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―――七耀暦1206年4月1日 星辰の間
私は朝起きると、カンパネルラさんから端末に連絡が来ていた。内容は『星辰の間』に来るように、と言われてここに来た。盟主様にお会いしたとき以来、二度目の入室になる。
今日から四月だし、もしかしてこれから、入社式、という奴をやるのか?
ま、まさか!アリアンロード様の前で不甲斐ない結果だったので、クビ、になるのか!
それとも、昨日の夜に襲撃してきた、シャーリィさんの体に触ったから、セクハラ、で呼び出されたのか!
ああああ、四月になって早々に、職を失うのか‥‥‥またあの日々を過ごさなくてはならないのか‥‥‥
私は昨日の事とこれからの再就職活動への不安で頭を抱えた。
私が、頭を抱えていると、上の方から声が聞こえた。
「良く来ました。ハード・ワーク」
「め、盟主様!」
私はすぐさま、跪き、次のお言葉を待った。
「ハード・ワーク、今日までの行動、ご苦労様です」
「め、盟主様!!」
「今日より貴方を執行者に任じます。これからの貴方の働きに期待します」
「へ?!」
執行者?!今日呼ばれたのはそれが理由か。
私はさっきまでの不安から解放されたことよりも、いきなり執行者に任じられたことの方が衝撃が大きかった。
「わ、私が執行者にですか?!私は先月から席を置き始めた新参者です。それでいきなり‥‥‥」
「私が貴方の執行者入りを薦めました」
「ア、アリアンロード様」
「研修中の貴方の成長スピードは目を見張るものがありました。これからは独自で動き、修練を積むことで、貴方はより高みに至れるでしょう。そのためにも執行者となった方が都合がいいでしょう」
「リアンヌの言葉もありますが、私が決めたことです。ハード・ワークを執行者に、これは当初から定められていたことです」
「‥‥‥ありがとうございます、盟主様。このハード・ワーク、全身全霊を持って、執行者の任に着かせていただきます」
アリアンロード様、そして盟主様がお決めになったことだ。私に逆らうこと等出来ないし、するつもりもない。驚きはしたが、非常に有難い話だ。ならばこのまま受けさせてもらうことにしよう。
「では、ハード・ワークに番号と名を与えます。番号は『
「はい、ただいまより執行者No.ⅩⅩⅠ《社畜》の名を頂きます」
執行者No.ⅩⅩⅠ《社畜》、これが私に与えられた名か。しかし、『社畜』とはどういう意味なんだ?確かに『劫炎』の先輩は焔を使うから、『劫炎』という名は合っている。だけど、私の戦い方は剣を主体にしているが、とりわけ得意というわけではない。そもそも『社畜』という意味は何なんだ?
まあ、気にしてもしょうがない。盟主様に任じられたんだ。精一杯頑張ろう。
「最後にハード・ワークにこちらを渡します」
盟主様がそう言うと、目の前に一本のペンが出現した。私はそれを眺めていると、盟主様から説明された。
「それの名は『ハード・ワーク』。外の理で作られし、貴方だけの武器になります。その武器に出来ることは、形状の変化と不壊。貴方が思い描く通りに姿を変え、決して壊れません」
なんと素晴らしい!これがあれば、剣に変化させたり、拳に纏わせたり、ペンとしても使えるのか。これがあれば、色々な消耗品がタダに出来るかも。それにアリアンロード様や『劫炎』の先輩とやり合うたびに壊れていた剣の代金が浮く。
私は盟主様のプレゼントに涙を流しながら感謝を申し上げた。
「う、うう‥‥‥ありがとうございます!このハード・ワーク、盟主様のご恩に報いる為、粉骨砕身、務めさせていただきます」
「期待しています。執行者No.ⅩⅩⅠ《社畜》」
「は!!」
よし、これから頑張るぞ。‥‥‥だけど、一体何を頑張ればいいんだ?
どうしよう、この場で質問した方がいいのだろうか?
