社畜の軌跡   作:あさまえいじ

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第二十六話 実戦あるのみ

―――七耀暦1206年6月8日 隠れ里エリン サングラール迷宮

 

 修行を開始して、一週間が過ぎた。

 あれから毎日リアンヌ様と鉄機隊の方たちが食事の時間には集まるので、食事時はにぎやかになる。嬉しいことだ。師匠も野菜を食べてくれるようになってきて、嬉しい限りだ。ただ、師匠自身は野菜は食べたくないから、『もう来るな!』と食事終わりにいつも言っている。だけど満更でもない様なのか、来た時には『何じゃあ、また来たのか』といつも言う。なるほど、これがツンデレか。

 さて、現在は魔術の実戦訓練を積んでいる。サングラール迷宮に入れてもらえるようになり、ここで魔術を使い、実戦を行っている。

 今の私は剣を持たず、槍を持たず、両手を空にして、奥に向かって歩いている。

 

「グアアアアアアアアアッ!!」

 

 魔獣が現れ、私の眼前に立つ。いつもなら剣でクビを刎ねるか、槍で頭を貫くか、素手でクビをへし折るか、それぐらいしか選択肢がなかった。だが今は、

 

「出でよ、『イクリプスエッジ』」

 

 習得した魔術を使い、魔力で剣を作り出す。そう、今の私ならこの魔力で出来た剣を、

 

「さあ、行け!」

 

 指揮者の様に指先を振ると、剣が魔獣に特攻した。

 

「gyaaaaaaaaa!!」

 

 魔獣は断末魔を上げ、消滅した。

 

「‥‥‥‥‥‥ダメだ、これでは」

 

 ここ最近、色々と魔術を覚え、あることに気付いた。

 ‥‥‥‥自分で殴った方が早くないか? と思ってしまった。

 実際に戦ってみたところ‥‥‥‥殴った方が早かった。

 魔術を発動して、剣を作り出し、射出する、この一連の動作を行った際にかかる時間と敵を発見して、接近して、殴る、この動作を行った際にかかる時間では後者の方が少し早かった。

 ‥‥‥‥ちょっと悲しかった。頑張って覚えたのに、今まででも問題なかったとわかったとき、何故か、悲しかった。

 ‥‥‥‥いや、違うな。師匠は凄い方だ、その力は私とは比べものにならない、つまり今の私がただ未熟であるというだけだ。それに、私はまだ魔術の深淵に足を踏み入れていない、これからも精進せねば‥‥‥‥だがそれ以上に解決しないといけない問題がある。

 

「ハアアアアッ!!‥‥‥‥‥‥ダメか」

 

 『鬼の力』を発動中にクラフトが使えない、相変わらず進展しないな、私。

 修行を開始して一週間、その間、暇さえあれば『鬼の力』の修練に時間を掛けてきた。その結果、『鬼の力』を発動及び制御はほぼ完ぺきだと言える完成度に至った。だが残念ながら、発動と制御の修練を積んだ結果、分かったことがあった。

 私では‥‥‥‥いや、今の私では『鬼の力』を使用中にクラフトを発動できない、ということを理解してしまった。理由は簡単だ、単純にリソースが足りない、これに尽きた。

 何故リソースが足りないか、これは『鬼の力』の発動、制御をそれぞれに分けて考えているためだ。分かりやすい例としては『鬼の力』の発動に右手を使い、制御に左手を使う、その結果、両手が塞がって、技が使えない、という状況に至っている。

 『鬼の力』を使った場合、全体的な能力が向上するが、クラフトが使えなくては意味がない。これでは使わない方がよほどましだ。

 しかし、この状況を考えてみると、リィンは凄い奴だと改めて思い知らされる。リィンは『鬼の力』を使いながら、クラフトが使えるリィンは本当に‥‥‥‥凄い奴だ、そして恐れ知らずだ。

