空の境界 『TheLost・of・Newworld』 作:レイノート
とまあ、茶番はさておき、痛覚残留編に入っていきます。
みんな!!マルタ(裁)は持ったな!!行くぞ!!(小説の方をお楽しみください!!)
1998年7月。深夜の路地裏に怒号と絶叫と悲鳴が響く。
コンクリート造りのビルとビルに阻まれた、細長い直線的な場所だった。おそらくは両サイドに建っているのはマンションだろう。そこで十人ぐらいの少年らが、一人の少年を囲んでいる。
十人の少年達の手には金属バットや鉄パイプ、更にはバールなどが握られている。人を傷つけるには申し分ない武器だが、それらには汚れや使い込まれた様子はなく、買ったばかりの新品ですよと言わんばかりの印象を受ける。相手を傷つける勇気がない臆病者か、はたまた単なる脅しの道具にしか使っていないのだろうか。
数の差もあり武器もありと有利であるはず十人の少年達の目は獰猛な獣と相対しているかのように目が血走っていた。
それでも取り囲まれている一人の少年は、動じない。
寧ろ、自分を取り囲む十人が視界に入っていないかのように、何かを思案しながら虚空の夜空を見ながら歩いている。コンビニかスーパーに行った帰りなのか、ビニール袋をブラブラと揺らしながら道を往く。中身は大量に入った缶コーヒーとハーゲンダッツらしく、袋から溢れ出そうな程大量に詰め込まれていた。
彼は灰色。正義でも悪でも何でもなくただひたすらに中立。己の本能に従い行動する、言わば獣のそれに近い生き方だ。何故だか分からないがどこまでも灰色という色が似合う。それは服装から来るものなのか、それとも彼の人としての在り方のなのか。あるいはその両方かもしれない。
少年・神野芸夢は退屈していた。最近これといって楽しめると思うものがない。面倒くさがりの性質も災いしてか、自身から興味を抱けるモノを探しに行くことはほとんどなく、気分転換がてらにしか動かない。
スーパーコンピュータ以上のIQを持つ彼にとって、世の中の大抵の事は取るに足らない物事にしか思えないらしい。詰まるところ自信に出来ない事を欲している。
「(つまんねぇことばかりだなぁ…)」
つまらない。最早口癖になりつつある言葉。
事実、彼は退屈している。困難という言葉を知らないのだ。
勉学においては国家試験の問題を僅か十分足らずで解ける、スポーツにおいても基本さえ分かれば、後は勝手に応用へと結びつける。その他の分野においても結果は同じ。
あらゆる分野の才能の塊。聞こえはいいが言い換えれば、それらは怠惰に等しい。苦労や敗北もない、失敗もない。そう、挫折を知らないのだ。
毎日が苦悩の日々。新しい事に挑戦することすら無駄と思えてきた。
そんなことを考えている内に周りへと視線を向ける芸夢。
「ンぁ?」
いつの間にか芸夢の周りに横たわっている十人の少年達。あたかも今気がついたとばかりの反応を示す。
ある者は手首を抑えて蹲り、ある者は足を抱えて悶え苦しんでいた。
「(あァ…またか。)」
この光景を目にする何度目か。一体これで何回目の襲撃だろうか。最初に襲われた時もこうして買物帰りの時。カツアゲ目的なのか、単なる憂さ晴らしのターゲットにされたかは知らない。そもそものところ相手になどしてはいないが。
この様な惨状になったのは間違いなく芸夢の異能によるものだ。
『力の掌握』
文字通り力を掌握することだ。人間の身近な風力や電力、更には重量など様々な力を操る事ができる。
先程の惨状を引き起こしたのもこの力の掌握の力の一端。彼は自身を中心に半径1メートル前後の円型の力場を形成している。その力場に触れた外的要因、物体を跳ね返す性質を持っている。文字通り全てを反射をするのだ。
つまり彼らは反射の力に耐え切れず、ボキンと骨が折れたり、筋繊維がブチブチと鈍い音を立て切れていったのだ。十人の少年達の怪我は言わば自爆同然。芸夢に絡んだことが敗因だった。目先の勝利に駆られ軽はずみな行動したことがこの悲劇は起こったのた。
適当に遊ぶ金欲しさとストレスを解消したいから、適当に喧嘩を売ろう、などと言う。
数に頼れば勝てる。武器があるから勝てる。
この中で真の意味で勝てると思って挑んだ者は何人いたんだろうか。
答えは言うまでもなく零という無残な結果に終わったわけだ。何度潰しても何度蹴散らしても何度証明してもバカどもの襲撃は終わらない。うじゃうじゃと蛆虫のように湧いて出てくる奴ら。何度も挑んできては完膚なきまでに叩き潰される少年らはマゾヒストではないかと脳裏に浮ぶが、くだらないとその考えを一蹴する。
自分を取り囲む喧騒が静まったこと気づき、芸夢は再び歩き始めた。横たわった馬鹿どもと戯れる程の暇はなく、道を急いだ。
歩くこと数分。
