社畜の軌跡   作:あさまえいじ

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第十八話 《星見の塔》の戦い

―――七耀暦1206年5月21日 星見の塔 PM1:00

 

「どうやらお客さんがお見えのようだね」

 

 カンパネルラさんがそう言った。

 そうか、来たか。よし、休憩終了だ。これからはお仕事の時間だな。

 私は『ハード・ワーク』を変形させて、執行者モードに姿を変えた。

 

【では、お客人を出迎えねばな】

 

 私は執行者《社畜》の恰好に変わり‥‥‥‥掃除をすることにした。

 ここ、《星見の塔》の最上階は昨日からの酒盛りの影響で、ゴミが散乱している。折角お客さんを迎えるのに、これではいけない。

 

【では、《道化師》殿、《劫炎》殿、この場を片付ける故、少々離れていて下され】

「ハハッ、任せたよ」

「‥‥‥‥お前も律儀だな」

 

 そう言いつつ、ちゃんと離れてくれる先輩達。

 私は目の前のゴミを『ハード・ワーク』を袋状に変更して集めていく。そして、集め終わると‥‥‥‥

 

【『分け身』】

 

 分け身を作り出し、ゴミを持たせた。

 

【では、こちらが燃えるゴミ、こっちが燃えないゴミだ。後は頼んだぞ】

「ああ、了解した」

 

 分け身『ゲオルグ・ワイスマン』にごみを持たせると、転移した。

 部屋に転移してもらい、ゴミをクロスベル指定のゴミ袋に入れて、出しておいてくれるだろう。

 

「まさか、《白面》がゴミを持たされて、転移する姿を目にするとは思わなかったぜ」

「でしょ、こんな使い方するのは彼くらいだよ。中々に愉快な光景だよね」

 

 さてこれで綺麗になった。お客様を迎えるにあたり、相応しい場所だと言えるだろう。そして、最後に体調を整えよう。

 

【『神なる焔』】

 

 よし、これで先程まで飲んでいた影響は無くなるだろう。そういえば先輩達は体調は大丈夫なんだろうか?

 

【御二方は体調の方は宜しいか?】

「ああ、問題ねえ」

「僕も影響はないよ」

 

 ふむ流石先輩達、昨日の酒が今日に影響を与えない程度に留めていたとは、私は先輩達に勧められるまま飲んでしまったからな。少し気分が悪かったな。人に合わせるのは私には厳しいものがあったな。まあ、顔が赤くなったりしないようなので、分からないだろうが結構一杯一杯だった。次からは何とかしないと‥‥‥‥だがそれよりも、お客様のお相手をしないと、な。

 階段を駆け上がってくる足音が聞こえる。どうやらすぐそこまで来ているようだな。掃除が間に合って良かったな。

 そこに現れたのはリィン、アリサ、マキアス、エマ、セリーヌ‥‥‥‥後は誰だ?

 

「四年前の『ゴスペル』と同じく阻止させてもらおうか?」

 

 四年前、ゴスペル‥‥‥‥確か《福音計画》のときに、そういうオーブメントがあったことは資料で見たことがある。その時の関係者にいたのが、『オリビエ・レンハイム』と名乗った‥‥‥‥

 

「アハハ、流石に想定外すぎるんですけど!何やってんのさ、オリヴァルト皇子」

「はああっ‥‥!? 何で帝国の皇子がこんな場所に来てやがるんだ!?」

 

 ああ、そうだった、オリヴァルト皇子だ。確かお忍びでリベールに旅行されていて、その時牢屋に入れられたり、事件に関わったりしていたんだったな。

 しかし、何と呼べばいいんだ? とりあえず確認してみよう。

 

【まさかこのような場に来られるとは思いませんでしたぞ、オリヴァルト皇子、いやこの場では『オリビエ・レンハイム』とお呼びした方が宜しいか?】

「その通り、今の僕は一演奏家。クロスベルの熱い思いを僕なりに表現しに来ただけさ。故に『オリビエ』と呼んでくれたまえ!」

【了解した。オリビエ殿】

「うんうん、わかってくれる人がいてくれて嬉しいよ」

「何、和やかに話してるんですか!」

 

 マキアスがオリビエさんにキレた。

 わかってないな、こういう高貴なお方がお忍びがしたいと言われたら、それに応えるのが正しい社会人だ。ましてや帝国の皇族だ。帝国人ならそれに従うべきだぞ。相変わらずの貴族嫌いだな、マキアスは。そんな事では社会人としてやっていけないぞ。ちゃんとなんて呼べばいいかも確認しておかないと、今後で困るぞ、マキアス。

