社畜の軌跡   作:あさまえいじ

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第七話 激闘

―――七耀暦1206年4月23日 ハーメル

「うおりゃああああ!!」

 

 A級遊撃士が大剣で私に斬りかかってきた。ならばこちらも、大剣で戦おう。

 私は『ハード・ワーク』を大剣に変形させて、その一撃を受け止めた。

 

【中々だな。ラウラ・S・アルゼイドよりは上か】

「なに!テメェ、何で俺と同じ剣を持ってやがる!」

【さあ、何故だろうな?】

「ふざけんじゃねぇ!!うおおおおお!!」

 

 更に力を上げてきたか、だがまあこれくらいなら許容範囲だな。

 

【その程度か、拍子抜けだな。フン!!】

「クッ!」

 

 力を込めて大剣を振り、A級遊撃士を弾き飛ばす。

 そういえば、このA級遊撃士の名前を知らなかったな。なんと言うんだ?

 

【そういえばまだ貴殿の名を聞いていなかったな。倒す前に聞いておきたい】

「ッ‥‥‥アガットだ。アガット・クロスナー、《重剣》のアガットだ。覚えとけ!」

【なるほど、覚えておこう。生きていればな!】

 

 名前も聞いたし、思いっきりやろう。

 相手はA級遊撃士、これから執行者として戦う以上、避けては通れない相手だ。なら、私がこれから戦っていけるか見定める格好の相手といえる。

 

【行くぞ、アガット。簡単に潰れてくれるなよ】

「ほざけ!」

 

 また大剣同士の打ち合いが始まった。周囲に甲高い音が響き渡る。

 何合目か分からない程打ち合い、分かったことがある。

 

【どうやら私の方が力、スピード共に上のようだな】

「ハアッ、ハアッ、クッ!」

【それにスタミナも上のようだな。さてどうする、アガット】

「なめんじゃねぇ!!」

 

 アガットは後ろに飛び、距離を取ると、

 

「『バッファローレイジ』、うおおおおおおおお!!」

【ほう、闘気を高めたか。ならば、『バッファローレイジ』、うおおおおおおおお!!】

「く、俺の真似しやがって、気に食わねえ野郎だ。だったら、コイツを食らいやがれ『ダイナストゲイル』」

 

 大剣での連撃を放ってきた。一振り、二振り、一回転して力を溜めて、最後の一振り、よし覚えた。

 私はアガットの攻撃を見ながら、的確に弾く。そして、打ち終わった後の状態を見据えて、

 

【なるほど、こうか。『ダイナストゲイル』】

「ガ!、グ!!、グハァ!!!」

 

 私の『ダイナストゲイル』が打ち終わりに合わせて放ったため、アガットに防ぐ余地はなかった。

 これで終わりか。まあ、二つの技を見せてもらえたし、良しとしよう。それにA級遊撃士とは言え、アリアンロード様や劫炎の先輩程ではない。それが分かっただけでも収穫だな。

 さて、気は進まないが、Ⅶ組との戦いに混ざるとするか。

 

「ま、待て」

 

 私を呼び留めたのは倒したはずのアガットだった。中々頑丈だな。

 

【どうした、アガット?起きるのに手はいるか?】

「ふ、ざけん、じゃねえ!!ハァ、ハァ、ハァ‥‥‥」

 

 大剣を支えに、立ち上がるアガット。だが疲労の色は濃く見える。先程の『バッファローレイジ』が影響か。

 

【『バッファローレイジ』は使用者の体力を消耗するようだな。回復の手段を持たないのに、使用するのは賢い戦い方ではないな】

「へ、今更だな。それに使ったのはテメェも一緒だろうが」

【そうだな、私も使用した。ならば『神なる焔』】

 

 疲労したなら回復すればいい、ただそれだけだ。

 『劫炎』の先輩の技は体力、気力、疲労などを回復できる万能回復技だ。これを覚えてから、睡眠時間を半分にまで減らせたし、良い能力だ。

 

「て、てめぇ‥‥‥それは反則だろ」

【使えるものは何でも使う。それが我だ】

 