私が悩んでいると、アリアンロード様が盟主様に質問された。
「盟主様、《社畜》は『幻焔計画』に追加招集しても構いませんか」
「それを決めるのは《社畜》自身です。執行者にはあらゆる自由を与えています。例え使徒の命令であっても、拒否する自由があります」
「そうですか。《社畜》に問います。私の下で『幻焔計画』に参加しませんか?」
「『幻焔計画』?」
「『幻焔計画』というのは、クロスベルの虚ろなる『幻』をもって帝国の『焔』を目覚めさせるのが目的です。段階としては、クロスベルの『幻』は目覚めています。そして帝国の『焔』は第二柱が結末をすり替えようとしていましたが、失敗に終わりました。そして、現在の計画の主導権は帝国政府に奪われています。これから成すのは帝国政府に奪われた計画を奪還することです。既に『幻焔計画』に参加している使徒は第二柱、第六柱、そして私、第七柱の三名、執行者はマクバーン、ブルブランの二名です。ただし、現時点で第二柱とブルブランにはこの計画から離れていただいています。代わりに使徒第三柱と執行者のカンパネルラ、シャーリィ・オルランドの計三名を追加招集しています。ここに貴方を追加招集しようと思いますが、如何ですか?」
「‥‥‥アリアンロード様、そのお話お受けいたします。」
「分かりました。では、執行者No.ⅩⅩⅠ《社畜》を『幻焔計画』に追加招集致します。詳細は追って使いを出します。その者に説明させます。よろしくお願いしますね、ハード・ワーク」
「は!お任せください」
□
私は執行者に任じられて、意気揚々と執行者候補養成所の与えられた部屋に戻ってきた。
これから、執行者だからな。この養成所を去ることになるだろう。今のうちに引っ越しの準備でもしておくか。
私が荷物をまとめようとしていると、部屋の扉がノックされた。
「ハード・ワーク、いらっしゃいます?」
「はい、今開けます」
扉を開けるとそこに立っていたのは‥‥‥『神速』のデュバリィさんだった。
「どうかなさいましたか?」
「いえ、先程、執行者になられたそうで、おめでとうございます」
「あ、ありがとうございます」
まさか、最初におめでとうを言われたのが、デュバリィさんだとは思わなかった。だけどここに来てから一番戦ったのは彼女だった。私が今、執行者に成れたのは彼女のおかげであると言っても過言ではない。いつかお礼しないとな。
「つきましては、今後の動きに関して、マスターに代わり、説明に参りましたわ」
「今後、ですか?ああ、アリアンロード様が仰っていた使い、と言うのは『神速』殿でしたか」
「‥‥‥執行者である貴方が私に敬語を使うなど不要ですわ。マスターがお認めになられ、執行者に成られたんです。もっと胸を張りなさい」
「は、はい!分かりました」
「まあ、貴方はその方がよろしいのでしょう。ではこれから今後に関して説明いたしますわ。場所を変えますわよ」
「分かりました」
□
私はデュバリィさんに連れられて、養成所のテーブルに着く。
すると、デュバリィさんは時間を確認して、溜息を吐く。
「まだ来ませんの。‥‥‥全く、時間くらい守りなさい」
「どうしましたか?」
「‥‥‥今回の計画に参加するもう一人の執行者が来ていませんの。貴方に声を掛ける前に伝えておきましたと言うのに‥‥‥」
「‥‥‥どなたなんですか?」
「‥‥‥《紅の戦鬼》ですわ」
デュバリィさんが肩を落としながらそう言った。
なるほど、確かに来なくても不思議ではない。彼女は自由気まま、というか野生動物のようなものだ。時間の概念はないのだろう。だが、彼女も猟兵なんであれば、契約、いや約束の重要性は分かっているだろうに。まあ、おそらく、あの御付きの人が何とか手綱を引いているんだろう。今度差し入れでも持っていこう。
