覚醒救世主と夢を目指す少女達   作:火の車

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ハッピーエンド

 夕日の光が差す、機械の音だけが響く病室

 

 俺はそれの横にあるベッドの横に立って

 

 綺麗な顔で眠っている女の子を眺めてる

 

蓮「......咎。」

 

 俺は能力を発動させ

 

 ベッドで眠っている堂本未玲の頭に触れた

 

 実際、何が正解かなんて分からない

 

 でも、これを解決しないと事が動かない

 

蓮「悪いけど、覗かせてもらうぞ。」

 

 俺は彼女の脳内に干渉した

 

 考えられる中で極めて低い可能性の一つ

 

 それがもしかしたらあり得るかもしれない

 

蓮(これじゃない......これでもない......)

 

 記憶ってのは大図書館みたいなものだ

 

 本人の自覚があるないに関わらず、記憶は脳に保存されてる

 

 その中から1つの情報を見つけるのは極めて難しい

 

 でも、見つけられないことはない

 

 咎の処理能力なら......

 

蓮(......これか!)

 

 果ての無い記憶の中から、見つけた

 

 この子を取り囲む複数人の女

 

 その中にいた、あの時の女がいた

 

 分かったぞ、そういう事か

 

蓮(だとしたら、奴は......)

一誠「__ここで、何してるの?」

蓮「っ!!」

一誠「俺の身内に、蓮ちゃんみたいなイケメンはいないはずだけど。」

 

 記憶への介入が終わった瞬間

 

 後ろに立っている奴に気付いた

 

 しまった

 

 記憶を探すのに意識を割き過ぎたか

 

一誠「未玲に、何してるの?」

蓮「......」

 

 返答次第では殺す

 

 それくらい、奴の発する声には圧がある

 

 まぁ、それはそうか

 

 自分の妹の病室に他人の男がいるんだからな

 

蓮「碌なことじゃない、と言ったらどうする?」

一誠「嘘だって疑うさ。」

蓮「!」

 

 奴はそう言って俺の横に立ち

 

 ベッドで寝てる妹の頭に手を置き

 

 ゆっくり口を開いた

 

一誠「蓮ちゃんは基本的に女嫌いだし、進んで関わろうと思わないでしょ?」

蓮「まぁ、そうだな。」

一誠「だとしたら、なんでわざわざこんな所に?」

 

 奴は首を傾げそう尋ねて来た

 

 まぁ、もう隠しても仕方ないし

 

 それに、この続きについて話す必要がある

 

蓮「お前の妹の記憶を覗いた。」

一誠「っ......!」

蓮「事の発端はこの間、お前が女を振ったのを見たからだ。」

一誠「......そっか、見ちゃったか。」

 

 奴はそう言いながら悲しそうな、だが、確かな怒りを含んだ表情を浮かべた

 

 こいつがこんな顔をするのは分かる

 

 実際、俺も彼女たちにあんなことをされればキレる

 

 なんなら、どんな手を使っても潰してる

 

一誠「全く、情けない話だよ。あんな陰湿な方法でしか仕返しが出来ないなんて。」

蓮「......」

 

 奴は自嘲するようにそう言った

 

 そして、妹が眠るベッドの横に立った

 

一誠「......それに、未玲が苦しんでるのを察してあげられなかった。」

 

 奴は妹の頭を撫でながらそう言った

 

 その顔からは後悔とか怒りと言った感情が見える

 

 勿論、記憶を覗いた俺は気持ちがよくわかる

 

 だって......この子は、同級生の女子にイジメられてたんだからな

 

一誠「俺の妹、ただそれだけのつまらない理由で未玲はイジメられて、当の兄はそれに気づかず能天気に女遊び。そして気づけば、未玲は飛び下り......」

 

 そう言う声に力がこもる

 

 拳は固く握り込まれ、行き場のない怒りがそこに集約してる

 

 もし、俺がこいつの立場なら

 

 一体、どうしてるだろうか

 

蓮(......)

一誠「だから、せめてイジメた女全員をぶっ潰してやろうと思った。時間がかかったよ。でも、あと数人。しかも、間違いなく俺に好意を持ってる。もうすぐ、終わる。」

 

 奴は笑みを浮かべながらそう言った

 

 その時、俺は考えた

 

 仮にこの復讐が終わったとして、こいつはどうなるんだろうと

 

 気持ちはきっと満たされない

 

 妹だって目覚めず眠ったまま

 

 こいつはただ虚無感を抱えるだけなんじゃないか?