 使えるなら、ノートの余白部分を無駄なく使う私が、こんな有能技を死蔵する訳がない。

 それにさっきの『バッファローレイジ』で使用した体力を『神なる焔』で回復させれば、トータルプラスとなる。正に最高の組み合わせだな。

 さて、無駄話は終わりにして、仕事を完遂させよう。

 

【さて、そろそろ終わりにしよう】

 

 私はゆっくりとアガットに近づいて行く。もう、アガットの名前を憶えていなくてもよさそうだな。

 私はアガットの至近距離まで近づき、大剣を振り上げた。

 

【さようなら、アガット・クロスナー。君の名はすぐに忘れよう】

 

 私が大剣を振り下ろそうとすると‥‥‥大きな音が聞こえた。

 私が音の方を見ると、機甲兵がシャーリィさんと後方支援を予定していたガレスさんに斬りかかって行った。それに見てみると、アイネスさんとエンネアさんも来ている。しまったな、戦いに集中しすぎて、周りの状況に疎かになっていたな。仕方がない‥‥‥

 

【命拾いしたな、アガット】

 

 私はアガットに一言呟き、乱入者である機甲兵に向かって、斬りかかって行く。

 

side リィン・シュバルツァー

 

 鉄機隊筆頭隊士《神速》と執行者《紅の戦鬼》の二人と対峙した俺達Ⅶ組。

 昨日戦った執行者《社畜》はアガットさんを相手に選んだようだ。

 昨日の戦いでは、まるで力を出していなかったように思えた。だが、それでも強い、圧倒的なまでに。

 かつて同じ執行者の《劫炎》のマクバーンと対峙したときに比べれば、下かも知れないが、それでも今の俺達よりも上に位置しているだろう。目の前の二人も確かに強いがそれでも‥‥‥《社畜》の方が上か。

 アガットさんが簡単に負けるとは思えない。だけど、相手がマクバーンクラスだとすると、アガットさん一人ではそう長くは持たないだろう。

 時間はかけられない。行くぞ!!

 

「行くぞ、『緋空斬』」

「!!」

 

 《神速》に回避された。だが、

 

「弐の型『疾風』」

「甘いですわ!」

 

 盾で受け止められたか。だけど、

 

「ラウラ!」

「任せろ!砕け散れ『獅子連爪』」

「グゥ!」

 

 《神速》はこれも盾で受け止めようとしたが、威力が大きいため、弾き飛ばされた。

 

「アハハ、やるねえ」

「甘いよ」

「常夜に響け!ノクターンベル」

 

 フィーがスピードで攪乱して《紅の戦鬼》を足止めしてくれている。それをエリオットが支援してくれている。

 なら、ここは一気に《神速》を叩く。

 

「明鏡止水、我が太刀は静!‥‥‥見えた!」

 

 俺は《神速》の周囲を縦横無尽に移動しながら斬撃を繰り出した。

 

「七ノ太刀・落葉」

「ぐっ!」

 

 俺の攻撃で距離を取った《神速》、それに並ぶように《紅の戦鬼》が移動した。

 俺はそれを見て、アガットさんの方を見ると、状況は良くないみたいだ。

 やっぱりアガットさんも同じ武器を使って戦われている。同じ大剣で戦い、力の差を示すような戦い方だ。そして、相手の技を覚えて、自分で使う。やっぱりそうだったのか。昨日はもしかしたら、俺と同じ八葉一刀流の剣士かとも思ったが、そんな訳がない。

 練度が低い訳じゃない。だけど、アレは俺と同じだった。言い表せない何かが、同じ‥‥‥でも、何か劣化していたようだった。

 たぶん、《社畜》は戦闘中に相手の行動を覚えて、それを自分のものにしているんではないのか。だとしたら、長期戦は不利だ。早く応援に行かないと、アガットさんでも厳しい。

 ‥‥‥だけど、目の前の敵はそれを許してはくれないだろう。

 

「あはは、なかなかいいじゃん!だけど―――ねえ、灰色のお兄さん。どうして本気を出さないのさぁ?」

「‥‥‥!」

 

