社畜の軌跡   作:あさまえいじ

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第一章 サザーラント州編
第四話 初仕事


―――七耀暦1206年4月1日 セントアーク

 

 私は一人、列車に乗ってセントアークにやって来た。

 本当なら、デュバリィさんとシャーリィさんと一緒に来るつもりだったが、そうもいかなくなった。

 アリアンロード様との鍛錬で気絶した私は、一時間程気絶してから目を覚ました。起きたら部屋にいたから、誰かに運んでもらったみたいだ。

 起きてからデュバリィさんに気絶した後の事を聞くと、怒りの形相で教えてくれた。

 

「マスターが運んでくださいましたの!!!!!!」

 

 その一言で全てを察した。アリアンロード様『命』なデュバリィさんの前で私がアリアンロード様に運ばれたなんて、不俱戴天の仇となっても仕方がない。

 この場に留まれば命はないと思い、私は起きて早々に列車に乗って、一人でセントアークに向かった。ちゃんと置手紙はしてきたから大丈夫だろう。

 その結果、到着はしたが夜になってしまった。困ったな、泊るところがない。ミラもあまり持っていない。初任給まだ貰ってないしな‥‥‥さて、どうするか?

私は悩んで、あることを思い付いた。

そうだ、魔獣を狩ろう。魔獣を倒せばセピスが出るから、それを換金してミラに変えよう。

 この周辺の魔獣の強さがどれ程かは分からないが、アリアンロード様や『劫炎』の先輩のようなバケモノはいないだろう。だが油断をして怪我などしようものなら、指導して頂いたアリアンロード様に申し訳がない。

 よし‥‥‥気を引き締めよう。あまり時間を掛けると、泊る場所が無くなってしまう。戦闘開始と同時に全力の一撃を叩き込み、瞬殺しよう。

 私はそう意気込んで、セントアークから街道に出ると、

「た、助けてくれーーー!」

 

 男の人の悲鳴が聞こえた。

私は急ぎ、その声の方に向かった。

 

 

 周囲に何もない開けた草原で魔獣に襲われている男性を見つけた。

 身なりが良さそうな、中年位の男性だ。大変だ!助けないと。

 私は『ハード・ワーク』を槍に変形させて、一気に魔獣に駆けていき、

 

「聖技『グランドクロス』」

 

 一撃で殲滅させた。

 どうやら、気絶する前より完成度が上がったような気がする。ほんの数パーセント位だが、アリアンロード様が言った通りだな。

 私は満足していると声を掛けられた。

 

「すまない。助かったよ」

「いえ、大したことではありません。それより、こんな日も暮れた時間に一体どうしたんですか?」

「実は、セントアークへ戻る途中で車が故障してしまってな。それで歩きでセントアークに向かうことになったんだが、運悪く魔獣に襲われてな。従者が食い止めてくれている間に、急ぎセントアークに向かい憲兵を呼んでくることにしたんだが、私も襲われて、今に至るというわけだ」

「!!では、従者の方は今も襲われているんでは!!どっちですか!!」

「あ、あっちだ!」

「このまま、セントアークに向かってください!私は従者の方を助けてから向かいます」

「す、すまない。頼んだ」

 

 私は先程の男性が指し示した方角に全力で走ると、すぐに見つかった。魔獣に囲まれた状態で。

 私は彼に大声を出して、魔獣の注意を引くことにした。

 

「ウオオオオオオオオオ!!!!」

「!!!!!!」

 

 魔獣がこちらに気付き、従者の男の包囲を解いた。

 私はすかさず、従者の男に大声で指示した。

 

「今すぐ離れろーーーー!!」

「!!!はい!!!」

 

 従者が離れたのが魔獣に見つかった‥‥‥だがもう遅い。

 私は炎を作り出し、投げつけた。

 

「オラ、オラ、オラ、オラ、オラァ!『劫炎』の先輩の必殺!ジリオンハザードォォォ!」

 

 周囲が太陽が昇ったような、まるで昼間のような明るさに成りながら、魔獣を焼き尽くしていく。

 しかし、満足な出来ではなかった。こんなの『劫炎』の先輩に見られたら、ヌリィ、と言われそうだ。

 まあ、これから完成度を上げていこう。

 

「おーい、大丈夫ですか」

 

 私は周囲に魔獣がいないか警戒しながら、従者の男に声を掛けた。

 

「‥‥‥あ、はい。だい、じょうぶ、です」

 

 どうやら気が動転しているようだ。

 

