最初はあの子です。
チュチュ「__蓮!来たわね!」
蓮「あぁ、来ちまったよ。」
チュチュにスカウトされた翌日、俺は結局RASのスタジオに来た。
スタジオにはすでに、レイ、ますき、六花、パレオがいる。
パレオ「おはようございます、蓮さん!」
蓮「あぁ、おはよう。」
レイ「昨日ぶりだね、神谷君だっけ?」
蓮「あぁ。」
ますき「お前もチュチュに引っ張られたのか。という事は腕は確かなんだな。」
蓮「俺はあくまで経験の浅い指導者なんだがな。」
ますき「指導者だと?」
蓮「あぁ。だが、お前らには必要ないと思うがな。」
ますき「へぇ、中々、私らの腕を買ってくれてるみたいだな。」
蓮「昨日も言ったが、お前らの事は調べれば出てくるからな。映像を見れば疑いようもない。」
パレオ「蓮さん蓮さん?」
蓮「なんだ?」
パレオ「六花さんとはお話しされましたか?」
蓮「六花?そう言えば話してないな。」
六花「あ、あの、すいません......」
蓮「いや、謝ることもないんだが。」
六花「えっと、男の人と話すことがあまりなかったので、その......」
レイ「あー、確かにそうかも。」
蓮「そう言うもんなのか?」
ますき「そうなんじゃねぇの?」
チュチュ「__蓮!こっちに来て!」
蓮「お呼びか。言ってくる。」
俺は話してたやつらに一言声をかけてから、チュチュの所に行った。
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蓮「__なんだ、ちゆ......じゃなくて、チュチュ。」
チュチュ「今のは聞かなかった事にしてあげる。」
蓮「あざーす。」
チュチュ「これから、あなたにはここでの仕事を説明するわ。」
蓮「そもそも、ここで俺に仕事なんてあるのか?昨日見た感じじゃ、俺がいつもしてるみたいな指導はいらないだろ?」
俺はチュチュに質問をしてみた。
さっき言ったようにRASの技術は俺が口を出すレベルのものじゃない。そんな中俺がする事とは一体何なんだろうか?
チュチュ「あなたのここでの仕事は指導じゃないわ。」
蓮「?」
チュチュ「確か、あなたは一度、大規模なライブを企画したことがあったわね?」
蓮「あぁ、したぞ。それがどうした。」
チュチュ「あなたにはライブの企画などをお願いしたいの。出来る?」
蓮「知らん。向こうの俺に聞け。」
チュチュ「向こう?」
蓮「咎。」
チュチュ「__え!?Why!?」
蓮「お前が必要としてる俺はこっちだ。」
チュチュ「じゅ、充血......?」
蓮「いや、赤くなるのが反対だわ。」
チュチュ「一体、あなたはどうなってるわけ?」
蓮「うーん、分からん。」
チュチュ「......落ち着いたわ。それで、今のあなたなら出来るの?」
蓮「出来る。簡単だ。ライブはいつだ?」
チュチュ「二週間後よ。」
蓮「だいたい、夏休み終了直前か。間に合うな。」
チュチュ「デスクワークはここにあるものを使っていいわ。好きにして。」
蓮「了解。」
チュチュ「それじゃ、お願いするわ。」
俺はそう言われると早速、デスクワークを始めた。
蓮(__ふむふむ、スペックも悪くないし、作業が滞ることなく進められる。)
こころが用意していた設備もすさまじかったが、こっちもすごいな。
まさに音楽のためだけの設備。悪くない。
蓮「ふはははは。」
チュチュ(何と言うか、変な笑い方ね。でも、すごい作業スピード。私が普通、3時間かかる作業を30分、素晴らしい助っ人だわ。)
蓮(データは完璧にまとめられてる、方向性もはっきりしてるし、これならすぐに終わるな。)
俺はデスクワークを進めていった。
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”RAS”
RASのメンバーはライブに向けた練習をしていた。
レイはいつも通り完璧な歌を歌い、ますきはダイナミックなドラム、パレオは派手なパフォーマンス、六花は高い技術のギター、それをまとめるDJのチュチュ。それにより完成する音楽はまさに最強と呼べる。
暫く練習をし、約2時間半が経過した。
