社畜の軌跡   作:あさまえいじ

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第六話 本心

―――七耀暦1206年4月22日 ハーメル

 

 リィン達、トールズ第二に対し警告を終えて、私は拠点のあるハーメルに戻ろうとしている。

 おそらく彼らはここを突き止め、やってくるだろう。

 その時は‥‥‥また戦うことになるだろう。今度も手加減するしかないだろう。

 手加減だなんて、我ながら随分と上から目線な物言いをするようになったものだ。

 トールズ士官学院時代、リィンと私には明確な力の差があった。私の方が力は強かった。リィンよりも体が大きいから、それは不思議ではなかった。

 でも、リィンの方が技に優れていた。八葉一刀流という東方の武術を使う彼は、私よりも戦闘において、強かった。

 そんな彼を相手に、余裕を持って戦えた。初めて見せられた弐の型『疾風』も真似することが出来た。

 まあ、私がリィンとの戦いで余裕があったのは、アリアンロード様の研修のおかげだな。アリアンロード様と一対一で戦うのに比べれば、今のリィンにラウラ、《赤き死神》、TMPの少佐が相手とは言え、敵ではなかった。

 結社の執行者としては十分な戦果だと、言えるだろう。執行者の初戦闘にしては、という但し書きは付くだろうが、これからも頑張って行こう。全ては盟主様のために。

 

 私がハーメルに戻ってくると、デュバリィさんが待っていた。

 

【《神速》か、《紅の戦鬼》はどうした?】

「彼女でしたら、赤い星座の面々と宴をしていますわ。どうやら、小腹は満たせたようですわ。‥‥‥いい加減その仮面を外したら、どうですの」

 

 私は彼女に言われて、ずっと仮面をしていたことに漸く気づいた。もう、外してもいいか。

 私は仮面を外した。外の風が気持ちよかった。

 

「少しはましな顔になったようですわね」

「‥‥‥ええ、少しは覚悟が出来た、と思います」

 

 私はリィンと戦った。友に対して、顔を隠して戦った。覚悟を、決意を、執行者であることを示すことが出来た。‥‥‥いや、そんなものが出来ているならば、顔を隠す必要などない。やっぱり私に覚悟など出来ていないんだ。情けない限りだ。

 

「嘘おっしゃい。そんなものが出来ているなら、態々彼らを回復させる必要なんてありませんでしたわよ」

「‥‥‥見ていましたか、でも、そのすぐ後にこちらに全力で向かいましたが、デュバリィさんを見えませんでしたよ?」

「私は《神速》ですわよ。この名は伊達ではありませんわ」

 

 そうだった、私はデュバリィさんの速度に今だ追いつけてはいない。

 私が回復したのを見てから、ここに来たのか。だと言うのに、私に見られることもなく、か。まだまだ修行が足りないな。

 

「‥‥‥ハード・ワーク、貴方は何故戦うのですか?」

 

 デュバリィさんが私に問いかけた。私が戦う理由―――それは、

 

「私が戦う理由は‥‥‥盟主様のためです。誰からも必要とされなかった私を必要としてくださったから‥‥‥」

「貴方は望めば何にでもなれたのではないですの?」

 

 望めば、か‥‥‥私が何かを望んだのは、きっと親が生きていた時、までだったんだろうな。しかし‥‥‥

 

「‥‥‥今の私に、何かを望むことはありません。ただ必要とされるままに動くまで、です」

「貴方には、譲れない信念はありませんの?」

「ありません。私は結社に、盟主様のために働くのみ。それ以外は全て‥‥‥些事です」

「また嘘ですわね。譲れない信念があるから、彼らを回復させたんでしょう。‥‥‥別に何を言っても構いませんわよ。どうせ貴方の事です。私の思考の斜め下に飛んでっているでしょうし、そんなこと誰にも言いませんわよ」

「‥‥‥たぶん、私が一番理解出来ていないんです。何故回復させたのか、何故手加減したのか。任務のために彼らをこの場に呼ぶ必要があったから、手加減をして、回復させた。でも、私は彼らに、帰れと、言いました。私は‥‥‥何がしたいのか、分からないんです。‥‥‥リィンとは、去年一年、友達だったと、私は思っています。だから、自分自身で彼を傷つけるのは‥‥‥出来ません。したく、ありません。でも、私は執行者《社畜》としていなければ‥‥‥居場所がない」

 

