蝶の影   作:木材

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日常回という名の説明回。次回も日常回。

その後、原作突入




雨と水の音が聞こえる。

 

昨日の夜から降り続ける雨は止む様子は見せず絶えず降り続けている。雨が多く、蒸し暑い季節ではあるが、ずっと降り続けていると徐々に気温も下がりひんやりとした空気が肌に纏わり付く。

 

「…………」

 

羽織と詰襟を脱ぎ、雨に濡れない岩陰に畳むと、目の前に落ちる多量の水の中に頭を突っ込み、滝に打たれる。滝の下にある岩に腰を下ろして座禅を組み、息を整えて円を行う。

手拭いで塞がれた視界にはなにも映らないが、周囲になにがあるかは完全に把握できている。円の効果範囲内である以上、雨粒が円の効果範囲内にいくつあるかも把握できる。滝の水では円を妨げることはできない。

 

滝に打たれながら意識を集中させる。手にした日輪刀を抜き、座禅を組んだまま構える。

 

深く呼吸をし、全身に力を漲らせる。

 

円で一際大きな水の塊が落ちてくるのを察知すると、全身の氣を練り上げ刀にまで浸透させる。

 

「全集中」

 

影の呼吸・参ノ型 無辺

 

一呼吸の間に凄まじい量の斬撃を放ち、落ちてきた水の塊を消しとばす。一瞬周囲は静寂に包まれ、滝の水は一瞬途切れた。

しかし次の瞬間には再び滝は流れ始め遠夜の身体に水を打ち付ける。

 

そのような修行を延々と二時間ほど続けていた。

 

ーーー

 

「……ふう」

「修行か。精がでるな」

 

そう声をかけて来たのは、岩柱・悲鳴嶼行冥だった。盲目である目から涙を流しながら遠夜に近づいてくる。

 

「どーも悲鳴嶼さん。修行場所借りてます」

「構わない。私がよくここで修行しているというだけで別段私の所有する土地というわけではない」

「それもそうか。それで?なにかご用意ですかい?」

 

滝から出て刀を納めながら遠夜は悲鳴嶼に近づいていく。別段、悲鳴嶼と仲が良かったりよく話したりはしない。そのためわざわざ声をかけて来たあたりなにか用があるのだと遠夜は予想した。

 

「ああ。御館様から伝令があった」

「伝令?なら烏使えばいいんじゃ」

「お前の場合、烏での指令だと無視する可能性を示唆された。そして柱であるお前に直接言って聞かせられるのは、私か胡蝶だけだと判断され場所の近い私が頼まれた」

「言って聞かせるって、俺は幼子かなにかですかい?」

「時々指令を無視することについては、自覚が無いわけでもあるまい」

「否定はしません」

 

というかできない。実際、遠夜は時々指令を無視する。鬼を殺したり民間人を助けるという指令を無視することはないが、休暇や柱合会議の指令などは無視することがある。また、助けようとした人間の態度が明らかにこちらを見下したり横暴なタイプだとわかると平気で見捨てることもあった。柱合会議は必ず御館様に理由を嘘偽りなく言い欠席するが、休暇や指揮の指令は基本的に全部無視する。柱といえど人間。休暇は必要なのだが、遠夜はそれを頑なに取ろうとしない。休暇を取らない主な理由は『そんな暇ない』ということだが、実際遠夜が自分で仕事を増やしているだけである。加えて隊士の指揮も柱としての重要な役目であるが、面倒という理由だけでそれを全うしない。その度にしのぶの雷が落とされるのだが、話は基本右から左。反省の色は全くない。

 

「……柱合会議は前にやったから、今回は休暇の指令ですか?それともまた指揮指令?」

「休暇だ。柱たる者体調管理も重要な役目である。休めるうちはきちんと休んでおけ」

「……ふぅ、仕方ないっすね。今日は大人しくしてます」

 

最年長であり、最強でもある悲鳴嶼に言われては遠夜も従わざるを得ない。なお、遠夜がいうことを聞くのは主に産屋敷か悲鳴嶼、または静かに激昂するしのぶくらいである。

 

「御館様の計らいで今いる柱は交代で休暇をいただいた。その期間は一週間」

「え、長くないですか?」

「今は鬼の出没情報がほとんどない。無論ゼロではないが、強力な鬼は出てきていない。嵐の前の静けさかもしれんが、柱は今のうちに休んでおくように言われた」

「……わかりましたよ。つまり仕事は来週からってことですね」

「そうだ」

「承知しました。でも身体が鈍らない程度に鍛錬するのはいいでしょう?」

「そのくらいは良いだろう。適度な運動は健康にも繋がる」

「同じことをどっかの世話焼きに言われたなぁ」

 

その言葉に悲鳴嶼は頭の中で小柄な少女の姿を思い浮かべる。いや、盲目である彼は胡蝶しのぶの姿をしらない。『胡蝶しのぶ』という存在を頭に浮かべたというべきだろう。

 

「わかりましたよ。御館様がそこまで気にかけているとは思わなかったな」

「御館様は我々だけでなく全ての隊員のことを気にかけてくださる。無道も先代影柱のように御館様のご寵愛を素直に受ければ良い」

「どうも捻くれ者でね。無償の寵愛ってのは、気持ち悪くて受け付けないんすわ」

「…………」

 