 

「しかし、魔女殿もいないが《怪盗紳士》もいないんだね? クロスベルにはいるらしいが、この場にはいないのかな?」

「フフ、言ったように《結社》でも色々会ってね。彼は《深淵》と気が合ったから今回は外れてもらったんだ。『幻焔計画』の奪還。その邪魔をされたくなかったからね」

「‥‥‥‥《怪盗紳士》はクロスベルに来ているだろう。ユウナの実家の隣でユウナの家族を見張っているんじゃないのか!!」

 

 リィンが大きな声を張り上げて言い放つ。

 見張っているのか、それに関してはイエス、と答えよう。

 

【ああ、クロフォード家は我が見張っているぞ】

「!!」

「‥‥‥‥君の仕業か、《社畜》君」

「さっきのアレもあるし、おめえ、そんなのも作れんのか?」

【御二方の質問には両方とも、その通りです】

「やれやれ、折角だしご披露してあげたら。君の『分け身』をさ」

【了解した。『分け身!』】

「!!」

 

 ご要望通り、『分け身』を用意した。だが、まだ執行者《社畜》を二体用意した。そして、その二体の分け身が仮面とローブを外すと、一体はアレイスターさん、改め《怪盗紳士》、そしてもう一体はゲオルグ・ワイスマン、《白面》の姿で登場させた。

 

「な! その姿は‥‥‥‥ゲオルグ・ワイスマン! そして我が美のライバル《怪盗紳士》!」

「ハハッ、驚いたかい。《社畜》が『分け身』を改造して作ったんだ。中々似ているだろう、オリヴァルト皇子は二人に会ったことがあるし、是非ともご感想を聞きたいなあ!」

【我も聞きたい、何処か当人と異なる点はないか。今後の参考とさせてもらいたい】

 

 実際の人物に会ったわけではないので、何か気になる点があれば教えて欲しい。ご意見は是非とも頂きたい。

 

「‥‥‥‥驚いたな、瓜二つじゃないか。『分け身』だと言われなければ分からない程だよ」

【お褒めに預かり光栄だ、オリビエ殿】

 

 結社の人間以外からの意見は貴重だ。今後の作戦でも使えるかもしれないし、潜入捜査にも使えるだろう。今のうちにたくさんの事が出来れば、今よりももっと多くの仕事を回してもらえるかもしれない。

 盟主様のため、結社のため、更なる技術の習得に励まないと、執行者としての立場も安泰ではないだろうし、スキあらばライバルたちが私の席を狙っていることだろう。

 私は今回の結果に満足せず、更に励まねばならないと決意を新たにした。

 

「‥‥‥‥確かに脅威だ。だが、これでハッキリした。執行者《社畜》、お前を倒せばユウナの家族は無事に助かる、ならばここで倒させてもらう!」

 

 リィンが私に向かって刃を向けて言った。

 え、ユウナちゃんの家族の無事は私が守っているというのに、酷い言いがかりだ。その上、人に向かって刃物を向けるとは‥‥‥‥これはお仕置きが必要だな。

 

【その意気や良し‥‥‥‥だが、其方に出来るか、リィン・シュバルツァー?】

 

 黒の闘気を放ちながら、リィンに問いかける。するとすぐに返答が届いた。

 

「当然だ!! ユウナの家族を守り、お前達の思惑も潰させてもらうぞ!!」

 

 いい目をしている、どうやら本気のようだ。

 

「どうやら、本気で迎え撃つ必要がありそうだね。それじゃあ《結社》の執行者、No.0とNo.Ⅰ、そしてNo.ⅩⅩⅠがお相手するよ」

「俺の中の『黒き焔』見事引きずり出してみろや!」

【我の力、とくと味わえ!】

 

 私は出現させた『分け身』を回収し、更に闘気を高める。

 

「Ⅶ組総員、全力で迎撃する! オリビエさんもお願いします」

「「「おおっ!」」」

「任せたまえ!」

 

 リィン達も気合十分なようだ。

 私達《結社》とリィン達の戦いが始まった。

 

 

side リィン・シュバルツァー

 

 戦いが始まってすぐに、《社畜》の姿が消えた。

 

「なに! どこに行った!?」

「これは転移です。気を付けてください!」

 