 私にとって、トールズ士官学院時代には生徒会という居場所があった。トワ先輩が私に居場所をくれた。だから、その居場所を守るために私に出来ることは全てやった、つもりだ。だから、卒業した次の日にみんなが私に礼を言ってくれたことは嬉しかった。私がやってことは間違いじゃなかった、そう言ってくれた気がしたから、だからあの場所は特別なんだ。

 親が死んで、居場所を失って、ずっと一人だった。何をやるのも、食べるのも、寝るのも、遊ぶのも、勉強もずっと一人だった。

 トールズに入学したのも、空っぽの家にいるのが、つらかったからだ。目的が有ったわけではない。

 なのに‥‥‥多くのものが、捨てられないものが出来た。出来てしまった。

 でも今は、それを捨てなければならなくなってしまった。

 私は何なのか、分からなくなった。結社の執行者《社畜》であり、トールズ士官学院の卒業生。この二つが戦うことになったとき、どうすればいいのか分からなくなって、今に至っている。

 

「‥‥‥はぁ~貴方、やっぱりめんどくさいこと考えているじゃないですの。いいですか、貴方は結社の執行者《社畜》のハード・ワークなんですのよ」

「‥‥‥はい、私は結社の執行者《社畜》です」

「でしたら、執行者の権限を使えばいいではないですの。執行者にはあらゆる自由が許されていますわ。それは使徒からの命令であっても、その自由を使って、作戦を拒否すればいいじゃないですの」

「‥‥‥それも考えました。ですが‥‥‥」

「ですが、何ですの?」

「‥‥‥心象悪くなりません?」

「他の方はともかく、私の心象はもう既に最悪ですわ。今更下がりませんわ。だから、気にする必要ありませんわね、この計画から降りても。それに、執行者でそんなこと考えたのは貴方が最初だと思いますわ。執行者なんて、皆お守りが必要な奴ばっかりですわ。今更自分が常識人みたいなこと言っても、むしろ異質、気持ち悪いだけですわ。執行者になるには闇を抱えていなければ、なることは出来ないそうですわ。だから貴方の心の闇も、むしろ執行者なら持っていて当然のもの、むしろそれがあったから執行者になれたんですわ。受け入れなさい」

「デュバリィさん‥‥‥」

「私が言えることは、やりたいか、そうでないか、ご自分でお決めなさい」

 

 自分で決めろ、か。そうだな、こんなこと誰かに決めてもらうことじゃない。

 もう子供じゃない、大人だ。今は社会人だ、いつまでも学生気分ではいけない。

 

「やります。最後まで、やり通します」

「そうですか。貴方が決めたことならば私に否やはありませんわ。精々足を引っ張らないようにしてくださいましね」

「はい」

「ああ、そうですわ。貴方、戦うときは先程のマスクとローブを使いなさい」

「へ?」

「か、勘違いするんじゃありませんわよ。べ、別に貴方に配慮して、ではありませんわよ。そ、そう雰囲気、雰囲気が足りないんですわ。貴方に強者としての雰囲気が足りませんので、マスターの威をお借りでもしないと、結社としての品格に関わりますわ。なので、せめてもう少し強者の雰囲気が出るまでは戦闘に参加する際は顔を隠すことを進言致しますわ。ま、まあ貴方は執行者ですので、あらゆる自由がありますので、私のお願いを聞く必要はありませんが‥‥‥」

「‥‥‥デュバリィさん‥‥‥はい、分かりました。私が戦闘に参加する際はこのマスクを付けることにします」

「そ、そう」

 

 デュバリィさんは顔を背けて、答えた。

 ‥‥‥ありがとうございます、デュバリィさん。

 私は口に出すと、また何か言われそうなので、口には出さず心の中で礼を言った。

 

―――七耀暦1206年4月23日 パルム 

side リィン・シュバルツァー

 

 俺は帝国政府から『サザーランド州にて進行する《結社》の目的を暴き、これを阻止せよ』という要請を受けた。そのために、旧Ⅶ組のラウラ、フィー、エリオットが手伝ってくれている。ただ、代わりにユウナ、クルト、アルティナを置いてくる結果になってしまった。

 特にクルトには強く言い過ぎたと後悔している。クルトは17歳でヴァンダール流の中伝に達している。本当に才能に恵まれている剣士だ。

 だが、不足だ。半端な人間を『死地』に連れて行くわけにはいかない。そう言って、置いてきた。

 もう少し言い方があったんじゃないだろうか、そう考えてしまう。

 今にして、サラ教官の凄さが身に染みるくらいだ。

 もし、ハードだったら、何て言ったんだろうな。

 