チュチュ「__ふぅ、今日はこんなものじゃないかしら。」
パレオ「お疲れ様でしたー!」
レイ「中々ハードだったね。」
ますき「あぁ。......結構、汗かいたな。」
六花「お、お疲れ様です。」
練習を終えたRASメンバーは各々、違った反応を見せている。
疲れた表情をしてるもの、他メンバーをいたわるもの等など。
チュチュ「あれ?」
その時、チュチュはとあることに気付いた。
チュチュ「蓮、あの部屋から出てきた?」
六花「えぇ?」
レイ「いや、部屋がそこだから、出てきてない?」
ますき「やばいんじゃねぇか?」
パレオ「とりあえず、行ってみましょう。」
RASメンバーはデスクワークルームに向かった。
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チュチュ「__蓮!」
蓮「ん?どうした?」
俺がデスクワークをしてると、RASのメンバーが入ってきた。
どこか焦ったような顔をしてる。
ますき「生きてたみたいだな。」
レイ「よかった。」
蓮「え?命の危険でもあったのか?」
チュチュ「あなた、今までずっと作業をしてたの?」
蓮「あぁ、そうだけど?あ、これ見て確認してくれ。ちょうど時間切れしたし。」
チュチュ「どれ?......って、私がするはずの作業も全部終わってる?」
蓮「あぁ。次のライブでのデスクワークはほぼ終わったんじゃないか?」
チュチュ「え、えぇ。もう終ったわ。」
レイ「......ますき?私たちの練習時間って。」
ますき「2時間半のはずだ。」
六花「いつもチュチュさんがあんなに時間をかけてる作業をこれだけの時間で?」
パレオ「蓮さんは人間なんですか?」
蓮「いや、人間だよ。」
チュチュ「信じられないわ......」
チュチュはパソコンに目を通しながら驚いた顔をしてる。
周りの奴らも怪奇現象でも見たかのような反応を見せている。
蓮「いやー、チュチュのまとめたデータは見やすかったよ。お陰でスムーズに作業が進められた。」
チュチュ「そ、そう?」
蓮「あぁ。お前の本気度が伝わって来たよ。」
パレオ「チュチュ様はこう見えて真面目なんですよー!」
チュチュ「こう見えて!?」
蓮「ははは。まぁ、見た目の割にだな。」
レイ「そうだね。」
ますき「あぁ、そうだな。」
六花「そうかも?」
チュチュ「ロックまで!?」
チュチュ以外「あははは!」
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それから、ライブまでの2週間、俺はチュチュたちと色々な事をした。
RASのメンバーと交流して仲良くなって。
レイ、ますきとバンド談義したり、パレオとチュチュをからかったり、六花の人生相談受けたり、と。俺は順調にRASと仲良くなった。
その中でも、俺が一番行動を共にしたのはチュチュだっただろう。
会場の下見や色々な打ち合わせ、機材チェックなどいろいろな行動を共にした。その中で俺は間違いなく本気というものを見た。睡眠時間を削ってでも完璧な準備をしようとする姿勢、一人で練習の反省をする様子と、俺は色々なチュチュの一面を見た。
そして、いよいよライブ当日になった。
チュチュ「やっと、ライブね。」
レイ「のどの調子はバッチリだよ。」
ますき「私も、いつも通りだな。」
六花「人、人の字を......」
パレオ「楽しみです~!」
RASはいつも通りな会話をしてる。
紗夜も言ってるが、本番は練習のように、これがやっぱり理想なんだろう。
チュチュ「蓮、あなたのお陰で完璧な準備が出来たわ。」
蓮「そうか?俺がいなくても変わんねぇじゃねぇの?」
パレオ「私にはわかります、蓮さんは感謝されて照れてます!」
蓮「はぁ!?」
レイ「確かに、蓮はそういうとこあるよね。」
ますき「あれだろ、ツンデレ。」
六花「人......人......」
蓮「俺はそう言うんじゃねぇ。あと、六花は落ち着け。」
もう少しで不名誉な称号をつけられるとこだった。
バンド男「__やぁ!ガールズバンドの諸君!」