 リィンがクラフトを使えるのは私よりもリソースが多いわけではない、リィンの場合は一つのプロセスがないんだ‥‥‥‥制御というプロセスが。

 その結果、『鬼の力』の発動とクラフトの両方を同時に使っている。‥‥‥‥まあ、安全性は度外視のようだが‥‥‥‥だが、今はセリーヌが制御を担当するようになったみたいだが‥‥‥‥これまでよくこんな状況で『鬼の力』使ってたな、これまでの関りである程度は分かっていたが、やっぱりリィンは危ない奴だな。私は安全第一で行こう。

 さて、状況分析はともかく『鬼の力』を発動しつつ、クラフトを使用出来るようにするには現状二つの道がある。

 一つ目は制御を諦め、制御に回していた分のリソースをクラフトに回すこと。欠点は意識を保つことが出来るかは‥‥‥‥前回の結果から考えて、難しいと思われる。また意識を奪われ暴れまわることになるかもしれない。その状態ではまともに戦う事すら出来ない。

 二つ目は手を増やす事、協力者を募り外部から制御してもらうこと。リィンにとってのセリーヌの様な存在だ。欠点は魔女という特異な存在で、それ相応の実力を持つ者でないといけないという、選考基準が高いことだ。いや、確かに師匠や《深淵》殿ならば選考基準をクリアできているわけだが‥‥‥‥御二人程の方が協力して頂くことは出来ないだろう。そもそも、私が『鬼の力』を使って、クラフトを使える様になったとしても、《深淵》殿の力は知らないが、師匠の方が私よりも余程強い、だというのに格下の私を補助するくらいならご自分で動かれた方が効率的だ。

 うーむ‥‥‥‥現状取れる手が一つしかない。やはり、暴走覚悟の方法しか手がないか‥‥‥‥安全第一と考えた早々にこんなことになるとは、私もリィンの事を言えないな。‥‥‥‥でも、仕方がないな、強くなるためだから、そのための代償は必要だな。どうせ‥‥‥‥‥‥命以外、要らないしな。

 幸いここなら暴れても、周囲には魔獣しかいない、里にも迷惑を掛けなくて済む。時間も勿体ないし、早速始めるか!

 

「ハアアアアッ『鬼の力!!』」

 

 ‥‥‥‥意識があった。ああ、しまった、いつもの癖で魔術で制御していたままだった。‥‥‥‥少し怖い感じだ。ゆっくりと段階的に外していくぞ。

 

『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥』

 

 まだ大丈夫だ、もう少しいけそうか。

 

『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥』

 

 更に深くなったが、まだ大丈夫だ。もう少しいけるはずだ。

 

『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ヨコセ』

 

 来たか! ここで止めるか‥‥‥‥いや、ここで止めても進歩はない。心を強く持て!

 

『‥‥‥‥‥‥‥‥ヨコセヨコセ』

 

 グッ‥‥‥‥、まだだ、まだいける!

 

『‥‥ヨコセヨコセヨコセヨコセ』

 

 だ、ダメだ! このままではまた意識が‥‥‥‥‥‥

 

『ヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセヨコセ』

 

 し、しまった‥‥‥‥引き際を、誤った、か‥‥‥‥

 

『ヨコセ‥‥ヨコセ‥‥ヨコセ‥‥スベテワレノモノダ‥‥』

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!!」

 

 再び完全に意識が乗っ取られた。‥‥‥‥だが、その瞬間に、最後に聞こえたのは、

 

『はぁ~、またやらかしたな‥‥‥‥‥‥宿主』

 

 溜息交じりの、疲れたような声だった。

 

 

 

―――七耀暦1206年6月8日 隠れ里エリン ローゼリア邸宅

 

side リアンヌ・サンドロット

 

 私は一人、ロゼの下を訪れた。

 

「なんじゃ、飯時には少し早いぞ」

「別に、食事目当てで来たわけではありませんよ」

「なんじゃ、てっきり腹が減ったのかと思ったぞ」

「‥‥‥‥失礼ですね」

 

