空の境界 『TheLost・of・Newworld』 作:レイノート
それでも作品を書くことを恐れず行きたいと思います。
さて、今回は主人公とふじのんの邂逅です。
芸夢は先程感じた力の残滓を追い、廃墟となった地下のBARに辿り着いていた。
「なんだこれは。」
数多の惨状を目にしてきた芸夢でも、思わず絶句した。
そこにあったのはつい数時間前までは人であったであろう
常人であれば吐き気を催す程の死臭の中で、芸夢は至って冷静な様子だった。最初こそ驚いたが慣れてしまえばどうということはない。
「残滓はもう追えねぇみてぇだな。」
芸夢の異能は街一つの範囲を力の反応を感知できる。ある程度あれば力の残滓も追えるが、感じたことない力の反応の場合は数分程度しか感じ取ることが出来ない。先程発生したモノも後者に該当する。
少しは興味深い何かが見れると意気込んで来てみれば、この有様だ。この惨状を引き起こした何者かに、死体処理を押し付けられたようなものだ。
「チッ。めんどくせぇなぁ。」
行き場の無いイラつきを抑えつつ、パーカーのポケットから携帯電話を取り出す。芸夢は慣れた手つきで番号を打っていく、。
プルルルル、プルルルルと鳴る機械音をBGMにし待つこと数秒。
『もしもし蒼崎です。』
「俺だ。」
『詐欺の受付はしてないが?』
「茶化すんじゃねぇ。事件だァ。」
芸夢は橙子に現場の状況を話した。
捩じ切られた四人の死体。僅かだが感じた力の残滓。
それらの要因から単純な殺人事件とはかけ離れたものだと、現場にいずとも容易に理解した橙子。
「やっぱり魔術師絡みの事件なのか?」
『まだハッキリとは断定できん。兎に角、あとはこっちに任せてお前は家に戻れ。分かったな。』
と言い、蒼崎は電話を切った。
芸夢の中ではある程度の考察ができていた。
一般人ではあのような殺し方など当然ながら不可能だ。どんな機械や拷問器具を用意したところで、あれ程正確に人体を曲げる事など出来ない。
となればそんなことをできるヤツに該当するのは三種類のカテゴリーに含まれる。
魔術師。人外。超能力者。無知な者からどれも似たよったものに見えるが、その実態はまったくと言っていいほど異なる。詳しいことは芸夢にも分からんないが、蒼崎に魔術のあれこれのことを聞いた際によく聞かされたものだ。
今回の事件がそれに該当するかはわからない。
「(ちっ、帰るとするか。)」
目的の人物ともあえず、芸夢は不完全燃焼の高揚感を抱いたまま、その場を後にした。
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「ハァ…ハァ…」
息を切らした浅上藤乃は路地裏の壁に背をつけて休んでいた。不良達を無惨に殺した後、地下BARから自身の姿を隠しながら路地裏を移動していた。
身につけていた制服が返り血で紅く染まってしまい、表の通りを思うように歩けない。
血染めの着衣を身につけたまま町を歩けば、言わずもがな警察の御用となるだろう。ましてや殺人を犯した身である藤乃。余計に逃げなければならない。
「あと一人で…終わったのに…」
藤乃が暴行を受けた体を引きずりながら移動するのは理由がある。先程のBARにおいて、自身に暴行を働いた不良の生き残りの一人を追っていた。
気持ちの高ぶりが収まった際に死体の数を確認した時の事だった。殺したと思った五人の死体の内、四人分のモノしか残っていなかった。藤乃は辺りを見回した。
ここには隠れられそうな場所は特に無い。藤乃が殺すことに夢中になっている間に逃げ出したのだろう。
「ハァ…ハァ…」
骨が軋み鈍い痛みが走る。不良によってつけられた傷が、再び痛み出してきた。
復讐というエンジンによって、辛うじて動けているものの藤乃の肉体はとうに限界を超えており、動けることすら奇跡とも言えた状態だった。
「あっ…」
膝から崩れ落ちるようにうつ伏せに倒れる。コンクリートの冷たさを感じることが出来ないほど意識が朦朧としている。
もう一歩も歩けない。
蓄積し続けた疲労と痛みが遂に限界を迎えた。
「(もう…だめ…)」
薄れゆく意識の中、彼女の目に映ったモノ。黒ずくめのナニカの輪郭をうっすらと見えた。
それが何かは分からない。
もしかしたら私を殺しに来た死神などというくだらない幻覚でも見てるのかもしれない。
そんな思考をしている内に浅上藤乃は糸が切れた人形に動かなくなり、その場で気を失った。
芸夢は夜の道をのんびりと歩いていた。生憎彼には散歩の趣味などは無い。
能力を使えば一瞬で帰ることは可能ではあるが、生憎と今の彼は非常に機嫌が悪い。モチベーションがだだ下がりの状態であり、能力を使う気分にはなれないのだ。
久方振りに面白いモノに出会えると意気込んで外に出てみれば、成果はなし。とんだ無駄骨に終わった。
触るな危険。それ故に今の彼に余計な事をすれば、半殺し確定コース直行となる。
「(気分転換にコンビニでもよるか…)」
この梅雨のようにジメジメと張り付く空気を入れ替えるために、コンビニへと足を進める。
丁度その時だった。
「ドサッ」
狭い路地裏に響いた何かの倒れる音。
鈍くそれでいて重みを含んだモノが倒れる音だ。
「……」
芸夢は目線を路地裏へと向ける。
今、何かの力が働いたのを感じた。既存する法則に引っかからないモノの揺らぎ。間違いない。
芸夢は数分前に感じたものだと直感した。
「果報は寝て待てってかぁ?」
芸夢は子供のような笑みを浮かべる。
待ちに望み漸く訪れた機会。今の彼に見過ごす考えなど脳裏にない。
芸夢は暗闇の路地裏へと足を踏み入れる。電灯等はなく、月明かりを頼らざるおえないほどに暗い。物の輪郭が薄らと見える程度であれば問題ない。視界が悪くとも芸夢の能力を持ってすれば、空気の流れでだいだいのことは把握出来る。
「あ?」
月を覆った雲は晴れ、暗闇を月明かりが灯る。
路地裏の最奥に到達した芸夢が目にしたモノ、このような薄汚い場所には到底につかわしくない女の子が倒れていた。
この時、芸夢は思わなかったであろう。
後に彼女が自身にとってに必要な人になるとは…。
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