「これ、……どういうことよ」
リズベットとリーファは闇医者と呼ばれていた男との取引で示された場所に行くと、そこには多くの子供たちが苦しんでいた。
のたうち回る子供や、もはや死んだように動けなくなっている子供まで居た。
「リズさん、早く連れて行かないと。この子供なんて意識が!!」
そのリーファの言葉に反応したのか周囲の子供の中の一人がのたうち回る。
「っ、名和ぁ、ちょっとこれ悪趣味すぎるわよ」
ゲームの演出と言うことを理解はしているが、それとこの状況から何を感じるのかは話が変わる。
リズベットとリーファは協力しながら三人の子供を車に乗せた。
「リズさん、そっちじゃない!!道間違えてます、さっきのところ左です」
「ああもう、こんなところ作り込むなよ!!パトカーが通るんだから道空けなさいよ」
リズは車を無理矢理にUターンさせるとリーファの悲鳴が上がるが、リズは少し無理矢理な運転に気持ちがよくなってきたのかその悲鳴を完全に無視して運転を続けた。
「リズさーん!!」
周りの子供たちも気持ち悲鳴を上げているように見えた。
キリトとクラインはほかのメンバーと違い拠点に残り膨大な量の資料を確認していた。
「この辺は名和のこだわりだろうな、これとか偽物だろうけど多分ジャックザリッパーの捜査資料だぞ」
クラインのあきれるような声がバカみたいに広い倉庫に響く。
「この辺はよくわかんないな、JOKERって書いてあるけど白紙の部分が多くてよくわからない」
「かさ増しのためじゃねぇの、それよりディックの捜査資料。…これか?これだなナンバー5。一体いくつあるんだ」
クラインが手に取ったファイル、それが彼らのお目当ての代物。このゲームの隠しアイテム
『ディックの捜査資料』
現在行方不明になってしまっている捜査官ディックグレイソンが捜査官時代に肌身離さず持っていたとされる捜査資料だ。本来はいくつもの捜査手帳だった、しかし何者かにより様々なファイルにされ倉庫の中に隠されていた。それは誰の手によって行われたのだろうか……
「何が書いてあった?」
キリトの問いに対してクラインからの答えはなかった。
「おい、何が書いてあったんだよ」
そんなクラインにしびれを切らしたキリトは無理矢理にクラインからファイルを奪い取りその中に目を通す。
「こ、これは……」
完全に言葉を無くしたキリトにクラインが話しかけた。
「これがディック・グレイソンが行方不明になってる理由だろ。」
そこに書かれていたモノが表に出ればそれだけでこの町はひっくり返る、そういう代物だった。
アスナとシノンが地下道の捜査をしているとついに道を見つけた。ただし地上にではなく地下に向かって伸びていた。
「アスナ、これって何だと思う?」
「地下道だよね」
「違うと思うわよ。多分だけど、ここをこのまま行くと地下鉄の線路に出ると思うわよ。これGGOの廃駅のグラ使い回してるモノ……らしくない手抜きね」
「割とやっつけ仕事するタイプだと思うけど……」
「……確かに」
階段を前に立ち尽くす二人の間に沈黙が流れる。
「とりあえず行ってみようか、そこできっと何かがわかるんじゃない」
「やっつけでやってるんだからなにも内規もするけど……」
アスナの恐ろしい予想をシノンは無言で却下する。なお、この予想が当たっていたことは言うまでも無い。どうやらアスナのほうが名和をよく理解していたようだ。
「ようやくお出ましか、遅かったじゃないか。ラーズアルグール」
「ああ、悪かったねスケアクロウ。今は闇医者を名乗ってるんだたかな?」
牢屋の中にとらわれている闇医者、またの名をスケアクロウ。その目の前に突然一人の男が現れていた。与えられる印象は極めて凡庸、そして希薄。まるでそこに存在して居ないんじゃないかと思うほどに
「どちらでもかまわん、どちらも俺を指し示す言葉だ」
「ならスケアクロウ、こちら側に戻ってくるつもりはないかな。君のような優秀な人間は必要なんだよ」
まるで貼り付けたような笑顔を見せたその男の手を払いのけ、闇医者は彼を鼻で笑った。
「ふっ、貴様は相変わらずだな。そのゆがんだ復讐に向けられた信念には魅力を感じない」
闇医者、スケアクロウ、死神、この二十年ほどの間呼び方はコロコロと変わり、いつしか犯罪者に成り果てていた。しかし、原点は変わらない。そこだけは見失わない。
「俺は医者だ。苦しむ人々を救う、一時とは言えお前と行動を共にしたのは我が人生の恥だよ」
あの日救えなかった命があった。目の前で救えたはずの子供が死んでいった。あのときの無力感と子供の声、それが原点。
「さすがだね先生、立派な考えだ。だが、その目的の達成のための被害を許容できないのがあなたの弱さだよ」
闇医者の口から血が流れる。
「あなたが作った薬だ、あなたはもう死ぬ。解毒薬はここだ、ただもうないがね」
