俺は自分のパソコンを開いている
今までは動画サイトで動画を見たり
記憶喪失について調べるくらいだった
蓮「__なんだろ、これ。」
パソコンのデータを見てると
その中に気になるものがあった
蓮「ライブ計画?」
俺はそのファイルを開いた
その中には膨大な量の情報が入っていた
蓮(な、なんだこれ?)
ライブの時のタイムテーブルとか、栄養管理
各バンド、各パートの課題とか
そういう事が事細かに書かれてある
蓮(すごいな。よくこんなに書くな。)
ひまり「__何見てるんですかー?」
蓮「!?」
巴「おい!」
画面に集中しすぎて、横にいる二人に気付いてなかった
俺は驚き過ぎて、椅子から転がり落ちた
蓮「いてて......」
巴「だ、大丈夫か!?」
蓮「だ、大丈夫。驚いただけだ。」
俺はそう言いながら立ち上がった
そして、軽く深呼吸をして心を落ち着けた
蓮「2人は何しに来たんだ?」
ひまり「蓮さんの様子を見に来たんです!」
巴「最近はライブの準備で忙しかったからなー。」
蓮「あぁ、そういう事か。」
最近、聞いた話によると
皆はライブの準備でかかりっきりで
前みたいに大人数で来ることができないらしい
俺は別に無理に来なくてもいいって言ったけど
なぜか、それは拒否された
ひまり「蓮さんは大丈夫そうですね!」
蓮「まぁ、ずっと家にいるし。」
巴「てか、何やってたんだ?」
蓮「あぁ、なんかパソコンに入ってたデータを。」
ひまり、巴「データ?」
2人はパソコンの画面をのぞき込んだ
マウスを動かしたりして、データを確認すると
2人の目は段々と丸くなっていった
巴「これ、あたし達の事か?」
ひまり「そ、そうっぽいね。」
動画、音声データ
2人はそう言うものを確認していってる
ひまり「愛情感じるねー!」
蓮「愛情?」
ひまり「はい!だって、私達の事をここまで見ててくれたんですよ!」
巴「こんな量になるんだ、すごい時間をかけてたんだろうな。」
蓮「......ふむ。」
確かに、ライブの用意と皆の練習も見てたら
やることは多かったのかもしれない
2人は感極まったような態度をとってる
巴「......ほんとに蓮さんは蓮さんだな。」
巴はそう呟いた
どこか懐かしむように、悲し気に
ひまり「全部、蓮さん一人に任せて、甘えて。それで無理して......」
ひまりは少し苦い表情をした
皆が言ってた、俺が倒れた時の事か
蓮「俺は多分、気にしてなかったと思う。」
巴「蓮さん?」
蓮「俺がここまで頑張れてたのは、皆の事を見てたからだと思う。」
少しデータを見進めると
ライブの時の写真があった
各バンドで撮ってたり、全員で撮ってたり
個人で撮ってたり、色々な写真がある
蓮「楽しそうに頑張ってる皆を見て、頑張りたいって思ってたんじゃないかな。」
記憶がないから、全く確証はないけど
俺が俺だったら、こう思うと思う
蓮「まぁ、今の俺は皆の知ってる俺じゃないから、何とも言えないけど。」
ひまり「それは違います!」
蓮「え?」
巴「あぁ、違うな。」
ひまりがそう言うと、巴もうなずいた
俺は何が何か分からなかった
巴「どうなっても、蓮さんは蓮さんだ。」
蓮「俺は、俺?」
ひまり「はい!記憶が無くなっても蓮さんが優しいって事は変わってません!」
巴「あぁ。RASの2人を助けてるのも、それの象徴だ。」
巴はそう言って俺の肩を叩いてきた
その顔はどこか満足そうにしてる
巴「蓮さんの優しさはそのまま、強さだったよ。」
蓮「......そっか。」
本当に記憶がある時の俺はどんなだったんだろう
そんなに立派な人物だったんだろうか
蓮(それも、もう少しで分かるかもしれない......)