「とりあえず、怪我はなさそうですね。立てますか?」

「はい。立てます。先程は助けていただき、ありがとうございます」

「いえ、大したことではありません。ところで、貴方は貴族の方の従者の方で間違いありませんか?」

「はい、私、アルトハイム伯爵家に仕える執事でございます」

「やっぱりそうですか。先程セントアークの目前で魔獣に襲われていた貴族の方をお助けしましたが、そちらの方が心配しておりました」

「旦那様をお助けいただき、ありがとうございます。是非とも主共々お礼をさせていただきたいので、当家にご案内させてください」

 

 そう言って、アルトハイム伯爵家の執事に連れられて、セントアークに戻り、アルトハイム伯爵家に向かった。

 

 

―――セントアーク アルトハイム伯爵家

 

 

 アルトハイム伯爵家に入ると、先程助けた男性が勢いよく飛んできた。

 

「無事だったか!」

「はい、無事でございます、旦那様。こちらの方にお助け頂きましたので」

「私のみならず、当家の執事まで助けてくれて感謝する。先程は名乗りもせず失礼した。私はアルトハイム伯爵家の当主だ」

「!!アルトハイム伯爵家!あのつかぬ事をお聞きいたしますが、お嬢さんはトールズ士官学院で教官をなさっておりませんか?」

「ああ、我が娘メアリーは士官学院で教鞭を取っているが‥‥‥」

「そうでしたか、こちらこそ申し遅れました。私、ハード・ワークと申します。昨年度トールズ士官学院を卒業致しました。メアリー教官にご指導を頂きました」

「おお、そうであったか」

 

 どうやらここはトールズ士官学院の教官、メアリー教官の家のようだ。なんという縁だ。

 

「ハード君、私と執事を助けて頂き、感謝する。何か礼をしたいのだが、何かあるかね?」

「いえ、お礼欲しさに助けた訳ではありませんので、お気になさらず」

「何を言う。命の恩人をもてなさねばアルトハイムの名折れだ。そうだな、今日は遅いので、出来れば今日は当家に泊って行かないかね?」

「ええ!! 宜しいんですか?」

「もちろんだとも!では用意を頼むぞ」

「はい、かしこまりました。旦那様」

 

 そう言って執事の方が奥に行った。

 

「そうだ、ハード君。本日は若き俊英が当家を訪ねてくれたのだ。私は将来有望な芸術家のパトロンをしていてね、是非君にも紹介したい。こちらに来てくれたまえ」

 

 私はアルトハイム伯爵に連れられていくと、そこには二人の男がいた。

 

「ハード君、紹介しよう。こちらがシャンペール君、こちらがアレイスター君だ。」

「初めまして、ハード・ワークと申します」

「初めまして、シャンペールです。閣下の御命をお救い下さり感謝します」

「いえ、人助けは当然の事です。お気になさらず」

「アレイスターです。閣下はサザーランド随一の文化人と評される方だ。貴方の行動はこのサザーランドの…いや帝国の文化を守ったと言っても過言ではありません」

「いえ、大したことではありません」

 

 若い芸術家と言うことで、気難しいのかと思ったが、そんなことはなかった。

 その後はアルトハイム伯爵のもてなしを受けることになった。

 アレイスターさんには色々な話をされた。ここに来たのは何故とか、至宝についてとか、計画についてとか、色々話して、眠くなったので先に寝かせてもらった。ベッドがデカくて落ち着かなかった。

 

―――七耀暦1206年4月2日 セントアーク アルトハイム伯爵家

 私はいつもと違う天井を見て、この場所を思い出した。昨日はアルトハイム伯爵のご厚意で泊めて頂いたんだったな。

 昨夜は何故か、眠気に襲われたが……何かされたか?まあ、特に異常はないし、大丈夫だな。

 さて、今日はミラを稼がなくては、先立つものがない。魔獣退治を頑張ろう。

 私は与えられた部屋から出て、アルトハイム伯爵にご挨拶をすることにした。

 

「おはようございます、アルトハイム伯爵」

「ああ、おはよう、ハード君。昨夜はよく眠れたかね?」

「ええ、非常によく眠れました。ありがとうございます」

「いやいや、昨日助けてもらった礼だ。これでも足りないくらいだと思っているがね」

 

 アルトハイム伯爵と私が礼を言い合っていると、いい匂いがしてきた。

 

「さあさあ、朝食になさいましょう。ハードさんも座ってくださいね」

「はい。頂きます」

 

 朝食はパンとスープとポテトサラダとオムレツだ。とてもおいしそうだ。

 私は味わいながら食事を頂いた。

 