ラーズアルグールト呼ばれていた男は手元にあった瓶をたたき割る。
「残念だ、あなたとは理解し合えると思っていた」
自らの死を悟りながらも闇医者は笑っていた。
「そうかい、ならせいぜい頑張りな。お前の復讐に興味は無いが、お前が目指す世界を否定はしないさ」
背を向け去って行くラーズアルグールを見送り闇医者は死んだ。まるで眠ったように、そしてその胸ポケットにはラーズアルグールがたたき割った瓶と同じものとリズベットたちに向けたメモが残されていた。
一気に進んでいくストーリー、彼らの攻略が進んでいく。彼らの選択一つ一つがNPCの運命を決める。彼らは多くのNPCの命を救っていたが闇医者は残念ながら死んでしまった。しかし、彼が残していったモノは多くの人間の命を救うだろう。
シノンとアスナは地下への階段を降りていくとそこはこの街の暗部をごっちゃにしたような空間だった。
「犯罪のにおいしかしないわね」
大量のゴミやヘドロなどが流れ着いていてひどい匂いがしているが周辺を見渡すと、確実に人の手が入っている部分がある。おそらく通路として使われて居るであろう場所、しかもそれだけでなく通路の脇には白骨が転がっていた。
アスナはそれを見ながら眉をひそめる。
「少なくとも死体がここで処理されてるんだね」
「どうやらこの街の地下ではそういう通路が碁盤の目状に張り巡らされてるみたいね」
シノンはここまで見たことで形状を正確に把握していた。そして上は下水道を通じて地上までつながっているのだろう。
「この街の犯罪が減らないのはこの空間があるからって言うのもあるかもね、こんなところに逃げ込まれたら捕まえられないよ」
そう言っていればリーファたちから連絡が入っていた。
「あれ連絡が入ってる。キリト君たちが呼んでるね、とりあえず戻ろうか」
彼らはその空間を後にした。
闇医者の死体を最初に確認したのは警察署の中にとどまっていたクラインだった。
すぐさまキリトやリズベット、リーファがやってきて互いの情報を共有した。
闇医者が彼らに残した小さな小瓶、一体何かわからないが彼が借りを返したという言葉を残したということはそれなりの代物なのだろう。だがこれが何かわからない今下手にこれを使うことはできない。
それよりも今はやることがあった。闇医者の死体を発見したことにより騒いでいる間にクラインのデスクに置かれていた茶色の封筒。その中にあったのはディックの捜査資料を裏付ける証拠の数々。これがあれば密輸犯を殺した署長を捕まえることができる。今こそゴードンの協力を取り付けるとき。そう思っていたところでシノンとアスナが合流し、またここで情報を共有した。
「その闇医者って言うやつは何者なのよ」
話を聞いたシノンの第一声がこれだった。何者なのか、その答えを持っている人間はこの中には居なかった。
「多分俺らができてなかったイベントで明かされる内容だったんだろ」
キリトの言葉にシノンは明らかないらだちを示す。捜査を進めれば進めるほどに時間は無くなっていき、謎ばかりが増えていく。
「とんでもないやりこみ要素ね、これ発売されたら買おうかしら」
ゲーマーの性が積み上げられていく謎を前に燃えてしまっていた。
「本人に聞かせてやれよ今の言葉、喜ぶぞ」
「いやよ、調子に乗るモノ」
その言葉に一同はひとしきり笑った。
「さて、じゃああの人のところに行こうか」
その言葉に全員の顔つきが変わる。
「これでゴードンさんの協力が得られなかったらどうしよう」
「大丈夫だろ、もし無理ならソン時はソン時だ」
彼らの手にある絶対的な証拠を見たゴードンはディックの名前を見て驚きの表情を浮かべ、そして一度大きくうなずいた。
「まさか本当にこれを見つけてくるとは……お前たちをなめていたよ」
その言葉とともにゴードンは右手を出してきた。
「協力させてもらおう、改めて自己紹介させてくれ。私の名前はジェームズ・ゴードンこのゴッサムシティで警察官をさせてもらっている」
ゴードンは固く握手をするとそのまま署長の下に向かいその手に手錠をかけた。
抵抗しようとした連中も居たがすぐに取り押さえられた。
警察署を制圧した頃ゴードンの元にバットマンから連絡が入った。
「キリト、どうやら敵は新型兵器を盗んだらしい。その兵器は水分を蒸発させることで水蒸気爆発をさせる代物で爆薬がなくとも爆発を起こせるという代物らしい。そして署長とつながっていた組織はラーズ・アル・グールというらしく、闇医者たちを殺した読破彼らが持ち込んだモノらしい」
その言葉にアスナとシノンが顔を見合わせる。
「水があれば爆発を起こせる……あのスペースで爆発が起こると街は崩落するよね」
「確かに、それを防がないといけないんだ。キリト、今すぐ地下に行きましょう。犯人を捕まえないと」
「わかったすぐに行こう。そういうわけでゴードンさん、俺たちは地下に行きます」
