ハーメルンバンドリ作家合同企画(テーマ交換・オリキャラ無し)   作:大里野上

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 現在、作家を引退されてしまっているのですが、ゆうちょさんも企画にしていただけました!
 オリキャラなしの今回では難しいテーマを書いて下さりました。読んだ際、世界が広がったように感じました。どうぞ、お楽しみ下さい!

 テーマ「片思い」
 作者ホーム なし
 紹介作品 なし
 作者Twitter 停止中


思い

 冬が背後に迫っているのを思わせる寒さでふと目が覚める。枕元に置かれた目覚まし時計は8:00を指していた。今日は休日、高校などという強制収容所もない。いつもなら温かな布団に包まりもう一度眠りに落ちるのだが今日はそうはいかない。

 二度寝を誘う布団の誘惑を断ち切り手早く外出の支度をする。家族はまだ夢の中だろうか。音を立てないように気を遣いないながら玄関を出る。目的地は近所にある、幼馴染が看板娘を務める羽沢珈琲店だ。

 

「いらっしゃいませ。あっ蘭ちゃん!今日もいつもので良いかな?」

 

 扉を開けると挨拶とともに温かな笑顔で彼女は出迎えてくれた。その笑顔に店にかかっている暖房以上の暖かさを感じる。

 

「うん、いつもので」

 

 そう答えると私はいつもの席に腰を下ろす。日の当たる窓際の席が私の特等席だ。

 

「お待たせしました。モーニングセットです」

 

 暫くして彼女が注文した品を運んできた。香ばしい匂いのする焼き立てパンとこの店自慢のオリジナルブレンドコーヒー。私が店に来たら必ず頼む黄金セットだ。

 

「うん、美味しい。つぐ、やっぱりここのコーヒーは最高だよ」

「いつもそう言ってくれて嬉しいな。あっ私ちょっと準備してくるね。どうぞごゆっくり」

 

 そう言うと一礼して彼女は店の奥へと消えていった。さて、その間に目の前にあるものは腹の中に入れてしまおうか。

私も準備をしなければ。

 

 

 

 

 

「つまりこの問題は教科書のここの方程式を変形した問題なんだよ」

「なるほど……じゃあ、ここをこうして」

 

 彼女の言った準備とは彼女が私にマンツーマンで教えてくれる勉強会のための準備である。

正直私は勉強が苦手だ。そのため週に一度、私は彼女から手ほどきを受けている。

 彼女は成績優秀で教え方がとても上手い。そして何よりも

 

「正解!すごいよ流石蘭ちゃん!」

 

 たとえ大問の中の一つの問題でもこんな風に全力で手放しに褒めてくれる彼女がとても可愛くて、抱きしめたいぐらいに可愛くて。だから私はまたそんな彼女が見たくて必死に問題とにらめっこをする。

 

「つぐみ、この問題ってどうやるの?」

「え?うーんと……この問題は……」

 

 自分に教えてくれるために一生懸命に考えてる彼女を見られるのはとても嬉しい。私のために頑張って考えてくれてると思うとなお嬉しくなる。

 

「あっ!そうだ蘭ちゃんこの問題はー」

 

 解き方を閃いた瞬間これまでの難しい顔が嘘のように明るくなる彼女の表情。それがたまらなくなるぐらいに愛らしい。こっそりカメラで録画してしまいたいぐらいだ。

 

「ってことだと思うよ……蘭ちゃん?どうかした?」

「えっ!?いや、なんでもない。それでこの問題ってどうやるの?」

「えぇー今説明したよ!えっとね、だからこの問題はー」

 

 危ない危ない。せっかく彼女が教えてくれているのだから真面目に解かなければ失礼だ。

 

 

 

 

 

 

 

「……つぐみ、この問題って……つぐみ?」

 

 勉強会が始まってから二時間ぐらいたったであろうか。解き方を教えてもらおうと彼女の名前を読んだが返事が帰ってこない。ふと顔を上げてみると小さく寝息を立てながら静かに眠る彼女がいた。

 

「つぐみーつぐみー」

 

 軽く肩を叩きながら読んでみるが全く反応がない。ほっぺたを人差し指で軽く押してみたがただ私の指の感覚が伝わり少し彼女の表情が緩んだのみ。ただ単に彼女の可愛さが再確認できただけだった。

 きっと休日の中営業開始時間から店の看板娘として立っていたから疲れが出たのだろう。風邪を引かないようにと着てきたコートを彼女にかけてあげた。睡魔と戦いながら勉強を教えてくれた彼女に私ができることはこのぐらいだ。

この問題は自分で自力で解こう。

 

 

 

 

 

 

 

「うぅん……あ、あれ?私……」

「おはよう、つぐみ」

「あぁ!ごめんね蘭ちゃん勉強教えてあげないといけないのに」 

 

 申し訳なさそうに謝る彼女を見て私は改めて彼女の優しさを感じた。私に謝ることなんてまったくないのに。むしろ寝てる間にイタズラしたくなってしまった私を怒ってほしい。

 

「あれ、このコートって……ありがとう。やっぱり蘭ちゃんは優しいね。大好きだよ」

 

 その言葉に「そんなことはないよ」って軽く返しながら私は心の中で傷ついた。

 彼女は何気なく、ただ友達として、幼馴染として「大好き」という言葉を発したのだろう。ただそれが私の中ではひかかってしまう。

私が彼女に対して抱いてる感情は恐らく「友達」「幼馴染」をはるかに超えたものだ。

 

「友達」を「幼馴染」を超えた関係になりたい。

「大好き」を超えて「愛してる」って言ってほしい。

 

でもこの一方通行な思いは伝わらない。

いや、伝わっちゃいけない。

 

「ところでつぐみ、この問題ってー」

 

ただ今は勉強を教わる幼馴染であり友達であり続けよう。

 




企画者からの告知
現在、新しいハーメルンバンドリ企画の参加者を募集しております。
詳しくは、企画者のTwitterまで https://mobile.twitter.com/BANBAN_DORI?s=09
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