社畜の軌跡   作:あさまえいじ

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よろしくお願いします。


第八話 社畜の一日

―――七耀暦1206年4月23日 ???

 

 私はアリアンロード様に指導して頂けることになり、今度はカンパネルラさんと共に今後の展望について話すことになった。

 それに私は執行者として第二の実験にも参加することになっているため、その間代わりに対応してくれる、パートナーを紹介してくれるそうだ。どういう人だろう?

 

「さあ、ここにいるよ。入って」

「はい」

 

 私が入ったのは‥‥‥小さな会議室だった。間取り的には3×3のテーブルがおけて、多少の移動できるスペースがある程度の広さしかなかった。

 そして、そこには一人の男が座っていた。

 

「ハード君、彼が君のパートナーになる男だ」

「僕の名前はギルバート・スタインだ。よろしく頼むよ、新入り君」

 

 男は三枚目という言葉が良く似合いそうな男だった。

 確かに私は結社に入って2ヶ月の新入りだ。ならばこちらは先輩なんだろう。たぶん2ヶ月よりは長いだろうし。

 

「初めまして、ギルバート先輩。私の名前はハード・ワーク。結社に入って2ヶ月の新入りです。ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い致します」

「うんうん、任せたまえ。この先輩の僕にね」

 

 非常に上機嫌なギルバート先輩、それを見て小さく笑っているカンパネルラさんが私に言った。

 

「駄目だよ、ハード君。自己紹介はちゃんとしなきゃ。君の肩書きもちゃんと名乗らないと」

「へえ~入社2ヶ月で肩書を持っているのか。中々優秀じゃないか。僕もね『強化猟兵連隊長』の地位についているんだ。ああ、固くならないでくれたまえ。まあ、入社2ヶ月の君が持つ肩書とは天と地の差だけど気にしないで名乗りたまえ」

「はぁ~、そうですか」

 

 私はチラリと、カンパネルラさんは見ると‥‥‥凄くワクワクしていた。

 なぜ、これほどまでにワクワクしているんだ?まあ、名乗れと言われたから、名乗ろう。盟主様に頂いた名を。

 

「執行者No.ⅩⅩⅠ《社畜》のハード・ワーク。お見知り置きください。ギルバート先輩」

「‥‥‥しっこうしゃ?‥‥‥執行者‥‥‥執行者!?」

「はい、今月の始めに任命されました。新米執行者です」

「こ、今月!!」

「はい、研修が終わった後に任命されました」

「ちなみに彼の研修のメニューは一日で《神速》、《剛毅》、《魔弓》とそれぞれ戦った後に鉄機隊隊士三人纏めて戦って、《鋼の聖女》様、《劫炎》、最後に寝ているところに奇襲として《紅の戦鬼》が襲ってくるんだ。このメニューを一か月続けたんだよ」

「は‥‥‥‥‥」

「カンパネルラさん、それは違います」

「そ、そうだよね。い、いくらなんでもそんな訳ないよね。全く、カンパネルラ様も人が悪いんだから」

「正確にはそれは最後の一週間くらいだけで、月の始め、初日にデュバリィさんと戦って負けました。その次の日には勝ちましたが、アイネスさんに負けました。その次の日は二人に勝って、エンネアさんに負けました。その後、《劫炎》の先輩がやって来て一日寝込んで、その後《痩せ狼》の先輩に負けて数時間寝込んで、その後アリアンロード様がやってきて、これまた一日寝込んで、そんな日替わりで色々ありまして、最後の一週間だけ、カンパネルラさんの言われたメニューになったんです」

「‥‥‥」

「ああ、そうだったね。いやぁ、ごめんね。ギルバート君、間違ってたよ。ダメだね、情報はきちんと伝えないと。ああ、そうだ、《社畜》のハード君はこの打ち合わせが終わったら、どうするんだったけ?ど忘れしちゃったな」