その言葉に悲鳴嶼は、内心で遠夜のことを憐む。無償の愛を受け付けないというのは、人を信じられない証拠である。必ず人と人の間で成り立つのは等価交換。または一方的に搾取されるだけの環境で生きてきたのだろう。その予想が合っていたとしたら、どれほどの苦悩がこの青年の過去にあったのか。それを想像するだけで悲鳴嶼は涙が溢れてきた。

 

「はぁ〜あ、稽古もできないならどっか食べ歩きでも行くかなぁ。いや、そろそろ継子の様子見にいくか」

 

その言葉に悲鳴嶼は固まる。

 

「無道」

「はい?」

「今、継子といったか?」

「ええ」

「継子がいたのか」

「ええまぁ。去年くらいですかね、できたのは」

「…………」

「今、多分俺みたいな根無草が継子の面倒なんか見れるのかって思ったでしょう?」

「……正直思ったぞ」

 

その言葉に遠夜は苦笑する。実際そう思われても仕方ないし、そもそも普段の修行は他人に丸投げしている。

 

「まぁ、そう思われても仕方ないですね。実際普段面倒見てるのは先代影柱の父親ですから」

「ほう、日永の」

「ええ。俺がやってるのは全集中の鍛錬と、影の呼吸の指導、あとは氣の指導ですかね」

「そうか、お前にも弟子が……」

「いやそれでまた泣かないでくださいよ……親かなにかですか」

「それでも、私は嬉しい」

「はいはいさいですか。ま、そういうことなんでこれで」

「待て、まだ話は終わっていない」

「えぇ〜まだなんかあるんですか?」

「この一週間の休暇のうち、最後の三日は空けておけ」

「なんでです?」

 

 

 

 

 

「御館様が温泉宿を用意してくださっている」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

御影山

 

そう呼ばれる山の中腹あたりに遠夜の目指す藤の紋の家はあった。

 

「ごめん下さーい」

 

遠夜がそう声をかけると、門が内側からひらいた。そして顔を覗かせたのは優しそうな顔をした中年の男性だった。

 

「やあ、遠夜くん。待っていたよ」

「ご無沙汰、ってほどでもないですかね。お久しぶりです、雲海さん」

 

無道雲海。日永の父親であり、遠夜の育て親でもある男性である。柔らかな雰囲気は日永そっくりだ。

 

「元気そうでよかった。しかしびっくりしたよ。急に来るって言うんだから」

「急遽休暇の指令が来ましてね。普段は仕事で寄る暇はないので、せっかく暇ならこちらに来ようかと。継子の稽古もつけてやらねばなりませんしね」

「夕霧くんも喜ぶよ。さ、あがってあがって」

 

そういって雲海は遠夜を中に招き入れた。

 

「……先に、兄さんに挨拶してきます」

「うん、そうして欲しい。そのあとはみんなでご飯を食べよう。鳴海が腕に寄りをかけて作ってくれたよ」

「ありがたいです」

 

そう言って遠夜は仏間へと足を進めた。

 

ーーー

 

「……久しぶり、兄さん」

 

線香を上げて手を合わせる。仏壇には『無道日永』と書かれた札があるだけで、それ以外はなんの変哲もない普通の仏壇だった。供物として生前胡蝶カナエに贈られた耳飾りが添えられている。

 

「……休めって上から叱られちったわ。ちゃんと毎日寝てるから休んでるとは思うんだけどなぁ。どーも他から見たら休んでないように思えたらしい」

 

返事は当然ないが、遠夜は話続ける。

 

「……まだ、兄さんみたいにはできないわ、色々と。これでも頑張ってるんだけどねぇ」

 

そう呟くと皮肉げに遠夜は口元を歪める。

暫し無言になると、遠夜は立ち上がった。

 

「……また来るよ」

 

そう言って仏間から出て行った。

 

仏壇に添えられた耳飾りが悲しげに太陽の光を反射した。

 

 

 

 

 

 

 

「師匠!」

 

仏間を後にし、食堂へと足を進めていると背後から元気な声がかけられた。

 

「おう夕霧、元気そうだな」

「はい!師匠も元気そうですね!」

 

遠夜に声をかけたのは、夕霧と呼ばれる少年だった。

夕霧は一年ほど前に鬼に襲われていたところを遠夜が助けた少年だった。両親はいないらしく行く宛がないということで遠夜は少年を日永の生家である雲海の家に預けた。自分の本当の名前も知らなかったが、少年の周囲の人間はあまり関わろうとしなかったため名前を少年は知ることができなかった。そこで預けられた雲海は、遠夜が少年を預けに来た日は非常に綺麗な夕霧が立ち込めていたという理由で少年を『夕霧』と名付けた。少年も気に入ったらしく、その名を名乗るようになった。

 

「先程鳴海様からこちらに師匠が来るという話を伺いました」

「まぁ急な話だったがな。暇になったから、っていう理由だけど」

「あまりにも急だったらので鳴海様怒ってましたよ!」

「あー……まぁ、うん。急に決まったことだし許してくれるだろ」

「『どんな理由であっても報連相できない遠夜は一発殴る』って息を巻いてました!」

「おいおい……勘弁してくれよ……」

 