 やはり見抜かれるか。だけど‥‥‥

 俺が力を、神気合一を使うことを躊躇っていると、

 

「させない」

 

 フィーが飛び出し、俺に力を使わせないようにしてくれた。だけど、銃声が聞こえ、フィーが飛びのいた。

 小高い丘の上から狙撃された。‥‥‥狙撃兵がいたのか。

 

「ん!」

 

 今度は矢で狙撃された。太刀で弾いて、狙撃された方を見ると、他の鉄機隊隊士がいた。

 《神速》は転移で、鉄機隊隊士の下に飛んだ。《紅の戦鬼》も同じくだった。

 あちらは5人、こちらは4人‥‥‥数の上でも不利になったか。

 アガットさんは‥‥‥やはり分が悪い、か。

 

「『対戦相手』も様子見みたいだし、とことん殺り合おうか?」

「まあ、いいでしょう。上手くいけば『起動条件』もクリアできそうですし」

 

 『対戦相手』、『起動条件』一体どういう意味なんだ?

 《神速》と《紅の戦鬼》が発した言葉の意味を考えていると、

 

「ハッ、もらったぜ!!」

 

 突然声が聞こえ、《紅の戦鬼》と狙撃兵へと攻撃がされた。現れたのは‥‥‥機甲兵だった。

 

「その声、Ⅷ組のアッシュか!?」

「あたしたちもいます!」

「参る―――!」

 

 木陰の方から二人の男女が飛び出し、鉄機隊隊士に奇襲をかけた。そこにいたのはⅦ組のユウナとクルトだった。

 そしてもう一人、宙を駆け《神速》に一撃を与えたのは、アルティナだった。

 

「アルティナ、それにクルトにユウナまで‥‥‥!」

 

 来てくれたのは助かるでも、危険だ。

 

「駄目だ、下がっていろ‥‥‥!」

「聞けません―――!貴方は言った‥‥‥!『その先』は自分で見つけろと。父と兄の剣に憧れ、失望し、行き場を見失っていた自分に‥‥‥間違っているかも知れない――――だが、これが僕の『一歩先』です」

「‥‥‥」

 

 クルトの言葉に俺は何も言えなかった。

 

「命令違反は承知です。ですが有益な情報を入手したのでサポートに来ました。状況に応じて主体的に判断するのが特務活動という話でしたので」

「それは‥‥‥」

 

 アルティナの言葉に言い返すことが出来なかった。

 

「すみません、教官。言いつけを破ってしまって。でも、言いましたよね?『君たちは君たちのⅦ組がどういうものか見出すといい』って。自信も確信もないけど‥‥‥三人で決めて、ここに来ました!」

 

 ユウナの言葉に感心してしまった。

 

「‥‥‥なるほど。確かにⅦ組だな」

「しかもリィンの言葉が全部ブーメランになってる」

 

 ラウラとフィーの言葉が突き刺さる。

 

「くっ、何を青臭く盛り上がってるんですの!?」

「あはは、愉しそうでいいじゃん。折角だからまとめて全員とやりあってもよかったけど‥‥‥これだけ場が暖まってたらいけそうかな?」

 

 《紅の戦鬼》がリモコンを取り出した。だが、

 

「おっと、イカした姉さん。妙な事はやめてくれよな?化物みてぇに強そうだが‥‥‥勝手な真似はさせねえぜ?」

「ふふ、面白い子がいるねぇ。機甲兵に乗ってるのに全然油断してないみたいだし」

「ハッ、戦車よりは装甲が薄いって話だからな。昨日みたいにパンツァーファウスト喰らったらヤバいってのは分かってんだよ。その化物みたいなチェーンソーもむざむざ喰らうつもりはねぇぞ」

「ふふ、パパ辺りが気に入りそうな子だけど‥‥‥今は引っ込んでてくれないかな?」

【弐の型『疾風』、更に秦斗流奥義『寸勁』】

 

 その声と共に、アッシュの乗った機甲兵が吹っ飛ばされた。

 