 俺は背後に気配と熱を感じて振り返った。すると其処に現れた社畜は手に炎を纏っている。

 

【『ヘルハウンド!!』】

「なっ! みんな躱せ!」

 

 俺の指示でみんなが炎の射線上から離れた。するとその炎が《劫炎》に直撃する。

 

「仲間割れか?」

「いや、違う!」

「シケた焔だ。本物を見せてやるぜ!『ヘルハウンド!!』」

 

 今度は《劫炎》が焔を放ってくる。先程の《社畜》の炎の比ではない、圧倒的な熱量を感じる。

 

「お任せ下さい、輝け『ゾディアックフォース!!』、皆さん、これで焔は一時的に対処できます」

「助かる、行くぞ《劫炎》!」

「へへ‥‥いいぜ、来な、灰の小僧」

 

 俺が《劫炎》に斬りかかると‥‥‥‥飛ばされた。

 

「さあ、席替えをしようか。君の相手は彼ね」

「な!」

 

 俺の目の前に《社畜》が現れた‥‥‥‥いや、現れたのは俺の方か。

 

「おい、カンパネルラ! 俺の獲物だろうが!」

「いやいや、君はあちらの魔女と放蕩皇子を頼むよ。後の二人は僕がやるよ。それに《社畜》が灰の騎士とやり合う方が面白そうだしね」

「てめえも大概趣味が悪いな」

 

 後ろの方で《道化師》と《劫炎》の声が聞こえた。だが、もう気にすることは出来ない。なぜなら目の前には《社畜》がいるから。

 

【やれやれ、《道化師》殿も味な真似を‥‥‥‥だが致し方なし。お相手仕ろう、リィン・シュバルツァー!】

「今度こそ届かせてもらうぞ、《社畜》!」

 

 《社畜》が左手に《剣帝》の剣を出して、俺と打ち合った。

 相変わらず重い、だがそう何度もやられるものか。

 俺は後ろに飛んで距離を作ると、太刀を納刀した。

 

「陸の型『緋空斬』!」

 

 俺は炎を纏った斬撃を放った。それと同時に駆けていく。

 

【ふんっ! この程度の攻撃で我は倒せんぞ】

 

 事もなげに『緋空斬』を払う、だがスキが出来たぞ《社畜》

 

「知っているさ、それくらい。弐の型『疾風』!」

 

 俺は一気に攻撃を払った直後を狙った。これなら‥‥‥‥だが、俺の思惑は外れた。

 ‥‥‥‥目の前から《社畜》が消えた。

 

【何処を見ている、我はここだぞ】

「なっ!」

 

 俺は背後から聞こえる《社畜》の声に反応したが、攻撃は止めれなかった。

 

【明鏡止水、我が太刀は静!‥‥‥見えた!『七ノ太刀・落葉!』】

「ぐわああああっ!!」

 

 俺は《社畜》の連撃の前に、大きなダメージを負ってしまった。

 一体何が起こったのか、分からなかった。そして今のは‥‥‥‥

 

【ふむ、何が起こったか分からないようだな。いいだろう、説明してやろう。まず其方の攻撃を弾いたのは間違いない。その後、『疾風』を私に打ち込んできたが、それを躱した。転移でな!】

 

 転移、それで俺の攻撃を躱したのか。だが、その攻撃は‥‥‥‥

 

【そして、以前見せてもらった八葉一刀流『七ノ太刀・落葉』、ありがたく使わせてもらったぞ。その結果が今の現状だ】

「くっ!」

 

 昨日の午前にジオフロントで俺が《社畜》に使った技だ。

 以前のサザーラントでは使用した直後に同じく使用され相打ち、いや上回られて倒された。

 そして今回はジオフロントで使った技を覚えておいて、今使ったのか、本当に厄介な相手だ。

 

【さて、どうする、リィン・シュバルツァー? ここで我の手で倒れるか、それとも逃げ帰るか。‥‥‥‥逃げるのならば後は追わんぞ】

 

《社畜》は倒れ込む俺に選択を迫る。

 ‥‥‥‥確かに今のままでは勝ち目がない。‥‥‥‥やはり使うしかないのか‥‥‥‥

 

「使いなさい、リィン!」

「! セリーヌ!?」

「鬼の力を使わなければ、アイツに勝ち目はないわ! 安心しなさい、暴走はさせないわ。アタシが抑えてあげるわ。だから、使いなさい」

「‥‥‥‥分かった、頼むぞセリーヌ」

 

 俺の中の鬼の力を解放させる、そのことに不安はある。力に呑まれて戻ってくることが出来ないかもしれない。‥‥‥‥だけど今は目の前の《社畜》を倒さない事には先がない。

 俺は精神を集中させて鬼の力を解放させる。

 

「ハァッ‥‥‥‥『神気合一!!』」

 

 俺の中の鬼の力、その力が蝕んでいく。だが、セリーヌのサポートのおかげで何とか意識を保っていることが出来る。ありがとう、セリーヌ。

 行くぞ、《社畜》。今度こそ、お前を倒す!