「仕方ありませんわね。私たちだけで始めましょう」
「そうですね。その内来るかもしれませんし」
□
打ち合わせを始めて、結構な時間が経ってから、シャーリィさんが現れた。
「ごっめんね~、遅くなっちゃった~」
「遅すぎですわ!!一体どれだけ遅刻すれば気が済みますの!!」
あっけらかんとしているシャーリィさんと対照的に怒りの形相のデュバリィさん、そしてそれを見ていて、止めようとしない私、この三人で『実験』をするとか、大丈夫だろうか。
私は自分の事を棚に上げて、そんなことを思っていた。
「まあいいですわ。貴方には『裏』で動く猟兵団の対応を任せますわ。それ以外は其方の《社畜》がやってくださるそうですわ」
「あ、お兄さん、執行者に成ったんだってね。良かったじゃん。あ、でもこれで夜中に奇襲するの終わり?あれ楽しかったんだけどな~」
やっぱりこの子、怖いわ。奇襲が楽しいとか、何なの!?武器も鋭い刃が高速機動するからとんでもなく斬れるから危険だし。
思い出してみても、ここに来て最初の夜とか、奇襲の事を知らなかったから、寝てたら耳元で爆音が響いて寝返りを打って耳を塞いだら、元居た場所に刃が振り下ろされていた。それを見ていた彼女は、ニヤァと笑いながら、嬉々として襲い掛かってきた。狭い室内であんな武器を使われては勝てるはずもなく、御付きの人が来てくれるまで、何とか躱し続けた。それからは先手必勝として、奇襲を仕掛けてくる彼女を迎え撃つ戦法に変更して対処した。
でも、そんな激闘は彼女にとっては楽しいのか‥‥‥やっぱり物騒だな!
「就任祝いの言葉、有難く頂戴する。夜中の奇襲の件は、これからは共に戦く仲間となるんだ。戦力の減少になるようなことは避けるべきだと私は愚考する」
「アハハハ、戦力の減少?お兄さんがあれくらいの奇襲でやられる訳ないし、あ、もしかして、お兄さんが反撃してシャーリィのこと倒す宣言?いいね、やろやろ!!」
あのすいません!!人の話聞いてましたか!!今私が言っていたのは、戦力の減少は避けようと言ったのに、何で戦おうと言ってきてるんですか!!
私は話を聞いてくれない、このお嬢さんと戦うことは避けられない気がしてきた。だってさっきから物凄くワクワクして目でこっちを見ているから。
私は肩を落としながら、彼女の要望に応えることにした。
「‥‥‥分かりました。ただし、戦闘はこの話合いが終わってからです。後、私が勝ったら、奇襲は無しです。いいですね」
「へぇ~、シャーリィに勝てるつもりなんだ。いつもは手加減してあげてたのにさ!!」
彼女が闘気をぶつけてくる。だけど、これくらいで動じる私ではない。昨日もアリアンロード様と『劫炎』の先輩と戦っていた私がこの程度の闘気で怯むものか。
「ふん!!」
「「!!!!!!」」
私も負けじと闘気をぶつけてみた。すると彼女はあっさりと闘気を引っ込めた。
「や~めた。お兄さんとは戦うの止めておくよ」
「そうですか、ならいいです」
どうやら彼女は分かってくれたようだ。うんうん、話し合いによる解決と言うのはいいものだ。
だが、この部屋にはもう一人いるが、その人は下を向いて震えている。
「私が説明していると言うのに何ですか!!貴方達、執行者はもう少し弁えなさい!!」
「えー、でも、弁えてる執行者とかいないしさ」
「お・だ・ま・りですわ!!」
何故かシャーリィさんとひとまとめで怒られる私。何故だ、解せぬ。
一頻り怒って気が晴れたのか、落ち着きを取り戻したデュバリィさんが話をまとめだした。
「はあ~、もうこれで終わりにしますわ。まとめとして、『実験』の場所はサザーラント州旧都セントアーク近辺、ハーメル村の霊脈を活性化させて行いますわ。場の闘気を高めるため、赤い星座と結社の人形兵器群を使いますわ。赤い星座の方は《紅の戦鬼》にお願い致しますわ」
