おバカは最強の悪役を夢見る   作:ワノ

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おバカと家族会議

古くから続く魔術師家系のウィルルプス家は今、深刻な問題にぶち当たっていた。現当主である父を中心に右側のひとりがけ用のソファーに母、左側の二人がけ用のソファーに長男と次男が座り、何故か俺だけが、床に正座をして座っていた。この状態がかれこれ3時間続いている。正直俺の足は、もう感覚がない。一体この話し合いはいつ終わるのだろうと遠い目をしながら俺は、数時間前の出来事を思い出していた。

 

ーーー事の発端は、一通の手紙だった。今日も元気に魔術の練習をし、部屋を爆発させてしまった俺が、父の執務室の床と仲良くしている時にそれは届いた。真っ白な封筒に入った手紙自体は珍しくも無いが、その手紙のあ送り主を見た父が眉をひそめた。そして床に転がっている俺を他所に手紙を読み始めると徐々に目が見開いていき、最後には、額に手を当てながら空を仰いでしまった。

 

手紙の内容が気になり、縄で縛られ身動きが取れない身体を芋虫のように動かしながら父の近くに近づいて行った。

 

父は、そんな俺の姿をチラリと見ると大きな溜息をつき、俺の上で手紙をヒラヒラさせながら自分の机の上にあるベルを鳴らし、使用人を呼び付けた。

 

数分とせずにやってきた使用人は、俺を気にすることなくー紐に縛られた俺が必死に父の手にある手紙を取ろうとしている姿ー父に近づくと俺に聞こえないように言われた指示に頷き、下がって言った。

 

そして1時間後、ようやく縄を解いてもらった俺は、談話室へと連れて行かれた。父と共に部屋に入ると中には既に母と長男次男が座っていた。

 

そして、いつもの席へと座った父に続き、俺も空いているソファーに座ろうとすると、母の無言の圧がかかり、渋々床に正座で座った。

 

全員がいることを確認した父は、ゲンドウポーズを取りながら、重々しく口を開いた。

 

「....これより、第386回目の家族会議を始める。議題は、この手紙についてだ」

 

片手に先程の手紙を掲げながら言った父の顔は随分の険しかった。そんな父の様子にただ事では無いと思い、誰もが息を飲み次の言葉を待った。

 

「手紙の送り主の名は、"マリスビリー・アニムスフィア"時計塔の天体科を牛耳る魔術師貴族であり、カルデアの創設者だ」

 

「まぁ!」

「っ!?」

「なっ!?」

「えっ?誰?」

 

言わずもだが、上から母、長男、次男、俺だ。いや、なんか俺以外みんな知ってる感じだけどそんな有名人なのかな?と首を捻っていると、長男と次男が残念なものを見るようなよで見つめてきた。因みに、流石の俺でもカルデアは、知っている。

 

 

"人理保障機関カルデア"

 

 

魔術師のどっかの貴族によって創立された未来を保障するための機関。

 

 

「お前、マリスビリー・アニムスフィアを知らないのか?今いちばん有名な魔術師の名前だぞ!」

 

「いやぁ、そう言われても知らないものは知らないし...。そんなに有名なの?」

 

「いくら興味が無いからと言って彼を知らないのは流石にやばいぞ」

 

「うぅぅ、で、でも、仕方ねーじゃん!知らねーものは知らねーんだし!」

 

「カルラ!言葉使い...。」

 

「っ!?申し訳ありません!お母様!」

 

条件反射というものは怖い。ここ数年で調きょ....教え込まれた母の教育の賜物で今では、母の声を聞くと頭で考えるよりも早く体が動く様になってしまった。母親恐るべし....。

 

母は、慌てて口調を治した俺に満足そうに数度頷いてから、父に話の続きを聞いた。

 

「それであなた。アニムスフィア様からの手紙にはなんと書いてあったのですか?」

 

「それがな....。アニムスフィア卿は、カルラをカルデアに招集したいと思っているようだ。それもAチームとしてだ」

 

「なっ!?それは本当ですか!父上」

 

「あぁ、残念なことに本当の事だ。確かに純粋な魔力だけで言えば歴代のウィルルプス家に置いてもトップクラスだ。きっと、アニムスフィア卿もその事を踏まえて手紙を送ってきたのだろう」

 

「無理です!カルラをカルデアに行かせるだなんて、核兵器を落とし込むようなものよ!あなた!とても光栄な話ですけど、今回は、断りましょう。世界を救う前にカルデアが崩壊してしまうわ!」

 

「そうです父上!母上の言う通りです!確かに家の名に傷は着いてしまいますが、この馬鹿を送り出した後に来るであろう請求書に比べれば何倍もマシです!」

 

「父上!僕も母上と兄上の意見に賛成です!断言できます!この馬鹿は、カルデアに行っても絶対部屋を爆破させます!絶対です!」

 

「みんな酷くない?俺、泣くよ?」

 

くそぉ、好き勝手言いやがって!俺だって好きで爆破してるわけじゃないし、ただ、ちょこっと多く魔力使ったら爆発しちゃっただけで...。うん、仕方ないよな!...し、しかたない....よなぁ。

 

家族の余りの随分な言い草に心が折れそうだ。そんな俺を見兼ねてか父が母や兄たちを宥めていた。

 

にしても、カルデアか....。ん?、かるであ?どっかで聞いたことある名前だな。あれ、何処だったけ?うーん.....。

 

「あぁ!!思い出した!」

 

「何です、突然大きな声を出して!はしたないですよ、カルラ」

 

「うぇ!?も、申し訳ありません!」

 

慌てて頭を下げるも、さっき思い出したことで脳内は一杯だった。

 

どうやら俺は、ゲームの世界に転生したみたいだ。しかも前世で大人気だったFGOの世界だ。俺自体は悪役修行に必死でプレイしたことは無いが、そんな俺でも、主人公の名前くらいは知っている程の人気具合だった。

 

確か、主人公の名前は"藤丸立香"だったと思う。本人は、一般人に見せかけて実際はチート人間って感じだったはず...。

 

......うん、よく考えてみれば、俺の理想のヒーローじゃね?世界を悪者から救うヒーロー像にピッタリだ。ってことは、藤丸立香と敵対すれば、俺の夢《最強の悪役になる》叶うんじゃね?

 

......よし決めた、カルデア行こう。

 

 

「ってことで、父さん、母さん、兄貴たち!俺、カルデア行ってくるわ!」

 

 

「「「「いや、どういう事だ!てか今までの話聞いて何でそうなった!!!!」」」」

 

 

この後、更に5時間の家族会議の末ー主にカルラに対する説教ー談話室が爆発し、カルデア出発までに家族総出で地獄の特訓をさせられることをこの時の俺は、まだ知らなかった。

 

「さぁーて、どうやって悪役になろうかな♪」

 




⿴⿻⿸

どうも、ワノです。
今回はカルラの家族登場です。名前はないです。
一応カルラの家族の設定みたいなの載せときます。

□父
カルラの説教役

□母
対カルラ最終兵器

□長男
カルラのせいで出来た請求書纏め係

□次男
屋敷内で1番爆破に巻き込まれる


次回、おバカの異聞帯

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