 アイツ、不器用だったからな。教えようと必死なのはとてもよく分かる、だけど、アイツが歴史の勉強を教えようとすると、1200年の歴史を教えようとして来たからな。それも、各国の歴史を平行に教えようとしてくるので、とてもじゃないが時間が足りなかった。

 だけど、授業から離れていた俺のために、そこまで熱意を持ってくれたことは素直に嬉しかった。

 

 そう言えば、今ここにはハードが来ているんだったな。昨日の午前に来た時は居なかった。社員の人が言うにはパルムの方に支店を作るので、その打ち合わせに行っている、と言っていた。

 その後に、パルムに依頼で行くことがあったので、行ってみると、打ち合わせが終わってパルムからセントアークに戻っていたそうだ。

 そして、依頼が終わった後に、セントアーク経由で演習地に戻るときには、屋台が仕舞われていた。どうやら営業時間内に間に合わなかったみたいだ。

 残念だったな。折角会えると思っていたのに‥‥‥

 まあ、今回の演習で会えなかったのは運がなかったと諦めるしかないか。

 ハーメル村への道中、そんなことを考えていると、

 

「リィン、どうしたの?」

「エリオット‥‥‥セントアークにトールズの卒業生がいるそうなんだが、会えなかったからな。少し残念だった、と思ってな」

「パトリックの事?」

「いや、皆が卒業した後に生徒会長になった‥‥‥」

「ハードの事?」

「フィー、知っているのか?」

「ん、セントアークにいるよ。今コロッケの屋台をやってた。凄い儲かってるみたい。この間、会ったときはパルムに支店を建てようとしている、て言ってた」

「ああ、そうらしいな。昨日屋台にいた社員の人がそう言っていたな」

「社員?リィンが行った屋台はどこの?」

「え?セントアーク駅の近くだけど‥‥‥」

「いつもハードがいるところだね。たぶん忙しいから、代わりの人が居たんだね」

 

 あの時いたのは、背が高くて、体つきのいい男性だったな。眼鏡をかけた人で名前はアルバさんという人だった。昔はどこかで教授をしていたらしいけど、抗争に負けて行き場を失くしたらしい。凄い経歴の人だったけど、ハードにどこか似ている印象だったな。

 そうか、忙しいのでは仕方がないな。

 

「ハード君か、僕も会いたかったな」

「エリオットも知っているのか?」

「うん、トールズ時代に彼に助けてもらったからね」

「私も知っている。ハード・ワーク、私が在学中も助けてもらったが、卒業した後も水泳部を助けてもらったそうだ。モニカからの手紙で知っている」

「ラウラもか」

「私もトールズの時に会ってる」

「フィーまで‥‥‥知らなかった。一体どういう経緯で知り合ったんだ?」

「僕の場合はピアノを運んでもらったんだよ」

「ピアノ、か。確かに重いからな。それを運ぶのを手伝ってもらったのか‥‥‥」

「違う違う、手伝ってもらったんじゃなくて、一人で運んだんだよ。それもピアノを背負って、壁をよじ登って、音楽室に入れたんだよ」

「壁をよじ登って!!一体どういうことなんだ?」

「うん、あの時は業者の人が運び込もうとしたんだけど、階段が通せなかったんだ、大きすぎて。そこにハード君が来て、『階段が無理なら窓から入れましょう』と言って、音楽室の窓を外して、ピアノが入るスペースを確認したら、何とピアノを背負って、壁に手を掛けて、よじ登りだしたんだ。アレは驚いたな。みんな驚いてね、ミントだけは凄い凄いって笑ってたけど。それで壁をよじ登って、5分くらいかな、それくらいで、音楽室にピアノを運んでくれたんだ。それから卒業まで、会うたびに話したり、吹奏楽部でバイオリンを教えたりしたんだ。凄く筋が良くてね、一緒に帝都の音楽院に誘ったくらいだよ」

 

 エリオットが昔を思い出して、面白そうに話している。知らないところでも、やっぱりハードだったな。ピアノを背負って、壁をよじ登る、とか、相変わらず発想が斜め上に飛んで行くやつだな。