「はいは~い」
「‥‥‥フゥ~、人形兵器群は私が担当致しますわ。なので、《社畜》には場での様々な対応をお願い致します」
「分かりました」
「では、各々抜かり無きよう」
そう言って、話し合いは終わった。
様々な対応、つまり事務作業全般だな。任せてくれ、得意分野だ。
ああ、荒事の無い平和な作業、執行者の最初の仕事がこれとは幸先がいい。てっきり、執行者に成ったからにはアリアンロード様とか、『劫炎』の先輩みたいな強い相手、倒してこいとか言われるかと思った。あんな人間辞めてるのとやり合うのが執行者だと思っていたけど、そんなことはなさそうだ。
その上、あらゆる自由が認められるとか、『結社』って、ホワイト企業だな。
研修は地獄だったけど、なってしまえば、この待遇。ありがとうございます、盟主様。私、ハード・ワーク、この地位に縋り付きつつ、盟主様のために粉骨砕身で働きます。
「あ、そうでしたわ。ハード・ワーク、この話し合いが終わったら、マスターが鍛錬してくださるそうですわ。修練場でお待ちですわ」
「‥‥‥はい、分かりました」
執行者権限でこの鍛錬、逃げれないかな。‥‥‥でも、執行者にご推薦して頂いたのに、こんなことで使ってはアリアンロード様に失礼だな。‥‥‥逝くか。
それに、盟主様から頂いたこの『ハード・ワーク』も使ってみたいし。
□
side アリアンロード
修練場にて、アイネスとエンネアを鍛錬していると、大きな闘気が近づいてきた。
「来ましたか」
やって来たのは本日新たな執行者に就任した《社畜》のハード・ワークとデュバリィだった。
「お待たせして申し訳ございません。アリアンロード様」
「いえ、構いません」
私は彼の姿を見てふと思った。修練場に来たと言うのに、何時も持っている、剣がない。
「いつもの剣はどうしました?」
「本日は持っておりません。盟主様から賜った、この武器を使わせていただきます」
「そうですか。私も楽しみです。その武器で、貴方がどの様な戦いを見せるのか」
私が持つ槍も盟主様から賜った、外の理で作られた武器。他にはマクバーンの『アングバール』、レーヴェの『ケルンバイター』があり、私の槍を含めて3つだけ。
新たな外の理の武器はペン、その能力は形状の変化と不壊、つまりあの武器は、戦闘中に戦い方を変えるハード・ワークの戦い方に最も合っていると武器と盟主様が判断されたと言うことですか。
昨日戦った時には、ヴァルターの技、つまり徒手空拳を使ってきました。普段は剣を用いた、百式軍刀術を使いつつ、距離によって変えていました。
さて、彼はどの様に使うのか、手並みを拝見させていただきましょう。
「では、参ります!!」
「どうぞ」
私が槍を構え、彼を迎え撃とうと思っていると‥‥‥来なかった。いや、後ろに飛びました。今までにない戦法ですね。
すると彼がペンを変形させると、弓に変わった。
「『ピアスアロー』」
「!!!!」
エンネアの弓技で遠距離からの攻撃ですか。彼は弓まで使えますか、本当に器用ですね。ですが、
「ハァ!!」
私は槍を一振りして、矢を逸らすと、次の攻撃が飛んできました。
「『ファイアボルト』×6」
「無駄です!」
私はその攻撃を躱し、時には打ち払い、距離を詰めるため技を使うことにした。
「『シュトルムランツァー』」
さあ、次はどうするか、私は彼の反応を楽しみにしていると、今度は剣に形を変えた。いや、
「剣、ではないですね」
確かあれは東方の武器‥‥‥刀ですか!
彼は抜刀の構えで迎え撃つつもりの様です。いいでしょう、その構えから何をするのか見せてもらいましょう!
