この世には、私に理解し得ないことなどいくらでもあります
私にとって、ご主人様......神谷連様もその一つです
尋常ではないほどの鈍感さとそれに裏付けられる行動力
ご主人様の鈍感さは常軌を逸しています
だからこそ、奥様たち以外の人間など気づくわけがない
そのはずだったのですが......
成海「わ、分かるのかい?」
蓮「まぁ、結構な時間一緒にいるし。それに、普段とあんま雰囲気変わってないし。」
眞(し、しまった......!)
昔はもっと男物の服を着ていたのに、この十数年で服の趣味も変わったんでした
それがメイドの時のイメージと被ったのですね
完全にご主人様を舐めてました
蓮「ん?今、成海がメイドさんのこと眞って呼んでたよな......」
眞「!」
蓮「と言うことは、氷見眞って、メイドさんなんですか!?」
ご主人様が酷く驚いています
流石に、これは誤魔化せませんね
眞「はい。私が氷見眞です。」
蓮「へぇ!メイドさんも今まで気づいてなかったんですか?」
眞「.....,いえ。私はずっと気づいていました。ご主人様が弦巻家の主になってから。」
蓮「え?そうだったんですか?なら、言ってくれれば良かったのに。」
眞「それは......」
言葉に詰まります
もう下手な誤魔化しをするわけにはいきません
でも、これを言うには......
「なんか訳アリっぽいな!」
蓮、眞「!」
「なんかよくわかんないけど、積もる話もあるだろうし、2人で話したらどうだ?」
「細かいことはわかんないけど、眞の気持ちは分かってるからな!」
蓮(え、俺以外知ってるの?)
成海「まぁ、それがいいかもね。同窓会もまだまだ続くし。色々話してから戻ってきなよ。」
眞「......そうしましょう。」
周りの人たちにそう言われて、ご主人様と私は近くの公園に行くことにしました
でも、正直、周りの知人がいてくれた方がよかったかもしれません......
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“蓮”
メイドさんと近くの公園に来て、取り合えず飲み物を買った
お互いに何も飲んでなかったし、ちょっと歩いたしな
それに、メイドさんに何かを奢る機会とかなかったし、ちょうどいい
蓮「どうぞ。カフェオレで良かったですか?」
眞「はい。」
俺はメイドさんにカフェオレを渡し、隣に座った
そこまでは良いんだけど、何を話せばいいんだ?
周りは皆なにか知ってる風だったけど、俺は何も知らないんだよな
取り合えず、なんか話振ってみるか
蓮「驚きましたよ。メイドさんもあの孤児院出身だなんて。しかも、俺と会ったことあるし。」
眞「そうですね。私は、さほど驚きませんでしたが。」
蓮「俺が弦巻家の当主になる事を知ってたからですか?」
眞「はい。でも、元々は、私は弦巻家のメイドになる予定ではありませんでした。」
蓮「え?」
眞「私が元々志願していたのは、神谷家のメイドです。」
蓮「!」
神谷家のメイド?
ていうことは、メイドさんは俺があの家を潰す前からメイドなのか
蓮「あぁ、それで、神谷家が潰れたから弦巻家のメイドに。」
眞「いえ。そうではありません。」
蓮「え?」
眞「私はずっと、あなたを......神谷連様を追いかけていました。」
メイドさんの発言に驚いた
俺を追いかけてたって......
なんで、わざわざそんなことを
眞「ご主人様の噂は何度も耳にしました。神谷の庭で飼われる子......と。」
蓮「そんなこともありましたね。」
眞「私はそれを聞いて、一刻も早くメイドになって、救い出そうと思っていました。引き取り先の家系と縁を切る覚悟で。」
蓮「!」
や、やべぇ、俺が潰したとか言えねぇ
って、そう言う事じゃなくて
問題は......
蓮「なんでわざわざ、俺を追いかけてたんですか?メイドになってまで。」
眞「それは......」
俺を助けるためにメイドになって、引き取ってくれた家と縁を切る覚悟がある
同じ孤児院出身と言っても、これはただ事じゃない
何か、大きな理由でもあるのか?
蓮「話ずらいことなら、無理しなくても__」
眞「いえ、話します。」
メイドさんはそう言い、少し間を開けた
俺はその様子を見て、次の言葉を待つ
そして、10秒ほど無言の時間が続いて......
眞「......神谷蓮様が好きだったからです。子どもの時から、ずっと。」
蓮「えぇ!?」
俺はその言葉に驚いた
ま、マジで?
記憶が朧気だから分からないけど、そんな感じだったっけ
蓮「な、なんで、そう言う風に?」
眞「好きになったことに、理由などありません。ただ共に過ごし、長い時間一緒にいて、自然と好きになっていました。」
蓮「な、なるほど。」
いや、そこの理由は重要じゃないか
俺も気持ちは分かるし
いやでも、驚いたな......