 しかし、エリオットがバイオリンを教えて、音楽院に誘うレベルとか、相変わらず多芸な奴だな。

 

「私のときもエリオットの時と似てる。園芸部で使う肥料とか土とか運んでもらった。たまに土を耕すのを手伝いに来てくれてたりした。ただ、ハードの場合、真面目過ぎる奴だったから、明日の朝に一緒にやろう、と言うと、私達が行く前に終わってた。ハードが一人でやってたみたい。何時に始めたのか聞いたら、0時から始めて、3時に終わったらしい。それでエーデル先輩に怒られてた。一人でやって、倒れたらどうする、とか。たぶんエーデル先輩に怒られた唯一の後輩だと思う。ただエーデル先輩が卒業するとき、ノートを渡してた。エーデル先輩に見せてもらったけど、園芸部で育てた、花や野菜の記録だった。温度や天気、出来具合まで事細かに出来てた。『これで園芸部を続けていくのに困らないか、確認してくれ』って言って。それをエーデル先輩が確認してからヴィヴィに渡してた。ただ、ヴィヴィは量が膨大過ぎて読むのに苦労してたみたい。手紙にそう書いてあった」

 

 フィーの話は、俺にも容易に想像がついた。おそらく超大作になっていたんだろうな。

 

「それで、最近セントアークで会って、久しぶり、って言ったら、『私の事を覚えていたのか』って言われたからムカついてキックしたんだけど、頑丈過ぎて、気付いてもいなかった。もう少し鍛えないと」

「ハハハ‥‥‥らしいな。ハードらしい対応だな」

 

 そうか、フィーもハードとそんな思い出があったんだな。だけど、やっぱりやり過ぎたんだな。

 いつでもどこでも、ハードはやっぱりハードだったらしい。

 

「最後は私か。私がハードと会ったのは、水泳部が使用していたシャワーが壊れた時だった。そのため、修理を依頼したんだ。それでやって来たのが、ジョルジュ先輩とハードだった。ジョルジュ先輩が直すところをハードが見ていて、他のシャワーはハードが直していた。業者に頼まないのかと聞くと『予算が勿体ない』と言っていた。それから何か壊れると、ジョルジュ先輩を伴って現れて、最初に一つジョルジュ先輩に直してもらって、他はハードが直していた。途中からはハード一人で全て直していた。それは私が卒業してからもそうだったらしい、モニカの手紙にそう書かれていた」

 

 また予算か。アイツの言葉の中で使用頻度の多い言葉ベスト3に入る言葉じゃないのか?

 

「あとは、水泳部よりも泳ぎが上手かったな。ハード一人対水泳部全員で誰か一人でも勝てば予算の増額を賭けて戦って‥‥‥完敗した。クレイン部長よりも速かった。なんでも内戦中にブリオニア島に泳いで行っていたらしい。嘘か本当か、ブルーマリーナの泳ぎを見て、上手くなったらしい。私達が卒業した後、カスパルが依頼して、水泳部の助っ人として大会に出てもらったそうだが、優勝したと書いてあったな」

「‥‥‥そういえば、そんなことあったな」

 

 大会のメンバーが足りないという依頼が来ていたらしく、大会に出ていた。俺は、その時は政府からの要請で離れていたが、帰ってきたら表彰されていた。何でも、大会記録を1秒以上短縮しての圧勝だったらしい。その泳ぎから『トールズのブルーマリーナ』と呼ばれていたらしい。 

 

「まさか、皆とそんなつながりがあったとは知らなかったな」

「たぶんリィンくらいだったと思う。ハードと関わりが薄かったのは」

「そうだね。彼、有名人だったし」

「うむ、あれほど目立つ男もそうはいなかったな。何しろ単騎で領邦軍を倒したとか、魔獣百体素手で倒したとか、要塞を攻略したとか、噂に事欠かなったな」

「‥‥‥そうか」

 

 俺は何故か、悔しい思いがした。

 

 

 ハーメルへの道は閉ざされていた。だけど、クレイグ将軍、ハイアームズ侯爵の許可を得て、開けることが出来た。道中で、アガットさんが加わってくれた。アガットさんはハーメルの事を知っていた。

