蓮「__そう言えば、記憶が戻ったとして、その後、記憶喪失の間に体験した記憶はどうなるんだ?」
咎『まぁ、普通なら忘れるだろうな。』
蓮「だよな。」
咎『だが、まぁ......』
蓮「ん?」
咎『素敵なプレゼントを用意しておいてやるよ。』
蓮「おい、そのにやけ顔気になるんだが?」
咎『気にすんな。』
たえ「ねぇねぇ、蓮先輩。」
蓮「はい?」
とあり昼下がり、僕の家には花園さんと山吹さんが来ていた。
どうやら、花園さんは話があるらしい。
蓮「どうしたんですか?」
沙綾「どうしたの?おたえ?」
たえ「私、蓮先輩とギターを弾く約束してたの。」
蓮「ギターを?」
たえ「うん。でも、なんだかんだでうやむやになってて。」
沙綾「あー、確か初めて会ったときに言ってたね。」
たえ「うん。」
蓮「でも、なんでそれを今?」
たえ「今日、弾こうよ。」
蓮、沙綾「え?」
たえ「香澄たちに蔵で用意してもらってるし。蓮先輩、外に出られるらしいし。」
蓮「え?」
沙綾「......だから、今日、三人が来てなかったんだ。」
たえ「うん。だから、行こうよ蓮先輩。」
蓮「それはいいんですが。僕で良いのでしょうか?」
たえ「?」
蓮「今は記憶がないですし、花園さんが望んでるように出来るかどうか......」
たえ「いいよいいよ。私が教えるから。私は蓮先輩とギターが出来ればいいし。」
沙綾「私もドラムで入ろかな!」
たえ「いいね。じゃあ、蔵に行こ。」
蓮「は、はい。そういう事なら。」
僕たち三人は市ヶ谷さんの家の蔵に向かった。
__________________
たえ「__おまたせー皆。」
香澄「あ!おたえ!」
蓮「お邪魔します。」
りみ「蓮先輩、いらっしゃい。」
蔵に入ると、戸山さん、牛込さん、市ヶ谷さんがいた。
どうやら、準備は終わってたみたいだ。
蓮「そう言えば、僕、ギターを持っていませんよ?」
香澄「大丈夫ですよ!はい!」
戸山さんは勢いよくギターを出した。
すごくかっこいいデザインだ。
どうしたんだろう?
りみ「こころちゃんに頼んで先輩用に作ってもらったんです!」
蓮「え?僕用に?」
こんなかっこいいギターを僕用に?
なんで、わざわざ?
有咲「弦巻さんが、折角だから蓮専用の楽器を作りましょうとか言ってオーダーメイドしたらしいぞー。よかったな、先輩。」
蓮「......すっごい。」
開いた口が塞がらない。
わざわざ、素人が引くためにオーダーメイドでギターを作るって......
たえ「......うん。記憶があるときは関係ないけど、初心者でも弾きやすいギターだね。」
香澄「そうなの?」
有咲「いや、なんで香澄が分かんねぇんだよ。」
沙綾「まぁまぁ。ともかく、弾いてみようよ!」
りみ「そうだね。はい、どうぞ蓮先輩。」
蓮「あ、ありがとうございます。」
僕は牛込さんからギターを受け取った。
皆の話では弾いてたらしいけど、今の僕だと初めて持った。
たえ「どう?蓮先輩?」
蓮「何と言うか、すごいです。」
有咲「......大丈夫なのか?めっちゃ手震えてるけど?」
蓮「お、落としたらと思うと、震えが......」
沙綾「蓮先輩は気にし過ぎだよー。」
香澄「そうですよ!落ち着て!」
蓮「は、はい。」
僕は5回ほど深呼吸をしてやっと落ち着けた。
たえ「__じゃあ、先輩も落ち着いたし、弾いてみよっか。」
蓮「はい!」
たえ「じゃあ、まずは思うように弾いてみて。」
蓮「分かりました、やってみます。」
僕はギターを弾いた。
正直、全く勝手が分からない。
弾いてみた結果は、ダメダメだ。
たえ「__うん。大体わかった。」
蓮「え?」
たえ「まぁ、出来てないけど。でも、大丈夫。」
蓮「そうですか?」
たえ「うん。じゃあ、教えるね。」
香澄「私も私も!」
