蓮「俺は孤児だったんだ。」
神谷さんは静かな、懐かしむような声でそう言った
それに私は驚いた
あの神谷さんが孤児だったなんて......
蓮「最近になって誤解は解けたんだけど、俺は生まれて間もなく捨てられたんだ。まぁ、引き取られて神谷になった時の方がきつかったけど。」
未玲「......」
勝手なイメージだけど、神谷さんは恵まれた人だと思ってた
家はお金持ちで、小さいときから可愛がられて
ずっと、幸せな人生を送ってると勝手に思ってた
蓮「勘違いしないでほしいのは、孤児だからと言って不幸だったってことはないってことだ。」
未玲「!」
蓮「友達や優しい先生がいたし、孤児だったから今があると思ってる。だからきっと、正解だったんだ。」
この世で神谷さんに近しい人しか知らない秘密
少しだけ距離が縮まって、好きな人のことを知れて嬉しい
......とは、とても思えない
今は彼女さんがいて、幸せだからこう言えてるだけで
きっと、それまでの人生は過酷で、苦しかったはずだから
この秘密は重すぎる......
蓮「俺の見え方、変わったか?」
未玲「......はい。」
蓮「そうか。」
私は何もわかっていなかった
自分なりにちゃんと好きになった気でいた
けど、まだ、神谷さんの重みなんて何も理解してなかった
蓮「どうだ?気持ちの方は。」
未玲「......情けないです。自分自身が。」
蓮「!(なんだ?)」
本当に情けない
今まで簡単に神谷さんを好きだと言ってたことが
きっと、彼女さん達は全部知っていて、それを受け入れて一緒にいる
だからこそ、誰も神谷さんを裏切らない
この人と付き合うってことは、そう言う責任が伴う
本人にはきっと、自覚はないだろうけど
未玲(それに、神谷さんはまだ、全部を私に話してない。もっと、恐ろしい過去を隠してる気がする。)
けど、私はそれを聞ける位置にはいない
......いや、違う
位置の問題じゃない
神谷さんの辛い記憶を掘り起こして、そのことで嫌われる
それが怖くて、聞けないんだ
蓮「ははは、変な子だな。」
未玲「!」
神谷さんはそう言って、笑い出した
どうしたのか理解できなくて、私は固まった
蓮「その辺の女に喋ったら、きっと、俺は悲劇のヒーローにでもなるんだろうな。無責任にそういう俺のイメージを作り出される。」
未玲「......(確かに、そうかも。)」
蓮「だから、未玲は変だな。」
こんな表情、初めて見たかも
柔らかくて、優しい笑顔
暗くなってた気持ちが、ドキドキで上塗りされる
蓮「きっと、俺の彼女たちも、過去を知ったときはそんな感じだったのかもな。」
未玲「そう、なんでしょうか?」
蓮「分からないけど、多分そうだよ。(ほんと、変な子だ。)」
神谷さんは懐かしむような表情を浮かべている
まるで、神秘ていな何かに触れたような感覚に襲われる
きっと、こんな表情を見たことあるのは、ごく一部の人間だろうから
蓮「やっぱ俺、未玲のこと嫌いじゃないよ。ごり押しレベルのアピールも、なんだかんだ、悪くないって思えてきた。」
神谷さんはそう言いながらさらに笑った
今度は面白がる子供のように純粋な笑顔だ
なんだか、かわいい
蓮「あ、これ先に渡しとくよ。」
未玲「これは?」
蓮「今日のバイト代。」
未玲「えぇ!?」
驚いて、私は変な声を上げた
普通にあると思ってなかった
てっきり、文化祭とかと同じ感じかなと
未玲「う、受け取れませんよ!」
蓮「流石に無給ってわけにもいかないんだ。あ、何なら、俺の連絡先も付けるぞ?」
未玲「それは欲しいです!///」
蓮「じゃ、給料も受け取ってもらうぞー。」
神谷さんはそう言って、お金の入った封筒と連絡先の書いた紙をくれた
むしろ、私は神谷さんといられてお金を払いたいぐらいなのに
お給料をもらった上に連絡先までもらっちゃった
私、死ぬんじゃないかな?
未玲「じ、じゃあ、いただきますね......///」
蓮「おう。今日はありがとうな。まだ終わってないけど。」
未玲「まだまだ頑張ります!///命尽きるまで!///」
蓮「重い重い。」
それから、私はお祭りが終わるまで神谷さんと一緒に働いた
神谷さんが店主なだけあって、お客さんは多かった
けど、長い時間一緒にいられて、過去を知って、距離が縮まって
私にとっては嬉しく、それと同時に誓い立てた日になった
いつか、私は神谷さんのすべてを知って、一緒にいられるようになる
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“リサ”
リサ「あーあ、まーたフラグ立っちゃったよ。」
千聖「そうね。」
夏祭りによる、あたしは千聖と一緒にいる
メイドさんがもしものことがあった時のために隠しカメラ仕込んでて
それで2人の様子を見てたけど......
リサ「ほんと、ガード固いように見せかけて、意外とチョロいんだから.....」
千聖「いえ、そうではないんじゃないかしら?」
リサ「?」
千聖はそう言って、一口紅茶を飲んで
一息ついてから、話し出した
千聖「最近、時折思うの。蓮にはまだ、取り残した運命があるんじゃないかって。」
リサ「取り残した、運命?」
千聖「なんとなくなのだけれど、あれだけ運命に愛されてる蓮が36人で終わるのかしら?まだまだ、神様の悪戯は続きそうだと思わないかしら?」
リサ「......」
言われてみれば、そんな気もしないでもない
けど、そうとしたら、どうなるの?
マジで100人とかになるんじゃ......
千聖「私たちで一度止まった運命が動き出しそうね。」
リサ「な、なんで楽しそうなの?」
千聖「面白そうだからよ♪これからも楽しめそうね♪」
リサ(相変わらずだなぁ......)
あたしはそういう千聖を見て、あたしはため息をついた
なんか、言われたらあの子が起爆剤な気がしてならないなぁ
蓮、また大変なことになりそう......
そんなことを考えながら、さっき買ったたこ焼きを口に入れた