「うわぁ!」

「アッシュ‥‥‥!?」

 

 現れたのは《社畜》。俺はアガットさんの方を見ると‥‥‥ボロボロだった。だけど、傷だらけだけど、命に別状はなさそうだ。

 だが、《社畜》はアガットさんを倒し、今度は機甲兵を倒して見せたと言うのか‥‥‥規格外だな。

 

「あはは、やるねえ《社畜》のお兄さん。A級遊撃士はどうしたの?」

【アガットならそこで倒れている。それなりに収穫はあったが、それまでだ。我には勝てん!】

「ふーん。じゃあ、ポチッと」

 

 地鳴りがしてきた。一体何が!

 起き上がったのは大きな人形兵器だった。

 

「なんという大きさだ!」

「ゴライアス以上だね」

「‥‥‥結社の《神機》。クロスベル独立国に貸与され、第五機甲師団を壊滅させた‥‥‥」

「グっ!エステルたちが戦った奴の後継機か!?『至宝』の力なしでも動けんのかよ!?」

 

 俺達の驚きを他所に、結社の面々は、喜んでいる。

 

「あはは、見事成功だね!」

「あとはどこまで機能が使えるかのテストですが‥‥‥」

 

 だが、このままにしておくわけにはいかない。

 こんなものを人里に出すわけにはいかない。

 

「来い―――《灰の機神》ヴァリマール」

 

side out

 

【‥‥‥呼ぶか】

 

 こちらの実験は無事に成功した。

 《神機アイオーン》TYPE-γⅡは起動した。場の闘気の高まりで、神機を起動させることが出来ると証明出来た。

 いずれ来る時に使えることが分かった。何に使うかまでは知らないが‥‥‥まあいい、私は私の仕事をこなそう。盟主様のため、使徒様のために戦うまでだ。

 私がそんなことを考えていると、ヴァリマールが到着した。

 

「あははっ!これが噂の《騎神》だね」

「来ましたわね―――ですが、想定済みですわ!」

 

 ヴァリマールでも、あの神機を簡単に倒せると思わない方がいい。ヴァリマールよりも質量、パワー共に上だ。‥‥‥だが、機動力ではヴァリマールの方が分がある。勝ち目があるとすればそこだが‥‥‥まあ、難しいか。

 何度も何度もヴァリマールが斬りかかって行く。だけど、神機が返すのは一撃だけ。手数が少ないから、ヴァリマールに当てることは出来ない。だけど、リィンの方も有効打にはならない。

 あの神機の頑丈さと一撃の破壊力の前ではどれだけ攻撃を与えても、一発直撃するだけで、勝敗は決しかねない。

 ん?先程、吹っ飛ばした機甲兵に新Ⅶ組の生徒が集まっているな。どうする、邪魔するか。‥‥‥いや、止めておこう。後輩イジメはダメだな。第二分校とは言え、トールズの生徒だ。後輩が成すことを見守るのも先輩の務めだ。

 どうやら、リィンと一緒に機甲兵で戦うつもりのようだ。無茶な事を‥‥‥

 あれ?なんかⅦ組が光ってるぞ。ARCUSというオーブメントが光っているようだな。

 うーむ、光出してから動きが良くなり出したな。おそらく『リンク』が使われたようだな。不思議な力だな。

 動きが良くなったヴァリマールと機甲兵が神機を圧倒していき、機能停止に至った。神機もここまでのようだな、どうやらこれで実験は終了だな。

 

「そこまでだぜシャーリィ!」

 

 この声は昨日の《赤き死神》か。機甲兵に乗ってこの場所に来るとは‥‥‥

 

「来てくれたんですか‥‥‥」

「ああ、他の連中もこちらに駆けつけている。おいたは終わりだ―――全員、覚悟してもらおうか!?」

 

 他の連中!?まさか‥‥‥トワ先輩もか!?