 ニヤニヤと笑いながら、軽口を叩くロゼ。‥‥‥‥しかし、ここ最近で大分溝が埋まった様に感じますね。二十年の間、交友がなかったというのに‥‥‥‥これもハードのおかげですかね。いけない、今は本題の事を聞かなくては。

 

「ロゼ、聞きたいことがあります」

「なんじゃ、藪から棒に」

「‥‥‥‥ハードの事です」

「‥‥‥‥まあ、座れ。茶くらい出してやる」

「‥‥‥‥ええ、お願いします」

 

 私はロゼに促されるまま、席に座る。どうやら随分と慌てていたらしい、いけませんね。

 ロゼにお茶を出してもらい、一口、口を付ける。‥‥‥‥少し、落ち着きました。

 

「で、何じゃ?」

「‥‥‥‥これを見てください」

 

 私は数枚の書類を渡した。

 それはカンパネルラが調べた、ハードの身辺調査の結果だ。

 カンパネルラはクロスベルでの実験後にハードの異常性に疑問を持ち、独自に調査をしていたそうだ。そして、その結果がつい先程、私の下に届けられた。

 私はそれを読んでみたところ、ハードの話通りの結果が出ていました。‥‥‥‥ですが、いくつかの情報はハードの話に無いものでした。

 

「ふむ‥‥‥‥なるほどのう、随分と悲惨な人生を歩んできたものじゃ。こういうモノを読むと、人間の愚かしさというモノが良く分かるのう‥‥‥‥さて、リアンヌが妾に聞きたいことはなんじゃ?」

「ハードの体について、貴方はご存じでしたか?」

「‥‥‥‥初めて見た時、妾は体について、聞いたがハードは知らん様じゃったのう。どうやらそれはリアンヌの知らん方だったようだのう」

「‥‥‥‥迂闊でした。貴方が言っていたのは、ハードの体に施された身体強化の方だと思っていましたが、本質の方を言っていたとは‥‥‥‥」

「まあ、伊達に800年も生きとると、それくらいの違和感は感じるもんじゃ。それに妾が気づいたことはこれに書いてあるのう。‥‥‥‥じゃが、書いてないこともある」

「‥‥‥‥貴方が言っていた、『魂』の事ですね」

「‥‥‥‥そうじゃ」

 

 ハードの調査結果は《結社》内で騒動を起こした。《博士》と《根源》はハードを自分の下に回せと言い出し、マクバーンは笑いだした。それくらいなら私が止めることが出来た、それくらいならロゼのところに聞きに来ることもなかった。だが‥‥‥‥

 

「あいつ、混じってやがる‥‥‥‥俺には程遠いが、それなりにやりやがる奴だぜ」

 

 結果を見たマクバーンは私にそう言った。確か三ヶ月程前、まだ研修中のときに、ハードに絡んだマクバーンが『混じっている』と言った、と聞いたことがある。その時は気にしなかった。だが、この言葉に近い言葉をつい最近聞いたことがあった。その言葉を出したのは‥‥‥‥ロゼだ。

 

「何から話すべきかのう‥‥‥‥まず、妾が最初に弟子を見た時に感じたのは‥‥‥‥違和感じゃ」

「違和感?」

「うむ‥‥‥‥最初に見た時、随分と歪だと感じたもんじゃ。‥‥‥‥合っておらん」

「合っていない?‥‥‥‥混じっているんですか?」

「まあ、半分正解じゃ。確かに混じっておるが、それだけじゃないんじゃ」

「‥‥‥‥それは、どういう意味ですか?」

「一つずつ説明するかのう‥‥‥‥体を器とするならば、魂は中身、それぞれ大きさがある。本来なら、器と中身の大きさはつり合いが取れるんじゃ‥‥‥‥じゃが弟子は違う。合っておらん、器が中身に比べて‥‥‥‥大きすぎる。まるで器を満たしておらんほどじゃ」

