ハーメルンバンドリ作家合同企画(テーマ交換・オリキャラ無し) 作:大里野上
対バンは観客にとってはとても楽しみなものですよね。対バンを行う2バンドそのきっかけは?
テーマ「ポピパとアフロで対バン」
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「対バン?Afterglowと?」
「うん、アフロとね」
ある秋の日の放課後。生徒会役員としての仕事が終わり、ポピパ5人で帰ろうという時。沙綾の口から飛び出たその一言に思わず聞き返してしまった。既に他の3人には話をしていたらしく、驚いた様な反応は見受けられない。
「随分また唐突だな…何かあったのか?」
こういう時は大抵何かしら理由がある。香澄がやらかしたとか、香澄がやらかしたとか、香澄がやらかしたとか──香澄しか浮かばねえ。
「え?いや別に何かやらかしたとかじゃない…よ?」
「いやそれは絶対なんかやらかしただろ。怒らないから取り敢えず説明してみろよ」
とか思ってたら、どうやらやらかしたのは沙綾本人らしい。香澄じゃない事に驚きつつも、取り敢えず話だけでも聞こうと続きを促すと、珍しく歯切れ悪く沙綾が説明を始める。要約するとこうだ。
事の発端は数日前。買い出しに行くために外に出た沙綾に、偶々通りかかった宇田川さんが声を掛けたらしい。沙綾と宇田川さんは割と仲がいいのか、出会う度に話しているのはよく知っている。ここまでは何も不自然じゃないな。
「別にここまではおかしい所ないだろ。何したんだよお前…」
「うっ…」
「と、取り敢えず最後まで話を聞いてあげようよ」
りみにそう言われ、取り敢えず話を聞く状態に戻るが…正直、ここからどうして対バンの話になるのか分からない。
「取り敢えず、続き話せよ。話はそっからだ」
「うん、それで…」
──世間話の途中、お互いのバンドの近況報告をしてたらしいんだが、宇田川さんの零した一言で沙綾の心に火がついたらしい。
『まあ誰がなんと言おうと、
『何言ってるの?
──こんな調子で張り合ってたら、対バンをする事になったと。
──うん。
「馬鹿かお前!」
「あいたっ!?」
話を聞き終えた私は、取り敢えず沙綾の頭にチョップを叩き込んだ。突然の痛みに悲鳴を上げて頭を抑える沙綾を見て、大きくため息を吐く。
「そこで何で対抗心燃やすんだよお前…普段ならそんな事しないだろうが…」
「つ、つい売り言葉に買い言葉で…」
こう言ってはいるものの、普段ならこういう事を全くしない沙綾がこうなるという事は、沙綾なりに何か考えでもあるのだろう。
「──わかった。なら今から練習しに行かなきゃな」
「…いいの?」
「そりゃお前、もう決まっちゃった物は仕方ないだろ?」
それに、と言葉を切って後ろの3人を見る。
「他の3人には話を通してあるってなら、私に文句なんて無いしな」
香澄は目がキラキラしてるし、おたえはあんまり動じて無さそうでやる気に満ち溢れてるのが何となく分かるし、りみに至ってはすぐさまライブする訳でもないのにソワソワしてる。
(──全員、新しいライブの予定にワクワクしてるのがバレバレなんだよなー)
若干呆れながら心の中で呟いて、サッとスマホを取り出して予定の書き込まれたカレンダーを確認していく。
(生徒会の仕事以外は基本的に何も無い週が続くな…生徒会もココ最近の仕事は少ないし、文化祭みたいな事にはならないはず…だよな?)
「…取り敢えず全員の予定を照らし合わせて、予定無い日が重なれば練習にする感じで行ってみるか?」
「さんせー!」
「私もそれでいいよ」
「わ、私もそれがいいな。今からセトリとか考えなきゃだね」
「絶対負けないから…!」
(…なんか、1人だけ気合い入りまくりな奴いるけど、ほんとに大丈夫か?)