「アリアンロード様にご指導いただくことになっています」

「ああ、そうだったね。《社畜》のハード君は《鋼の聖女》様とやり合えるだけの戦闘力を持っているからね。ギルバート君くらい、軽く消し飛ばせちゃうよね」

「アワアワアワアワアワアワアワアワ‥‥‥」

「そうだ、確か、今日もA級遊撃士を軽く一捻りしてきたんだったね。誰だったけ?」

「アガット・クロスナーというA級遊撃士でした。確か《重剣》と言ってました」

「そうそう《重剣》のアガット。懐かしいな、昔リベールでやり合った時、色々邪魔されてね、いやぁ4年越しに溜飲が下がる思いだったよ。そう思うだろ、ギルバート君?」

「‥‥‥」

 

 ギルバートさんが白目をむいて気絶している。

 

「ごめんね、少し遊び過ぎたよ。相変わらず彼は面白い反応してくれるな」

「はぁ~」

「まあ、僕の方から説明しておくよ。今度の打ち合わせの時までに、彼に叩き込んでおくよ。一応彼、元はリベールのルーアンという都市で市長秘書をしていたから、そこそこ優秀だよ、その方面では。だから、期待しておいて。ああ、資料だけ預かってもいいかな?」

「ええ、構いません」

「じゃあ、また都合が良さそうな時に連絡するよ」

 

 そう言って私は会議室を出た。

 仕方がない、またの機会にしよう。

 

 

―――七耀暦1206年5月1日 結社演習場 AM8:00

 

 アリアンロード様にご指導をお願いしてから一週間経った。

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 少しは食らいつけるまでになった。

 

「ハード、大分持つようになりましたね」

「ありがとうございます」

「ですが‥‥‥ハァッ!!!」

「!!!!」

 

 アリアンロード様が黄金の闘気を発した。ならば、

 

「ハアアアッ!!!」

 

 私も黒い闘気を発して対抗することにした。

 

「黒い闘気、大分使えるようになったみたいですね。ですが、私は貴方に私と同じ闘気を纏ってもらいたかったです」

「今だ、その高みに至れず不徳の致す限りです。ですが、必ずやアリアンロード様と同じ領域に至れるよう、精進致します」

「ふふっ、期待していますよ」

「はいっ!」

 

 私の持つ槍とアリアンロード様の槍がぶつかり、周囲に衝撃が走った。

 

 

―――七耀暦1206年5月1日 結社演習場 AM10:00

 

 アリアンロード様との手合わせが終わり、これからは技の型を練習する時間だ。

 現在練習しているのは‥‥‥執行者No.Ⅱ《剣帝》の剣技だ。

 剣帝の資料は結社に残っていたし、色々な人達も知っていた。アリアンロード様、カンパネルラさん、『劫炎』の先輩、『痩せ狼』の先輩、デュバリィさん達、それ以外にも知られていた。

 かつてリベールで行われた『福音計画』の際、殉職されたとのことだ。

 『福音計画』の参加者は《剣帝》以外にNo.VI《幻惑の鈴》、No.VIII《痩せ狼》、No.X《怪盗紳士》、No.XV《殲滅天使》、そしてNo.XIII《漆黒の牙》。

 現在結社にいるのはNo.VIII《痩せ狼》だけで、No.VI《幻惑の鈴》、No.X《怪盗紳士》の二人は現在一時離脱中で、No.XIII《漆黒の牙》、No.XV《殲滅天使》は結社を完全に抜けてしまったそうだ。

 執行者はあらゆる自由が認められている、だから入るのも抜けるのも自由だそうだ。そのために追っ手を差し向けることはないらしい。盟主様がそれでいいなら私に否やはない。

 そう言えば、『福音計画』の時に、《剣帝》以外に使徒第三柱が亡くなったらしいが、その話をするとみんなが顔をしかめて、自業自得だと言われていた。‥‥‥一体何をやったんだ?