眞「......ですが、今の私は一人のメイド。奥様のいる主人に対し、そのような感情を抱くなど......と。そう思っていました。」
蓮「思ってた?」
眞「ですが、Morfonicaの皆様や明日香様や未玲様が来て......私の心はずっと、揺れ動いているのです。」
蓮「......」
普段、落ち着いていて、偶にふざけるメイドさんがこんな風に思ってるとは驚いた
何年も俺のことを追いかけて、弦巻家のメイドになれるくらい努力して
多分、この人の努力は並々ならぬものだったはずだ
そこまでするんだ
そりゃ、そう簡単に収集付かないよな
蓮「ちょっと、失礼しても?」
眞「え?」
蓮「俺、記憶が曖昧で。少し、昔のことを思い出します。ついでに、メイドさんが修行してる間のことも教えます。」
眞「!」
俺はメイドさんの頭に触れた
そして、今までの記憶の読み取りを開始した
蓮「......」
眞「っ......!」
メイドさんの言っていたことは本当で9歳の時から俺が好きだったらしい
理由は特になく、ただ面倒を見続けた過程でだ
そして、俺が神谷に引き取られて、あの噂を聞いてから、今の親の引き取られた
氷見家はメイドの家系ではあるが、そう厳しいわけじゃない
両親も優しく、メイドさんを幸せにしようとしてた
けど、メイドさんはメイドの修行ばかりしていた
まるで、何かにとり憑かれているように
心配している両親の顔が印象的だ
蓮(......すごいな。)
そんな努力をして10年、俺を見つけた
うちのメイドになって、俺に彼女がいると知った時の絶望が伝わってきた
そして、新しい彼女が加入する度、心が揺れ動いて、それ解消するために、あのイタズラをしてた
そして、俺の最近の行動でその揺らぎが大きくなって......今
眞「......」
蓮「終わりましたか。」
眞「......れ、ん。」
蓮「!」
記憶を見終わった瞬間、俺はメイドさんに抱きしめられた
いつものご主人様予備じゃない
昔みたいな蓮呼びだ
眞「辛かったね......助けに行けなくてごめん......何もできなくてごめん......」
蓮「......」
そりゃ、十年も好きなままでいたんだ
里親だって、メイドさんの人生を左右するもの
それらも全部、犠牲にして、俺を助けようとしてたんだ
こうなるのも、仕方ないか
蓮「メイドさ......いや、眞はどうしたい?」
眞「......もう、離れたくない......私が蓮のことを守りたい......」
蓮「そう言うと思った。」
眞「!」
......やっぱ、俺、正気じゃないかも
最近、未玲と明日香来たばっかだぞ
うわー、あいつらの予言当たったよ
何とか許してもらお......
蓮「じゃあ、眞も彼女になればいい。」
眞「え......?」
蓮「俺は今まで、メイドさんとしか認識してなかったけど、一緒にいて楽しかったし。それに、あそこまで自分の為に努力した人、可愛くないわけないだろ?」
眞「っ......!///」
蓮「ただ、俺を守るって理想は叶えられないかもだけど。」
眞「それでも、いいよ......///」
これでいい
今までこの人と一緒にいて、少しでも失いたくないと思った時点
俺があのシャンデリアが落ちて来た時にこの人を守ったとこだな
そこでもう、全部決まってたんだろう
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あれからしばらく、静かな時間を過ごしていた
落ち着く時間も必要だろうし
記憶を見るのって、負担がすごいんだよな
眞「落ち着きました。もう大丈夫です。」
蓮「口調戻るんだ。」
眞「一応、メイドなので。」
じゃ、俺もメイドさんでいいや
そっちの方が慣れてるし
仕事の関係もあるだろうし
蓮「じゃ、そろそろ戻りますか。」
眞「そうですね。あ、そう言えば......」
蓮「ん?}
眞「ご主人様の記憶での私、印象薄すぎませんか?ていうか、私のこと完全に忘れてたような......」
蓮「あー......」
ま、まぁ?あの時は完全記憶ないし?
色々大変だったし?
記憶喪失の後遺症で断片的な記憶しかないし?
蓮「ま、まぁまぁ、そこは色々あって。」
眞「それはそれでいいです。」
蓮「!」
メイドさんは俺の手を握った
初めてだな、こんなこと
身体的接触、今までなかったし
眞「これからは、死んでも忘れさせませんから。」
蓮「ははっ、楽しみにしてます。」
俺たちはそんな会話をしながら、同窓会の会場に戻った
そう言えば、まだ始まったばっかなんだった
うわー、戻った後が面倒そうだ......