有咲「はいはーい。香澄はあっちに行こうなー。」
香澄「えぇ!?なんでー!?」
有咲「お前が混ざると蓮先輩が戸惑うからな。」
沙綾「あはは、そうかも。」
りみ「そうだね......」
香澄「りみりんまでー!?」
こうして、花園さんのギター指導が始まった。
花園さんは日ごろの態度からは想像できないくらい、理詰めの指導をする。
ギターの技術を教えると言うよりは、叩き込むって感じだ。
香澄(蓮先輩、頑張っててかっこいいし可愛いなぁ......///)
りみ(さっきの部分出来た時の顔......可愛かった///)
有咲(あー、可愛すぎ。天使?元はかっこいい美形だったのに、今は天使にジョブチェンジしてるよ。結婚したい。)
沙綾(頑張ってるなー。蓮先輩に教えるってのも新鮮だし。)
蓮「__うーん。」
でも、やっぱりできない部分というのは出てくる。
今は、ポピパの曲を弾いてるけど、やっぱり難しい。
たえ「あー、そこは難しいよね。」
蓮「はい......すいません。」
たえ「いいよいいよ。あ、蓮先輩、じっとしてて。」
蓮「え?__って、は、花園さん!?」
香澄「ちょ、おたえ!?」
有咲「何やってんだ!?」
りみ「ず、ずるいよ!」
沙綾(羨ましい。)
花園さんは後ろから僕の手を取った。
急に近づかれたからテンパってしまう。
たえ「私が誘導して教えるだけだよ。大丈夫。(いい匂い。)」
蓮「そ、そうなんですか?」
たえ「そうだよそうだよ。(あー、敬語蓮先輩、可愛い。)」
蓮「じゃ、じゃあ、なんでさっきから手を握ったりしてるんですか?」
たえ「蓮先輩の手は柔らかいね。(そんな事ないよ。)」
蓮「えぇ!?」
有咲「いや、逆になってるぞ、おたえ。」
たえ「あ、やば。」
香澄「むぅ~!やっぱりずるいよー!」
りみ「わ、私も......」
有咲「わ、私は別に......やっぱ、興味ある。」
たえ「後でね。今は練習だから。」
蓮「え?(後で?)」
少し、疑問に残る部分があったけど、練習が再開した。
花園さんに誘導してもらった後は上手くその部分も覚えられて、何とか少しだけ上達出来た気がする。
たえ「じゃあ、私達と演奏してみよ。」
蓮「え?もうですか?」
たえ「まぁ、やってみようよ。多分、大丈夫だよ。」
蓮「は、はい。」
香澄「まーってましたー!」
りみ「準備出来てるよ!」
有咲「さっさと来いよー。」
沙綾「蓮先輩はこっち!」
蓮「はい!」
僕は皆に呼ばれた方に行った。
たえ「じゃー、ポピパWith蓮先輩でー。」
香澄「ティアドロップス!」
沙綾「はい!歌詞ですよ!」
たえ「まだ慣れてないだろうから歌いながらはきついと思うけど。」
香澄「ここだけは言ってもらいたいな!出来れば、私たちの方を向いて!」
蓮「ここですか?はい、分かりました。」
香澄「それじゃあ、いっくよー!」
蓮「はい!」
演奏が始まった。
最初から盛り上がる曲で、皆の流れにのまれそうになる。
でも、何とかついて行かないと。
必死で演奏してるうちに、あの部分が来た。
香澄「__未来が見えない少女......」
蓮(来た。)
4人の追いかけの後、僕は皆の方に振り向いた。
蓮「__この手を離さない。」
香澄「!///」
たえ「っ///」
りみ「......///」
沙綾(わっ、す、すっごい......///)
有咲(やばいやばい、かっこよすぎるって!///あんなん反則だろ///)
蓮(これでよかったのかな?)
そうして、演奏が終わった。
最後の方、皆の演奏が変わった気がした。
蓮「楽しかったです!」
たえ「そ、そう?よかった......///」
りみ「う、うん、そうだね///」
有咲「あ、あぁ、良かったんじゃねぇの......?///)
蓮(どうしたんだろう?皆、顔赤いし。)
僕がそんな事を考えてると......