「どうかしら、ハードさん。お口に合うかしら?」

「ええ、とてもおいしいです。特にこのポテトサラダが一番いいです」

「あら、良かったわ。そのポテトサラダは私が作ったのよ」

「そうですか。是非とも作り方を教えていただきたい程です」

「あら、それくらいでしたら構わないわ」

 

 そう言って、奥様が私にポテトサラダの作り方を教えてくれた。

 なるほど、必要な食材と手順が書いてあるな。これなら、以前リィンから見せてもらった料理ノートに有った、レシピと組み合わせると、更に発展させたものが出来るな。

 必要な食材も『熟成チーズ』、『ほっくりポテト』、『粗挽き岩塩』の3つで店で買っても100ミラか。とてもお安く手に入る。食費が節約出来そうだ。後はこのレシピをアレンジしてバリエーションを増やそう。当分はこれで食いつなげそうだ。

 私がそんな目論見を立てていると、食べ終わったアルトハイム伯爵が話しかけてきた。

 

「そういえばハード君は今日はどうするんだね。昨日セントアークに着いたそうだが、何か目的が有るのかね?」

 

 目的か。私が今回の実験で担当するのは様々な対応、事務作業全般だ。そのためにも必要なものは……ミラだ。

 私が行動するためのミラではなく、結社の実験のために必要なミラを稼ぐ必要があることを思い出した。良し、稼ごう。でも、どうやって稼ぐか……そうだ、このレシピを使おう。

 私はアルトハイム伯爵の奥様から貰ったレシピで稼ぐことを考えた。

 

「アルトハイム伯爵、私はゼムリア大陸全土で活動している企業に今年就職しまして、そこでとある課題を与えられました。内容は出身地の食材を使って、料理を作り、販売して利益を出すことです。そのため、このセントアークに来まして、料理を探しておりました。料理は先程奥様からレシピを頂いた、ポテトサラダを考えております。奥様、このポテトサラダを私に成りにアレンジさせていただいて、販売させていただきたいのですが宜しいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ。ハードさんには主人と当家の執事をお助けいただいたご恩もあります。どうぞお使いください」

「ありがとうございます。奥様」

 

 よし、ちゃんと許可は取れたな。こういう時に後で権利問題とか揉めるのはまずいからな。

 後は出店許可を貰えれば、販売できそうだな。ここの領主様に許可を頂かなくてはな。

 

「私はこれから、こちらの領主、ハイアームズ侯に許可を頂き、販売を始めていく予定です。ですので、本日は移動販売の許可を頂きに参る予定です」

「なるほど……そういうことであれば、私も力になろう。ハイアームズ侯への口利きをしよう。そうすれば多少は早く許可が下りるかもしれん」

「是非とも、お願い致します。アルトハイム伯爵」

「うむ、任せたまえ」

 

 アルトハイム伯爵が協力を買って出てくれた。非常に有難い。

 しかし、良心が咎めるな。口からスラスラと出てくる内容は真実とは程遠い。その真実とは言い難い内容を信用してくれた、アルトハイム伯爵には悪いが、利用させてもらおう。

 そう言えば、セントアークのハイアームズ家と言えば、パトリックの家だったな。折角来たんだし、顔でも見てこよう。

 

「アルトハイム伯爵、ハイアームズ家に向かわれるのであれば、私も同行させていただきたいのですが、宜しいでしょうか?」

「構わんが、どうかしたのかね?」

「いえ、ハイアームズ侯の御三男は学友でして、折角近くまで来たので、挨拶しておこうかと思いまして」

「そうか、構わないとも。では支度をしてくるので、その後に共に行こう」

「はい。お願いします」

 

 

―――七耀暦1206年4月2日 セントアーク ハイアームズ侯爵家 

 

「ようこそお越しくださいました、セントハイム伯爵」

 

 ハイアームズ侯爵家を訪ねると、出迎えてくれたのはセレスタンさんだった。

 

「お久しぶりです、ハード様」

「お久しぶりです。セレスタンさん」

「ではこちらに、ハイアームズ侯はこちらにいらっしゃいます」

 

 挨拶もそこそこにハイアームズ侯の執務室に通してもらえた。

 

「これはセントハイム伯爵、よくお越しくださった」

「ハイアームズ侯、本日はご対応頂きありがとうございます」

「いえ、構いませんよ。ところでそちらの彼は……」

「ハード!!」

 

 執務室の扉が開き、パトリックが勢いよく入ってきた。

 