 

side out

 

「『神気合一!!』」

 

 リィンから力が溢れてきている。凄いな、あんなのがあったのか。私が普段使う、黒の闘気よりも上だな、出力に関しては。教えてくれたらよかったのに‥‥‥‥リィンの奴、あんな奥の手を隠しているとは酷い奴だな。

 でも、アレ大丈夫なのか? 随分と危険な感じがする力だ。何やらセリーヌから力を感じる。あれは霊力か? それでリィンをサポートしているのか? うーん、誰かの助けを借りないと使えない力なんかに頼ると身を滅ぼすかもしれないのに‥‥‥‥仕方がない、アレは危険なのでこれ以上使わなくていいように、全力で叩きのめそう。

 友人が悪の道に進んでいるなら止めてやるのが、友、と言う者だ。

 

【フン、そのような力に頼るとは程度が知れるぞ、リィン・シュバルツァー】

「‥‥‥‥俺自身もこの力に頼りたくはなかった。だが、お前を倒すためには仕方がない。これで決めるぞ《社畜》!」

 

 リィンが私に向かって駆けてくる。

 先程よりもずっと速い!

 

「秘技『裏疾風!』」

【ヌッ!】

 

 私は弐の型『疾風』を《ケルンバイター》で弾いて対処した。『裏疾風』という割には、『疾風』と変わらないな、スピードが速くなっただけだな。だがリィンは、納刀して次の攻撃の体勢に入っている。あの構えは、先程の‥‥‥‥

 

「うおおおお!!」

 

 納刀された太刀を再度抜刀し、炎を纏った斬撃を放ってくる。これは先程の陸の型『緋空斬』か。『裏疾風』とは『疾風』と『緋空斬』の連続攻撃か‥‥‥‥なるほど、後々使わせてもらおう。

 私は感心しているが、斬撃は待ってはくれない。先程の『緋空斬』よりも強力だが、《劫炎》の先輩やアリアンロード様には遠く及ばない。

 現状こちらは左手の《ケルンバイター》で『疾風』を弾いたため、対応に間に合わない。転移も間に合わない。ならば、対処は簡単だ。

 

【フンッ!!】

「なっ!!」

 

 右腕で弾き飛ばせばいい。幸い、『ハード・ワーク』でローブにしている部分だ。『不壊』の特性を持つ以上、防御力には問題ない。流石に衝撃に撃ち負ければ、私の腕が折れるが先にも述べた通り、《劫炎》の先輩やアリアンロード様には遠く及ばない、だからこの程度で折れる程、私の腕は脆くはない。

 だが、リィンもこの程度では諦めず、再度攻撃を仕掛けてくる。

 

「はっ! せいっ!」

【フンッ!】

 

 打ち合いを続けていくが、どうやら力もかなり強くなっている。‥‥‥‥まあ、アリアンロード様程ではないし、私よりもずっと力がないがな。

 ‥‥‥‥さて、このまま持久戦を続ければ私が勝てるだろうな。どうやら、あの力を長時間続けるのは負担が大きいようだ。当人にしろ、サポートする方にしろ、だな。

 私はリィンと打ち合いながら、目線だけはセリーヌの方を見た。リィンの力を抑えつつ、可能な限り力を引き出す、中々に難しいことだろうが、それを成しているようだ。うーん、やはり利口な猫だな。

 仕方がない、これ以上の長期戦は一人と一匹には酷だろう。初志貫徹、全力を持って終わりにしてやろう。

 

【これ以上引き延ばすのは厳しいようだな、リィン・シュバルツァー】

「くっ、何を!」

【強がるな。其方だけでなく、そちらの使い魔の方も厳しいだろう】

「はん! べ、別に大したこと、ないわよ!」

【口だけは立派だな。ならば、耐えてみろ!】

 