香澄「__もう、我慢できない!///」
蓮、たえ、沙綾、りみ、有咲「!?」
戸山さんが叫んだ。
そして、僕の方に近づいてきた。
香澄「私!先輩の事が大好きです!///」
蓮「え?」
香澄「合同ライブの時の笑顔で、キラキラドキドキして、あの時からずっと大好きです///」
たえ「香澄、ずるいよ。」
蓮、香澄「!?」
花園さんが間に入ってきた。
でも、ずるいって......?
たえ「私も蓮先輩が好き///最初は蓮先輩の演奏で震えて、それから一緒にいるうちに好きになった///」
りみ「わ、私も......!」
蓮「牛込さん......?」
りみ「先輩に記憶があった時、褒めながら頭を撫でてくれた時からずっと、好きでした!///」
蓮「え、えっと、その......」
りみ「えっと、その......///私と付き合ってください!///」
香澄「__有咲。」
有咲「!」
たえ「有咲も、伝える時じゃないの?」
有咲「......」
蓮「い、市ヶ谷さん......?」
二人が市ヶ谷さんにそう言うと、市ヶ谷さんがこっちに近づいてきた。
有咲「蓮先輩。」
蓮「は、はい。」
有咲「少し話すぞ。」
市ヶ谷さんはそう前置きして話し始めた。
有咲「記憶がある時の蓮先輩はすごい人だった。何でもできたし、かっこよかった。だが、バカだった、大バカだった。」
蓮「?」
有咲「この前みたいに自分を犠牲にして誰かのために動こうとする。」
市ヶ谷さんは僕の頬の傷を覆うように触った。
有咲「この傷も、合同ライブの後の脳出血も、記憶喪失の原因になった事故も、私達は何一つ望んでなかった。」
蓮「市ヶ谷さん......」
有咲「でも、蓮先輩は平気で自分を犠牲にして、誰かを救おうとするんだよ......」
市ヶ谷さんは涙を流しながらそう言った。
でも、僕を包む手はとっても優しい。
有咲「私もさっきまでの話に比べれば小さいことかもしれないけど、蓮先輩に助けてもらったんだ。」
蓮「僕に......?」
有咲「あぁ。ここで、私がコードに引っかかって転びそうになった時、蓮先輩は抱き留めてくれた。」
蓮「!」
有咲「下らないと思うかもしれないけど、私にとっては大きかたんだよ。だってな__」
市ヶ谷さんは少し息をして、こう言った。
有咲「__あれが、私の初恋の始まりだったんだからな///」
蓮「!」
有咲「ま、そういう事だよ///」
そう言って市ヶ谷さんは僕から少し離れた。
有咲「さっきの言葉は私だけものじゃない。こいつらも、他のバンドの皆も思ってる事だ。」
りみ「はい......そうです。」
香澄「もう、傷つく先輩を見たくありません......」
たえ「先輩はもう、傷つかなくてもいいの。」
沙綾「自分に優しくなってくださいね。」
そう言いながら、山吹さんが近づいてきた。
沙綾「私は皆より少し先に先輩に告白したよ。」
蓮「え?」
沙綾「だから、待ってる。いつまでも///」
そう言って山吹さんは離れていった。
香澄「今日の事は記憶が戻っても忘れないでくださいね!///」
たえ「全部、私たちの正直な気持ちだから///」
りみ「私達は先輩の返事をいつまでも、待っています......!」
有咲「......焦らなくていいから、真剣に選んでくれよな。///」
沙綾「蓮先輩がだれを選ぶのか、楽しみに待ってるよ!」
蓮「......はい。」
こうして、ポピパの皆と過ごす一日は告白を受けて終わった。
一刻も早く、記憶を戻して皆の気持ちに答えないといけない、そう、心の底から思った。
”選曲”
香澄「そう言えば、なんで今回はティアドロップスだったの?」
たえ「うーん......分からない?」
香澄「え?......何となくわかった///」
たえ「あれ、やばかったでしょ?///」
香澄「うん///キラキラドキドキした///」
たえ「私も、かなり震えたよ。」
香澄「あの表情がたまらなかったよね!」
たえ「あの必死そうで、でも、どこか儚げな表情......///」
香澄「あー!忘れられないよー!///」
たえ「うん、忘れたくない///」
香澄「も、もうそろそろ終わろ!じ、次回に続きまーす!」
たえ「またね///」