「それは一体何故ですか、分かりますか?」

「‥‥‥‥分からん、魂の大きさが特別小さいわけではない。十分な大きさじゃ、だというのに、器を満たせんとは、それだけの器のでかさがある」

「‥‥‥‥そうですか。では混じっていると言うのは‥‥‥‥」

「混じっておる、というのが正しいか分からんが‥‥‥‥妾が思うに、複数の魂があやつの中にあるんじゃ。まあ、一つの器に複数の魂があるから混じっていると表現するのかのう‥‥‥‥さっき、魂は中身だと言ったが、魂にはそれぞれ色がある、弟子にはその色が一つではない。いくつもの色が同時に存在しておるんじゃ。」

「‥‥‥‥同時に存在する、それはあり得るんですか?」

「‥‥‥‥いや、あり得ん。そもそも一つの体に複数の魂が入っておるなんぞ、見たことも聞いたこともない。魂を本来の持ち主以外が持つ、即ちその魂の持ち主はもう亡くなっておるんじゃろう。‥‥‥‥じゃが死者の魂が何故弟子に入ったのかは皆目見当つかん。それだけの魂を受け入れる器があり、それでいて複数の魂を引き寄せる何かがあると言う事じゃろうが‥‥‥‥おそらく、()()に秘密があるようじゃのう」

 

 ロゼが指し示したのは、ハードの調査結果、その一文だった。

 

『出生地:黒の工房』

 

 この一文から察することが出来た。

 

「やはり、ハードは‥‥‥‥《人造生命(ホムンクルス)》」

「妾も他のものを見たことがないから、何とも言えんが‥‥‥‥少なくとも人間ではない」

 

 ロゼの言葉に私は言葉を失った。

 《根源》、マリアベル嬢は身体データも見た上でハードを欲した。この手の専門家であるマリアベル嬢が言う以上、間違いないのでしょう。

 私はカンパネルラの調査結果を見た時、頭をよぎった。

 ハード自身がミルサンテで保護されたときには何も覚えていなかったそうです。ですが、それは覚えていないのではなく、消されたのではないのか。そして、現在の黒の工房の本拠地は帝国西部、ラマール州にあり、ミルサンテも同じく帝国西部にある。つまり、何らかの目的で外に出された、と言う事でしょうか。

 

「ハードは‥‥‥‥知っているんでしょうか?」

「‥‥‥‥さてな、そこまではわからん。聞いてみるか?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 答えは出ない。聞いてみたい気もするし、知らないかもしれないのに、無理に聞き出す、いや教えてしまっていいのか‥‥‥‥悩ましい限りです。

 

「まあ、別に言わんでよかろう」

「何故です?」

「弟子は弟子じゃ、何者であろうとそれは変わらん。今更特別扱いもせんぞ、妾は」

「ふふ、そうですね」

「まあ、リアンヌの手に余るなら、ここに置いておくのは構わんぞ。そうなったら、妾の執事として最高の教育を施すだけじゃぞ」

「上げませんよ」

 

 ロゼが言わんとすることは分かる。手に余るなら手放せ、とそう言っているんでしょう。

 ‥‥‥‥今更ですね、ハードが作られた命であろうと関係ありません。私は彼を鍛える、そして私の槍を彼に託す、それ以上の幸福はない。

 

「なんじゃ、くれんのか?」

「ええ、上げませんよ」

 

 ロゼに笑顔で答えることが出来た。ですが、その瞬間、

 

「‥‥‥‥‥‥!?」

「な、何じゃこの気配は!?」

 

 全身に悪寒が走った。

 この気配は‥‥‥‥《緋き終焉の魔王》のときに感じた気配、呪いの気配だ。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッッッッッッッッッッ!!!!!」

 

 気配のする方向に急ぎ向かうと、そこにいたのはハードだった。だが、

 

「『鬼の力』に乗っ取られとる。‥‥‥‥こやつ、何をしよった!」

「ハード!」

 

 教え子の姿はかつての《緋き終焉の魔王》の様に、帝国の呪いに侵された姿だった。

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 力の圧がまるで違う。‥‥‥‥だが、所詮はこの程度。

 