「パトリック、久しぶりだ。一月ぶりだな」

「ああ、久しぶりだ。もう一月経つのか、早いものだな」

「なるほど、パトリックの学友のハード・ワーク君か。噂は色々とパトリックやセレスタンから聞いているよ。まあ、かけてくれたまえ」 

 

 それからは私がここに来た理由と販売の許可を取りに来たことを告げると、アッサリと承認された。

 セントハイム伯爵とパトリック、セレスタンさんのおかげで、私の心象は非常にいい。そのためすぐに申請が通った。

 

「では、これが販売許可だ」

「ありがとうございます。ハイアームズ侯」

 

 さて、これからどうするか。まずは販売のための屋台とか、食材の買い込みとか、色々準備しないとな。

 さて、デュバリィさんとシャーリィさんが来る前に拠点の準備をしておくことを約束した以上、頑張らないとな。

 

―――七耀暦1206年4月8日 セントアーク

side デュバリィ

 

 私と、《紅の戦鬼》シャーリィ・オルランドがセントアークに降り立ちました。ハード・ワークと一週間遅れなのは、置いて行った手紙が原因です。

 

『先行してセントアークに行きます。拠点等の準備しておきますのでゆっくり(一週間程、間をおいて)来てください』

 

「全く、ハード・ワークは‥‥‥置手紙だけ置いて、さっさと行ってしまうとは」

「まあ、《社畜》のお兄さんは先に行ってても問題ないしね。それに、お兄さんが先に行ったのは『神速』のお姉さんが原因でしょう」

「グッ!あ、あのときは‥‥‥えーい!もういいでしょう。一週間前の事ですわ、水に流しなさいですわ!!」

「まあ、ラク出来ていいけどね。でも、お兄さんが用意してくれてる拠点とか、どんなだろうね?」

「‥‥‥知りませんわ」

 

 全く、あの男は一体何処で何をやっているのかしら。

 

「そうだ、お腹空かない」

「‥‥‥全く、貴方は着いたばかりだと言うのに‥‥‥」

 

グゥ~

 

「‥‥‥///」

「へぇー、そっちこそお腹空いてんじゃん」

「し、仕方ないですわね!何か買って食べますわよ」

「はいは~い」

 

 し、仕方がないですわ!生理現象ですし!そ、それに腹が減っては戦は出来ぬ、と言いますし、これから戦に挑むという気概は大事ですわ!

 私は自分言い聞かせるよう、自分に言い訳していました。

 

「ねぇねぇ、なんか良い匂いしない?」

「そう言えば・・・あちらの方からですわね。それに行列が出来ていますわね」

「なんか屋台みたいだね。そこにしよ!」

「そうですわね」

 

 私たちが並び始めると、徐々に何の屋台か分かってきました。

 

「コロッケみたいだね」

「その様ですわね」

 

 どうやらこの行列はコロッケの屋台のようですわ。

 まあ、移動しながらでも食べられるもので良かったですわ。しかし、何故このような行列が?

 私が疑問に思っていると、私たちの順番になりました。

 

「あれ、もうお着きですか?デュバリィ殿、シャーリィ殿」

「!!!」

 

 私は街中だというのに武器を取り出そうとしていました。

 私たちの名を知っているとは、一体何者かと顔を上げると・・・ハード・ワークでした。

 

「な、な、な・・・・」

 

私があまりの驚きで声が出せなかった。

 

「うん、さっき着いたんだ。《社畜》のお兄さん、ここでなにしてんの?」

「見ての通り屋台をやっている。活動資金を稼がなくてはならないのでね」

「へぇー、あ、コロッケ4つ」

「はい、500ミラになります」

「はーい。あれ、『神速』のお姉さん、どうしたの?」

「デュバリィ殿、どうしました?」

「な、な、な・・・・」

「なな、ああ七つですね。全部で875ミラになります」

 

 私はこの場所がどこなのか忘れて、思いの丈をぶつけました。

 

「何してやがりますの!!!!!」

 

side out

 

 私の屋台にデュバリィさんとシャーリィさんがお客様として来てくれた。もう一週間経ったか。まあ、最低限の準備は出来ているから大丈夫だろう。

 しかし、今は、

 

「お客様、他のお客様のご迷惑になりますので、もう少しお静かに」

「そうだよ、お姉さん。騒ぎになるとまずいんだから」

「あ、し、失礼いたしましたわ!!って、私が悪いんですの!?」

 