 今の私に、顔を合わせる事など出来るはずがない。だが‥‥‥

 私が悩んでいると、どうやら本命が現れたようだ。

 

「今度はちゃんと殺り合ってくれるよね――――《猟兵王》?」

 

 シャーリィさんの呼びかけに、遂に応えたか。

 

「――――なんだ、気付いてやがったか」

 

 《猟兵王》と西風の旅団の連隊長の二人が現れた。

 結社から帝国政府、いや、ギリアス・オズボーンの傘下に入った、黒の工房。その刺客、といったところか。

 結社を裏切った組織のものなら排除すべきだが‥‥‥無理か。

 あの《猟兵王》は無理だな。連隊長二人なら問題ない、二人がかりでも倒せる。だが、アリアンロード様や《劫炎》の先輩程ではないにしても、私では分が悪い。だが‥‥‥

 私の思考がどうやって、かの《猟兵王》を排除するか考えていると、どうやら気づかれてしまったようだ。

 

「‥‥‥オイオイ、今すぐやり合うつもりはないぞ。若えの」

【‥‥‥その言葉は我に向けていると取っていいのか、《猟兵王》】

 

 どうやら私の殺気が伝わってしまったようだ。まだまだ修行が足りないな。

 

「その若さで大したもんだ。この場にいる誰よりも強い闘気を漲らせている。いずれ俺やバルデルと同じ領域に、いやその上に至る可能性がある。その片鱗を見せている。‥‥‥だが、今はまだ」

【!!!】

 

 寒気がしたな、今。黒い闘気が見えた。

 

「俺の方が強ええぞ」

【確かに、そうだな。だが、こんな感じか!!】

 

 私は今見せられた闘気を真似してみた。出せた、ほんの数秒だけだが‥‥‥

 

「こりゃあ、驚いた。まさか、ほんの一瞬とは言え、黒い闘気が出せるとは。お前さん、うちに入んねぇか?」

 

 引き抜きの誘いを受けた。まさか『ヘッドハンティング』だと!

 かつての私であれば、心が揺れただろう。だが‥‥‥

 

【ほう、かの猟兵王直々のスカウトとは、我も捨てたものではなさそうだ。大変ありがたい話しだ】

「じゃあ‥‥‥」

【だが、ノーだ。我が忠誠は盟主様に捧げている。我を闇から救って頂いた恩義がある。ならば我が生涯を賭して、お仕えするのみ】

 

 我が魂は決して揺れぬ。盟主様への忠義に微塵の疑う余地なし。

 

「やれやれ、おじさんフラれちゃったね。まあ仕方ない」

 

 どうやら《猟兵王》も私の覚悟を受けて、諦めてくれた。

 

 その後、《猟兵王》はフィーにいくつか話しかけ、紫の機神に乗って、神機を破壊して、去って行った。

 神機一体でいくらすると思ってんだ!

 

「ほら帰りますわよ《社畜》」

 

 デュバリィさんが呼んでいる。どうやら《転移》で帰るようだ。‥‥‥最後に挨拶だけしていこう。

 

【先に行け、《神速》】

「‥‥‥分かりましたわ」

 

 デュバリィさん達は転移して帰って行った。私一人が残った。

 まずは‥‥‥拍手を送ろう。

 

【さて、まずはおめでとう、と言っておこう。トールズ第二、並びに遊撃士協会。だが『幻焔計画』の奪還もようやく始まったばかりだ。『我々』と『彼ら』の戦い、これからも激化していくだろう。怪我を、イヤ、死にたくなければ‥‥‥指をくわえて眺めているといい。たった一つしかない命、みだりに散らすものではないぞ】

「‥‥‥なに!」

 

 私の言葉の最中にこちらに走ってくる、トールズ第二の残りの生徒たち、そして‥‥‥トワ先輩。

 昨日は初仕事と言うことで緊張していて、トワ先輩の様子を見ることは出来なかった。

 ‥‥‥どうやらお変わりなさそうだ。出来ればこれ以上の戦いには参加してほしくはないが‥‥‥そんなことを言っても聞き入れないだろう。それに今の私に、そんなことを言う資格もないな。

 ‥‥‥やることも終わったし、帰るか。

 

【‥‥‥ではな】

「待て!」

 

 いつか、また会おう。リィン、トワ先輩。

 私は転移して、結社に戻った。

 

 

―――七耀暦1206年4月23日 ???

