覚醒救世主と夢を目指す少女達   作:火の車

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沙綾です。


いくらでもパンを食べる方法

 皆は悩みがある時は何をする?

 趣味に没頭するとか寝るとかが多いんじゃないだろうか。

 だが、今日の俺の選択肢は美味いものを食うだ。

 

蓮「__でも、何を食べようか。」

 

 俺はここに来てからファミレス以外で外食したことがない。

 こういう時にファミレスに行くのはなんか違う気がする。

 

蓮(外に出るまではよかったが、どうしようか。)

 

 今日は始業式の翌日で土曜だ。

 俺はいい飲食店を探して歩き回ってる。

 

沙綾「あれ?蓮先輩?」

蓮「沙綾?」

沙綾「珍しいですね?こんなところにいるなんて?」

蓮「そうか?」

沙綾「はい。かなりレアです。」

蓮「そんなに?」

 

 どうやら俺は相当な引きこもりらしい。

 そう言えば、学校とか買い物以外で外に出るようになったのは最近だったな。

 

沙綾「それで、何をしてたんですか?」

蓮「あぁ、美味いものを探してたんだ。」

沙綾「美味しいものですか?」

蓮「そうだ。何せこの辺り来てから外食したのはファミレスだけでな。なかなか見つからないんだ。」

沙綾「......いい店、知ってますよ。」

蓮「いい店?」

沙綾「はい。来ますか?」

蓮「頼む、沙綾。」

沙綾「じゃあ、行きましょうか!」

__________________

 

沙綾「__ここです。」

蓮「やまぶきベーカリー?って、やまぶきって。」

沙綾「ここは私の家ですよ。」

 

 沙綾に連れられてきたのは香ばしい香りが鼻をくすぐってくる店、パン屋のやまぶきベーカリーだった。

 どうやら、ここは沙綾の家らしい。

 

蓮「沙綾の言ってた家の手伝いってこれの事だったのか。」

沙綾「覚えてたんですか?」

蓮「まぁな。」

沙綾「それで、どうします?何か食べていきますか?」

蓮「この匂い嗅いだら食べていくしかないだろう。」

沙綾「ふふ、いらっしゃい。蓮先輩!」

 

 俺はやまぶきベーカリーに入った。

__________________

 

 店の中には豊富な種類のパンが綺麗に並べられていた。

 店の前から漂ってた香りも一層強くなって、食欲を刺激される。

 

沙綾父「__おかえり沙綾......って、そっちの子は?」

沙綾「蓮先輩だよ。お客さん。」

蓮「こんにちは、沙綾のお父さん。」

沙綾「こんにちは、神谷蓮君。」

蓮「なんで俺の名字を知ってるんですか?」

沙綾父「君の事は沙綾からよく聞いててね。」

沙綾「お父さん!それは言わないでって言ったでしょ!///」

沙綾父「あ、そうだった。ごめんな、沙綾。」

沙綾「もう......///」

蓮「?」

 

 沙綾はそう言いながら店の奥に行き、すぐに制服に着替えて出てきた。

 

沙綾「__気を取りなおして、いらっしゃい、蓮先輩!」

蓮「あぁ。」

沙綾父(今は沙綾のシフト時間じゃないんだけどな。)

沙綾「それで、蓮先輩はどんなパンが好きなんですか?」

蓮「うーん、どれが好きって言うのはないんだ。今まで食に拘ってこなかったからな。」

 

 俺は少し店内にあるパンを眺めて来た。

 どれもすごく美味そうだ。

 

蓮「うーむ、迷う。」

沙綾父「そうだなぁ、今日のおすすめはこれとこれかな?」

蓮「なるほど、なら、これにします。お会計を。」

沙綾「あ、私がします!」

沙綾父「沙綾、パンを包む袋が切れてるんだけど、取ってきてくれないか?」

沙綾「袋?うん、分かった。」

 

 そう言って沙綾は奥に下がって行った。

 

沙綾父「......行ったかな。」

蓮「?」

沙綾父「神谷君。」

蓮「はい?」

沙綾父「少し、話を聞いてくれないかな。」

 

 沙綾のお父さんは静かな声で話しかけてきた。

 さっきまでの優しそうな表情から打って変わって真剣な表情だ。

 

蓮「話とは。」

沙綾父「沙綾の事だよ。」

蓮「!」

沙綾父「沙綾から君の事はよく聞いてる、だから、君には話しておきたいんだ。」

蓮「はい。」

 

 沙綾のお父さんは話し始めた。

 

沙綾父「......あの子の母親はとても病弱なんだ。」

蓮「病弱?」

沙綾父「あぁ。昔、あの子は今のバンドとは違うバンドに所属してたんだが、そのライブの前に妻が倒れてしまってね。」

蓮「......」

沙綾父「そしてあの子は家族のために一度バンドをやめてしまったんだ。」

 