そう言いながら遠夜はげんなりした表情を見せる。帰ってくるんじゃなかったかと思い始めるほどこの後の展開が怖いのだろう。

内心で諦めながら、身体中の氣を練り上げる。これで鳴海の拳を受けても致命傷は避けられるだろう。

 

「致命傷負わせるほどの拳ってなに」

「すごい……静かだけど、力強い氣だ」

「お前もこのくらいできるようにはなってもらうからな」

「はい!」

 

そう言って遠夜は食堂の扉を開ける。

 

すると目の前に芋が飛んできた。

 

「こんの、馬鹿息子!」

「おうっ⁈」

 

飛んできた芋は回避したが、直後に放たれた拳は避けきれず腕で受け止めた。

 

「いきなり、ですかい」

「帰ってくる時は前もって連絡しろっていつもいっとるだろ!」

「急に休暇出されたんだから仕方ないでしょう」

「はい言い訳はいいから!」

「ぬぅ!」

 

凝で氣を集中させた腕で防いだにも関わらず、鳴海の放った拳は遠夜の腕を痺れさせた。

無道鳴海。日永の実母であり、雲海の嫁。さらには遠夜の育て親でもある。ご覧の通りすぐに手が出て非常に短気である。

 

「全く……日永は律儀に毎週文を出してきたってのに、あんたは手紙の一つもよこしやしない。たまには手紙でもよこしなさいよ」

「気が向いたら書きますよ」

「鳴海は遠夜のことが心配なんだよ」

「どーも」

「はぁ……もういいわ。ほら、すわんなさい。ご飯食べましょ。夕霧、手伝ってくれる?」

「はい!」

 

そう言って鳴海は遠夜を食卓に座らせ、夕霧は大皿を運び始めた。

遠夜が座ると、正面に雲海が座った。

 

「休暇は、どれくらいなんだい?」

「一週間です。最後の三日は予定が入ったので四日ほど世話になります」

「そうか、短いね。でも僕達はいつでも遠夜が帰ってくるのを待っているよ」

「でも帰ってくるときは必ず早めに言いなさいよ!今日だって慌てて食材買い足したんだから」

「それは申し訳ない。で、あの人(・・・)は?」

「今日の夜は帰ってくるみたいよ。あなたが風来坊になったのはあの人の影響?」

「さぁ」

「やれやれ……まぁいいわ。じゃ、食べましょ。夕霧、ありがと」

「いえ。いただきます!」

「いただきます」

 

手を合わせて箸を持ち、食事を始める。

 

どこにでもあるような家族団欒の風景だったが、遠夜は終始手拭いを取らなかった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ふぅ……」

 

檜の風呂に浸かりながら天井を見上げる。

 

「こんな気楽に風呂につかったのは久々だな」

 

手拭いを外したため露わになった目で浴室を眺めながらそう呟く。柱である以上、遠夜は常にやることに追われていた。当然といえば当然であるが、柱はあまり休む暇はない。加えて遠夜はその休みも『鬼を殺すために必要なこと』に費やしている。実質無休と変わらないため風呂にゆっくり浸かることなどほぼなかった。なんなら湯船には浸からず身体を清めるだけで終わらせることの方が多いまであった。故にこれほどゆっくり湯船に浸かるのは久々だった。

 

「師匠、湯加減はどうですか」

 

浴室の外から夕霧の声が聞こえてくる。ここまでもてなされるのはあまり慣れていないが、遠慮するような場所でもないため素直にもてなされる。珍しく素直である。

 

「ちょうどいい。もうちょいしたら出る」

「隊服は鳴海様が洗ってくださるようなので、着物をこちらに出しておきますね」

「へーい。あ、夕霧」

「はい?」

「俺が風呂出たら少し稽古つけてやる」

「え、せっかく風呂入ったのに?」

「お前に稽古つける程度で汗ばむほど落ちてねーよ」

「お、俺だって精進してるんですからね!」

「はは、円も識もできねーひよっこがなに大口叩いてんだ」

「ぐっ……」

「ほれ、もう少しで出るからそれまで自分で鍛錬してろ」

「はい!」

 

夕霧はそう言って去っていった。

 

「…………」

 

湯船に浸かりながら夕霧のことを思い出す。

夕霧と初めて出会った時、夕霧は酷くやつれ、みすぼらしい格好をしていた。孤児がそうなることは、残念ながらそう珍しいことではない。年号が大正になって多少は改善されたのかもしれないが、都心部である東京以外はまだまだ明治の時と大差ない。

街の片隅の、金を持たない人の溜まり場に夕霧はいた。鬼の情報があり、情報収集のためにそこに遠夜が赴いた時に出会った。出会った時の夕霧は髪は伸び放題で全身垢だらけ。僅かに悪臭もしていた。そういう子供は他にもいたが、夕霧はその中で一番年上の少年だった。一番年上故に他の子供の面倒も見たりしていたおかげか、夕霧以外の子供はそこまで痩せ細ったりはしていなかった。なんなら夕霧が一番痩せていたまであったが、そのおかげか夕霧は子供達に慕われていた。

 

その時遠夜は夕霧に鬼の情報がないか聞いた。しかしその時夕霧はなにも知らなかったため情報はなかった。その付近にはいないと判断した遠夜はそのままその場を後にした。

 