 どうやらデュバリィさんは疲れているみたいだ。この一週間準備が大変だったのかもしれない。頑張り屋だからな、デュバリィさん。一個、サービスしておこう。

 

「状況の報告がしたいので、少し待っていてください」

「うん、わはっはぁ」

 

 シャーリィさんが食べながら返事をしてくれた。返事をするのはいいが、食べながらは止めなさい。

 

 

 客足が落ち着いてきた。これなら抜けても問題なさそうだ。

 私は分け身に後は任せ、二人に現状の状況の説明に向かった。

 

「お待たせしました。デュバリィさん、シャーリィさん」

「えーえー、待ちましたわ。ゆっくりと貴方に言ってやる言葉の吟味ができる程、じっくりと待ちましたわ!!」

「うーん、まあ3時間も待ってると流石に飽きたね」

「すみません。流石に稼ぎ時に店を離れるわけにはいきませんので‥‥‥もう少し分け身が上手くできれば、支店も増やせるんですが」

「そのことで言いたいことが‥‥‥なに暢気に店なんてやっていますの!!結社の計画、そのための大切な実験を一体何だと思ってますの!!」

「デュバリィさん、分かっています。私も盟主様に任じられた結社の執行者としての責務も、アリアンロード様のご期待も当然分かっております」

「でしたら‥‥‥」

「ですが、そのために必要なものがあります。実験を成功させるために我々に最も必要で、持っていないものがあります。これはそのための第一歩です」

「私達に必要なもの‥‥‥ですか?それは一体?」

「‥‥‥ミラです。この世はミラがなければ何もできません。衣服、食事、住居、この三つが我々には必要です。ですがそのためにも最も必要なものはミラです」

「そ、それは、そうですが‥‥‥」

「ちなみに今どれくらい稼げてるの?」

 

 私はシャーリィさんの質問に帳簿を見ながら、昨日までの売り上げを計算すると‥‥‥

 

「100万ミラくらいです」

「100万!!」

「へえー、すごいじゃん。でもなんでそんなに稼げたの?」

「コロッケの原価は100ミラ、これを125ミラで販売しています。そのため一個で25ミラの儲けになります。この一週間で約4万個売れてます。現在屋台はセントアークの出入り口と中央に配備しています。そして二日前には百貨店『アルビオンガーデン』と『ホテル・オーガスタ』との契約が出来ましたので、これからの利益は更に増すことになるでしょう。後、コロッケは店先で揚げてますので、コロッケ製造はアルトハイム伯爵のご厚意で借りて頂いた、アパルトメント『ルナクレスト』で行っています。キチンと衛生指導は受けてますので安心してください。‥‥‥これが私のここまで準備状況です」

「‥‥‥」

「うわー、すごい儲かってるね。いいじゃん!すっごいじゃん!‥‥‥あれ、でも屋台と人、雇ってるよね。それで差し引き、あんまりないとかしない?」

「大丈夫です。人件費は0です。全て私の分け身ですから。一応同じ人間がたくさんいると、色々まずいので、変装して改造して別人にしていますが」

「‥‥‥」

「さすが《社畜》のお兄さん。やるじゃん!!」

 

 シャーリィさんにご満足して頂けたようだ。

 結社の計画ではこれからも実験は行われる。そのためにも私は稼げるうちに稼いでおいて、これからの実験に使えるようにしておくべきだ、資金は大事だ。それがいつか盟主様、アリアンロード様の御役に立つときが来るかも知れないし。

 しかし、先程からデュバリィさんが反応しなくなった。どうしたんだ?

 私がデュバリィさんの様子を訝しんでいると、突然‥‥‥叫んだ。

 

「な、何でNo.持ちはこんなに弁えない者ばっかりですの!!!マスターーーーー!!」

 

 デュバリィさん、街中で叫ぶのは止めた方がいいですよ。

 

 

 

―――七耀暦1206年4月2日 リーヴス

side リィン・シュバルツァー

 

RRRRRRRRRR

 

 ARCUSが鳴り出した。一体誰だ?

 

「はい、リィンです」

「リィンか、私だ。パトリックだ」

「パトリック!一月振りか、どうしたんだ、一体」

「今、セントアークにハードが来ているんだよ」

「え、ハードが!」

「そうか、セントアークか。‥‥‥少し今は、忙しくてな。落ち着いたら行きたいと思う」

「そうか、ハードも今日から屋台を始めて忙しいだろうからな。その内、落ち着いたら同期で集まりたいな」

「ああ、そうだな」

 

 いつか、集まれたら、な。

 

side out

 

 

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