 私は更に力を、闘気を高め、リィン達を威圧する。

 

「くっ!」

「嘘でしょ!」

【行くぞ! 『鬼炎斬!』】

 

 私はリィンを相手に全力の一撃を叩き込んだ。するとリィンが弾き飛ばされていく。だが‥‥‥‥すぐに戻ってきた。昨日覚えたばかりの鋼糸術で私が引き戻した、更に四肢に巻き付けるおまけ付きで。

 

「ぐはっ! こ、これは‥‥‥‥鋼糸!」

【これで動けまい、お次はこれだ。『ジリオンハザード!!』】

 

 最近は使っていなかった《劫炎》の先輩の大技『ジリオンハザード』を身動きの出来ないリィンに放った。

 私の『ジリオンハザード』は《劫炎》の先輩程の威力はまるでない。ハッキリ言って、大したことはない。だけど、見かけの派手さや炎傷の効果があるので、追い詰めるのには非常に重宝する。

 さて、これで気絶でも戦意喪失でもしてくれれば、これ以上の追い打ちはしなくてもいいんだがな。

 

「く‥‥‥‥」

 

 まだ意識があるか、ならばここで終わりにさせてもらおう。

 私はリィンに近づくと‥‥‥‥

 

「させないわ!!」

 

 背後から声が聞こえ、振り向くと矢が飛んできていた。

 

【ムッ!】

 

 私はその矢を躱したが、更に追撃が飛んでくる。

 

「貫け!」

「暗き刃よ、お願い!」

【チッ!】

 

 マキアスの銃弾とエマの魔法の刃が私に向かってくる。私は一度転移し、大きく距離を取った。私が距離を取ったことで、アリサとオリビエの二人がリィンの近くに行き、回復させている。

 しかし、彼らもカンパネルラさんと《劫炎》の先輩を相手にして、よく無事だったな。素直に感心する。

 

「いやあ、ごめんねぇ。折角引き離したのに、合流されちゃったね」

【我の方こそ、仕留められず申し訳ない】

 

 残念ながらリィンを戦闘不能にしてあの力を使うことを止めさせること、ひいては執行者の仕事を全うすることが出来なかった。‥‥‥‥全く、何たる失態だ。

 

「クク、ハハッ‥‥‥‥いいねえ、お前ら。煌魔城の時よりもずっといい‥‥‥‥」

 

 私は落ち込んでいる中、《劫炎》の先輩の笑い声が聞こえる。随分と上機嫌だ。

 

「やれやれ、別にいいけどさ。下手したらこの塔ごと巻き込んじゃうんじゃないの?」

「まあ、ちっとは譲れや。《深淵》が出てこなくてちょいとイラついてたからな。大丈夫だ、デカブツまで燃やしたりしねえよ」

「うふふ、仕方ないなぁ」

「《社畜》下がれ。後は俺がやる」

【‥‥‥‥致し方ない】

 

 どうやら《劫炎》の先輩が一人でやるようだ。残念だ、私も仕事に参加したかったというのに‥‥‥‥まあ、こうなった以上、仕方がない。先輩の仕事ぶりを見るのも勉強だ。今後のために色々勉強させていただきます。

 私は《劫炎》の先輩の仕事ぶりが見やすいように、神機の頭上に飛び乗った。ここからなら全体が見渡せる、先輩の仕事ぶりもリィン達の動きも良く見える。

 私は《劫炎》の先輩と戦うことはあるが、誰かと戦っているところを見るのは初めてだ。だからこそ、私は《劫炎》の先輩の技をじっくりと見て、今後に生かさしてもらおう。

 頼むぞリィン達、頑張って粘って、私にたくさん勉強させてくれよ。 

 

「オオオオォォォォォッ‥‥‥‥!」

 

 《劫炎》の先輩が雄たけびと共に、髪の色と目の色が変わった。それと共に、焔の禍々しさが増していく。

 不思議な感覚だ、いつもなら真正面で見ているというのに、今は後ろから見ている。真正面からだと、威圧感や圧迫感の様な押しつぶされそうな感覚を覚えるというのに、後ろからだと‥‥‥‥何というか、頼もしい、という感覚だろうか、そんな感覚を感じる。なるほど、敵に回すのは恐ろしいが、仲間だとするとこれほど頼もしいのはアリアンロード様だけだろう。いつか私もそのような領域に至れればいいのだが‥‥‥‥

 




次回更新はたぶん来週土曜日になると思います。
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