しかしその次の夜、夕霧以外の子供は皆鬼に喰われて死んだ。

 

その鬼の血鬼術は『気配を消す』ことに特化しており、遠夜の円でも見つけることができなかった。血鬼術は殺傷能力は皆無なものであったが厄介なものであり、どうにか隙をついて殺すことはできたが遠夜が戦った鬼の中で厄介さだけなら五本指に入るものだった。

そしてなぜ夕霧だけ生き残ったかというと、夕霧は夕方に川に水を汲みにいっていたが、桶の重さにバランスを崩し足を捻ってしまった。そのため帰るのが遅くなり、鬼と鉢合わせにならずに済んだ。正確にいうと夕霧が帰って来た時には子供達は皆殺されており、事態を読めなかった夕霧は『気配を殺して』茂みの中に潜んでいたのだ。

 

全てが終わると、遠夜によって保護された。足腰が立たなくなっていたため担いで付近の藤の紋の家に預けた。

 

翌日遠夜が様子を見に行くと、夕霧は弟子にして欲しいと懇願してきた。弟子を志願した理由を遠夜が聞くと、夕霧はこう答えた。

 

「貴方みたいに剣を自在に操れるようになりたいんです!それに、面白そうじゃないですか!」

 

その言葉を聞いて遠夜は理解した。

 

 

この少年も、自分同様心が壊れていると。

 

 

普通こういう時、『殺された子供の復讐』や『自分と同じような目に合わせたくない』という理由が思いつくが、この少年はそんなこと知るかと言わんばかりに目を輝かせながら『自分のためだ』と言い切った。この少年はまだ幼い身でありながら、自分はほとんど食べずに他の子供に食べさせたりと身を粉にして尽くしてきたのだ。そんなこと大人でもそうできない。なのにやってのける精神をこの若さで持つ以上、どこか歪んでいてもおかしくはない。

 

遠夜としても弟子……継子を作ること自体はいい。自分も柱へと至った以上、影の呼吸を誰かに繋いでいく必要がある。無論全ての柱が継子を持つわけではないし、独自の呼吸は作り上げた人物にのみ適正があるものもあるため継子を作りたくても作れない可能性も大いにある。だが影の呼吸は歴史は浅いが数代に及んで受け継がれてきたものだ。遠夜としても、繋いでいく義務があると考えている。

 

それに遠夜は夕霧の才能を見抜いていた。夕霧は遠夜が鬼と戦っている間、鬼に一度も見つかることなく長時間隠れ抜いた。鬼は夜しか活動できないため夜目が効く。いくら茂みの中とはいえ、鬼の目ならば見つけることは容易い。加えて鬼は感覚も鋭いものがいる。故に茂みの中に隠れた程度では普通に見つかる。だが夕霧は隠れ抜いた。それは夕霧が『自らの気配を完全に絶つ方法』を無意識のうちに習得しているということだ。日常生活では基本目覚めることのない才能だが、鬼殺隊でその才能は役に立つ。とりわけ、影の呼吸とは相性のいい才能だ。影の呼吸は自らの気配、呼吸を自在に操れるようになる必要がある。故に自らの気配を完全に絶つことができるのは、影の呼吸を習得するための第一歩をすでに習得していることになる。 

だがいくら才能があるとはいえ、鬼殺隊への修行は非常に苦しく、厳しいもの。修行で根を上げるような者では到底鬼殺隊にはなり得ない。だから遠夜は聞いた。

 

「修行は一切手を抜かない。お前が限界だと言ってもできるまでやらせる。気合と根性だけで乗り切れるほど甘いものじゃない。死ぬ可能性だってある。それでもやるか」

 

そして夕霧はこう答えた。

 

「死んだら俺はその程度だったってことでしょ?やりますよ!どうせここにいても遅かれ早かれ死ぬんだし」

 

そう言って笑った。生半可な覚悟ではないことと歪みきった思考を感じ取った遠夜は諦めて夕霧を継子として扱うことにした。

 

しかし遠夜の屋敷には遠夜しかいない。結局頼れるのは雲海のみだったため雲海の家に夕霧を預けることにした。

 

修行はやるべきことを伝え、あとの面倒は雲海や鳴海に見てもらっていた。遠夜は柱故に常にその修行を見てやれるわけではない。そこで雲海と鳴海に育手の代理をやってもらっている。修行内容は遠夜が細かいところまで文章に残しているため雲海と鳴海にもできるし、二人は氣の使い手であるため氣の指導もできる。

 

「……実際丸投げに等しいな、これ」

 

時々指導しにきてはいるがほとんど二人に丸投げしている状態に遠夜は苦笑し、湯船から上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず、練を見せてもらう」

 

着物に着替え、道場で鍛錬をしていた夕霧に最初に言った言葉はそれだった。

 

「はい!」

 

夕霧は構え、自らの体を巡る力に集中する。

呼吸を整え、練り上げた氣を一気に放出した。

 

「練!」

 

放出された氣は周囲の空気を揺らす。

 

「次、凝」

「はい!凝!」

 

ゆっくりではあるが、放出された氣が構えた手に集中していく。

 