蓮「......誰?」
俺たちが話してると、変な奴が話しかけてきた。
チュチュ「確か、私達の前に演奏するバンドね。」
蓮「へぇ。」
バンド男「俺は心配しているのだよ。」
ますき「心配だと?」
バンド男「あぁ......」
レイ「心配って、何についてですか?」
バンド男「今日のメインバンドがガールズバンド、それに加えこんな少女だけなんて......」
男はそう言った。その目は憐れむような、そして小ばかにするような目をしてる。
ますき「あぁ?舐めてんのかてめぇ?」
バンド男「おや?事実を言ったつもりだったんだが。どうせ、お宅らのバンドなんて遊び感覚なんだろ?そんなバンドがメインなら心配にもなる。」
ますき「遊びだと?てめぇ、うちのリーダーがどんなに!」
バンド男「おっと、口は慎め。女に何ができる?」
ますき「上等だ、ぶっ飛ばしてやる!」
チュチュ「__やめなさい、マスキング。」
ますき「チュチュ!」
男の発言に激怒したますきに対して、チュチュは意外と冷静に見える。そう、見えるのだ。
蓮(意地っ張りが。)
チュチュを見ると分かる。少し涙目で下唇を噛んでる、悔しいんだ。
チュチュの音楽に対する姿勢は誰にも負けてない、本気で取り組んでる。
それを馬鹿にされたんだ、チュチュの頑張りを知ってるやつは怒るだろうな。
バンド男「怖ければ辞めてもいいぞ?俺たちがメインを張っておいてやるよ!あはは!」
蓮「__待てよ、前座。」
そう、知ってるやつは間違いなく怒るよ。俺も含めてな。
バンド男「今、なんて言った?」
蓮「聞こえなかったか?ならもう一度言うよ。前座。」
バンド男「聞き間違いじゃないみたいだ、おかしいな。」
蓮「おかしいのはお前の頭じゃねぇのか?」
俺は半ば笑いながらそう言った。
男は明らかにむかついてる。
蓮(おーおー、眉間にしわよせちゃってー)
バンド男「それで、前座、と言ったか?」
蓮「言ったぞ、耳悪いの?」
バンド男「いやはや、ガールズバンドなどの肩を持つ男なんかにそんな事を言われると思わなくて驚いてるんだよ。」
蓮「じゃあ、俺も驚いたよ。あんたの言うガールズバンドごときの前座に甘んじてるバンドごときがそんな口を叩けることにな。」
バンド男「あ?」
チュチュ「ちょ、ちょっと蓮!」
蓮「......許せないよな。」
チュチュ「え?」
蓮「本気で取り組んでるやつの努力をさ、見もせずに侮辱する奴ってほんっとに、むかつくわ。」
チュチュ「蓮......」
俺はチュチュにそう言って、男の方を見た。
男はさっきよりもむかついた表情をしてる。
バンド男「お前、俺を馬鹿にしていいと思ってるのか?」
蓮「お前こそ、そんなこと言う権利あるの?さ・ん・し・た。」
バンド男「この......!」
蓮「さっさと行って会場温めて来いよ前座。」
バンド男「......そこまで言われたら仕方ない。」
男は一度うつむき、信じられない発言をした。
俺は思わず、バカ、と思った。
バンド男「__命令だ。今日のお前らは辞退しろ。」
チュチュ「!」
バンド男「俺は力ずくもいとわないぞ、痛い目に遭いたくなければ従うんだな!」
ますき「ふざけやがって!」
レイ「ますき!」
パレオ「まっすーさん!」
六花「止まってください!」
ますきは男に詰め寄ってる。
気に入らないだろう、命令、なんて使われたら。
蓮「__止まれ、ますき。」
ますき「あぁ!?」
蓮「そんな奴のためにお前らが問題を起こすこともない。」
ますき「だったらどうする!こいつの言うままにするのか!」
蓮「そんなわけないだろ。」
ますき「はぁ!?」
蓮「俺がやる。もう平和なんて考えない。咎。」
全員「!?」
バンド男「なんだ......それは?」
男はもちろん、周りも全員困惑してる。
そりゃそうだ、目が赤くなれば焦るよな。
蓮「謝るなら今のうちだぞ。」
バンド男「謝る?何でそんな事を?」
蓮「はぁ。残念な奴だ。」
俺は男を殴った。咎に身体能力の強化なんてない、だから殴るだけなら咎を使う必要なんてないんだ。でも、俺は咎を使った。後は分かるな?