「ハアッ!!」
私の突きが彼に入る直前まで、彼は身動き一つしなかった。だが、私の突きを一瞬で躱し、抜刀した。
「伍ノ型『残月』」
「!!!」
私の突きを躱し、抜刀でのカウンターを狙っていましたか、ですが、届きません。私の槍と彼の刀の射程では槍の方が分がある。ですが‥‥‥伸びました。
「な!!」
「『ハード・ワーク』は形状変化。当然長くすることくらいは可能です」
彼の抜刀した刀の一撃は私の鎧を壊し、久しく受けてこなかった『痛み』を思い出しました。
「‥‥‥そうですね。甘く見ていた私の落ち度ですね」
確かに、形状変化は先程から使っていました。弓から刀に変えた点から理解しているつもりでした。ですが、武器の種類を変える程度、と勝手に考えてしまいました。戦闘中に武器の長さを変えて、攻撃を当てるとは、教会が使う法剣も伸ばしたり、縮めたりできます。それと同じやり方を取ったと言うことですか。
それにしても戦闘センスが非常にいい。戦闘中に戦闘スタイルを変えるのは非常に難しいですが、彼のような器用なタイプには本当によく合っています。
そしてその武器も。あのような武器は私の槍やマクバーン、レーヴェに渡された剣とは明らかに異質です。その武器を初めて使うと言うのに、非常に良く使いこなしています。
どうやら私の方が押されているようですね。いつ以来でしょう、このように圧されているのは。250年の月日で数える程しか出会えなかった‥‥‥本気で対峙すべき相手の様です。
彼はこの一月で強くなった、これからの先の時の中で、彼はどれ程の高みへ至るのか、実に楽しみであり、少し残念でもあります。
『幻焔計画』が終わったら、私の旅路は終わりとなるでしょう。だと言うのに、彼のような才能溢れる者が現れるとは、少々名残惜しい気がします。彼の成長を見届けたいと思いつつも、私の使命を全うしなくてはならない、という思いに板挟みにあっているような気持ちです。未練が、欲が、出てきました。
ならばいっそ、私の出来る限りで彼を育て上げてみましょう。デュバリィ達には悪いですが、彼への指導に力を掛けたくなってしまいました。
side out
よし、うまくいった。盟主様から頂いた『ハード・ワーク』は本当にイメージ通りに変わってくれる。弓は使ったことなかったけど、エンネアさんが使っていた姿は見ていたので、出来る気がしたからやってみた。うまく命中するかと思ったのに、弾かれたな。
まあ、アリアンロード様があれくらいで何とかなるわけがないと思っていたし、その後に距離を取っていると、やっぱり、アリアンロード様が詰めてきてくれた。以前から見たことがあって試してみたかった技が有ったから、
使える状況にしてみたけど、見事に‥‥‥空振りした。
去年リィンと実技の授業で組んだ時に使われた『八葉一刀流』を試してみたかった。リィンの武器は刀という特殊な武器だったから、私の剣では向かなかった。流石にリィンに借りるのも、申し訳なかったから、諦めていた。
しかし、盟主様から頂いた『ハード・ワーク』はリィンの刀の形に成ってくれたから、念願叶って使えた。だけど、結果は空振りだったけど、『伸びろ』と念じると、伸びてアリアンロード様に直撃した。いや~恥かかなくって良かった。私は安堵した。
だが、おかしい。アリアンロード様の闘気がどんどん高まっていく。中途半端な攻撃が当たったことが癪に障ったんだろうか。
「ハード・ワーク。先程の攻防、見事でした」
「ありがとうございます」
「その武器、『ハード・ワーク』は実に多彩な働きが出来そうですね。それは貴方に実に有っています。変幻自在、貴方の戦い方を彷彿させるものです。やはり貴方は戦えば戦うほどに成長していきますね。実に素晴らしい素質です」
「‥‥‥ありがとうございます」
おかしい。お褒めいただけるのはいつもの事だ。アリアンロード様は褒めるタイプの指導者だ。指導は厳しいがちゃんと褒めてくださるから、耐えることが出来た。
なので、褒めるのはおかしくない。だけど、いつもなら、鍛錬終わりに総括として言ってくださるのに、その時は闘気がないはずなのに‥‥‥何故今も高まり続ける。
「そして今日、貴方は私に完璧な一撃を与えました。ですので、今日より貴方に手加減はしません。一人の武人として貴方を認め、貴方と対峙しましょう。さあ、続きです!!!!」
‥‥‥そうか、私は虎の尾を踏んだんだな‥‥‥失敗した。
私は新しい武器にテンションが上がって、必要以上に頑張り過ぎた結果、アリアンロード様のテンションが上がってしまったようだ。
昨日以上の闘気だ。本気で手加減を止められたようだ。やっぱりこの方、人間辞めてるな。
もうこの際だ、やれること全部やろう。今回の鍛錬は『ハード・ワーク』の試しのつもりだった。そのつもりで変形させてみると色々応用が効くし、やってみたかったことが全部できた。弓や刀みたいな特殊で金がかかる武器は用意できなかったから、頭に残っているけど使えなかった。だけど、今なら全部使える。そして目の前には最強の相手がいる。やってやる!!