「わかった。バットマンにも伝えておく」
彼らは間違った情報と間違った推測を元に足を進めたが、結果としてその選択は正解だった。
「まさかここにたどり着かれるとは思いませんでしたよ」
ようやく地下にたどり着いたとき、まるで陰から出てきたように凡庸な男が現れた。
「しかし、あまり好き勝手されても困るんですよ」
指をはじく音が反響すると周辺から大勢の男たちが現れた。
「……ボス戦って感じの雰囲気だな」
全員が緊張感を張り詰めて各々の装備に手をかけたとき、マントが風を切る音とともに二人の人影が降ってきた。
「ロビン、周りの連中は頼んだ」
「了解です」
まるで闇を切り取ったかのような姿のバットマンはまるで闇に溶け込みながら進むかのように、奥に居た凡庸な男、ラーズアルグールに襲いかかった。
その瞬間、戦いの火蓋が落とされた。
突然のことに一瞬固まってしまっていたキリトたちに多くの男たちが襲いかかる。
そんな彼らから守るように緑のマントが翻った。
「協力してください。バットマンがあいつを倒すまで、時間を稼いでください」
多くの人間が入り乱れての戦闘が繰り広げられた。
キリトやリーファ、クラインの警棒が振るわれる。ひとたび振るわれるたびに敵が吹き飛ぶがそれだけでは倒しきれない。
そんな相手にアスナの追撃が打ち込まれて確実に敵の数を減らしていく。
中には手強そうな相手も居たがそんな相手にはすぐさまシノンからテイザーガンがお見舞いされた。万全の姿勢で迎撃を続ける彼らにロビンの範囲攻撃という援護もあって全く危なげなく進んでいた。
先に状況が動いたのはキリトたちではなくバットマンの方だった。
バットマンの攻撃を巧みに裁いていたラーズアルグールだったが、バットマンが工夫を見せた。マントを使い、動きを悟らせぬようにけりを放つ、しかしそれでも姿勢を崩しながらもラーズアルグールは躱した。
そこで不用意に姿勢を崩したことをバットマンは逃がさない。
けりを放ったことでできた体の流れを止めずにその回転のままに肘鉄を見舞う。
もろに入り鮮血が舞い、ラーズアルグールの体が飛びバットマンとの間に距離が生まれる。
「いやはや、さすがにやるモノだな。だが全員がこうして一カ所に集まったのは握手だったと思うね」
ラーズアルグールは服の中から素早く取り出したガスマスクを取り付けた。
その姿を見てバットマンは距離を詰める。その姿を見てガスマスクに隠れているがまるであざ笑っているかのような雰囲気が漂う。
ラーズアルグールはバットマンのパンチをその身にあえて受ける。そしてそのすきに毒薬を周辺の水の中に瓶をたたきつけられる。
驚きの表情を浮かべるバットマンの腕をつかみあざ笑うようにこう言った。
「その様子だと知らないようだな。あの兵器はまだ試作品だ。水蒸気爆発は起こらない、ただ蒸発させる」
彼の背後で兵器が起動する。すさまじい音ともに毒物が混ざった水が蒸発しバットマンを飲み込んだ。
「バットマンさん!!」
その光景を目の当たりにしたリーファが声を上げる。
水蒸気が晴れたときバットマンは倒れ込んでいた。その姿をラーズアルグールは見下ろしていた。
「せいぜいそこでうずくまっていろ」
ゆっくりとキリトたちの方に歩いてくる男を前にリズベットはこの状況を打破する手段が浮かんでいた。それは闇医者が残した謎の解毒薬、使うとしたらここしかない。
「少しで良いから時間を稼いで、あの解毒薬を使うわ」
伝えたいことを伝えて、仲間の援護を信じて動く。
バットマンの元に走るリズベットをラーズアルグールが攻撃しようとするが、それをシノンが許さない。テイザーガンをかわすためにできた空間にアスナとキリトが割り込んで時間を稼ぐ。
確実に攻撃を加えているがラーズアルグールは全くHPが減っている様子がない。
「これはバットマンの攻撃でしかダメージが発生しないのか」
キリトの悔しそうな声が反響するが、あの解毒剤を手に入れられている時点で勝敗はついていた。
「すまない、だがもう問題ない」
バットマンはすぐに復活を果たし、周囲の部下たちもすでにクラインとリーファに倒されていた。彼らは初めての挑戦で何とかグッドエンドをたぐり寄せた。
ゲームクリア、コングラチュレーション
「ゴッサムシティ・ビギンズ」
攻略 go to next stage
バットマンはひとまず完結です。また一段落したら投降したいと思います。次はキャプテンアメリカを書こうかなと思います楽しみにしておいてください。
続きの内容
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キャプテンアメリカ
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sao第一層