 まあ、それは置いておいて、私が《剣帝》の剣技を練習しているのは、出来ることを増やしたいからだ。

 《猟兵王》とはいずれ戦うことになるかもしれないし、それ以上の強敵が出てくるかもしれない。そのためにも出来ることを増やしておきたいと思った。

 私は一通りの事は、見たことがあれば出来る。

 手本があれば、それに近づければ、技術が向上する。

 これまで、戦った中で最高の技術を持っていたのはアリアンロード様で槍の技術だ。だから槍はアリアンロード様に習っている。その結果、大分うまくなったとお褒めいただいた。

 次に目を付けたのは剣だ。これまでに剣の使い手はデュバリィさん、似ている武器として、大剣のラウラとアガット、太刀のリィンだ。レイピアはパトリックが使っていたが、彼の技術はフリーデル先輩には及ばなかった。

 ‥‥‥だけど、それらの剣士の剣を受けてきたが、彼の、《剣帝》の剣には届かないと思った。結社に残された記録映像のみだけだが、それが分かった。それほどまでの差があった。

 だからその剣を再興させようとしたとき、色々な人に声を掛けた。その結果‥‥‥

 

「遅いですわよ、何やってましたの」

「さっさと始めようぜ、ハード」

「遅せえよ」

「揃ったようですね。では始めましょう」

 

 デュバリィさん、『劫炎』の先輩、『痩せ狼』の先輩、そしてアリアンロード様の計四人が集まってくださった。

 特にアリアンロード様においては、朝の手合わせから続けての指導と言うことで、大変ありがたく、また申し訳なく思っている。だが、折角のご厚意だ、必ずや《剣帝》の剣技を再興させることで、ご恩返しとさせていただく。

 

「お待たせして申し訳ありません。では‥‥‥」

 

 私は『ハード・ワーク』で剣を作り上げた。その形状はハーメルで見た剣、盟主様がお与えになったケルンバイターと同じ形状の剣を作り上げた。

 私は剣を左手に持ち、

 

「参ります。‥‥‥ハアアアアアッ!! 『鬼炎斬』」

 

 『痩せ狼』の先輩に斬りかかった。

 この訓練は過去の映像を見て、型の練習をしていたところ、デュバリィさんに見つかり、過去に手合わせした経験からアドバイスを貰ったことが発端だった。それから『劫炎』の先輩も手合わせしたことがあるので、アドバイスされたり、アリアンロード様も手合わせしたことがあるので、アドバイスされたり、『痩せ狼』の先輩も手合わせしたかったという経験から、手合わせ役に立候補してくれている。

 

「まだまだですわね。剣帝の一撃はもっとすごかったですわ」

「まあ、完成度は50%ってところか」

「これからも精進なさい」

「おう、やるならいつでも声かけろよ」

 

 どうやらまだまだなようだ。

 明日までに、素振り一万回だな。

 

 

―――七耀暦1206年5月1日 小会議室 PM2:00

 

 午前の鍛錬が終わり、今日は前回途中で終わってしまった、カンパネルラさんとギルバートさんとの打ち合わせとなっている。だけど‥‥‥‥

 

「宜しくお願い致します。ギルバート先輩」

「はい、よろしくおねがいいたします。《社畜》さま」

 

 こんな調子だ。一週間前にはもう少し話せたんだが、

 

「あの、ギルバート先輩」

「はい、なんでしょうか《社畜》さま」

 

 まともに話も出来なくなった。目が死んでいる。カンパネルラさんは一体何をしたんだ?

 仕方がない、このまま続けるか。

 

「では、先の計画書にも記載しましたが、今後の展望としては現在セントアークを中心に展開している、コロッケ屋を発展させつつ、追加商品を販売していき、行く行くは帝国全土に展開し、更に周辺各国に展開していくことを考えています。そうすることで、経済的にも余裕が生まれますので、末端兵の増員と結社内部での研究費用への投資を行い、更なる技術革新を行うことが出来ると考えています。‥‥‥‥先の実験でも思いましたが、神機一体でどれ程の費用が掛かるか見当もつきません。ですが莫大なミラが必要だと言うことは分かります。結社の予算がどれ程かは分かりませんが、ないよりはある方がいいと私は思います。ましてやこれからの状況次第ではありますが、帝国の物価は上がりますので、そのためにも貯蓄出来るものは貯めておきましょう」

「なるほどねぇ、確かに先の事を考えると、ミラは大事だし、次の実験の地での拠点も作っておく必要がある。そのためにも、それらしいものを作っておくほうがいい、と言うことだね。うんうん、確かにね。グロスリアスの後継機も作れていないしね。分かったよ《社畜》の提案、乗るよ」