たどり着いたのは高層の廃墟としか形容しようのないビル。工事現場などで使われる柵や赤いコーンが放置されており、人の気配を感じられないほど寂れた場所。正確に言うならば人が近づけられないような力が働いているのだが。分かる者には分かるが、明らかに他の場所と空気が違う空間と感じられるだろう。
特に気にする様子も無くビルの中へと入っていく芸夢。
慣れた足取りで階段を上がる。遮るものが何も無いので自身の足音が響きわたる。
四階のフロアに付き、廊下の奥の方へと足を進める。そして最奥の扉の前へと着く。
『伽藍の堂』。
この廃ビルにおいて唯一まともに使われている一室。人の生活している痕跡があり、とある人物が事務所として使っている場所だ。いや別段まともとも言いづらいか、と脳裏に浮べる芸夢。
ガチャっとドアノブを回し中へとはいる。
「おお、遅かったな。また襲われたのか?」
芸夢に声をかける女性。赤みがかった黒髪を纏めたショートカットが目立つ美女。十人中十人がモデルと言っても遜色のない程の容姿。
何処の銘柄かわからない煙草を吸い、こちらを見ている。
傍には灰皿からこぼれ落ちそうな吸殻の山が出来ており、彼女がヘビースモーカーである事が見て取れる。
美女と煙草。見る者が見れば、そのミスマッチさに見惚れるだろうが、芸夢はそんなことに興味はなく煙草臭いこの部屋にいたくはなかった。
「うるせェぞ
実際、芸夢も橙子の仕事を何度か請け負ったことはあるが、大抵は表沙汰に出来ない
この蒼崎橙子という女性は紛うことなき変人だろう。廃ビルを買い取り、あまつさえ事務所まで建てているのだから擁護することもできない。
「まあ、そう怒るな。大方不良共にでも絡まれたってところだろう?」
「ちっ…」
イラついている原因を見事に当てられ、思わず舌打ちをする芸夢。何処ぞの国家錬金術師なら君のようなカンのいい○○は嫌いだよと言ってそうだ。
近くにある冷蔵庫の扉を開け、冷蔵庫には大量のコーヒーを冷凍庫の中に大量のハーゲンダッツを乱雑に放り込む。手元にハーゲンダッツを二つだけ残して、もう一個を橙子の方へと放り投げる。ついでにおまけで着いてくるスプーンも一緒に。
「おっ、サンキュー。ってまたこの味か。」
パシッと、少し勢いに乗ったハーゲンダッツとスプーンを器用に取る橙子。因みに彼女が渡されたのはミント味だった。前回も同じだったので、少しガックリと溜息をつく。
「嫌なら食うンじゃねェよ。こちとら未だにてめぇに貸した金を返してもらってすらねぇンだぞ。」
「すまんすまん。ちょっと面白い掘り出し物があってだな。それに金をつぎ込んでしまってなぁ。」
芸夢は呆れてものが言えなかった。自身の趣味の為に他人に金を借りてまで買うか普通と、思わずはァと大きな溜め息をついてしまうほどに。
何でこんなヤツに金を貸してしまったんだと少しばかり後悔する。幾らお金に余裕があるとはいえ、この手の金を作れるか怪しいタイプに貸すべきではなかった。
「(クソッタレが…)」
多少のイラつきを抑えながら、奥の部屋へと歩く。
「部屋借りんぞ。」
「お?もう寝るのか?。」
奥の部屋は主に倉庫として使われている部屋だ。芸夢が勝手に改造し、寝床として使用している。勿論、ちゃんと自宅はあるが、帰り道が遠いときや帰るのが面倒臭い時には、ここを第二の自宅として扱っている。橙子も金を借りているということもあり、それらを了承している。
そのまま部屋に備え付けてあるソファーへと寝転ぶ。そして買ってきたハーゲンダッツの蓋を開ける。
味はチョコ。別段芸夢の好きな味という訳では無いが、何故か毎回この味を買ってきしまう。あの
スプーンでアイスをすくい上げ、口の中へと放る。
美味しい。チョコレートの甘みとアイスの冷たさが交わり、旨味の二重奏を作り出す。
確かに美味いのだが、芸夢の顔には何処か上の空である。彼がこの様な顔する時は、決まって何かが起きる。
前兆の感知と言うべき未来予知に似た勘。先程までとは空気の流れが変わったことを感じた。この時、芸夢の顔は新しい玩具を見つけた子供のような純粋な笑みを浮かべる。
「面白ェ。どこのバカが暴れてやがるか知らねェが、暇潰しくらいにはなるか。」
中途半端に食べたアイスをカップから取り出しそのまま塊のまま口の中へと放る。
近くの窓を開け、勢いのまま飛び降りる。
当然ながら重力が働くこの惑星で、人間が飛べるわけがない。あくまでそれは常人という意味だ。だがこの少年…神野芸夢は規格外である。
「エヒャヒャヒャヒャー!!」
突如、芸夢に四つの翼が生える。
正確には小規模の竜巻。風の力を操り、即席の翼を作り上げた。鳥よりも早く、力強く飛ぶ姿はまるで天使のようにも思える。
彼は求める。己を楽しませてくれる何かを求め、夜の街を駆けていく。
イシュタルにハロウィンが奪われた!?
唐突のセイバーウォーズに驚きを隠せませんが、楽しめれば、大丈夫だ、問題ない。
今回は式と絡ませてみましたが、上手くかけていたか心配です。
こんな駄作ではありますが、次話も読んでみてください。