巴「ちょっとしんみりしたな!」
蓮「!」
ひまり「うん!そうだね!」
2人は明るい表情でそう言ってる
この2人が明るいと本当に安心する
俺は少し笑った
巴「ずっと家にいるのもだし、どっか行くか!」
蓮「別にいいけど、どこ行くんだ?」
ひまり「うーん......」
巴「そりゃ、あそこしかないだろ!」
蓮、ひまり「あそこ?」
巴「まぁ、ついて来てみろって!」
巴にそう言われると
俺はパソコンの電源を落とし
上着を羽織って、3人で家を出た
__________________
歩いて神社に来た
そして、その中にある神楽殿に入った
巴「__ここだぜ!」
ひまり「太鼓じゃん!」
神楽殿に入ると
そこには和太鼓があった
祭りで使ったりしてるらしい
かなり大きいものだ
ひまり「こういう時ってどこかに遊びに行ったりするんじゃないの!?」
巴「いやぁ、これしか思いつかなかった!」
蓮「へぇ、これが和太鼓か。」
記憶がある時の俺は見たことがあるかもしれないけど
俺は初めて見た和太鼓をよく観察した
巴「お、興味あるか!」
蓮「あぁ。かなり珍しいからな。」
ひまり「ま、まぁ、蓮さんが面白いならいいけど。」
蓮「感覚的には初めて見てるからな。」
巴「よっしゃ!じゃあ、叩いてやるよ!」
巴はそう言って、バチを持ってきた
気負いを入れ、軽く肩を回しながら巴は大きな太鼓の前に立った
ひまり「あ、この辺が見やすいですよ、蓮さん!」
蓮「あぁ。」
俺はひまりの横に並んだ
そして、巴の方を見た
巴「行くぞ......ソイヤッ!!!」
ドン!!!
巴が掛声と共に太鼓を思いっきり叩いた
すると、腹に直接響くような感覚があった
巴「ソイソイ、ソイヤー!!!」
巴の力強さが伝わってくる
そして、楽しそうだ
ひまり「楽しそうでしょ?」
蓮「あぁ。」
ひまりは巴を様子を見ながらそう言ってきた
俺は軽くうなずいた
ひまり「これ、お祭りのシーズンになるといっつもなんですよ?」
蓮「確かに、祭りとか好きそうだもんな。」
ひまり「去年はこころとか香澄とか、みんなでやってたんですよ。」
蓮「へぇ。」
想像が付くな
こころと香澄なら、太鼓が楽しいとか言って
嬉しそうに叩いてるんだろうだ
蓮「いいよな。そう言うの。」
ひまり「はい。」
しばらく、俺たちは巴の演奏を見ていた
少しの間、演奏してる巴を見てると
蓮「__ん?」
ひまり「......」
ひまりが服を引っ張ってきた
少し、顔が赤い気がする
蓮「どうした?」
ひまり「ずっと、考えてたんです。」
蓮「え?」
ひまり「蓮さんが事故に遭ってから。いつか、皆で楽しく笑いあえてるいつも通りが、蓮さんがいなくなっちゃうんじゃないかって。」
ひまりは悲しそうな表情でそう言った
俺は何も言えなかった
ひまり「そうなったら、私はどう思うんだろって。」
蓮「......」
そんな事を考えられる俺は、きっとダメな奴なんだろう
でも、皆のいつも通りってやつに含まれてる
ひまり「蓮さん。」
蓮「なんだ。」
ひまり「私、蓮さんが好きです///」
蓮「!」
ひまり「最初はベースで密着されて、ドキドキして。それが好きになっちゃって。でも、蓮さんが倒れた時、その気持ちが大きくなりました。」
ひまりはそう言って、俺に背を向けた
ひまり「だから、私達から私から絶対に離れないでくださいね!///」
蓮「ひま__」
俺が呼び終える前にひまりはどこかに走って行った
巴「あれ?ひまりは?」
蓮「......帰った、ぞ。」
出づらくなった声でそう答えた
俺は唖然としていた
巴「......ひまりの言葉はアタシも思ってる事だ。」
蓮「!(聞こえてたのか)」
巴「蓮さんはいつも、自分の事を犠牲にして。アタシ達の事を優先する、大馬鹿野郎だった。」
巴は言葉の割には、優しい声でそう言った
その目は少し、嬉しそうだ
巴「自己犠牲、蓮さんはそれを体一杯で表現してた。」
蓮「......やばいやつだな。」
巴「でも、アタシは嫌いじゃなかったぞ。かっこいいなって、男だなって思った。」
蓮「そうか。」
巴は腰に手をやった
巴「憧れられるばっかりだったアタシが初めて、憧れた。それで、思ったんだ。」
蓮「思った?」
巴は俺をまっすぐ見て
いつも通りの声で、こう言った
巴「この人の前なら、アタシは女になれるって。」
蓮「え!?」
巴「だから、蓮さん。アタシの男になってくれ。アタシは蓮さんの女になる!」
巴はそう言うと、太鼓をたたくときに脱いでた上着を着なおして
俺に手を差し出してきた
巴「手を取ってくれ。そうすれば、手を繋いでる間だけでも、あたしは女になれる。」
蓮「......分かった。」
俺は巴の手を取った
その手は太鼓をたたいてたり、ドラムを叩いてたりして、すこし固い
でも、女の子だって思う柔らかい、そんな手だった