とか考えつつ、私自身もライブが楽しみで昂り始めているんだけどな。久しぶりのライブ、気合いを入れすぎなくらいが丁度いいのかもしれないし。
「──てなわけで、ポピパと対バンする事になったって事だ」
「いや、ちょっと待ってよ」
「トモちん〜、いきなり過ぎて理解が追いつかないんだけど〜?」
「巴ちゃん、何で沙綾ちゃんと話してたら急に対バンの話になったの…?」
「巴…それって喧嘩売ってるみたいなものじゃん!」
そう締めくくりアタシが説明を終えると、蘭たちの反応は様々だった。最も、皆困惑してるみたいなんだけどな。アタシの説明不足だったか?
「そうじゃなくて、何で沙綾に喧嘩売ったの?巴らしくないじゃん」
「いや、つい売り言葉に買い言葉ってやつでな…」
「さーやとトモちんが喧嘩するって、珍しいね〜」
モカにそう言われて、確かにと思う。沙綾は優しい奴だから、自分から喧嘩になるような行動する性格じゃないしな。
「と、取り敢えず!これからどうするか決めようよ!練習いつにするとか、セトリ考えるとか!」
「つぐの言う通り、決まっちゃったならもうやるしかないよね!」
つぐみとひまりはやる気になってくれたみたいだ。こういう時は大抵──
「お〜、2人はやる気満々だね〜。これはモカちゃんもやる気を出さねばなりませんな〜」
「…わかった。セトリは今日の夜に大体考えてくる」
──モカがやる気を出して、蘭がそれを見て諦めるって感じなんだよな。こうなったらもう蘭が拒否する理由が無くなるし、何だかんだ蘭自身もライブが楽しみみたいだし。
「よーしそれじゃ、対バンに向けて皆で頑張ろう!えい!えい!おー!」
「「「「……」」」」
「…何でよー!」
(…やっぱりアタシ達は、こういう時もいつも通りだな)
そう思いながら、アタシは拗ねるひまりを見て苦笑いした。
日曜日のある朝。穏やかな日差しが降り注ぐ良い天気の中、ライブハウス『CIRCLE』のスタジオに、激しくギターをかき鳴らす音が響く。その理由は、Poppin’Partyリードギター担当の花園たえが自身の分身とも言える青いギターを一心不乱に弾いているから。彼女の首筋には珠のような汗が浮かび上がっており、どれだけ激しく弾いていたのかが伺える。
彼女はウォーミングアップを兼ねて本来の集合時間である11:00よりも1時間以上早くCIRCLEへと向かい、練習をしていたのだった。
彼女の細くしなやかな指がピックを滑らかに移動させ、そのピックがギターの弦を弾く事で音を奏でる。そして奏でられた音は重なり合う事でひとつのメロディへと変化し、スタジオ内に響き渡るのだ。そしてそのメロディは段々と加速し、更に激しさを増していく。
そんなスタジオ内に響くギターの音に、突然パチパチと拍手の音が混ざる。おたえが演奏を止めて音の発生源を見ると、スタジオのドアを開けた少女──山吹沙綾が小さく拍手をしていた。
「おはよ。朝から頑張ってるね」
「…沙綾、おはよう」
「あんまり根詰め過ぎると、体に良くないよ?あまり無理はしないでね」
「うん、今回はもう失敗する訳には行かないから。大丈夫だよ」
そう沙綾に返して、沙綾が来たことによって1度休憩にしたのか、滴る汗をタオルで拭き始めるおたえ。そんなおたえに、沙綾は一抹の不安を拭い切れないでいた。
「──もう。大丈夫だよ」
「え…?」
ふわり、と。目を伏せた沙綾を優しく抱きしめるおたえ。甘いシャンプーのにおいと、おたえ自身の柔らかな体の感触に、沙綾の心拍数は一気に上昇する。
「あ、あのっ!?ちょっと、おたえ!?」
「…大丈夫。私はもう、間違えたりしないから」
「おたえ…」
沙綾を離したおたえは、まっすぐ沙綾の眼を見て微笑む。その微笑みに言い様のない安心感を覚えた沙綾は、おたえの眼を見て笑いかける。