 

 今回の実験の成果について、デュバリィさんがアリアンロード様、に報告している。私はその場に同席している。

 

「‥‥‥報告は以上ですわ、」

「分かりました、ご苦労様でした。デュバリィ」

 

 デュバリィさんの報告が終わった。特に問題はなかった。だけど‥‥‥

 

「アリアンロード様、私からも報告がございます」

「聞きましょう」

 

 アリアンロード様がお聞きいただけるようだ。これまでのセントアークでの活動で生じた問題点を報告しよう。

 

「まず、こちらをご覧ください」

「これは?」

 

 私が出したのは‥‥‥今月の売り上げ見込みとこれからの展望を反映した計画書だ。

 今回の様な調査の場合、ミラが必要なことが多いし、拠点となる場所を用意する必要がある。

 その場、その場で用意していては不自然に思われるかも知れない。

 だからこそ、事前にしっかりとした準備を行うことで、今後の計画での支障を無くせることを力説した。

 

「なるほど、分かりました。貴方の言う通り、兵站などは確かに重要な事だと思います」

「では‥‥‥」

「ですが、これは私に提出するべきではありません。こういったことは、カンパネルラに回した方がいいでしょう」

「なるほど、分かりました。大変申し訳ございません」

「いえ、作戦の成否は兵站にかかっています。貴方の指摘は実に良い内容でした。久しく忘れていました」

「では、後程カンパネルラさんにご報告に参ります」

「‥‥‥その必要はないようです。そこにいますね、カンパネルラ」

 

 アリアンロード様が言うと、そこにカンパネルラさんが現れた。

 

「お呼びですか、聖女様」

「先程のハードの件、貴方はどう思いますか?」

「僕は賛成ですね。ミラは大事だし。これからの動きでは、物価も上がるだろうし。そうなってくると彼の考えは実に良いと思います」

「では、そちらはお任せしますね」

「ええ、お任せください。ああ、《社畜》を後程借りますね。この計画について、もう少し話を聞いてみたいですし、それに彼が第二の実験に行くことになってますので、その間の代理の人員とも引き合わせる必要がありますので」

「分かりました。ハード、他になければ行って構いません」

 

 他になければ、か。もう一点ある。‥‥‥どちらかと言えば、こっちが本命か。

 

「恐れながら、もう一点ございます」

「聞きましょう」

「あ、時間かかるなら、僕は席をはずそうか?」

 

 カンパネルラさんがそう言ってくれた。まあそれほど時間のかかることではないな。

 

「いえ、すぐに済みます。アリアンロード様、先の実験の折、《猟兵王》と相対しました。その際、力の差を感じました。恐れながら、今一度御指南賜りたくお願い致します」

 

 私は真摯に頭を下げ、お願い申し上げた。

 

「頭をお上げなさい。ハード、次の実験までの間、私が指導致しましょう。全身全霊を賭して!」

 

 黄金の闘気を体から溢れさせる、アリアンロード様。ならば私も!

  

「!!!」

 

 私も猟兵王が使っていた、黒の闘気を体から溢れさせる。

 

「なるほど、その色は最強の猟兵だけが出せる闘気。猟兵王と対峙した際に真似ましたね‥‥‥いいでしょう!貴方を私と同じ色に染め上げましょう」

 

 先程よりも闘気が強くなった。黄金も心なしか猛々しくなった気がする。 

 アリアンロード様が本気だと言うことか。この指導を受け、私は更に強くならなければならない。結社のため、盟主様のため、力を付けなければならない。

 

「よろしくお願いいたします」

 

 不思議な感覚だ。執行者になる前の研修では恐怖を感じていたのに、今は‥‥‥高揚感を感じている。

 結社のために、盟主様のために、戦ったという自信が付いたからなのだろう。

 新たな目的が出来た。結社のために、盟主様のために、執行者としての責務を果たすという目的が出来た。

 だからこそ、力を付ける。それが私の成すべきことだ。

 




次回からクロスベル編になります。
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