本当に目なのか。

 すべての真実は闇の中。闇を晴らすために、体の中に光を当ててみようか。

 そんなことをたっぷり五分程度。頭の中で思考する。しかし倉敷は首を振る。まだ(・・)駄目だ。聞くべきことは多い。それに、自分好みの身体ではない。

 話を聞いて、全てが分かった後、彼女が本当に必要なくなった時。その時は、その時だ。

 

 倉敷は意識の底で、鋭い殺意と凶刃が暴れだす前に、ルーミアをはたいた。

「起きて寝坊助、もう二時だよ」

 若干強かったのか、そこそこにいい音が鳴った。ルーミアは面倒そうに身体を起こす。どう見てもまだ眠り足りない。

 そんな相変わらずな彼女に、質問を投げ掛けてみる。

「ねぇルーミア、紅魔館って、知ってる?」

「こーまかん?……うん、知ってるよ」

 的中(ビンゴ)

「ねぇ、もしかして、こんな建物?」

 

 夜。

 すっかり日も落ち、暗闇が世界を包む頃。

 なぜだかやたら元気なルーミアと倉敷は、ぃま世間を騒がせている城に向かっていた。

 ちょうど、倉敷の棲家からは歩いてもそう遠くない。どうしていままで気付かなかったのか、不思議なくらいだ。

 よくよく見れば、晴れていれば倉敷の棲家からでも十分に見ることが出来る。

「ふんふん~♪」

 時おりくるくると回りながら、鼻唄まで歌ってご機嫌なルーミア。これまで昼も夜も寝てばかりだったルーミアが、城に近づくにつれて元気になっていることに、倉敷は気付いていた。

 食っちゃ寝を繰り返し、完全な穀潰しと化していた彼女とはまるで別人だ。

 ルーミア曰く、あの城は間違いなく紅魔館らしい。とすると、まさかとは思うが吸血鬼や魔法使いが出てくる可能性がある、ということだ。目の前でルーミアという超自然的な存在がいるので、そういう可能性も否定できない。

 倉敷はあくまでも只の人間だ。ルーミアはともかくとして、生き残れるとは思わない。

 そんな、漠然とした死への道程を考えながら、倉敷は歩を進めた。

「……ん?」

 なんとなしに開いた携帯電話。インターネットと繋がったそれは、新たな情報を倉敷に与えた。

 “日本庭園風の新たな建物が出現”

 それは確かに倉敷の好奇心を刺激した。城に続く、新たな建造物だ。興味を惹かれないわけは無い。しかし、今の彼には、得体の知れない日本庭園よりも、薄くではあるが正体を掴みかけている西洋の城に、心を奪われていた。歩けば着くのだ。聞いた事のない住所に行くには、少々骨が折れる。

 それに、どうせこの城を見終われば、次にその場所に行けばいいだけの話だ。今はどうでもいい。

 何も見なかったことにして携帯を閉じ、顔を上げた。気付けば、城の前に着いていた。

 

 錆びた……というか、倉敷邸とどっこいどっこいな迄に朽ち果てた門をくぐり、庭を抜けた。目の前には、圧巻な大きさの扉が佇んでいた。

 ルーミアは今は大人しく、倉敷の後に続いている。何となくそれが不思議に感じられたが、倉敷は気にせず、扉を開いた。

 朽ちた扉に鍵などあるはずもなく、大きさの割には簡単に開いた。途端、内部からは強烈な腐臭(・・)が、二人を襲った。

 しかし、そんな臭いなど最早慣れきっている二人は、常人なら吐き気を催す臭いの中を、平然とした顔で歩く。

 そうして探索すること数十分。彼等なりに表現するならば、その城には目ぼしいものは何もなかった。あったのは精々、中世を想像させるような、異様な串刺し処刑の後位であった。

「……まあ、そうだよな」

 そううまく、不思議なものに出くわせる訳ではない。

 気落ちした倉敷は、外に出ようと扉に向けて歩き出した。

 

 ――戻って来い。

 

 そんな声が、聞こえた気がした。

「……何? 今の……」

 倉敷は周囲を見回す。が、特に変わっていない。荒廃した内装はそのままだ。

 ――気のせいかな?

 

 倉敷が外に出ると、既に外は明るくなっていた。

 薄く朝霧がかかり、綺麗に手入れされた庭園には、名前も知らない花が咲き誇っていた。

 銀に輝く荘厳な門をくぐると、一層濃い霧がかった湖が、爽やかな朝を伝えていた。

 ――なんなの、これは。

 倉敷はその常識を逸した光景に、思わず息を飲んだ。

 おかしい。

 いままでこの建物は、田舎ではあるがそれなりに都会にあったはずだ。

 おかしい。

 さっきまで城は、放棄されて朽ち果てていた筈だ。

 おかしい――。

 振り返ろうとした倉敷の肩を、誰かがたたいた。

 背後から感じる不思議な威圧感に、動くこともままならず、圧倒的な恐怖が身を包んだ。

「……ねぇ、あなたは食べてもいい人間?」

 もはや聞きなれた、ルーミアの声だった。

 

「……ここは、どこ?」

「ここは、幻想郷。わたしたちの住む場所」

「わたしたち?僕のことを言ってるの?」

「いいえ。わたしたち――妖怪の住むべき場所、ってこと」

「そうなんだ……じゃあ、ここは――」

 僕にとっての、理想郷かもね。

「いいえ、ここは、あなたがいてはいけない場所よ」

「どうして?」

「だってあんたは――もう、人でも妖怪でもないもの」

「あんたは人の恐れを、悲鳴を、悲しみを浴びすぎた。妖怪なんて生易しいものじゃないのよ」

「だから、今からわたしが食べるの。もうお許しはもらってる」

 振り返れば、そこにルーミアがいた。

 倉敷よりも背が高い。黒い服に金色の髪。トレードマークだった赤いリボンは、いつの間にか地面に落ちていた。

「悔い改めよ――なんて、馬鹿なことは言わない。黙って食われなさい、外道」

 目の前が暗転する。

彼の意識は、そこで終わった。

 




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