そんな二人の間には、静かで穏やかな時間が流れていくのだった。
その後、いつも通りのテンションでやってきた香澄達と合流し、予定していた11:00からの練習をこなし終えたホピパの面々がスタジオから退出した時。
「「──あ」」
丁度スタジオ練習だったのだろう、afterglowの5人と鉢合わせた。鉢合わせて、しまった。両バンドの間に微妙な空気が漂う。
「蘭ちゃんおはよー!」
だがしかし、ここで空気を読まないのが我らが香澄。そんな空気知ったことかと、いつも通りのテンションで挨拶をした。
「あ…うん、おはよう」
当然、この空気で挨拶が来ると思っていなかった蘭は驚いたものの、何とか返事を返すことに成功する。
「今日は練習?対バンに向けてかな?頑張ろうね!」
「あっ…えっと、その──」
だが、この程度で止まらないのが香澄。怒涛の攻めで確実に蘭を追い詰めて行く!(なお本人に自覚はない模様。)
それ故に、既に蘭の
「ほら香澄、外のカフェテリアで何か飲みに行こう?有咲たちは後でくる?」
すかさずそこへ助け舟(無自覚)を出したのがおたえだ。彼女の
「じゃ、じゃあ私も行こうかな?」
「私らはちょっと話すことあるから、先行っててくれ」
「私もここに残るから、3人で行ってていいよ」
「わかった。じゃあ行こう、香澄、りみ」
そう言って、香澄の手を引いて歩いていくおたえ。その後ろをりみが小走りで追っていき、外へと出て行った。
「さて…」
その後ろ姿を見送った有咲が蘭たちへ向き直ると、既にスタジオに入っていったのか蘭と巴しか残っておらず、その二人といえば、こちらを待ち構えているかのような雰囲気を醸し出していた。
「対バンの話、しようか」
そう言って好戦的な笑みを浮かべる蘭。どうやら、予想以上に乗り気になっているらしい。
「具体的には一ヶ月後、
「うん。私らとしても、一ヶ月後ってのはありがたいからな。問題ない」
蘭ちゃんの提示した条件に私と沙綾は頷く。こっちとしても、事前にやるなら一ヶ月後がいいんじゃないかって方向で話が纏まってたからな。スムーズに進められて何よりだ。
「曲数はお互いに5曲がいいと思うんだけど、そっちは平気?」
「ああ、それについては問題ないぜ。アタシら全員、やる気は十分だからな」
沙綾の質問に、宇田川さんが問題ないと頷いた。これで本当に重要なことは話し終えたし、後はチラシとかチケットに関することだな。
「チケット作成費、チラシの作成費はそれぞれ割り勘。それと──」
こんな感じでとんとん拍子に話は決まっていき、あっという間に全ての意見交換を終えてしまった。
「じゃああたし達、これから練習だから」
「そんじゃな!」
「おう、練習頑張れよ」
「じゃあね」
これ以上向こうの練習時間を取る訳にはいかない。やる事が終わったなら、すぐに退散するべきだな。向こうもそう思ったのだろう。話を切り上げて、スタジオへと戻っていく。その後姿を見送りながら、ふと隣の沙綾を見やる。
「……」
「沙綾?」
隣の沙綾はかなり気難しそうな顔をしていて、何か言いたそうだ。思わず声を掛けると、沙綾はちらりとこちらを見て──今まさにスタジオの扉を開け、中へ入ろうとしている宇田川さんへ向けて叫んだ。
「──巴!」
「…どうした、沙綾?」
「…絶対、負けないから」
「…アタシらだって、負けるつもりはないさ」
バタンと、音を立てて扉が閉まる。その時の宇田川さんの顔は、どんな顔をしていたかわからない。それでも、ちらりと見えた蘭ちゃんの顔を見るに、悪いものではなかったと思う。
「…気は済んだか?」
「…うん。ありがとね、有咲」
「どういたしまして。さ、香澄達の所に行こうぜ」
「そうだね、いこっか」
沙綾の返事を聞きながら、私は一ケ月後の対バンライブへと思いを馳せつつ、沙綾と共にCIRCLEを後にした。