 

一誠「って、こんな話聞いても仕方ないよね。ごめんね。」

蓮「......いいや、有益な話が聞けた。」

一誠「?」

蓮「同情するぞ、お前にも妹にも。」

 

 俺は静かにそう言った

 

 正直、こいつのことは苦手だ

 

 チャラくて女を連れてきてノリがウザい

 

 だが、こいつを大切に思ってる人間だっている

 

 その1人は......この堂本未玲だ

 

蓮「だが、残念だったな。お前の復讐劇は今日で終わりだ。」

一誠「......は?」

蓮「お前の気持ちはそんな復讐なんかじゃ満たされない。行きつく先は虚無だ。」

一誠「......分かってるよ、そんなこと。でも、それじゃ、未玲が報われない!」

蓮「っ!」

 

 堂本は俺の胸倉を掴んできた

 

 今の話が気に入らなかったんだろう

 

 だが、俺も引けない

 

 俺は堂本の胸倉を掴み返した

 

一誠「!」

蓮「お前、バカだろ?」

一誠「なんだって......?」

蓮「いつ、妹はお前に復讐してくれって頼んだ?」

一誠「......っ」

蓮「復讐なんて、お前の自己満足だ。誰も喜ばない。お前自身もな。」

 

 俺はそう言って手を放した

 

 そして、ベッドの上に視線を写した

 

蓮「間違えてんだよ、お前は。妹の事を考えなかった最初からな。」

一誠「......君に、何が分かるって言うんだっ。」

蓮「大切な人がいて、そいつを守れなくて死ぬほど後悔する。その気持ちが分かるだけじゃ、不十分か?」

一誠「え......?」

蓮「俺はお前の復讐劇を終わらせるぞ......ただし、ハッピーエンドでな!」

一誠「な、なにを!?」

 

 俺はベッドで寝てる堂本未玲の頭に増えた

 

 後ろでは堂本が焦ったような顔をしてる

 

蓮(手術自体は成功して、脳の細胞は大丈夫だ。)

 

 今度は記憶への介入とは違い、意思への介入

 

 だが、これは滅多に使えない

 

 なぜなら、少しでも抵抗されれば負担が大きくなるからだ

 

 こういう場合は脳が目覚めることを拒否してる

 

 だから、無意識で抵抗されるって事だ

 

蓮「ぐ......っ!」

一誠「!?(目から、血......!?)」

蓮「おい、チャラ男......!」

一誠「な、何......?」

蓮「妹が目覚めるまでにそのしけた顔直せよ......じゃなきゃ、本当に妹が報われないからな......!!」

 

 堂本未玲の意識はまるで茨に包まれるように守られていて

 

 それに触れた痛みが脳に負担として伝わってくる

 

 でも、やめられない

 

 堂本に復讐劇を終わらせると言った

 

 なにより、苦しんでる人間を助けるのをやめられるわけない

 

未玲「......っ」

一誠「未玲!?」

蓮(......帰ってこい。)

未玲「お......兄......」

蓮(女好きでバカな......お前を誰よりも愛する兄のもとへ。)

 

 俺は心の中でそう呟いた瞬間

 

 全力で堂本未玲の意識を包む茨を掴み

 

 一気に、それを引きちぎった

 

未玲「__お兄......ちゃん......?」

一誠「未玲!お、起きたの!?」

未玲「うん......誰かに、呼ばれた気がして。」

 

 茨を引きちぎると

 

 堂本未玲の脳内から追い出された

 

 流石に意思関連への介入の負担はキツイ

 

 咎も流石に疲れて寝ちまった

 

蓮(あー、頭痛い。目の奥なんか焼けてるんじゃないか......?)

一誠「れ、蓮ちゃん、大丈夫?」

蓮「あぁ、問題ない。」

 

 俺はそう言って目元の血を拭った

 

 これ、綺麗にして帰らないと怒られるな

 

 どっかの水道で洗って帰らないと

 

未玲「え、誰......?その人......」

一誠「この子は蓮ちゃん。未玲を助けてくれた人だよ。」

蓮「別に、そんなたいそうなことじゃねぇよ......」

 

 流石に疲れた

 

 でも、だらしない姿は見せたくない

 

 そう思い、俺は何とかいつもの表情を作り

 

 2人に背中を向け病室のドアの方に歩いた

 

未玲「あ、あの......!」

蓮「......俺に恩なんか感じるんじゃねぇぞ。今の結果はお前らが手繰り寄せたものなんだからな......」

一誠、未玲「!」

 

 俺はそれだけ言って病室から出た

 

 今日はもう何もダメだな

 

 目を洗ったら、さっさと寝てしまおうかな......

 

 ”病室”

 

 蓮が去った後の病室

 

 そこでは堂本兄妹がドアの方を凝視してきた

 

一誠(......ありがとう、蓮ちゃん。)

未玲「お兄ちゃん......あの人、誰......?」

一誠「あの子は、神谷蓮だよ。」

未玲「神谷、蓮......」

 

 未玲はボソッとそう呟いた

 

 一誠は首を傾げながらその様子を伺っている

 

 そうしてると、未玲はゆっくり口を開いた

 

未玲「か、かっこいい......///」

一誠「......え?」

未玲「お兄ちゃんと同じ大学なんだよね!?///」

一誠「あ、うん、そうだけど。」

未玲「じゃあ、私、お兄ちゃんと同じ大学行く!神谷蓮さん、紹介して!」

一誠「あ、あのね?蓮ちゃん、彼女が__」

未玲「私の、王子様......///」

一誠「......」

 

 一誠は未玲の様子を見て押し黙ってしまった

 

 駄目だ、完全にオチてる

 

 そう思い、一誠は頭を抱えた

 

一誠(あー、蓮ちゃんごめん......これ、無理かも......)

未玲「次はいつ会えるかな~///」

 

 未玲は恍惚とした表情でそう言い

 

 それを見た一誠は1つ溜息をついた

 

 こうして、蓮は人助けをし

 

 また、ファンを知らぬうちに増やすのだった

 

 

 

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