「ありがとうございます」

 

 どうやらカンパネルラさんは乗ってくれるようだ。だけど‥‥‥‥

 

「‥‥‥‥」

 

 目が死んでいるこの人はどうすればいいのか‥‥‥‥‥

 

「あちゃ~、どうやらお仕置きが効きすぎたみたいだね。まあ大丈夫でしょ、普段よりちょっと強めにお仕置きしただけだし、後は僕の方で彼の頭に叩き込んでおくよ。おめでとうギルバート君、肩書きが増えるよ。今日から君は『強化猟兵連隊長』兼『財政対策班班長』に就任だ。因みに出来たばかりの班だから、当分は君一人で頑張ってね。成績に応じて人数を増員するから。ああ、もし売り上げが落ちたらその分、君の給料から差っ引くから」

「‥‥‥‥はい、わかりました。おまかせください、カンパネルラさま」

 

 大丈夫だろうか。まあ、私一人で維持していた程度の規模だから何とかなるだろう。

 後は任せて、特訓に戻ろう。

 

 

―――七耀暦1206年5月1日 結社演習場 PM4:00

 

 カンパネルラさんとギルバート先輩との打ち合わせが終わり、また演習場に戻ってきた。

 今度の相手は‥‥‥‥

 

「よう、《社畜》。今日もやるんだろ?」

「ええ、よろしくお願いします。《劫炎》の先輩」

 

 《劫炎》の先輩だ。今まではいきなり勝負を仕掛けてこられたが、今回はこちらからお願いした。

 アリアンロード様と並ぶ結社最強の一人だ。勉強させてもらおう。 

 私は『ハード・ワーク』を槍に変形させて、構えた。

 

「クククッ、そういえばお前が執行者になって、その武器を盟主から貰ってからは、戦うのは初めてだな。『外の理』の武器、俺も持ってるが、お前に使ったことはなかったな‥‥‥‥来い、『アングバール』」

 

 《劫炎》の先輩は剣を取り出した。あれが『外の理』の剣『アングバール』か。

 

「折角だ、試してやる。お前が何処まで強くなったかぁ!!」

「よろしくお願いします。ハァァァァァァァァッ!!」

 

 《劫炎》の先輩が焔を纏っていく、私も負けじと黒い闘気を身に纏い対抗する。

 そして、互いに動き、獲物がぶつかり合った。

 

「シャア!」

「ハアアアアアッ!!」

 

 私の槍と《劫炎》の先輩の魔剣がぶつかり合う。力は互角か、なら意地でも押し負けれない。

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 私が槍で押し込むと、《劫炎》の先輩の魔剣が焔を纏い、私の槍を弾く。

 

「ゴウ!」

 

 槍を弾かれ、私は後ろに飛ばされた。少し距離が開いたか、ならば‥‥‥‥

 

「『シュトルムランツァー!』」 

 

 私は槍を構え、一直線に駆け、《劫炎》の先輩に向かっていく。

 

「ダリャ!!」

 

 槍を横から叩き弾かれた。次は‥‥‥‥

 

「『アルティウムセイバー』」

 

 槍を弾かれた勢いを利用して、一回転するように振るう。

 

「チィッ!!」

 

 止められた。

 そこから仕切り直しとばかりに距離を取った。

 そしてまたぶつかり合い、何合か互いの武器を撃ち合わせた。互いに傷は負ってはいない。ただの軽い手合わせだから。

 

「やっぱり‥‥‥‥届きませんか」

「‥‥‥‥いや、驚いたぜ。まるで《鋼》みてえな槍捌きだ。技術においては俺を圧倒してやがる。俺も剣の使い方をもう少し学んだ方がいいかも知れねえな。今日はこれくらいにしとこうぜ。これ以上アツクなると、全てを燃やしそうだ」

「そうですか。本日は手合わせいただき、ありがとうございます」 

「おう‥‥‥‥まさか、ここに来て二月だってのに、ここまで強くなるなんてな、驚きだ。ほんと、飽きねえ奴だ」

 