「巴、本当に良かったの?」
「ああ、あれ以上は必要ないと思ってな」
「…わかった。巴がそういうなら、あたしは何も言わないよ」
「ああ、ありがとな」
──そして、一ヶ月後。Poppin'PartyとAfterglowによる対バンライブが、幕を開けた。
「うう…緊張する…」
「有咲、緊張してる?」
「う、うるせー!しょうがないだろ!いつだって緊張するもんはするんだから!」
ここはステージの舞台袖。出番を間近に控えたPoppin'Partyが待機をしている場所であり、有咲が青い顔をして立っている場所でもある。
「あれだけやる気に満ち溢れてたのに、やっぱり緊張してるんだね」
「有咲、だいぶ緊張してる」
「有咲ちゃん、大丈夫?」
メンバーの各々は緊張こそしているものの、いつも通りの様子だ。衣装の確認をしたり、自身の持つ楽器の調整をしたりと、最終チェックを行っている。
ちなみに、彼女たちの衣装は普段着ているものではなく、二回目のクライブの際に作成した衣装だ。香澄も普段の髪型──彼女自身は星の形というが──猫耳を梳いて、髪を下ろしている。
「今日はやっぱり失敗できねえっていうか…沙綾の為にも頑張んねえとって思って…」
「有咲…」
「じゃあ、私が緊張を解してあげるよ!」
「私もやってあげる」
「わ、私もしてあげるね」
「私もしちゃおっかな~」
「またあの人の字を書くやつか!?」
わいわいといつも通りにはしゃぐポピパ達。そこへ、対バン相手となるAfterglowが到着した。
「今日はよろしく」
「うん!よろしくね、蘭ちゃん!」
「いいライブにしよ~ね~」
「やっぱモカちゃんはいつも通りなんだな…」
Poppin'PartyとAfterglowの面々が挨拶を交わしていく。対バンライブ前であろうと、元は親しき友人の仲。お互いに話をして和んでいくのも、当たり前のことだ。
「沙綾、今日はよろしく頼むぜ」
「こちらこそ。よろしくね、巴」
喧嘩をしていたはずの二人も笑顔で言葉を交わしあっている。ライブの影響…なのだろうか。
「Poppin'PartyとAfterglowの方々、準備をお願いします!」
「はーい!それじゃあ、いつもの行くよ!せーっの!」
「「「「「ポピパ!ピポパ!ポピパパピポパー!」」」」」
「あたし達は、『いつも通り』やればいい…行こう、皆」
「「「「おー!」」」」
そして少女達はステージへと足を踏み出していき──歓声が沸き起こる。
「皆さん、こんにちは!Poppin'Partyです!今日は、ポピパとアフロの対バンライブに来てくださってありがとうございます!」
ワァァァァ…!
「この後すぐにAfterglowの番があるので、早速一曲目に行きたいと思います!『二重の虹(ダブルレインボウ)』!」
「うーん、あのときはすごい楽しかった!キラキラしてた!」
「おー、分かったから落ち着けって」
「震えた。すっごい楽しかった」
「私も楽しかったなぁ…」
「懐かしいね、もう5年も前なんだ…」
開かれたアルバムの写真を見ながら、女性たちが口々に感想を述べる。…約一名、はしゃぎすぎて宥められている者がいるが…
「またやれるといいね、対バンライブ」
「そうだな、今日会うんだし聞いてみればいいんじゃねえの?」
「私、ライブやりたい」
「や、やるなら私もやりたいな…!」
「お、いいねそれ。またやる?」
「いいけど、もう喧嘩すんなよなー」
ピンポーン
「あ、来たんじゃない?」
「じゃあ皆で迎えに行くか?」
そういって、真ん中にいた金髪の女性がアルバムを閉じて立ち上がると、それに応じて他の女性たちも立ち上がり部屋を出ていく。
──部屋に残されたアルバムの表紙には、『Poppin'Party Memories』の文字と共に、星の装飾が施されていたという。