「ぬっ、ぐっ……」

「……ん、とりあえず及第点か。よし、纏」

「……はぁ!はっ、はっ…ひぃ…」

「まだ凝の維持は難しそうだな。氣の修行は練の長時間維持、凝を滑らかに行うこと、あと常時纏だな」

「練の長時間維持かぁ……」

「まぁ見た感じ言われたことはちゃんとやってるみたいだな。毎日纏と練はやってるのがわかる」

「ありがとうございます…」

「全集中の呼吸はまだみたいだな。とにかく肺だ、肺を強くしろ。呼吸は肺で行うから肺が貧弱だと話にならんぞ」

「毎日山下り山登り素振りしてるんですけど……」

「足りねぇ。その程度で習得できるほど甘いもんじゃねぇよ、全集中の呼吸は。あと一年は同じ修行だ。できるようになる頃には円くらい使えるだろ」

「はい……」

「じゃあ次組み手だ。好きに打ち込んでこい」

「はい!」

「あ、練維持したままな」

「えええ!」

 

 

 

ーーー

 

 

 

「よし、ここまで」

「あ…ありがとう、ございました……」

 

数分後にはボコボコにされて道場に転がる夕霧と汗一つかかずに涼しげな遠夜がいた。

 

「流が遅すぎる。円がまだできてないから識ができないのも仕方ないが、回避が下手で話にならん。訓練項目に回避も加えておく。鬼の攻撃は基本強力だ。防御より回避の方が体力を減らさずに済む」

「承知しました……」

「こっちは足しか使ってねーのに擦りもしなかったぞ。体術もまだまだだな」

「……はい。ていうか師匠本当に見えてないんですよね?」

 

あまりにも見えてるかのように攻撃を回避され続けてはそう感じてしまうのも無理はない。

 

「見ての通り視覚は手拭いで塞いでる。だが円の効果範囲内なら見えてるのと大差ない。それに識が使えるようになれば回避など造作もない。攻撃には必ず意思がある。それを識で読み取る。それができなきゃ影の呼吸を習得なんてできねーよ」

「はい…」

「ほれ、最後に纏と練だ。そのあとは纏したまま日常生活」

「はい!」

 

その後、夕霧の修行に少し付き合っていると、遠夜の円に知っている気配が二つ追加された。

 

「……あの人はわかるけど、なーんであの人はいるのかねぇ」

 

そう呟きながら遠夜は道場を後にし、気配の方へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うまい!もう一杯!」

「おーいいですねぇ煉獄さん、わかってらっしゃる」

「…………なにやってんすか、煉獄さん、陽明さん」

「おお、無道!この前の柱合会議以来だな!」

「どーも遠夜サン、元気そうっすね」

 

居間に行くと炎のような髪をした男、煉獄ともう一人帽子を目深に被った甚平姿の男が酒を飲み交わしていた。

 

「……なんでここにいるんです?」

「いやなに、昨日任務でたまたま会えたのでな!この後ここの藤の紋の家に行くというので同行させてもらったのだ!」

「鬼の情報を探っていたら付近に煉獄サンがいらっしゃったのでねぇ。元よりここに戻ってくる予定だったんすけど、煉獄サン今日の宿がないようだったので一緒にどうかと。ここ藤の紋の家だしなにもおかしくはないっすよ」

「…………なるほど」

 

煉獄の無駄にでかい声と陽明の胡散臭い話し方に遠夜は頭痛がしてくるような錯覚に陥る。遠夜にとって数少ない苦手に分類される人間が二人同時に来れば頭痛もしてくる。

 

「しかし陽明殿!この酒はうまいな!どこの酒だ⁈」

「これはこの前越後の方に行った時に酒蔵の蔵主にもらったんすよ。辛口ですっきりしてて飲みやすいでしょ?」

「うむ!あまり酒は嗜まないが、この酒はうまいのはわかるぞ!」

「でしょ〜。ほら、無道サンも一杯どうです?今休暇でしょう?」

「……まぁそうですけど」

「共に飲もう!俺は無道のことをあまり知らないからこの機会にお前のことを知りたい!」

 

そう言って煉獄は遠夜に杯を渡す。

もともと煉獄は熱い精神を持っており、時折人の話を聞かない。非常に面倒見はいいし、実力も申し分ない。だが遠夜は真っ直ぐすぎるほどの精神を見るたびに眩しくて直視できない。

だがこれは逃げられそうにないため大人しく杯を受け取る。

 

「……ん、これはうまいな」

「そうだろう!随分といい酒みたいだからな!酒をあまり嗜まない俺や無道でも飲めると陽明殿が言っていた!」

「あっしは酒よく飲みますけどねぇ。まぁ柱の皆さんは酒を飲む暇なんてそうありはせんでしょう。基本柱は常にやるべきことに追われていますからねぇ」

 

そういって陽明は酒を一気に煽り、ちゃぶ台に置かれていた佃煮を口に放り込む。

 

「ん〜、この佃煮もいいっすねぇ。酒のつまみに佃煮ってどうかと思ったんすけど、結構合うもんですな」

「よもやこれほどいい酒とつまみを意外な所でいただけるとは!小さな幸運に感謝だ!」

「……で、陽明さん。あんたが戻ってきたってことはとりあえずひと段落ついたんだろ?状況はどうなってんだ?」

 