 《劫炎》の先輩はそう言って、演習場を後にした。

 

 

―――七耀暦1206年5月1日 結社演習場 PM5:00

 

 《劫炎》の先輩との手合わせが終わった後、私は一人、演習場に残った。

 これからは自主練だ。今日一日の事を思い出し、反省し、明日を迎えるための準備をする。

 

「『分け身』」

 

 私は分け身を3体作った。これから分け身同士で打ち合いをさせる。その間は体を休めながら、技の観察を行う。

 分け身同士で片や槍、片や剣で戦わせた。武器の特性的に剣と槍であれば、強いのは槍だ。長い方が強いという単純な理由だ。それに私の技術練度は槍が一番高い。剣は現在、《剣帝》の映像を基に技術の習得を目指しているが、残念ながらまだ成果を見せれていない。

 今度の実験がクロスベルであるので、《風の剣聖》がいるはずだ。現在は帝国政府に追われているから、簡単には会うことは出来ない。だけどもし、会うことが出来れば、その技術を見せてもらいたい。

 《剣聖》の名を持つ者はリベールにいるカシウス・ブライト、クロスベルのアリオス・マクレイン、そしてその師である、《剣仙》ユン・カーファイ。この内、会えそうなのがアリオス・マクレインなんだけど‥‥‥‥指名手配されているから、会いに行くのは無理だろうな。はぁ~、どっかに剣聖いないかな。

 いかん、技術の向上のために誰かを頼るなど、指導を仰ぐのはいいが、結局やるのは自分自身だ。ならば、がむしゃらに、ひたすらに、的確に練習しよう。

 私は残りの一体の分け身と戦うために、『ハード・ワーク』を剣に変形させて、対峙した。

 さあ今日の仕上げだ。

 

「『鬼炎斬!』」

 

 

 

―――七耀暦1206年5月2日 結社演習場 AM0:00

 

 『分け身』が全て消滅した。今は演習場の天井を見上げながら、倒れている。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ‥‥‥‥」

 

 疲労のピークを迎えた。今にも意識が飛びそうだ。まあ、約7時間程、自分自身と戦い続けた。分け身が消えては出して、消えては出してを繰り返し続けた。

 充実はしている。成長している実感はある。‥‥‥‥だけど、まだだ。まだ、私はアリアンロード様に、《劫炎》の先輩に届かない。おそらく、これを繰り返せば、遠くない先で《猟兵王》は越えられるだろう、だがそれまでだ。私が目指すべきは結社最強、その場にいる二人に勝つこと。結社のため、盟主様のため、居なくなられた執行者の先輩の分も私が埋めてみせる。私に出来ることの全てを賭けて。私は結社の執行者《社畜》のハード・ワーク。必ずや盟主様の御役に立ってみせます。

 私は決意を新たに、立ち上がろうとした。

 

「あ‥‥れ‥‥」

 

 立てなかった。目の前が真っ暗に染まっていった。

 

 

 

―――七耀暦1206年5月2日 結社演習場 AM5:00

 

 私は目覚めると、演習場に寝ていた。いかん、こんなところで寝ていては。今日も、昨日と同じことをするつもりだったのに、こんなところで寝ているだなんて、時間を無駄にしてしまったな。

 体が痛いな。変な寝方をしてしまったので、筋肉が硬直してしまったな。よしここは‥‥‥‥

 

「『神なる焔』」

 

 万能回復技を使い、体の不調を消し去った。本当に便利だな。

 まあ、良し。不本意ながら睡眠を五時間も取ってしまったな。昨日、イヤ、今日やる予定の作業に遅れが出ているな。時間は有限だ、早くしなければ。

 

「ハアアアアアッ!!『鬼炎斬!』」

 

 アリアンロード様との手合わせまでに3時間程しか時間が無い。だからと言って、手を抜くわけにはいかない。自分のためにも、《剣帝》殿の名誉のためにも、この技を完璧なものに仕上げなければならない。ただの一秒と言えど、無駄に出来ない。

 




休みが終わりになりますので、次の投稿は土曜日か日曜日くらいになりそうです。

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