「参ります、アリアンロード様!!」
「来なさい、ハード・ワーク!!」
私は『ハード・ワーク』の形状をアリアンロード様と同じ形の槍に変形させ、向かっていった。
「意気や良し!!」
アリアンロード様も迎え撃つ構えを取った。
「ウオオオオオオオオオオ!!!」
「ハアッ!!」
打ち合いで互いに弾き飛ばされて距離が出来ると、
「『シュトルムランツァー』」
「『シュトルムランツァー』」
近づけば、
「『アルティウムセイバー』」
「『アルティウムセイバー』」
そして飛ばされると、
「『アングリアハンマー』」
「『アングリアハンマー』」
只管に技を使わせ続けられた。でも、おかしい。私の技の精度は大体80%くらいだ。アリアンロード様なら、力でも技でも圧倒しているのだから、倒されていてもおかしくない。なのに‥‥‥何故戦えている?
私が疑問に思っていると、アリアンロード様が笑って言った。
「さすがです。我が技を瞬時に真似できるとは、今までは剣だったので、出来ませんでしたか?」
「‥‥‥ええ。真似できるのはある程度再現可能でないと出来ません。それに瞬時に真似ているわけではありません。今までアリアンロード様の技は受けてきましたから、体が覚えていますので、出来ました。生憎、槍は今日初めて使いましたので、精度は低いですが、少しずつイメージの中の自分に近づいてきました」
「なるほど、分かりました。先程の技の指導は不要でしたね。では指導はここまでです。ここからは本気で行きます!!」
「はい!!」
そこからはひたすらに槍を振るい、払い、アリアンロード様に食らいついて行く。こちらが一撃与えるまでに多数の攻撃を浴びていく。でも少しずつ、受ける攻撃の数が減っていく。最初は7発、さっきは6発、今は5発、攻撃するたびに自分の槍が速く、鋭くなっていくのを感じる。
だけど、それと同じくらい、アリアンロード様との差が明確に分かっていく。私には一つを極める才能はないらしい。アリアンロード様が言ったので、間違いはないだろう。ならば、ここで槍だけで戦うのは私の取るべき方法ではないだろう。
だが、ここで引いてはいけない、気がする。まあ、本気のアリアンロード様と戦う機会など、早々ないだろうし、折角なのでこのままやろう。それにアリアンロード様の槍技を真似できれば、他所では苦労しないだろう。今頑張って、後で楽をしよう。
「よく頑張りました。ではこれが最後の技です。後は‥‥‥分かりますね」
「はい!!」
「聖技『グランドクロス』」
「聖技『グランドクロス』」
アリアンロード様の渾身の一撃と私の一撃がぶつかり合い‥‥‥私だけが飛ばされた。
「うわあああああああ!!」
昨日初めて見て、受けて、覚えてはいる。だけど、説明が出来ないし、再現も出来るとは思えない。精々30%くらいがいいとこだろう。やっぱり無理だったか。
私は地に伏せて、意識が朦朧としている。きっともうすぐ、意識を失うだろう。この一月の間、毎日経験してきたので、大体わかった。
やっぱり無理だったな、少し意地を張り過ぎたな。折角、変形できるんだから、もう少しうまくやれば良かったな。
私が意識を失う前に反省していると、アリアンロード様が歩いてくるのが分かった。
「よく頑張りました、ハード・ワーク。最後の『グランドクロス』、しっかりと形に成っていましたよ。‥‥‥今はゆっくりと休みなさい。目覚めれば、貴方はもっと強くなっていますよ」
「‥‥‥は、い。ありがとう、ござい、ま、す」
最後にそれだけ言って、気を失った。