 沙綾のお父さんは悲しそうな顔をしてる。

 それはそうだろう。なんせ自分の娘の楽しい時間が失われてたんだ親にとってそれがどんなにつらいか。

 

沙綾父「それからあの子には苦労を掛けてしまった。店の手伝い、下の子たちの面倒も......。」

 

 悔しそうな顔だ。

 

沙綾父「でも、今のあの子は新しいバンドで楽しい日々を送ってる。そして__」

沙綾「お父さーん、袋もってきたよー。」

蓮「!」

沙綾父「ありがとう、沙綾。」

沙綾「うん!」

 

 そんな会話をしながらパンを手際よく袋に詰めていった。

 

沙綾父「はい、神谷君。」

蓮「お金を__」

沙綾父「いや、いいよ。」

蓮「え?」

沙綾父「話を聞いてくれたお礼だ。それと......」

蓮「?」

沙綾父「......いや、なんでもないよ。」

 

 そう言って、沙綾のお父さんは沙綾に話しかけた。

 

沙綾父「沙綾、神谷君と話してきなさい。」

沙綾「え?」

沙綾父「......彼なら安心だよ。」

沙綾「!///」

沙綾父「行っておいで。」

沙綾「......うん///」

蓮(なんだ?)

沙綾「行こ!蓮先輩!」

蓮「お、おう。」

 

 俺たちはやまぶきベーカリーを出た。

 

沙綾父(神谷君。いつか君が僕たちの家族になってくれたらいいんだがね。)

__________________

 

 俺たちは近くの公園に来た。

 ここは人通りが少なくて、静かでいい場所だ。

 俺たちはベンチに座った。

 

蓮「__ふぅ。」

沙綾「あはは、おじいちゃんみたいだね。」

蓮「失礼だな。俺はまだ17歳だぞ。」

沙綾「ごめんごめん。」

蓮「まぁ、別にいいんだがな。」

 

 俺はそう言うと袋を開け、パンを取り出した。

 

蓮「ほれ、沙綾も食うか?」

沙綾「いいんですか?」

蓮「あぁ。俺だけ食うのもだしな。」

沙綾「じゃあ。」

 

 沙綾はパンを受け取った。

 そして、俺たちはパンを食べ始めた。

 

蓮「おぉ、美味い。」

沙綾「うん。美味しいね。」

蓮「これはハマるなー。また買いに行こう。」

沙綾「ふふ、ありがとうございます。」

 

 俺たちはしばらく、パンを食べてた。

 美味しいパンと友達と食べるのはいい時間だな。

 そう思ってるうちにパンを食べ終えた。

 

蓮「__ご馳走様。」

沙綾「ごちそうさまでした。」

 

 俺たちは二人で手を合わせた。

 いい満足感だ。

 

蓮(さて、沙綾と二人になったのはいいが何の話をするんだ?さっきの話をするのは__)

沙綾「パン、美味しかったですか?」

蓮「ん?あぁ、すごい美味かった。あれならいくらでも食べられるよ。」

沙綾「いくらでも......か。」

蓮「?」

 

 沙綾は何かを呟いた。

 すると、沙綾が俺の方を見て来た。

 

蓮「どうした?」

沙綾「あのね、蓮先輩。いくらでもパンを食べる方法、あるよ。」

蓮「え?ほんとか?」

沙綾「うん。ついでにおまけもつくよ。」

蓮「お、どんなだ?(感じ的にポイントカードとか割引券を貰えるキャンペーンでもあるのか?)」

沙綾「うん。特別に教えてあげます。それはですね。」

蓮「それは?」

 

 俺が聞き返すと、沙綾はこう言い放った。

 

沙綾「__私と結婚する///」

蓮「え?」

沙綾「え、えっと、そうすればパンのついでに私も付いてくるよー......なんちゃって///」

蓮「い、いや、それは___」

沙綾「うーん、蓮先輩は鈍感さだね。つまり///」

 

 沙綾は俺の耳元に口を寄せてこう言った。

 

沙綾「......私、蓮先輩が好き///」

蓮「!」

沙綾「だ、だから、この方法は蓮先輩限定だよ......?///」

 

 そう言うと沙綾は急に立ち上がった。

 

沙綾「あ、あー、お店の手伝いに戻らなくちゃー!」

蓮「さ、沙綾?」

沙綾「じゃ、じゃあ、行きますね蓮先輩!///」

 

 沙綾はそう言って店の方に行こうとしたが、戻ってきた。

 

沙綾「......さっきの話、考えてくれると嬉しいな///」

 

 チュ......

 沙綾は頬にキスをした。

 女の子は皆、柔らかいものなのだろうか。

 

沙綾「じゃあね!///」

 

 そう言って、沙綾は店の方に走って行った。

 俺は茫然としていた。

 

蓮「......どっちがおまけなんだよ。」

 

 俺はそう呟き、家に帰ろうとした時にはもう陽は、真っ赤な夕焼けになっていた。

 頬の感触はずっと、鮮明に残っていた。




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次回はパレオです。
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