 かつて、リベールで起きた事件の際、そのことを知ったらしい。

 ハーメルには二人の生き残りがいて、二人とも結社の執行者になっていたそうだ。だけど、その事件の際、一人は遊撃士に、もう一人は‥‥‥亡くなったそうだ。

 亡くなったのは結社の執行者No.Ⅱ《剣帝》と呼ばれる男だった。俺も聞いたことがあった。他の執行者が口にしていた名だった。

 彼は今、ハーメル村の奥に眠っているらしい。

 俺達はその場に向かうと‥‥‥先客が居た。

 

「‥‥‥やっぱり」

 

 そこにいたのは《神速》、《紅の戦鬼》、そして‥‥‥《社畜》の三人だった。

 彼らは慰霊碑に祈りを捧げている。とても神聖な雰囲気で話しかけることは出来なかった。

 それから、少し経ち、彼らは祈りを止め、こちらに場所を譲った。

 

「待っていて差し上げますから、花を捧げてしまいなさい」

 

 俺達は《神速》の言葉に従い、花を捧げ、祈りをささげた。

 慰霊碑の前には折れた剣が刺さっている。

 

「この剣は‥‥‥アイツのか」

「ええ、魔剣『ケルンバイター』。盟主より授かったそうですがもはや力は喪われていますわ」

 

 アガットさんが言う、アイツとは先程の話にあった《剣帝》の事か。最後まで持ち主のところにあり続けたんだろう。

 その後祈りを終えた俺達は彼らと共に、村の入り口の広場に移動することにした。ここで争うのは憚られた。

 

「別にいいよ。本命もまだ来ていないし」

 

 《紅の戦鬼》の発言に疑問を持ちながらも、村の入り口の広場に移動した。

 

side out

 

―――七耀暦1206年4月23日 ハーメル

 

 私たちが慰霊碑に祈りを捧げていると、リィン達がやって来た。

 セントアークとパルムにいる分け身からの情報で彼らの動向は分かっていた。やはり来てしまったか。

 どうやら、この場所の真実も知っているようだ。

 私たちは村の入り口に移動して、対峙した。

 

「単刀直入に聞こう。この地の静謐を破ってまで『何』をしようとするつもりだ」

「死者を悼む心と礼節を持ち合わせていると見受ける。なのに何故、よりによってこんな場所を利用しているんだ?」 

 

 ラウラとリィンが私達に問いかける。その問いにデュバリィさんが答えた。

 

「‥‥‥こういった里は別にここだけではありませんわ。帝国以外の辺境‥‥‥野盗風情に襲われて全滅した集落なども少なくありません。私の故郷のように―――どうでもいい話でしたわね」

「死者は死者だよ。そして生者には生者の生きる世界がある‥‥‥生きて足掻いて苦しんで、刹那の喜びと安らぎを感じながら死んでいく世界がね」

 

 デュバリィさんが、シャーリィさんが己の考えを語っていく。

 そして、シャーリィさんが後ろに飛んで、距離を取った。

 

「それじゃあ、始めようか?ランディ兄がいないのはちょっと残念だったけど‥‥‥妖精にA級遊撃士もいるし、けっこう楽しめそうかな?」

 

 その言葉に赤い星座の軍用魔獣がシャーリィさんの傍に、デュバリィさんの傍に鉄機隊専用機ヴァンガード《F2》スレイプニルが出現した。

 

「私の剣技があれば無用ですが、少しは愉しませて差し上げます」

 

 こちらは出揃った。さあ、どうするリィン

 

「いいだろう。俺達が勝ったら話してもらうぞ。一年半の沈黙を破って《結社》が何をするつもりなのか!」

 

 リィンが啖呵を切った。ならば、

 

【いいだろう。勝てればな!】

 

 私が体に闘気を漲らせ応えると、

 

「お待ちなさい。《社畜》」

 

 待ったがかかった。ここで‥‥‥ですか?!

 

【なんだ、《神速》】

「貴方にはA級遊撃士の相手をお願いしますわ。あちらは妖精の相手をするようですし、後は私がやりますわ。それでいいですわね」

 

 どうやら、昨日の今日で、気を使わせたようだ。‥‥‥なら、

 

【よかろう、承った。】

 

 お心遣い有難く頂戴します。

 私は大剣を持った男を指差し、

 

【お初にお目にかかる、我は執行者No.ⅩⅩⅠ《社畜》。貴殿の相手をさせていただく。A級遊撃士の手並み、とくと拝見させていただこう】

「上等だ、かかってこいや!!」

 

 私とA級遊撃士が飛び出し、ぶつかり合った。

 それを合図に戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

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