バンド男「な、なんだ、大したこと__うっ!!!」
RAS「!?」
蓮「咎使用時の俺の観察能力は機械よりも精密。だから分かった、お前が一番痛みを感じるのはそこだって。」
バンド男「な......!?」
蓮「それを踏まえて言うぞ?一回で聴け?」
俺は男の目を見た。迷い、恐怖、などが見える。
蓮「命令。前座の役割、果たせ。いいな?」
バンド男「な、なんで、お前らなんかの__」
蓮「あぁ?次はもっと強烈なのが欲しいって?」
バンド男「い、いや......」
蓮「さぁ、拷問の時間だ__」
バンド男「も、もうやめてくれ!俺が悪かったから!もうしません!」
蓮「じゃあ、俺の命令、聞くよな?」
バンド男「は、はい!」
蓮「よし。じゃあ、行け。」
バンド男「はい!......なんて、言うと思ったか!!!」
チュチュ「!」
男は入り口付近にあったハサミを投げつけた。
それはチュチュの方に迫っている。歯もむき出しだ。
パレオ「チュチュ様!」
チュチュ「__!」
蓮「__いった。」
チュチュ「れ、蓮!?」
バンド男「な、何!?」
蓮「やると思ったよ。絶対にな。」
完全に切れた。徹底的にやろうか。
蓮「......」
バンド男「く、来るな......」
蓮「......」
バンド男「こ、来ないでくれぇ!」
蓮「不思議なことにさ、脱臼って簡単に起こせるんだ。」
バンド男「は......?」
蓮「ここをこんな風に......な!」
バンド男「ぎゃぁぁぁ!」
蓮「もう一個。」
バンド男「や、やめ......ぎゃぁぁぁぁ!!!」
蓮「あ、これじゃ今日のライブは無理だな。まぁ、いいや。頑張ってる女の子を馬鹿にした罰ってことで。」
こうして、俺のクソ男への制裁が終わった。
男はこの後すぐ、病院に運ばれた。
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あれから、RASはライブをした
俺も見てたが、いつも以上にすごかった。練習じゃ見られない気迫、良いライブだったと思う。
会場の温度も信じられないほど上がってて、盛り上がり具合が伺える。
友希那「__あら?蓮?」
蓮「友希那?」
リサ「あたしもいるよー!」
蓮「リサも?見に来てたのか。」
友希那「えぇ。素晴らしいライブだったわ。」
リサ「うん!すっごく盛り上がってたね!」
蓮「あぁ、そうだな。」
友希那「これも、あなたが手を加えたのかしら?」
蓮「......いや、あれはあいつらだけで作り上げたものだよ。」
俺はRASが演奏していたステージを見た。
ステージから降りたにもかかわらずこの盛り上がり、本当にすごい。
蓮「お前らも、ウカウカしてられないな。」
友希那「そうね。」
リサ「もっと頑張らないとねー!」
蓮「そうだな。......ん?」
友希那「蓮?」
蓮「リーダーさんからの電話だ。行ってくる。」
友希那「そう。」
リサ「またねー!」
蓮「あぁ。」
俺は二人と分かれ、チュチュに呼ばれたところへ向かった。
友希那「__なんだか、あのバンドも私たちと同じ感じがしたわ。」
リサ「どういうこと?」
友希那「あの子達も私たちの仲間になりそうということよ。」
リサ「あっ(察し)
友希那「......ライバルが増えるわ。」
__________________
俺はチュチュに呼ばれた場所に来た。
そこにはすでにチュチュがいる。
蓮「__待たせたな。」
チュチュ「早かったわね。」
蓮「それで、どうした?急に呼び出して。」
チュチュ「......お礼が言いたかったの。」
蓮「お礼?」
チュチュ「今日はありがとう、蓮。」
蓮「気にしなくてもいいよ。」
チュチュ「そうじゃなくて。」
蓮「?」
チュチュ「私の頑張りを認めてくれて、ありがとう。」
蓮「!」
チュチュ「感謝してるわ。私の悔しさも晴らしてくれた。」
チュチュは年相応とは言えない笑みを浮かべながらそう言った。俺はその姿に少し美しさを感じた。
蓮「......まぁ、頑張ってるやつを認めてやれるのは自分と見てたやつだけだけだからな。」
俺はチュチュの頭を撫でた。
チュチュ「!///」
蓮「......お疲れ、ちゆ。」
チュチュ「......その名前で呼ばないで///」
蓮「おっと、悪い悪い。」
チュチュ「でも......ありがとう///」
蓮「おう。」
俺に頭を撫でられてるちゆはまさに年相応。
音楽にストイックな女の子にはとても見えない、ただの女の子だ。
俺の服を掴んで、顔をうずめてる様はとてもかわいらしい。
チュチュ(本当にありがとう。そして///)
「Ⅰ love you.Ren kamiya.///(ぼそっ)」
蓮「なんて言った?」
チュチュ「な、なんでもないわ!///」
こうして、RASのライブは終わった。
この時の蓮はチュチュの言葉も、恋の始まりも何も知らない。
そして、この先の事も。
次回は出来れば、こころあたりを書きたいなと。