遠夜がそう指摘すると陽明は先程までの飄々とした態度は崩さず、声に真剣さを混ぜながら話し始めた。

 

「……御館様にはもうお伝えしましたが、鬼舞辻の大まかな居場所は掴みました」

「なんと!それが本当ならすぐにでも」

「正確な場所ではありません。奴も移動している可能性がありますし、どうやら奴は日常では人間に紛れて生活しているようです」

「なぜそれがわかった」

「別に実際に見たわけじゃありませんが、こうも正確な居場所が掴めないとなると、やはり人に紛れているからとしか言えないでしょう。奴の性格からして、人気のないとこにひっそりと隠れるなんてことはしないでしょうし」

「陽明殿!まるで鬼舞辻の性格を知っているかのような口ぶりに聞こえますぞ!」

 

煉獄がそう聞くと陽明は残っている右目で煉獄を見据える。

 

「そりゃそうですよ。あっしは鬼舞辻に接触したことのある数少ない柱の一人ですから。まぁ、元ですけどね」

 

 

ーーー

 

 

「元柱なのは知っていたが、よもや鬼舞辻に接触したことがあるとは!よもやよもやだ!この短い世代に二人も鬼舞辻と接触した者がいるとは!」

「あっしは運の良いことに上弦の鬼にも鬼舞辻にも接触できた。おかげで左目と左耳、頭皮の左半分持ってかれたんすけど。……あれ、運が良いって言っていいんすかねこれ」

「どっちにも接触したのにまだ生きてるってすげぇ強運でしょ。歴代の柱は上弦に接触して死ぬ者がほとんどだ」

「それもそっすね。まぁあっしは逃げ足と隠れ身なら現役の柱にも負けませんよ」

「さすがは情報屋!我々も見習う必要があるな、無道!」

「え、見習うのそこ?」

 

陽明黒雨。元雨柱であり、現在は産屋敷一族に個人的に仕える情報屋である。基本鬼の情報は隠が探ったりするが、十二鬼月等の強力な鬼の情報は探るだけでも命がけとなる。鬼舞辻の情報ともなれば正直、鬼に対して対抗手段のない隠は情報を得られず死ぬ場合の方が多い。そのため鬼舞辻や上弦の情報を探るにはそれ相応の実力がいる。そのため元柱であり、隠密行動が得意であった陽明黒雨は産屋敷に個人的に仕える情報屋となった。胡散臭い見た目と話し方ではあるが、話術は相当なものであり、相手から信頼を得ることも警戒されることも自由自在。さらに鑑識眼は一級品であり、弟子も多く存在する。単純な戦闘能力は現役の柱には劣るが、下弦の鬼には引けを取らない。

 

「鬼舞辻は非常に自尊心が強い奴っす。なのでわざわざ自分が人目を避けて暮らすなんて考えは出てこないんでしょう。目立つようなことはしてないんでしょうけど、人前には平然と出てくるような生活してると思います。奴は気配の消し方がうまい。完全に消すのではなく、人と遜色ない程度の気配を放つことで周囲に溶け込む。だからなかなか見つけられない。見た目も人そのものでしょうからねぇ」

「…………だからこの前俺にあんな依頼持ってきたんですか?」

「ええ。鬼舞辻らしき匂いを探れなくなってしまったんで各地を巡って円で気配を探ってもらいました。あっしの鼻も昔ほど効きませんから」

「あれもうしんどいんでやりたくないです」

「必要になればやってもらうんで」

「ええ……」

「うむ!鬼舞辻の痕跡を辿れるのならばそうすることはもはや義務とも言えるだろう!それが我ら鬼殺隊の役目なのだから!」

 

煉獄と陽明の言葉に遠夜はげんなりした表情をしながら酒を煽った。あまり飲みなれていない遠夜にも飲みやすい味であり、あまり酒らしさを感じない酒であるため飲み過ぎてしまわないかという考えが脳裏をよぎった。

 

「しかし、遠夜サンはお酒飲めるんすねぇ。日永サンは全く飲まなかったのに」

「そういえばそうだな!日永とは何度か食事を共にしたが、酒を飲む場面には一度も出会さなかった!」

「俺は当時飲める歳じゃなかったんで詳しくはなんとも。ただ女性のカナエさんと比べても全然飲めなかったらしいです」

「ほぇー、そらまた難儀ですなぁ。遠夜サンはそうじゃないみたいなんで一緒に飲み明かしましょう!」

「うむ!実に楽しそうだ!柱である我らといえど休息は楽しんでこそだろう!それに俺は無道のことをもっとよく知りたい!」

「やっぱこうなるよねぇ……」

 

胡散臭いのと暑苦しいのに挟まれて普段の飄々とした態度が崩れ、苦笑いする遠夜は少年時代の遠夜に少し似ていた。

 

 

そして彼等は深夜遅くまで酒を飲み、遠夜は翌日見事に二日酔いで頭を痛めていた。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

夜、皆が寝静まった頃に遠夜は一人で縁側にいた。昨日は陽明と煉獄に付き合って遅くまで飲んでいたが、昨日飲んだ分今日は全く飲まなかったため酔いは完全に抜けていた。

 

縁側に座りながら手拭いを取る。開放された遠夜の瞳には無数の星と三日月が映された。

 