「ロゼ、早急に鎮圧します。呪いは‥‥‥‥」

「言われんでも、分かっとるわ。呪いは妾が抑えるわい!」

「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 私が槍を出し、ロゼが杖を構える。すると、こちらを見たハードが武器を槍に変えた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「はあああああああっっっ!!」

 

 私とハードの槍が衝突した。

 

「ぐっ、随分と力が強い‥‥‥‥」

「アアアアアア‥‥‥‥」

 

 力比べでは分が悪そうですね。ならば、

 

「ハッ、セイ、ハアッ!!」

「グッ、グゥ、グアッ!!」

 

 スピード重視の攻撃に切り替え、フェイントを交えてみると、簡単に圧倒出来ていく。そして‥‥‥‥ハードが倒れ込む。

 

「‥‥‥‥随分と雑になりましたね。嘆かわしい限りです」

 

 ‥‥‥‥何でしょう、この虚しさは‥‥‥‥確かに呪いに侵されていた時には驚きもしましたし、心配もしました。‥‥‥‥ですが、

 

「雑ですね。いつもならフェイントにも引っかからず、スピードにも翻弄されず、的確に防御に徹し、気を狙う粘り強さがあり、一度スキを見せると苛烈に攻めてくる、貴方の本来の戦い方に程遠い出来でした。確かに力の強さは随分と増していましたが、強さ自体は普段のハードの十分の一程くらいにしか感じませんでしたね。‥‥‥‥呪いに侵されると、理性を失い、力が強くなる、その結果強くなるのかも知れませんが、ハードには逆効果ですね。この子には豊富な技と思考能力、身体能力の高さがあるんです。無理に焦らずともじっくりと強さを身につけていく方が合っていますし、確実に強くなれます。‥‥‥‥やはり、私の教えは間違ってなかった」

「おーい、勝ち誇っとらんで、抑えつけておいてくれ」

「ええ、分かりました‥‥‥‥ッ!!」

 

 ハードがゆっくりと立ち上がっていく、顔を伏せているので表情が見えない。だけど淀みなく立ち上がる様は理性を感じる。

 それに先程まで感じていた、呪いが徐々に収まっていく。

 

「ロゼッ!」

「いや、妾はまだ何もしておらんぞ!」

 

 ハードはすぅー、はぁー、と呼吸音が聞こえる程、大きく息を吸い、大きく吐いている。その動作を繰り返すたびに、呪いがまるで内側に取り込まれていくかのように、視認できる程の濃い黒い靄が薄くなっていく。その動作を繰り返していくと‥‥‥‥呪いが晴れた。

 

「‥‥‥‥ハード?」

「‥‥‥‥リアンヌ様? どうしてここにいらっしゃるんですか」

 

 キョトンとした表情で、ハードが聞いてきた。‥‥‥‥どうやら、元に戻ったみたいですね。

 

「でも、丁度良かった‥‥‥‥」

「ハード?」

 

 ハードをこちらを見て‥‥‥‥『鬼の力』を発動させた。でも、以前までとは違う、魔術の術式が発動していない。

 

「いけない、また暴走しますよ!」

「いえ、大丈夫です。‥‥‥‥『鬼の力』の影響を抑えてくれるそうですから」

 

 ハードがそう言い、槍を構えて、私を待つ。‥‥‥‥『鬼の力』の影響は無いようです。

 いいでしょう、その挑戦受けて立ちましょう!

 私も槍を構え、ハードと対峙する

 

「何が起こったか、妾にも分らんが、まあ、問題ないならいいじゃろう。丁度良い弟子の力を見せてもらうとするかのう」

 

 互いにジリジリと間合いを計る。先程の暴走時とは違い駆け引きが出来ている。確かに『鬼の力』の影響は無いようですね。ですが、その圧力は先程の暴走時と同じ、いやそれ以上にさえ感じる‥‥‥‥面白い!

 

「はあああああああっ!!」

「はあああああああっ!!」

 

 互いに槍がぶつかり合う!

 

side out

 




ありがとうございました。

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