「…………」

 

虫の声が聞こえ、わずかにそよぐ風が心地いい。日中はかなり暑かったが、夜になって気温も下がり過ごしやすい気候となった。

 

「無道」

 

声が聞こえたためそちらを向くと、煉獄がいた。普段の隊服ではなく、雲海が用意したであろう着物を着ていた。

 

「どーも、煉獄さん」

「敬語でなくていいと、何度も言っているはずだが。我らは同い年であろう」

「柱としては先輩ですからね。それに煉獄さんは柱でも指折りの実力ですから」

「胡蝶はどうなる。彼女の実力も大したものだし、鬼殺隊への貢献度は俺とは違う方向で大きいだろう」

「あいつは古い馴染みなんで。今更敬語なんて使えませんよ」

「それもそうか。ところでこんな夜更けになにをしている」

「ちょいと寝付けなくて。黄昏てただけですよ」

「奇遇だな、俺もだ。やはり最低限の鍛錬しかしていないだろう。体力が有り余っている」

 

夜ということもあり煉獄の声は普段と比べてかなり小さい。普段からこうしてくれないかなと内心で遠夜は思った。

 

「隣いいか?少し話そう」

「構いませんよ。茶でもいれてきましょうか?」

「頼む」

「緑茶じゃ寝つきがさらに悪くなりそうなんで、ほうじ茶いれてきます」

 

そう言って遠夜は一度席を立った。

 

ーーー

 

「無道」

 

茶を一口飲んだ煉獄は遠夜に問いかけた。

 

「普段なぜ目に手拭いを巻いているのだ?お前は日永殿とは違い盲目ではないのだろう。傷があるようにも見えない」

「ああ、これですか」

 

そう言って遠夜は傍らにある藍色の手拭いを撫でる。

 

「これで視覚を封じて、他の感覚を鋭くする訓練をしているんですよ」

「ほう?」

「氣の技術の中に『識』ってのがありまして、それを習得するには五感全ての発達が必要不可欠です。ああ、味覚はいらないけど。日常生活において最も頼られている感覚は『視覚』。それに俺はどうも目が良くて戦闘が目に頼りがちになってました。だから他を伸ばすために視覚を普段は閉じています」

「なるほど、日常を修行としているわけか!」

「そうですね」

「だが、他にも理由がありそうだな」

「あれ、わかりますか」

「うむ、なんとなくだがな。日永殿が言っていたのだが、なんでも影の呼吸は特殊な呼吸らしい。それが関係しているのではないか?」

「あー、まぁそうですね」

「特殊とはどういったものなのだ?俺の炎の呼吸とはどう違うのだ?」

「珍しく質問が多いっすね」

「君は自分のことを全く話さないからな」

「……そうですねぇ、そうかもしれません。

影の呼吸はもともと盲目の人が作った呼吸なんですよ。その人は水の呼吸の使い手だったらしいんですけど、鬼との戦いで視力を失ってしまったんです。それでその人が盲目でも戦えるような型を作った呼吸、それが影の呼吸です」

「なるほど、水の呼吸からの派生した呼吸だったのだな」

「ええ。まぁ珍しいのはその影の呼吸を最初に作った人は柱になれなかったのに継承が続いていることですかね」

「なに?」

「派生してできた呼吸は全てが継承されるわけじゃない。基礎となる炎、水、岩、風、雷の呼吸とは違ってそれらを基礎とした独自の型ですからね。その作った本人にしか使えないことが多い。今だと俺が知ってるのは花の呼吸くらいですかね、派生型が継承されてるの」

 

柱は基本継子を作り自らの型を継承させる。育手が継承させることも多々あるが、育手は基本となる炎、水、岩、風、雷のどれかを教えて継承させる。しかし人によってはその教えられた型が合わない場合がある。柱は継子を取り、その継子がどういう型が合うのかを試行錯誤しながら修行をつける。基礎の呼吸をそのまま極めるか、それとも独自の型を作るかも柱がある程度面倒を見ることもある。

 

「柱にも独自の型を使う者は多い。だがそれを継承できるかはわからないからな。我が煉獄家は代々炎の呼吸を継承しているが、基礎となる呼吸だ。そう考えると、派生型を家系で継承するのは珍しいな」

「煉獄さんのとこはちゃんと家系で継承してるんでしょうけど、うちは違いますよ」

「そうなのか?」

「ええ。だって、雲海さんは影の呼吸の使い手ではないでしょう」

「……確かにそうだな」

「影の呼吸はその素質がある奴ならば誰でもいいんですよ。無論炎の呼吸も煉獄家のみに伝えているわけではないでしょうけど、影の呼吸はもっとゆるい。素質があれば孤児だろうと犯罪者だろうと誰でも継承します。でも伝える相手は一人だけ。どんなに素質がある者がいてもその原則だけは破らない。その結果、いつか途絶えるものだとしても、ね」

 

そう言って遠夜は空を見上げる。その瞳には月や星が映されているはずなのに、なにも見えていないように煉獄は感じられた。

 

「影の呼吸は初代の使い手が壱ノ型の原型となるものと壱ノ型を作り、伍ノ型までを二代目の使い手が作り上げました。その二代目が、初代影柱です」

「無道は確か、四代目影柱だったな」

「ええ。影の呼吸はもともと『無明の舞』と呼ばれるあらゆる奇襲や攻撃に対応できる舞が原型になってます。そして影の呼吸は相手の呼吸を知り、自分の呼吸を相手の呼吸に合わせ、そして相手の呼吸を乱すことを真髄にしています。だから影の呼吸は壱ノ型が基礎であり、奥義なんです」

「炎の呼吸とは随分違うのだな」

「歴史も浅いですからね。だから身体能力を発揮していくタイプの鬼にはめっぽう強いですけど、強力な血鬼術を使う鬼には相性が悪いです。だからそれを補うために、弐から陸ノ型がある」

「……うむ、よくわからないな」

「まぁ実際に見ないとあんまり想像つかないかもしれませんね」

「そういえば俺は、無道と共に任務に赴いたことはないな」

「そうでしたっけ?」

「ああ。だから影の呼吸がどのようなものなのか見たことないのだろう。そうだ!いいことを思いついたぞ!」

 

これは嫌な予感がするぞ、と遠夜は内心で冷や汗をかき始める。向上心が高く、好奇心旺盛な煉獄のことだ。この後なにを言い出すか何となくわかってしまう。

 

「明日、俺と手合わせしよう!」

 

ほらやっぱりと遠夜は天を仰ぐ。そして即答した。

 

「嫌です」

「そう言うだろうと思ったが、鳴海殿の協力を仰げば従わざるを得ないだろう!」

「それは卑怯なんじゃないですか?」

「なんと言われようが俺はお前と手合わせをするぞ!そして終わったら共に食事をしよう!俺がいい飯屋を知っている!心配するな、俺の奢りだ!」

「話聞いてます?」

 

知らぬ間にどんどん話を進めていく煉獄に顔を引きつらせながらため息をつく。

 

「これは逃げられんか……」

 

やれやれと思いながら頭をかく。隣では煉獄の笑い声が夜空に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

そして翌日、遠夜は一日中煉獄の相手をさせられたのだった。

 

 





三体行(基礎技術)
纏:氣を身体の周囲に留める技術
練:氣を練り上げ、全身を大量の氣で覆う技術
絶:身体から発せられる氣を完全に絶ち、気配を無くす技術。極度の疲労や負傷を回復させる時にも使う。

応用
円:氣を広げて範囲内に入ったものの気配を敏感に感じとる
凝:氣を一か所に集中させる
流:全身の氣の流れを操ること
堅:練を維持して、多くの氣を全身に纏った状態を維持する技術
硬:全ての氣を一か所に集中させる
周:武器や道具に氣を纏わせる技術
識:相手の意思や気配を敏感に感じ取る技術。習得すると攻撃の先読み等ができるようになるが、円の効果範囲内でなければ使えない。極めると狭い範囲内ならば識を使える。所謂見聞色の覇気。

陽明(ようみょう)黒雨(くろさめ)
年齢 48歳
身体 177cm
体重 65キロ
趣味 人間観察
好きなもの 楽しいこと全般
嫌いなもの 不明

使用呼吸 雨の呼吸

所謂『掴み所がなくて胡散臭く謎めいているけど戦うと強いおっさん』。BLEACHで言う浦原喜助そのもの。完全に作者の好みで作り出された。
元柱。普段から帽子を目深に被って顔の上半分を隠しており、服装は着流しか甚平に漆黒の羽織、檜でできた杖にゲタという格好。顔の左半分が火傷のような跡がついており、見た目通り左目と左耳は効かないが炭治郎同様鼻が効く。杖は普段はただの杖だが仕込み杖であり抜くと日輪刀が出てくる。まるっきり浦原喜助。日輪刀の色は群青色。そのうち少し戦うと思われる。

無道雲海(うんかい)
年齢 58歳
身長 167cm
体重 52キロ
趣味 盆栽
好きなもの 家族、鳴海の料理
嫌いなもの 鬼

慈愛に溢れたお父さん。まさに菩薩のような風格があるが、趣味の盆栽を壊されると一変して阿修羅になる。多分伊之助がここに来たら一瞬で阿修羅になる。
地主であり、御影山周辺の土地は全て無道家の土地。だからかなりお金持ち。

無道鳴海(なるみ)
年齢 55歳
身長 160cm
体重 49キロ
趣味 料理
好きなもの 家族、山菜の天ぷら、刺身
嫌いなもの 鬼、鬼殺隊

雲海の嫁。遠夜にはすぐ手が出るが、実の息子である日永にも手が出ていたから遠夜のことはちゃんと息子として大切にしている。過去に柱になった日永を拳一発で気絶させた伝説の持ち主。見た目と年齢が噛み合っておらず、未だに三十代に見られるとかなんとか。料理は絶品。

夕霧
年齢 11歳
身長 141cm
体重 32キロ
趣味 鍛錬
好きなもの 蕎麦
嫌いなもの 無し

遠夜の継子。氣と剣の才能は割とある方だが幼少期から自らの感情を殺すこど続けた結果、喜怒哀楽の哀が死んだ少年。鬼殺隊を目指す理由が遠夜のように剣を自在に操れるようになりたいというかなり不純な理由。修行一年目で凝を習得しているなど結構有望。
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